2024/04/16 12月決算会社の3月総会・議決権行使結果(2) 低賛成率議案編(会員限定)

2024年4月15日のニュース「12月決算会社の3月総会・議決権行使結果(1) 役員選任議案編」に続き、本稿では、12月決算のプライム市場上場会社の2024年3月株主総会に上程された議案(役員選任議案を除く)の中から“低賛成率”だったものを抽出し、その原因を分析する。賛成率が低かった議案は下表のとおりだ。

社名 議案の内容 賛成率
日本カーボン 買収防衛策の更新 62.2%
大和冷機工業 退職慰労金の贈呈・打ち切り支給 69.6%
ビジョン 定款一部変更(剰余金配当等の決定機関の変更) 72.2%
山崎製パン 退職慰労金の贈呈 74.0%
Appier Group ストックオプション報酬等の内容変更 74.9%
建設技術研究所 剰余金処分 75.3%
岡部 買収防衛策の継続 75.0%
アステナホールディングス 財団に対する第三者割当による自己株式処分 75.7%


打ち切り支給 : 退職金制度の変更や役員への昇格、定年延長による雇用形態の変更などに伴い、「在職中」に退職金を支払うこと。

買収防衛策の継続議案では、日本カーボンと岡部の賛成率が低かった。日本カーボンの株主構成を見ると、外国法人が11.5%、大株主の銀行・生損保を除いた金融機関が23.7%となっており、機関投資家と目される35.2%(11.5+23.7 以下同様)は軒並み反対だった計算になる。岡部の外国人株主は10.0%、大株主の銀行・生損保を除いた金融機関は14.5%で、やはり機関投資家と目される24.5%のうち大部分が反対した形となる。

退職慰労金の贈呈および打ち切り支給に関する議案では、大和冷機工業と山崎製パンの低賛成率が目に付いた。もともと退職慰労金の贈呈等に対しては機関投資家の批判が強いことに加え、具体的な金額および支給方法について、大和冷機工業は「取締役については取締役会に、監査役については監査役の協議にそれぞれ一任する」、山崎製パンは「取締役会に一任する」としており、透明性が欠如していることも影響していると考えられる。

ビジョンの定款変更議案は、剰余金の配当等を「取締役会の決議によって定めることができる」とするものであり、株主総会の決定権限を奪う、あるいは株主の権利を損なうと判断された可能性がある。Appier Groupのストックオプションは権利行使までのべスティング期間が2年と比較的短いことが、短期的な経営姿勢につながりかねないと懸念されたのだろう。


べスティング期間 : 権利を付与されてから権利行使可能になるまでの期間のこと。ベスティング(vesting)とは「権利確定」という意味である。

建設技術研究所の剰余金処分案への低賛成率は、同社株主総会が不正会計により決算報告を欠いていたことが影響している(継続会を4月4日に開催)。アステナホールディングスの自己株式処分は、いわゆる“財団への第三者割当”マターであり(2017年4月18日のニュース『「財団への第三者割当」を巡る投資家目線の論点』参照)、処分価格が1円と有利発行に該当することに加え、財団が安定株主となることで、事実上の買収防衛策と機能し得ることから、近年機関投資家から問題視されている。


継続会 : 会社法上、株主総会は、延期または続行することができるとされている(会社法317条)。ここでいう「延期」とは株主総会の成立後に議事に入らずに開催日を後日に変更することであり、一般的には「延会」と呼ばれ、「続行」とは株主総会の成立後に議事に入るものの、全ての議事の審議を完了せず残りの議事の審議を後日に先送りすることであり、一般的に「継続会」と呼ばれる。
有利発行 : 例えば1株当たりの時価が千円のところ5百円で新株を発行するというように、新株や新株予約権の引受人にとって“有利な”価格(無償や時価未満)で新株を発行することをいう。

議決権行使結果の中では、やはりマネジメントおよびガバナンスに対する評価に直結する役員選任議案への注目度が高いが、その他の議案の議決権行使結果にも機関投資家の関心や懸念が反映されている。株主総会への議案上程を機に、あらゆる側面から自社の経営を再確認することが求められよう。

