2024/04/23 【WEBセミナー】「資本コストや株価を意識した経営」の実現に向けた各社の対応状況と取組みのポイントについて(会員限定)

概略

【WEBセミナー公開開始日】2024年4月23日

2023年3月、東京証券取引所がプライム市場及びスタンダード市場の全上場企業に対して「資本コストや株価を意識した経営の実現」に関する要請を行いました。その後、積極的に対応を進める企業がある一方、まだ対応を検討している段階にある企業も少なくありません。
本セミナーでは、本要請を巡り企業の誤解が多い点について本要請の真意をご説明いただきつつ、企業側の現在の対応状況、ポイントが押さえられている企業の取組み事例、反対に投資家から指摘が多い事例も紹介・解説していただきます。

【講師】
東京証券取引所
上場部企画グループ 統括課長
池田 直隆(いけだ なおたか)様

セミナー資料 「資本コストや株価を意識した経営」の実現に向けた各社の対応状況と取組みのポイントについて.pdf
セミナー動画

「資本コストや株価を意識した経営」の実現に向けた各社の対応状況と取組みのポイントについて

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2024/04/22 実質株主の把握が容易に スチュワードシップ・コード改訂へ

実質株主透明化の実現に向け、スチュワードシップ・コードが改訂される方向となった。・・・

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2024/04/22 実質株主の把握が容易に スチュワードシップ・コード改訂へ(会員限定)

実質株主透明化の実現に向け、スチュワードシップ・コードが改訂される方向となった。

2024年4月18日に開催された「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)は「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラムのフォローアップと今後の方向性について(案)」(以下、今後の方向性(案))を了承した。今回のフォローアップ会議は、2023年4月26日に公表された「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム」(以下、アクション・プラグラム)を踏まえたもの(アクション・プログラムについては2023年4月18日のニュース『コード改訂「3年に1度」のサイクルにとらわれず コーポレートガバナンス改革の実質化に向けた「アクションプログラム」公表へ』参照)。アクション・プログラムでは、コーポレートガバナンス改革の実質化に向けた課題が示されたが、その1つが実質株主の透明化だ。

金融庁および東証は「今後の方向性(案)」を微修正したうえで、「意見書」として公表する。この意見書には、実質株主の透明性確保(このほか、協働エンゲージメントの促進)に向けてスチュワードシップ・コードを見直す旨が盛り込まれ、これを受け同コードが改訂される。具体的には、機関投資家等に対して、発行会社の株式の保有状況を通知するよう促すことで、「実質株主の透明性」を確保する。


実質株主 : 株主名簿の背後に存在する投資判断や議決権を行使する権限を持つ株主のこと。これに対し、株主名簿に載っている株主を名義株主という。個人株主や事業会社が株主となる場合などは「実質株主=名義株主」となるが、信託銀行が信託勘定で「管理」だけをする株式は、実質株主と名義株主は一致しない。機関投資家が保有する株式は基本的に後者のケースとなる。

現状、名義株主については、会社法上の株主名簿や有価証券報告書等の大株主の状況の開示により、企業や他の株主がこれを把握する制度が整備されている一方、実質株主についてはは、大量保有報告制度の適用対象となる場合を除き、企業や他の株主がこれを把握する制度は存在しない。そこで、多くの企業が株主判明調査を実施しているが、コストや時間を要するうえ、全ての実質株主が判明するわけではない。こうした中、実質株主が容易に確認できるようになれば、投資家との対話が一層促進されることが期待される。


名義株主 : 株主名簿に載っている株主のこと。
大量保有報告制度 : 市場の透明性・公正性を高め、投資者保護を図ることを目的として、株券等の大量保有者に対し「大量保有報告書(or変更報告書)」の提出を義務付ける金融商品取引法上の制度。具体的には、①保有割合が5%超となった場合、②その後、保有割合が1%以上増減するなど重要な変更があった場合、それぞれ提出事由が生じた日から5営業日以内に「大量保有報告書(or変更報告書)」の提出が求められる(②の場合に提出するのは「変更報告書」)。

