2014/05/05 【2014年4月の課題】人件費の抑制:解答(会員限定)

自社の人件費は本当に高いと言えるのか

 今月の課題では、コストに占める人件費の高さをテーマにしていますが、「自社の人件費は高い」と言い切ってしまう前に、果たして本当にそうなのか、一度論理的に検証してみる必要があります。

 役員としては人件費を単なるコストではなく、「人的資源の活用手段」ととらえるべきです。企業経営はヒト(優秀な人的資源)、モノ(優れた財・サービス)、カネ(機動的な資金調達)が基盤となることは常識ですが、企業価値を最大化するミッションを担う役員としては、ヒトのポテンシャルを最大化かつ最適化する観点で、人件費の多寡を判断しなければなりません。したがって、「人件費が高い」と言う前に、まず自社の人件費水準が適正であるかどうか、財務分析によって見極めることが必要です。

 人件費を分析する際の財務指標としてもっとも一般的なのが、売上高人件費比率です。これは損益計算書におけるコスト負担の度合いを測るものですが、会社規模や業種によって大きく異なります。例えば労働集約的な産業(接客業、サービス業など)は30~40%にも達する一方、売上規模が著しく大きい業種(総合商社、資源開発会社など)では5%にも満たない例が見られます。したがって、これを人件費の分析に用いる場合には、業界平均や同業他社水準との比較が必須です。

 付加価値額(売上高-前給付原価(*))を用いた「生産性分析」も人件費水準の分析に有効です。労働生産性(1人当たり付加価値額)が同業他社より低い場合、上述した売上高人件費比率が高ければ人件費の削減を検討する必要があります。逆に、たとえ労働生産性が低くても、売上高人件費比率も低いのであれば、むしろ待遇を手厚くして従業員の精勤を期待すべきでしょう。また、労働装備率(稼動ベースの有形固定資産 ÷ 従業員数)が高いとすれば、労働生産性が低くてもそれは従業員の問題ではなく、生産設備が過大だったり稼働率が低いためかも知れません。

* 前給付原価とは、原材料費、外注加工費、商品仕入高、水道光熱費など、「外部から購入した価値」のこと。自社が売上を上げる前の段階で支払う原価であることからこう呼ばれる。

 以上のような客観的かつ多面的な財務分析を通じて、それが最善の施策だと結論付けられれば、人員削減や給与カットなどの人件費削減策が検討されることになります。

雇用調整は最後の手段

 人件費の抑制というと、すぐに“クビ切り”を思い浮かべがちですが、それは最後の手段です。そこに至るまでに、やるべきことは他にもたくさんあります。

 まず、労働条件の変更を検討しましょう。労働条件の変更としては
・役員報酬のカット
・労働時間管理の徹底
・労働時間の見直し
・福利厚生費の削減
・賞与や一時金(ボーナス)の減額
・諸手当の見直し
・昇給実施の延期、賃金カット、ベースダウンの実施
といったものが考えられます。

 こうした労働条件の変更に加え、必要に応じて、雇用関係の人件費削減策である
・役員数の削減
・有期労働契約の期間満了による雇止め(契約期間満了時に契約を更新せず、終了させること)
・退職による自然減、採用の抑制
といった施策を実施します。これらの施策は、可能な限り正社員の雇用確保に努めるという狙いもあります。

 また、正社員をつなぎ止めるという点では、ストック・オプションや従業員持株会制度の導入は、当面の費用負担を抑えつつ、人件費削減という状況の中でも従業員にやる気を出させるツールとして有効です。

 これらの施策を実施しても足りない場合には、雇用調整に踏み切ることになります。雇用調整には次の3つがあり、
・希望退職
・退職勧奨
・整理解雇
状況に応じてこれらを使い分けることになります。

 以上の施策の詳細については、「人件費を抑制したい」を参照してください。

長期株主確保には、リストラ後の売上成長性を維持・向上させる施策が不可欠

 人件費を削減する場合、併せて様々な施策を実施する必要があります。

 まず、雇用調整に際しては退職金の積み増し等によるキャッシュの流出が想定されますので、資金繰りには余裕を見ておくべきです。金融機関には事前に説明し、資金的な手当てを計画しておきます。また、臨時的な退職金上乗せや人員削減に伴う拠点閉鎖損失は「特別損失」として計上することになります。特別損失に計上する範囲については、監査人と事前に打ち合わせしておく必要があります。