2024/04/15 12月決算会社の3月総会・議決権行使結果(1) 役員選任議案編

12月期決算会社の2024年3月株主総会が終了したことを受け、当フォーラムでは各社の臨時報告書を分析し、機関投資家による議決権行使の動向をレポートする。まず本稿では、会社提案の役員選任議案について見てみよう。賛成率が70%未満となった会社(時価総額1,000億円超の会社に限る)提案の役員選任議案のランキング(賛成率が低い順)は下表のとおり。・・・

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2024/04/15 12月決算会社の3月総会・議決権行使結果(1) 役員選任議案編(会員限定)

12月期決算会社の2024年3月株主総会が終了したことを受け、当フォーラムでは各社の臨時報告書を分析し、機関投資家による議決権行使の動向をレポートする。まず本稿では、会社提案の役員選任議案について見てみよう。賛成率が70%未満となった会社(時価総額1,000億円超の会社に限る)提案の役員選任議案のランキング(賛成率が低い順)は下表のとおり。

社名 議案の内容 候補者 賛成率
GMOインターネットグループ 取締役5名選任 熊谷 正寿 61.9%
富士ソフト 取締役12名選任 坂下 智保 63.0%
富士ソフト 取締役12名選任 辻 孝夫 63.0%
コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス 取締役(監査等委員である取締役を除く)5名選任 カリン・ドラガン 63.1%
DIC 取締役10名選任 猪野 薫 63.1%
富士ソフト 取締役12名選任 仁科 秀隆 63.2%
富士ソフト 取締役12名選任 荒牧 知子 63.2%
富士ソフト 取締役12名選任 筒井 正 63.3%
富士ソフト 取締役12名選任 森本 真里 63.3%
富士ソフト 取締役12名選任 大迫 館行 63.3%
富士ソフト 取締役12名選任 大石 健樹 63.3%
SUMCO 監査等委員である取締役6名選任 田中 等 66.5%
協和キリン 監査役1名選任 小林 肇 66.9%
大塚商会 監査役3名選任 仲井 一彦 66.9%

上表でまず目に付くのは、富士ソフトの取締役12名のうち実に8名がランクインしていることだ。アクティビストである3Dインベストメント・パートナーズ(以下、3D)とのファラロン・キャピタル・マネジメントが同社株式を保有しており、その保有比率は両者合わせて約30%となっている。なお、3Dは富士ソフトに対し株主提案を行っていたが(富士ソフトのリリースはこちら)、2議案とも否決されている。8名の取締役候補者の賛成率からすると、両者が揃って反対票を投じた可能性が高い。富士ソフトの取締役候補者の中で最も賛成率が低かった坂下氏は代表取締役社長執行役員の地位にあったこと、坂下氏と同じ賛成率だった社外取締役の辻氏は同社以外に3社で社外役員を兼任していることが影響したものとみられる。

全体で最も低賛成率だったのはGMOインターネットグループの熊谷CEOだった。同社の取締役5名、監査役4名のいずれにも女性はおらず、多くの機関投資家が設定するジェンダー基準に抵触した。

コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスのドラガンCEOの場合、同社の過去5年間のROEが▲2.7%、直近期でも0.4%にとどまっており、ISSや多くの運用機関のROE基準に抵触したことが低賛成率の原因とみられる(大手運用機関の最新のROE基準については【2024年3月の課題】「各運用機関の2024年議決権行使方針」の「業績基準」参照)。DICもROEが過去5年間で1.5%、直近期が▲10.6%となっており、今年1月まで社長だった猪野会長の責任が問われた形となっている。