金融庁に設置された金融審議会の「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ」(以下、公開買付WG)では、実質株主の透明性を確保する手法として、「米国型」と「英国型」を検討してきた。米国型とは、米国の証券取引所に上場している株式に係る一任運用資産が1億ドル以上の機関投資家に対して、四半期ごとに保有銘柄の名称や株数等を記載した保有明細をSEC(米国証券取引委員会)に提出することを求めるもの。一方、英国型とは、公開会社は議決権のある発行株式について実質的利害関係を有している者に対して、事実確認のための通知をすることができるというもの。通知を受けた者は、保有株数等の情報等を提供することになっている。


一任運用 : 顧客から有価証券売買の一任を受け運用すること。

公開買付WGでは、英国型を採用すべきとの意見が多く、これを受け、2023年12月25日に公表され報告書には、「まずは早急に、機関投資家の行動原則としてその保有状況を発行会社から質問された場合にはこれに回答すべきであることを明示することを、またその後、そのような回答を法制度上義務付けることを、それぞれ検討すべきである」(17ページ「Ⅲ.実質株主の透明性について」下から2段落目参照)と明記された。このうち赤字部分の「まず早急に、機関投資家の行動原則としてその保有状況を発行会社から質問された場合にはこれに回答すべきであることを明示すること」がスチュワードシップ・コードの改訂を想定している。一方、「その後、そのような回答を法制度上義務付けること・・・を検討」としているのは、英国型のように、通知を受けた者に保有株式数等の情報等の提供を義務付けるには会社法の改正が必要であり、時間を要するため。

実質株主の透明化により、近年進んできた企業と投資家の対話は新たなステージに入ることになろう。

2024/04/19 【失敗学第118回】ヤマウラの事例(会員限定)

概要

長野県駒ヶ根市を拠点として建設業を営むヤマウラ(東証プライム)で、管理本部財務経理チームマネージャーであり子会社の経理担当を兼務していた従業員が、子会社の口座から総額26億円もの資金を不正に引き出していた。

経緯

ヤマウラが2023年8月31日に公表した「第三者委員会の調査報告書(最終)」や2024年10月6日に東京証券取引所に提出した「改善報告書」等によると、一連の経緯は次のとおり。

2013年
3月:ヤマウラの子会社のヤマウラ企画開発の経理を担当していた従業員が、子会社の預金口座から現金の引き出しを開始。以後、30万円~100万円の現金を毎月2回~3回引き出すようになった。

2019年
10月:手法が現金の引出しから、当該社員の子の個人預金口座または当該社員の子が経営する会社への送金に切り替わっていく。

2023年
5月9日:ヤマウラの会計監査人(誠栄監査法人)が同社子会社のヤマウラ企画開発の元帳の預金残高と銀行の預金残高に10億円の開きがあることを発見する。
5月12日:管理本部財務経理チームマネージャーであり子会社の経理担当を兼務していた従業員が、当該差異10億円は未収入金であったとして、決算短信上で、未収入金を10億円増やして現金預金を10億円減らす処理をして決算短信を修正して会社へ提出し、決算短信を校了した。
5月15日:ヤマウラの代表取締役社長および管理本部長は、会計監査人からの指摘内容および10億円を未収入金として処理した事実を把握していたが、当該社員は入社以来30年近く経理の責任者としての実績があったことから信頼があり、単純な仕訳ミスと考え、ヤマウラの取締役会において10億円の預金不足の件を一切報告せずに、2023年3月期決算短信を承認し、適時開示をした。
5月19日:ヤマウラは会計監査人から「10億円の差異を未収入金とした処理に疑義がある」旨伝えられる。
5月22日:ヤマウラ管理本部長が会計監査人とともに子会社のヤマウラ企画開発の東京事務所に出向き、当該社員が未収入金の相手先としていた取引先にも来訪してもらい、未収入金の金額と内容についてプロジェクトごとに確認した結果、当該社員が主張する未収入金10億円は存在しないことが判明した。ヤマウラでは社内調査を開始した。
5月23日:当該社員が預金通帳を隠蔽。そのため金融機関から不明な支出と思われる支出についての送金票の一部を入手し、その中に当該社員の子が代表を務める会社へ3.34億円の不正支払いがあったことが判明。
5月30日:ヤマウラは臨時取締役会を開催して第三者委員会を設置した。
7月26日:ヤマウラは第三者委員会より「調査報告書(中間)」を受領する。
7月31日:ヤマウラは過年度の決算短信等の訂正を行う。
8月29日:ヤマウラは第三者委員会より「調査報告書(最終)」を受領する。第三者委員会の調査の結果、資金流用額は総額26億円に上ることが判明。
8月31日:ヤマウラは第三者委員会の「調査報告書(最終)」を開示する。
10月6日:ヤマウラは東京証券取引所に対して「改善報告書」を提出する。