 また、技術者や営業マンの退職による技術や顧客の流出といった懸念も生じます。退職者が集まって、同業他社を設立する可能性もあるでしょう。そういった事態に備えて、事前にプロテクトすることが可能なものについては手を打っておくべきです。例えば、取締役または従業員から「退職後の技術流出、競業行為ないし引き抜き行為を禁止する」旨の合意(守秘義務、競業避止義務についての合意)を得ている場合には、会社は、このような義務違反を理由として損害賠償責任を追及することが可能になります。合意した内容については、個別に誓約書や契約書を交わしたり、従業員と合意のうえ就業規則に書き込んでおく必要があります。

 また、長期的な株価上昇を期待する年金基金やファン株主などといった長期株主の期待に応えるためには、一時的なリストラ効果による利益増加だけでなく、「リストラ後」の売上成長性を維持・向上させる施策が伴っていなければなりません。もっとも避けなければいけないのは、短期的な成果ばかりを追い求めるがあまり、事業の継続性に支障を来たすことです。従業員のモラルやモチベーションが失われることで、顧客や取引先が自社の商品やサービスの品質低下に失望し、それが売上高の減少につながってしまったのでは元も子もありません。その意味でも、人件費の削減はスピード感を持って「必要最小限」にとどめることが何よりも重要だと言えます。

<このケーススタディで復習>

人件費を抑制したい

2014/05/02 反対票が多く集まる“3大標的議案”

株主総会における賛否の動向は役員の関心事の1つだが、一般的に反対票が多く集まる“標的議案”というものがある。最近の標的議案のトップ3に挙げられるのが、・・・

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2014/05/02 反対票が多く集まる“3大標的議案”(会員限定)

株主総会における賛否の動向は役員の関心事の1つだが、一般的に反対票が多く集まる“標的議案”というものがある。最近の標的議案のトップ3に挙げられるのが、独立性が疑われる社外監査役の選任、役員退職慰労金の贈呈、買収防衛策の導入の3つだ。最新の先行事例として、今年3月に株主総会を実施した12月決算法人のうちTOPIX500採用銘柄(37社)の例を見てみよう。

37社における全議案の賛成率を平均すると94.6%にものぼる一方(ちなみに、総会当日出席株主の賛否は認識できないことが多いため、必ずしも反対・棄権が5.4%ということではない)、63.6%ともっとも低い賛成率にとどまったのが、アサツーディ・ケイ代表取締役社長の取締役選任議案だ。同社は4年前に赤字転落、最近3年間もROEが2%台と低水準で推移しており、相当数の株主が不信任票を投じた可能性がある。

またコカ・コーラウエストでは、社外取締役2名の賛成率が75.3%と72.1%に止まった。いずれも大株主である企業の現役経営者で、独立性に疑いが持たれた模様。

監査役候補者でもっとも賛成率が低かったのは、キヤノン社外監査役の66.1%であった。大株主である保険会社の元従業員であることが、独立性を毀損すると判断されたと見られる。花王の社外監査役も66.1%と低賛成率だったが、これは同氏が弁護士で、会社と取引関係のある法律事務所の出身であることが影響した模様。他にも70%台の候補者が3名、80%は4名に達している。

役員報酬関連では目立って反対率の大きい議案は見当たらなかった。もっとも低かったのはホシザキ電機の役員退職慰労金贈呈議案で、81.7%にとどまっている。退職慰労金は年功重視で役員の処遇に適さないとして、一部の機関投資家から問題視されている。他に山崎製パンが同贈呈議案、東燃ゼネラル石油が同打ち切り支給議案を諮ったが、それぞれ87.5%、91.2%の賛成率だった。

打ち切り支給 : 退職金制度の変更や役員への昇格、定年延長による雇用形態の変更などに伴い、「在職中」に退職金を支払うこと。

機関投資家がもっとも問題視する議案と言えるのが、買収防衛策の導入(新規および継続)である。3月総会の37社においては3社が上程しており、賛成率は昭和電工が66.9%、サッポロホールディングスが75.3%、コクヨが83.3%となっている。同議案が機関投資家から支持を得るには、社外取締役が過半数など極端な要件が必要で、横浜ゴムは買収防衛策を非継続とすることを2月に発表している。

このように、3月総会では業績不振企業の経営トップ、独立性が疑われる社外役員の選任について賛成率が低い例が目立ったが、同様の傾向が6月総会でも見られるのか、注目される。

2014/05/01 2014年4月度チェックテスト第10問解答画面(正解)