SUMCOの監査等委員である弁護士の田中氏は、2005年に同社の監査役に就任しており、在任期間は通算で19年に達している。「12年」を上限とすることが多い在任期間基準に抵触し(例えば大和アセットマネジメントは、「取締役としての在任期間に監査役としての在任期間を合算して12年」を上限としている(2023年12月4日のニュース「大和アセット、改定議決権行使基準を12月から適用開始、PBR1倍割れ問題にも対応」参照)、反対票が集まったとみられる。協和キリンの小林氏は同社の社外監査役だが、親会社のキリンホールディングスの元執行役員であり、独立役員の届出が予定されていないことが影響したのだろう。大塚商会の仲井氏は同社の会計監査人であるEY新日本有限責任監査法人の元代表社員で、社外監査役としての独立性が問われたものと推測される。


独立役員の届出 : 一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役または社外監査役。東証は企業に対し、独立役員を独立役員届出書により届け出ることを求めている。

以上のように、役員役候補者の選任議案への賛成率には、ROE基準やジェンダー基準、社外役員の兼任基準や在任基準そして独立性基準が適用された結果が明確に表れている。否決に至った議案(候補者)はなかったものの、各社は機関投資家による議決権行使の影響の大きさを再確認するべきだろう。

2024/04/14 GW休業のお知らせ

誠に勝手ながら、2024年4月30日(火)~2024年5月2日(木)のゴールデンウィーク期間中、事務局は休業となります。
ご不便をおかけしますが、何卒ご理解いただきますようお願い致します。

2024/04/12 パートナーシップ構築宣言、早目の更新を

下請企業との共存共栄を謳う「パートナーシップ構築宣言」()という仕組みが2020年7月にスタートしてから3年以上が経過した。その間、公益財団法人全国中小企業振興機関協会が運営する同宣言のポータルサイトへの登録企業は増え続けており、既に44,000社を超えている(2024年4月12日現在)。当フォーラムが同宣言を取り上げた2021年10月時点では1,597社に過ぎなかった(2021年10月1日のニュース『「パートナーシップ構築宣言」を利用したSDGsウオッシュに懸念の声』参照)ことを考えると、急速な普及ぶりがうかがえる。

事業者が、サプライチェーン全体の付加価値向上、大企業と中小企業の共存共栄を目指し、「発注者」側の立場から、「代表権のある者の名前」で、下請企業との望ましい取引慣行(振興基準)の遵守等を宣言するもの。他社の宣言状況は、公益財団法人全国中小企業振興機関協会が運営する同宣言のポータルサイトで確認できる。

パートナーシップ構築宣言は「一度宣言すればメンテナンス不要」というものではなく、自社の外部環境の変化(法令や各種指針等の改正)や内部環境の変化(経営方針の変更)に伴い宣言内容を見直して更新していくことが不可欠となる。日本経済団体連合会、日本商工会議所、経済同友会の経済三団体が2024年1月17日に連名で公表した「構造的な賃上げによる経済好循環の実現に向けて」においても、会員企業に対して「パートナーシップ構築宣言」の不断の見直しを求めている。

既宣言企業を取り巻く外部環境の変化が、先月(2024年3月)25日に行われた・・・

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2024/04/12 パートナーシップ構築宣言、早目の更新を(会員限定)

下請企業との共存共栄を謳う「パートナーシップ構築宣言」()という仕組みが2020年7月にスタートしてから3年以上が経過した。その間、公益財団法人全国中小企業振興機関協会が運営する同宣言のポータルサイトへの登録企業は増え続けており、既に44,000社を超えている(2024年4月12日現在)。当フォーラムが同宣言を取り上げた2021年10月時点では1,597社に過ぎなかった(2021年10月1日のニュース『「パートナーシップ構築宣言」を利用したSDGsウオッシュに懸念の声』参照)ことを考えると、急速な普及ぶりがうかがえる。

事業者が、サプライチェーン全体の付加価値向上、大企業と中小企業の共存共栄を目指し、「発注者」側の立場から、「代表権のある者の名前」で、下請企業との望ましい取引慣行(振興基準)の遵守等を宣言するもの。他社の宣言状況は、公益財団法人全国中小企業振興機関協会が運営する同宣言のポータルサイトで確認できる。