内容・原因・再発防止策

ヤマウラが2023年10月6日に東京証券取引所に提出した「改善報告書」によると、本件不正の内容、原因および再発防止策は次のとおりとされている。

子会社の預金の不正引き出し(業務上横領)
内容 ヤマウラの管理本部財務経理チームマネージャーであり子会社の経理担当を兼務していた従業員が、子会社の口座から総額26億円もの資金を不正に引き出していた。
原因 (一人経理による内部牽制不在)
ヤマウラの管理本部財務経理チームマネージャーはヤマウラ企画開発の経理業務を一人で担っており、銀行印の管理・押印も行っていたため、自分で振込票を記入し、払戻請求書へ押印をして、自分で銀行窓口へ行って手続きをし、不正な会計処理を行い預金の引き出しを隠蔽することが容易であった。引き出し後は、実在する販売先との間で発生した取引に偽装し、「未成工事支出金」や「販売用不動産」といった勘定科目を用いて不正支出を隠蔽していた。会計処理については上長等によるダブルチェックの体制もなかった。
(ジョブローテーションの不存在)
ヤマウラの経理部門では他部門からの異動がなく、その中でも、当該社員は30年近くに亘り経理課長(マネージャー)として同じ位置にいた。そのため、ベテランとして業務に習熟しスピード化が図られるというメリットもある一方、不正な会計処理が露呈しにくい状況となっていた。
(貸付の極度額の範囲内での自由な運用)
ヤマウラでは1件5,000万円以上の貸付けの場合には取締役会の決議が必要とされているが、ヤマウラ企画開発に対しては2014年より50億円の極度貸付の方式が取締役会で可決されたことを機に、極度額の範囲であればその都度の貸付実行時に取締役会の決裁を得ずに貸付けができる運用としていた。また、管理本部長が当該社員の業務を監督していなかったため、当該社員の一存で振込依頼書と払戻請求書を起票し、自ら押印することで自由に送金できる体制が常態化していた。
(内部監査の不備)
ヤマウラの内部監査室は、管理本部財務経理チーム(ヤマウラおよびヤマウラ企画開発の経理業務を担当)に対して内部監査を実施していたが、その内容は、決算書類の確認とヤマウラ企画開発で開発物件を手掛ける際に作成しているプロジェクト事業計画書(事業内容、予算計画、委託先、工期等の内容)の確認のみであり、ヤマウラおよびヤマウラ企画開発の出納業務や貸付金管理業務に対する内部監査は実施していなかった。
(財務経理チームマネージャーへの権限の集中)
ヤマウラの経理規程および印章管理規程では、財務経理チームマネージャーに権限が集中しており、法人税の申告、決算書類の作成、引当金の計上、繰延資産の処理、印鑑の管理・押印等の権限を有する内容となっていた。また、管理部門は人事異動がなく業務が固定化されていたため、経理マニュアルを作成する必要性の認識がなかった。その結果として内部統制が十分に効かない状態となっていた。
(ヤマウラ企画開発の規程の未整備と運用の不徹底、ガバナンスの不足)
ヤマウラ企画開発の規程については未整備のものも多く、JSOX(内部統制報告制度)対応のため2010年に当時のヤマウラの経営管理室が作成したものも形式的で、ヤマウラ企画開発の役職員への周知が図られていなかった。そのため、本来であればヤマウラ企画開発の取締役会は取締役会規程に基づき3ヶ月に1回以上開催しなければならず、また、ヤマウラ企画開発の監査役は監査役監査規程に基づき年度監査計画を策定し監査役監査を実施しなければならないところ、どちらも各規程通りに運用されていなかった。
(親会社の監査等委員会による監査の不足)
ヤマウラの監査等委員は全員が非常勤であり、常勤の者はいなかった。また監査等委員によるヤマウラ企画開発の監査は、「内部監査室からの年1回の内部監査の報告を受けること」のみであり、出納業務やその他の経理業務などへの業務監査が実施されておらず、十分な監査体制とはなっていなかった。また、ヤマウラの監査等委員会とヤマウラ企画開発の監査役との連携が行われていないため、監査等委員がヤマウラ企画開発の状況を十分に把握しておらず、ヤマウラ企画開発の取締役の業務執行が適切に行われているかというコーポレートガバナンスの問題を認識することができなかった。
再発防止策 ・再発防止対策チームの立ち上げ
・経営責任の明確化及び経営体制の見直し
・監査等委員会の機能に不備があったことから、①常勤の委員を設置する必要性の有無、②構成委員の交代の有無、③交代が必要な場合の交代時期、④監査等委員の専門性や専門分野の多様性等についての方針策定
・内部統制の再構築(ヤマウラ企画開発の仕訳入力作業や財務諸表等の作成業務は、2023年7月1日に顧問契約を締結した税理士法人アテックス税理士事務所に業務委託することとし、資金移動とそれに伴う経理処理を分離する。また、ヤマウラにおいて不正な支出を防止するために預金通帳は財務経理チームの係長が管理し、銀行印は管理本部長が管理する)
・子会社管理の強化
・コーポレート・ガバナンスの再構築
・コンプライアンス意識の浸透
・人員と業務の活性化
<この事例から学ぶべきこと>