正解です。
 米国においては、リーマン・ショック(2008年9月)をはじめとする金融危機が短期的業績に過度に連動した高額報酬が一因となって引き起こされたとして、経営監視の強化のために、「Pay Gap」開示規制が導入されました。これは、上場企業の最高責任者(CEO)の報酬と従業員の給与格差(CEOの報酬と従業員の給与の中央値との比較)を開示することを義務付けるというものです。早ければ今年中にも運用が開始される予定となっています。CEOの報酬と比較されるのは「従業員」の給与であり、「新入社員」の給与ではないので、設問は誤りと言えます。将来的に日本でもそのような開示規制が導入されるのか、気になるところです。

こちらの記事で再確認!
2014/04/22 米国における役員報酬の開示規制、日本への影響は?(会員限定)

2014/05/01 2014年4月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
 確かに、契約内容は、お互いが合意すれば(公序良俗に反しない限り)自由に取り決めることができるのが原則です。しかし、消費者契約法8条には、例えば「事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項」など、無効になる条項がリストアップされています。また、同法9条では「消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効」、同法10条では「消費者の利益を一方的に害する条項の無効」が規定されています。これらは、いわば消費者と事業者間の契約条項の“ブラックリスト”と言えます。

こちらの記事で再確認!
2014/04/01 インターネット取引、「スクロール→承諾」は不可に?(会員限定)

2014/05/01 2014年4月度チェックテスト第8問解答画面(正解)

正解です。
 招集通知の英訳版を作成、発送した会社は37社中23社にのぼり、全体の約6割に達しています。TOPIX500に採用されるような時価総額の大きい企業は、グローバル投資家を意識した取り組みが必須になってきていることの表れと言えるでしょう。時価総額が大きくない企業でも、国内投資家だけでなくグローバル投資家の目を意識した株主総会運営が望ましいことは言うまでもありません。英訳版招集通知の投資家向けホームページへの掲載、英文のアニュアルレポートの開示等、取り組むべき課題は少なくありません。

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2014/04/18 3月決算会社の先行事例となる「12月決算会社」の株主総会状況は?(会員限定)

2014/05/01 2014年4月度チェックテスト第3問解答画面(正解)

正解です。
 需要を抑する活動は「デ・マーケティング」と呼ばれます。需要を掘り起こす活動であるマーケティングとは真逆の概念であるデ・マーケティングは、会社にとって一見マイナスに作用するように見えますが、例えば環境保護のためのCSR(企業の社会的責任)活動の一環として行われ企業イメージの向上につながったり、商品の希少性を高めることで将来的な需要増加につながったりするなど、長期的には逆に需要の増加につながることが少なくありません。

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2014/04/04 デ・マーケティング(会員限定)

2014/05/01 2014年4月度チェックテスト第10問解答画面(不正解)

不正解です。
 米国においては、リーマン・ショック(2008年9月)をはじめとする金融危機が短期的業績に過度に連動した高額報酬が一因となって引き起こされたとして、経営監視の強化のために、「Pay Gap」開示規制が導入されました。これは、上場企業の最高責任者(CEO)の報酬と従業員の給与格差(CEOの報酬と従業員の給与の中央値との比較)を開示することを義務付けるというものです。早ければ今年中にも運用が開始される予定となっています。CEOの報酬と比較されるのは「従業員」の給与であり、「新入社員」の給与ではないので、設問は誤りと言えます。将来的に日本でもそのような開示規制が導入されるのか、気になるところです。

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2014/04/22 米国における役員報酬の開示規制、日本への影響は?(会員限定)

2014/05/01 2014年4月度チェックテスト第4問解答画面(不正解)

不正解です。
 「正ののれん」とは、外部の企業を買収や合併した際における「支払対価」から「企業の時価純資産」をマイナスした差額です。「正ののれん」は、日本の会計基準では定期償却することになりますが、IFRSでは定期償却はできません。一方、減損損失が発生するほどの価値の下落があれば、日本の会計基準、IFRSともに、減損損失を計上する必要があります。設問中の「日本の会計基準では減損は認めていない」との記述が誤りとなります。

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2014/04/07 IFRS敬遠理由の1つ「のれん=非償却」という世界の常識は変わるか?

2014/05/01 2014年4月度チェックテスト第1問解答画面(不正解)

不正解です。
 確かに、契約内容は、お互いが合意すれば(公序良俗に反しない限り)自由に取り決めることができるのが原則です。しかし、消費者契約法8条には、例えば「事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項」など、無効になる条項がリストアップされています。また、同法9条では「消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効」、同法10条では「消費者の利益を一方的に害する条項の無効」が規定されています。これらは、いわば消費者と事業者間の契約条項の“ブラックリスト”と言えます。

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2014/04/01 インターネット取引、「スクロール→承諾」は不可に?(会員限定)