パートナーシップ構築宣言は「一度宣言すればメンテナンス不要」というものではなく、自社の外部環境の変化(法令や各種指針等の改正)や内部環境の変化(経営方針の変更)に伴い宣言内容を見直して更新していくことが不可欠となる。日本経済団体連合会、日本商工会議所、経済同友会の経済三団体が2024年1月17日に連名で公表した「構造的な賃上げによる経済好循環の実現に向けて」においても、会員企業に対して「パートナーシップ構築宣言」の不断の見直しを求めている。

既宣言企業を取り巻く外部環境の変化が、先月(2024年3月)25日に行われた振興基準の改正(振興基準の新旧対照表はこちら)とパートナーシップ構築宣言のひな形の改定(新しいひな形はこちらを参照。経済産業省のリリースはこちら)だ。パートナーシップ構築宣言はもともと「振興基準を順守すること」を宣言するものであるため、労務費の価格転嫁の推進を目的として、振興基準に「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の活用の促進が盛り込まれた(「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の内容については2024年2月7日のニュース『サプライチェーン全体を通じた構造的な賃上げへの経営トップと社外取締役の関わり方』参照)。過去の宣言が直ちに無効になるわけではないが、宣言がいつまでも古い()ままだと「労務費の価格転嫁に後ろ向きの企業」との印象が強まり、下請企業を不安にさせることにもなりかねない。古いひな形をベースにしている既宣言企業は、新ひな形に沿って宣言を更新しておきたい。

宣言には日付が付される。


振興基準 : 下請中小企業振興法に基づく、親事業者と下請事業者との望ましい取引慣行のこと。例えば取引対価決定の際の協議、契約条件の書面交付等が挙げられる。

今回のひな形の改定の最大のポイントは、振興基準と同様、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」が反映されたということだ(「①価格決定方法」の項目参照)。このほか、「知的財産取引に関するガイドライン」を取り込む等のアップデートも行われている。当フォーラムでは以下のとおり、ひな形の新旧対照表を作成した。自社の宣言の中で更新が必要な箇所の特定にあたり参考にされたい。