ヤマウラでは総額26億円にのぼる多額の資金が不正に引き出されていました。そして、それを起こした原因はこのような不正ではおなじみの「一人経理」でした。「同一人物による長期間の一人経理」という状況に「緩い内部統制」が加われば、多額の資金流用は容易と言えます。

ヤマウラでは、監査等委員会の全員が非常勤の委員でした。常勤監査役の設置が必須となる監査役会設置会社と異なり、監査等委員会では常勤の委員は必須とはされていません。そのため、上場会社であっても常勤の委員を置いていない監査等委員会も散見されます。そのような会社では「本当に常勤の委員を置く必要性はないのか」について、改めて検討しておきたいところです。

ヤマウラでは再発防止策としてヤマウラ企画開発の経理業務を税理士法人に外注することにしました。こういった不正が発覚した際、再発防止策実施にあたり経理の正社員を増やす方向で対応する企業が多いのですが、人手不足が深刻化し採用・教育に時間が掛かる状況下では、ヤマウラのようにアウトソースを活用した内部統制の再構築も一案と言えるでしょう。

2024/04/18 12月決算会社の3月総会・議決権行使結果 番外編(機関設計)

当フォーラムでは直近3回ニュースで、12月期決算会社の2024年3月株主総会に係る臨時報告書を分析し、機関投資家による議決権行使の動向をお伝えしてきたが、今回は番外編として、同総会における指名委員会等設置会社および監査等委員会設置会社への移行状況をレポートする。指名委員会等設置会社および監査等委員会設置会社に移行するための定款変更議案は例外なく9割超の賛成率を獲得している。本稿では、移行した会社にどのような特徴があるかを分析する。・・・

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2024/04/18 12月決算会社の3月総会・議決権行使結果 番外編(機関設計)(会員限定)

当フォーラムでは直近3回ニュースで、12月期決算会社の2024年3月株主総会に係る臨時報告書を分析し、機関投資家による議決権行使の動向をお伝えしてきたが、今回は番外編として、同総会における指名委員会等設置会社および監査等委員会設置会社への移行状況をレポートする。指名委員会等設置会社および監査等委員会設置会社に移行するための定款変更議案は例外なく9割超の賛成率を獲得している。本稿では、移行した会社にどのような特徴があるかを分析する。

臨時報告書において指名委員会等設置会社に移行するための定款変更議案の賛成率を開示した会社は下表の4社だった。全てプライム市場上場会社で、平均時価総額は約1.7兆円に達している。また、各社とも移行前から半数以上の独立社外取締役を選任しており、移行後は1社を除き、さらに独立社外取締役の占める割合が上昇している。元々ガバナンスの充実に関心の高い時価総額の大きい会社が、一層のレベルアップを図った結果と言えよう。

社名 上場市場 時価総額
(百万円
独立社外取締役の割合
移行後 移行前
ルネサスエレクトロニクス プライム 5,088,072 83.3% 80.0%
資生堂 プライム 1,683,600 63.6% 50.0%
コクヨ プライム 307,624 66.7% 66.7%
キッツ プライム 119,414 70.0% 57.1%
(平均) 1,799,678 69.4% 60.7%

監査等委員会設置会社に移行した会社としては下表の16社が確認された。16社の内訳は、プライム市場上場会社が8社、スタンダード市場上場会社が1社、グロース市場上場会社が7社となっており、平均時価総額は600億円を上回る程度にとどまっている。プライム市場上場会社に限っても1,000億円弱であり、指名等委員会設置会社への移行会社と比較すると差が大きい。移行前の独立社外取締役比率が3分の1を下回っているのは4社に過ぎず、いわゆる独立社外取締役の“数合わせ”を目的として監査等委員会設置会社に移行する会社は少数派となっている。結果として、移行後に独立社外取締役比率が過半数となるのは6社(プライム市場上場会社では4社)で、移行後も独立社外取締役比率が22.2%に過ぎない事例(プライム市場上場会社の最低は41.7%)があることも踏まえると、指名等委員会設置会社に移行した会社との比較では、ガバナンスへの取り組みに温度差があると言えよう。

社名 上場市場 時価総額
(百万円
独立社外取締役の割合
移行後 移行前
三井海洋開発 プライム 206,745 66.7% 45.5%
タムロン プライム 164,034 58.3% 44.4%
インテグラル グロース 127,134 50.0% 33.3%
鳥居薬品 プライム 115,920 60.0% 66.7%
KHネオケム プライム 88,193 55.6% 37.5%
大阪有機化学工業 プライム 71,712 44.4% 33.3%
AnyMind Group グロース 61,525 33.3% 20.0%
新日本電工 プライム 44,870 45.5% 42.9%
エフ・コード グロース 25,848 42.9% 20.0%
フロンティア・マネジメント プライム 18,676 50.0% 33.3%
正興電機製作所 プライム 16,347 41.7% 30.0%
ニューラルグループ グロース 15,638 57.1% 40.0%
プロジェクトカンパニー グロース 8,697 62.5% 40.0%
メドレックス グロース 5,041 22.2% 16.7%
ポーターズ グロース 3,326 50.0% 33.3%
リベルタ スタンダード 2,282 25.0% 33.3%
(平均) 60,999 47.8% 35.6%

東証のコーポレート・ガバナンス情報サービスによると、4月5日時点における組織形態別の上場会社の内訳は下表のとおりとなっている。プライム市場上場会社の4割超まで監査等委員会設置会社が増加しているが、今年3月の株主総会で移行した会社の一部は、指名委員会等設置会社に移行した会社とはガバナンス改革の本気度に差異がある印象は否めない。時価総額の大きい上場会社がガバナンス改革の本気度を投資家に示すには指名委員会等設置会社への移行が有効であり、また、監査等委員会設置会社の場合は移行後の取り組み(独立社外取締役の割合を高めるなど)に本気度が表れると言えそうだ。