「パートナーシップ構築宣言」のひな形の新旧対照表(赤字が変更箇所)
1. サプライチェーン全体の共存共栄と規模・系列等を超えた新たな連携
直接の取引先を通じてその先の取引先に働きかける(「Tier N」から「Tier N+1」へ)ことにより、サプライチェーン全体での付加価値向上に取り組むとともに、既存の取引関係や企業規模等を超えた連携により、取引先との共存共栄の構築を目指します。その際、災害時等の事業継続や働き方改革の観点から、取引先のテレワーク導入やBCP(事業継続計画)策定の助言等の支援も進めます。
(個別項目)
a.企業間の連携(オープンイノベーション、M&A等の事業承継支援 等)
b.IT実装支援(共通EDIの構築、データの相互利用、IT人材の育成支援、サイバーセキュリティ対策の助言・支援 等)
c.専門人材マッチング
d.グリーン化の取組(脱・低炭素化技術の共同開発、省エネ診断に係る助言・支援、生産工程等の脱・低炭素化、グリーン調達 等)
e.健康経営に関する取組(健康経営に係るノウハウの提供、健康増進施策の共同実施 等)
1.サプライチェーン全体の共存共栄と規模・系列等を越えた新たな連携
直接の取引先を通じてその先の取引先に働きかける(「Tier N」から「Tier N+1」へ)ことにより、サプライチェーン全体での付加価値向上に取り組むとともに、既存の取引関係や企業規模等を越えた連携により、取引先との共存共栄の構築を目指します。その際、災害時等の事業継続や働き方改革の観点から、取引先のテレワーク導入やBCP(事業継続計画)策定の助言等の支援も進めます。
(個別項目)
a.企業間の連携(オープンイノベーション、M&A等の事業承継支援 等)
b.IT実装支援(共通EDIの構築、データの相互利用、IT人材の育成支援 等)
c.専門人材マッチング
2. 「振興基準」の遵守
親事業者と下請事業者との望ましい取引慣行(下請中小企業振興法に基づく「振興基準」)を遵守し、取引先とのパートナーシップ構築の妨げとなる取引慣行や商慣行の是正に積極的に取り組みます。
2. 「振興基準」の遵守
親事業者と下請事業者との望ましい取引慣行(下請中小企業振興法に基づく「振興基準」)を遵守し、取引先とのパートナーシップ構築の妨げとなる取引慣行や商慣行の是正に積極的に取り組みます。
①価格決定方法
不合理な原価低減要請を行いません。取引対価の決定に当たっては、下請事業者と少なくとも年に1回以上の協議を行うとともに、下請事業者の適正な利益を含み、下請事業者における労働条件の改善が可能となるよう、十分に協議して決定します。その際、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」に掲げられた行動を適切にとった上で決定します。また、原材料費やエネルギーコストの高騰があった場合には、適切なコスト増加分の全額転嫁を目指します。なお、取引対価の決定を含め契約に当たっては、契約条件の書面等による明示・交付を行います。
①価格決定方法
不合理な原価低減要請を行いません。取引対価の決定に当たっては、下請事業者から協議の申入れがあった場合には協議に応じ、労務費上昇分の影響を考慮するなど下請事業者の適正な利益を含むよう、十分に協議します。取引対価の決定を含め契約に当たっては、親事業者は契約条件の書面等による明示・交付を行います。
②型管理などのコスト負担
「型取引の適正化推進協議会報告書」に掲げられている「型取引の基本的な考え方・基本原則について」や、「型の取扱いに関する覚書」を踏まえて型取引を行い、不要な型の廃棄を促進するとともに、下請事業者に対して型の無償保管要請を行いません。
②型管理などのコスト負担
契約のひな形を参考に型取引を行い、不要な型の廃棄を促進するとともに、下請事業者に対して型の無償保管要請を行いません。
③手形などの支払条件
下請代金は可能な限り現金で支払います。手形で支払う場合には、割引料等を下請事業者の負担とせず、また、支払サイトを 60 日以内とするよう努めます。
③手形などの支払条件
下請代金は可能な限り現金で支払います。手形で支払う場合には、割引料等を下請事業者の負担とせず、また、将来的には支払サイトを60日以内とするよう努めます。
④知的財産・ノウハウ
「知的財産取引に関するガイドライン」に掲げられている「基本的な考え方」や、「契約書ひな形」を踏まえて取引を行い、片務的な秘密保持契約の締結、取引上の立場を利用したノウハウの開示や知的財産権の無償譲渡などは求めません。
④知的財産・ノウハウ
片務的な秘密保持契約の締結、取引上の立場を利用したノウハウの開示や知的財産権の無償譲渡などは求めません。
⑤働き方改革等に伴うしわ寄せ
取引先も働き方改革に対応できるよう、下請事業者に対して、適正なコスト負担を伴わない短納期発注や急な仕様変更を行いません。災害時等においては、下請事業者に取引上一方的な負担を押し付けないように、また、事業再開時等には、できる限り取引関係の継続等に配慮します。
⑤働き方改革等に伴うしわ寄せ
取引先も働き方改革に対応できるよう、下請事業者に対して、適正なコスト負担を伴わない短納期発注や急な仕様変更を行いません。災害時等においては、下請事業者に取引上一方的な負担を押し付けないように、また、事業再開時等には、できる限り取引関係の継続等に配慮します。
3.その他(任意記載) 3.その他(任意記載)

なお、パートナーシップ構築宣言のポータルサイトには現在、宣言の更新の申込みが殺到しており、「更新された宣言」が公開されるまで通常3日~4日のところ、それ以上の日数(1~2週間程度)を要する状況となっている(ポータルサイトの「お知らせ」参照)。更新後にプレスリリースや取引先への周知を予定している場合、ポータルサイト上の更新日を念頭に置いてスケジュールを立てる必要がある点、留意したい。