機関設計 全市場 プライム スタンダード グロース
指名委員会等設置会社 94社 80社 11社 3社
監査等委員会設置会社 1,559社 689社 671社 199社
監査役設置会社 2,179社 881社 925社 373社
(合計) 3,832社 1,650社 1,607社 575社

2024/04/17 12月決算会社の3月総会・議決権行使結果(3) 高賛成率株主提案編

2024年4月15日のニュース「12月決算会社の3月総会・議決権行使結果(1) 役員選任議案編」、同16日の「(2) 低賛成率議案編」に続き、本稿では、12月決算のプライム市場上場会社の2024年3月株主総会に上程された議案のうち、賛成率が20%以上だった株主提案議案にフォーカスする。賛成率が20%以上だった株主提案議案は下表のとおり。・・・

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2024/04/17 12月決算会社の3月総会・議決権行使結果(3) 高賛成率株主提案編(会員限定)

2024年4月15日のニュース「12月決算会社の3月総会・議決権行使結果(1) 役員選任議案編」、同16日の「(2) 低賛成率議案編」に続き、本稿では、12月決算のプライム市場上場会社の2024年3月株主総会に上程された議案のうち、賛成率が20%以上だった株主提案議案にフォーカスする。賛成率が20%以上だった株主提案議案は下表のとおり。

社名 議案の内容 内容 賛成率
江崎グリコ 定款一部変更 剰余金の配当等の決定機関の変更 42.9%
富士ソフト 監査役1名選任 スティーブン・ギブンズ 40.3%
富士ソフト 自己株式取得の件 総額750億円 39.6%
江崎グリコ 定款一部変更 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応に関する開示 30.1%
デジタルホールディングス 定款一部変更 取締役報酬の個別開示 27.7%
鳥居薬品 定款一部変更 代表権を有する取締役の個別報酬の開示 22.2%

江崎グリコには、アクティビストで持株比率1%程度と推定されるダルトン・インベストメンツ(以下、ダルトン)が4議案の株主提案を実施、上表のとおり、そのうち2議案がそれぞれ42.9%、30.1%と高い賛成率を獲得した。剰余金配当等に関する定款変更では、決定機関を取締役会から株主総会に変更することを求めた。この株主提案は株主の権利を確保するものとして、外国人投資家はじめ機関投資家に高い支持を受ける結果となった。なお、同社株主のうち外国法人は22.1%、金融機関は31.5%と占めている。

もう1つの定款変更は「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を求める東証要請を受けたもので、東証要請への取り組みを検討して「現状評価、方針・目標、取組み・実施時期」をコーポレートガバナンス報告書などに開示することを求めた。ダルトンは「ROE は過去 5 年間平均で 5%台であり、株主が期待する資本コストをカバーできているとはいいがたい」「過去 5 年間の株主総利回り(TSR)をみても TOPIX や同業他社に大きく劣後している」ことを批判、江崎グリコ側は「会社を運営する上での根本規範を定める定款に、本議案のような規定を定めることは適切ではない」など反論したものの、少なからぬ機関投資家にとっては説得力を欠いた模様。


ROE : Return On Equity=株主資本利益率(当期純利益/株主資本)
資本コスト : 「資金提供者(債権者+株主)に対するリターン」のこと(なお、株主に対するリターンには、配当のほかキャピタルゲインも含まれる)。資金提供者に対するリターンが適切にできなければ、債権者は会社に資金の返還を求め、株主は株式を売却(=株価が下落する)せざるを得ない。したがって、会社にとって資本コストは「資金提供者に対するリターンの目標値」と言える。

富士ソフトにはアクティビストである3Dインベストメント・パートナーズ(以下、3D)によって2議案の株主提案が実施され、いずれも約40%の賛成率となった。3Dの持株比率は21.5%、別のアクティビストであるファラロン・キャピタル・マネジメントも8.7%となっており、この両者だけでも約30%の賛成票が投じられた可能性がある。さらに同社株主のうち外国法人は44.0%、金融機関は15.9%で、アクティビスト2者を除いた機関投資家と推定される約30%のうち、3分の1程度は株主提案に賛同した形となっている。

監査役選任議案はM&A専門家である弁護士のギブンズ氏を候補者とするもので、富士ソフトがプライベートエクイティファンド3社より受けている買収提案について、経済産業省「企業買収行動指針」における「真摯な買収提案」(「3.1.2 取締役会における検討」参照)に当たるものと評価、取締役会が真摯に検討するため同氏のスキルや経験が必要とした。

また、自己株式取得は最大750億円の実施を求めるもので、不動産を時価評価した場合の同社のROEは「約6%となり、直近の業界平均の約16%を大きく下回る」こと、「ROEを業界の平均水準まで引き上げるためには、1,650億円の余剰資産を償還する必要」があることを主張した。

デジタルホールディングスと鳥居薬品に対しては、いずれもアクティビストのリム・アドバイザーズ(以下、リム)によって、役員報酬の個別開示に関する定款変更議案が上程された。リムのデジタルホールディングスに対する持株比率は3.4%、鳥居薬品については1%未満と推測され、相当程度の機関投資家が賛成に回ったことが窺われる(デジタルホールディングスは外国法人12.8%、金融機関11.1%、鳥居薬品は同17.6%と11.2%)。なお、鳥居薬品については、別のアクティビストであるエフィッシモ・キャピタル・マネジメントも5.8%を保有している。

リムの株主提案において注目すべきは、デジタルホールディングスに対して「当社の取締役会がPBR1倍割れとEVのマイナスを長らく放置してきた」、鳥居薬品には「『天下り』によりキャピタル・アロケーションを無視し、PBRの1倍割れを放置してきた」と、東証要請「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を意識した主張をしている点にある。上記のとおり、ダルトンも東証要請を踏まえた提案を実施、また3Dは富士ソフトに対する主張において経済産業省の「企業買収行動指針」を引用している。これら“官製のガバナンス施策”が株主提案に説得力を持たせる重要なツールとなっていることを踏まえたうえで、上場会社は株主提案への対応を検討する必要があろう。


PBR : Price Book-value Ratio=株価純資産倍率(株価÷1株当たり株主資本)。株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか(=1株当たり純資産の何倍の値段が付いているか)を指す。PBRが1.0を大幅に下回る場合、投資家が企業の将来性に疑問を持っていたり、減損リスクのように潜在的な資産の含み損が多額にのぼる可能性が株価に織り込まれていたりすることを示唆する。
EV : EV(Enterprise Value)は企業価値を示す用語で、具体的には、企業が将来生み出すフリーキャッシュフロー(将来の利益)を現在の価値に割り引いたもの。EV(企業価値)は「ネット有利子負債 + 株式時価総額」により計算される。なお、ネット有利子負債とは、有利子負債からすぐにキャッシュにできるものを差し引いた金額である。企業価値には、目に見える資産だけでなく、知的財産やブランド力などの目に見えない資産も含まれる。
キャピタル・アロケーション : 調達した資金、事業活動を通じて得た資金をどこに投資するか、どのように使うかを判断すること




2024/04/16 12月決算会社の3月総会・議決権行使結果(2) 低賛成率議案編

2024年4月15日のニュース「12月決算会社の3月総会・議決権行使結果(1) 役員選任議案編」に続き、本稿では、12月決算のプライム市場上場会社の2024年3月株主総会に上程された議案(役員選任議案を除く)の中から“低賛成率”だったものを抽出し、その原因を分析する。賛成率が低かった議案は下表のとおりだ。・・・

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