2024/04/11 東芝の株主代表訴訟が意外な形で決着

大きな話題を呼んだ東芝の不正会計問題について、東芝におけるコーポレートガバナンスの欠如を指摘する声は多い。本件については当然のごとく、株主が元取締役らに対して株主代表訴訟を提起していたが、東京高裁は2024年3月6日、株主の訴えを却下している。


却下 : 要件を備えていない不適法な訴えであるなどと して、内容が審理される前に退けられるこ と。 これに対し、内容が審理されたうえで訴えが 退けられることを「棄却」という。

裁判では、・・・

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2024/04/11 東芝の株主代表訴訟が意外な形で決着(会員限定)

大きな話題を呼んだ東芝の不正会計問題について、東芝におけるコーポレートガバナンスの欠如を指摘する声は多い。本件については当然のごとく、株主が元取締役らに対して株主代表訴訟を提起していたが、東京高裁は2024年3月6日、株主の訴えを却下している。


却下 : 要件を備えていない不適法な訴えであるなどと して、内容が審理される前に退けられるこ と。 これに対し、内容が審理されたうえで訴えが 退けられることを「棄却」という。

裁判では、東芝が行った会計処理が会社法431条の「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」に違反する違法なものであるとして、取締役らに対する善管注意義務違反等があったかどうかが問われ、一審の東京地裁は2023年5年3月28日、米国の地下鉄等のインフラ案件について「取締役は、米国会計基準を適用したうえで、損失の発生見込みが明らかになり次第、見込まれる損失金額を認識し、引当金を計上しなければならなかった」と指摘。元取締役5人に対し「違法な会計処理を認識または認識し得た場合には、権限を行使して会計処理を中止または是正させる義務を負っていたというべきである」として、約3億円の損害賠償責任を認めている。

株主は東京地裁の判決も生ぬるいとして、やはり東京地裁判決を不服とする東芝側同様、東京高裁に控訴したが、上記のとおり、東京高裁は株主の訴えを却下するという意外な結論を下している。これは、そもそも「株主らは原告適格を喪失した」との判断によるもの。


原告適格 : 訴訟を提起した者が、裁判により法律上の利益を有する者に該当すること。

株主代表訴訟制度上、「6か月前から引き続き株式を有する株主」が会社に対して取締役の責任を追及する訴えの提起を請求することができることとされており、株主でなくなった場合には、原告としての適格性を喪失することになる。東芝は、株式非公開化を前提とした日本産業パートナーズ(JIP)が設立した特定目的会社による株式公開買付け(TOB)の実施を受け、2023年11月22日の臨時株主総会により、普通株式9,300万株を1株に併合する株式併合を承認し、同年12月20日には上場廃止となっていた。この株式併合の効力が令和5年12月22日に発生したことにより、東京高裁は株主の株式はいずれも1株に満たない端数になったことから原告適格を喪失したと認定、株主らの訴えを却下した。


原告適格 : 事業の活性化を支援する投資基金として、日本の大企業における事業再編に伴う事業カーブアウトにおいて資本のご提供や経営支援を行う会社。
株式併合 : 複数の株式を1株にまとめる(併合)することにより、発行済み株式数を減少させる手法のこと。例えば2:1の割合で株式を併合する場合、1株当たりの理論的な価値(株価)は2倍に調整されることから、株価を上げる要因の1つにもなり得る。ただし、株式併合は少数株主を締め出す結果を招くため、その実施にあたってはその理由を開示するとともに、株主総会の特別決議による承認を得る必要がある。

ちなみに会社法では、例外的に①株主が株式交換又は株式移転により完全親会社の株式を取得した場合、②株主が、合併による会社の消滅に伴い、合併により設立される会社又は合併後存続する会社もしくはその完全親会社の株式を取得した場合には、訴訟中に株主でなくなったとしても訴訟を続行できるとされているが、今回、株主はこれらの例外事例には該当しなかった。

上記のとおり、東京地裁判決では、元取締役5名に損害賠償責任が認められていただけに、東芝の不正会計問題を受けた株主代表訴訟は、思わぬ形で幕を閉じたと言えよう。

2024/04/10 【2024年3月の課題】各運用機関の2024年議決権行使方針 解答(会員限定)

日本シェアホルダーサービス株式会社
コンサルタント 水嶋 創

昨年10月から本年3月にかけて、各機関投資家の議決権行使基準改定が相次ぎ、国内主要機関投資家については概ね新基準が出揃いました。

本稿では以下の主要10機関投資家の議決権行使基準の改定内容をテーマごとに解説します。

大和アセットマネジメント(2023年10月公表)
https://www.daiwa-am.co.jp/company/managed/revguideline.pdf
野村アセットマネジメント(2023年11月公表)
https://www.nomura-am.co.jp/special/esg/pdf/vote_policy20231101.pdf
りそなアセットマネジメント(2023年11月公表)
https://www.resona-am.co.jp/investors/pdf/kijun_hoshin.pdf
三井住友トラスト・アセットマネジメント(2023年12月公表)
https://www.smtam.jp/news/pdf/release/PR2023_019.pdf
三井住友DSアセットマネジメント(2023年12月公表)
https://www.nikkoam.com/files/lists/release/2024/240215_01_j.pdf
日興アセットマネジメント(2024年2月公表)
https://www.tr.mufg.jp/ippan/release/pdf_mutb/240228_1.pdf
三菱UFJ信託銀行(2024年2月公表)
https://www.am.mufg.jp/assets/pdf/corp/responsible/stewardshipcode/giketsukijun_240228.pdf
三菱UFJアセットマネジメント(2024年2月公表)
https://www.am-one.co.jp/pdf/news/345/240229_AMOne_newsrelease.pdf
アセットマネジメントOne(2024年2月公表)
https://www.am-one.co.jp/pdf/news/345/240229_AMOne_newsrelease.pdf
ブラックロック・ジャパン
https://www.blackrock.com/jp/individual/ja/literature/publication/202403-blkj-publication-changes-to-japan-equity-voting-guideline-ja-jp.pdf

業績基準
728501

最近の日本株の好調なパフォーマンスの要因として、必ずと言っていいほど挙げられるのが、東証によるPBRの改善要請です。今シーズンの議決権行使基準改定でも、大和アセットマネジメントが業績基準におけるPBRの閾値を「同一業種内下位33%」から「1倍」に変更したことが確認されました。ただし、PBRを業績基準のファクターとして用いる機関投資家は限定的であり、業績基準の中心は引き続きROEであると言えます。


PBR : Price Book-value Ratio=株価純資産倍率(株価÷1株当たり株主資本)。株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか(=1株当たり純資産の何倍の値段が付いているか)を指す。PBRが1.0を大幅に下回る場合、投資家が企業の将来性に疑問を持っていたり、減損リスクのように潜在的な資産の含み損が多額にのぼる可能性が株価に織り込まれていたりすることを示唆する。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
ROE : Return On Equity=株主資本利益率(当期純利益/株主資本)(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

議決権行使助言会社ISSはコロナ禍で停止していた同社のROE基準(5年平均5%未満かつ直近5%未満で経営トップに反対推奨)の復活を公表していますが、国内機関投資家の間でも、アセットマネジメントOneが「3期連続でプライム市場下位1/3分位未満かつ過去3期平均ROEが5%未満で3期以上在任の取締役に反対」との基準から「過去3期平均ROEが5%未満」の条件を外すなど、ROE基準を厳格化する動きがみられます。

さらに、三菱UFJアセットマネジメントと三菱UFJ信託銀行は、2027年から「3期連続ROE8%未満かつPBR1倍未満の場合に代表取締役に反対とする予定」であることを公表しました。当初の対象はTOPIX500構成企業ですが、順次拡大予定としています。今後もROE基準厳格化の動きには注意が必要です。

一方、三井住友DSアセットマネジメントは、数値基準に抵触している場合でも「企業価値やROEの向上について資本コストや株価を意識した合理的な経営戦略等を示している」場合には賛成することがあるとしています。これに対し三菱UFJアセットマネジメントと三菱UFJ信託銀行は、「エンゲージメント等の結果、資本コストを意識した経営方針が確認できない場合」に反対するとの記載を追加しています。東証要請に対する開示や取組み等も機関投資家の議決権行使判断に影響を及ぼし得ると言えそうです。

配当基準
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配当議案に関する基準では、三井住友トラスト・アセットマネジメントがROEと配当性向に加えて、PBRをファクターとして追加し、「PBRが1倍未満かつ当期ROEがTOPIX構成銘柄の下位 50%タイル水準未満、かつ配当基準(配当性向が30%以上)を満たさない場合」に、配当議案(総会に付議されない場合は取締役選任議案)に反対するとしました。


%タイル : 「パーセンタイル」と読む。データを小さい順に並べた場合に、例えば小さい方から数えて全体の75%に位置する値を75パーセンタイルという。75パーセンタイルは「第三四分位数」ともいわれる。25パーセンタイルは「第一四分位数」、50パーセンタイルは中央値を指す。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

また、三菱UFJアセットマネジメントと三菱UFJ信託銀行は、「過去3年平均及び直近ROEが5%未満で、内部留保の必要性が低く、総還元性向が30%未満の場合」に配当議案(総会に付議されない場合は代表取締役選任議案)に反対するとの基準におけるROEの閾値を5%から8%に厳格化しています。


総還元性向 : 企業が利益をどの程度株主に還元しているかを示す指標。「総配分性向」「株主還元性向」とも言われる。「(配当金+自社株買いの金額)÷当期純利益」によって計算される。ちなみに、「配当性向」は当期純利益に占める「配当金」のみの割合を示す。自社株買いも株主還元の1つであるため、最近は配当性向とともに、総還元性向を開示する企業が多い。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

政策保有株式基準
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政策保有株式に関する基準としては、三菱UFJアセットマネジメントと三菱UFJ信託銀行が、純資産比で20%以上保有している場合に代表取締役の再任に反対するとの基準を新設しました。また、アセットマネジメントOneは「純資産比50%以上または総資産比20%以上で代表取締役に反対」との基準を「純資産比20%以上(金融セクターは40%以上)で代表取締役に反対」に厳格化しました。

結果として本稿で分析対象としている主要10機関投資家は全て政策保有株式基準を導入したことになり、またその水準もおおむね「純資産比20%」に収れんしたと言える状況にあります。

ジェンダー・ダイバーシティ基準
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三菱UFJアセットマネジメントと三菱UFJ信託銀行は「女性取締役が不在の場合、代表取締役の再任に反対する」との基準を新設しました。これにより、本稿で分析対象としている主要10機関投資家は全てジェンダー・ダイバーシティ基準を導入したことになります。また、 日興アセットマネジメントやブラックロック・ジャパン、三井住友トラスト・アセットマネジメントなどでは本基準の適用対象を拡大する動きもみられます。

さらに、三井住友DSアセットマネジメントは、プライム市場上場企業に対する要求水準を「1名以上」から「10%以上」に引き上げています。今後も政府の目標である「2030年に30%」に向けて、国内機関投資家の基準厳格化が進むものと想定されます。

ESG基準
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ESG課題への取組みを理由に経営トップの選任等に反対する可能性がある旨の基準を導入する機関投資家も増えてきています。具体的なテーマとしてはやはり「気候変動」が多く、今シーズンの改定でアセットマネジメントOneと大和アセットマネジメントが、温室効果ガス排出量の多い企業において取組みが不十分な場合には代表取締役の選任に反対する可能性を示しています。また、三井住友DSアセットマネジメントは「人権」、りそなアセットマネジメントは「人的資本」と「人権」をそれぞれ重要課題として追加しています。

株主提案
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従来、株主提案に対する行使基準は「個別判断」とする旨の記載に留まるものが目に付きましたが、最近は「原則として賛成する議案」などを明示する機関投資家も増えてきています。

今シーズンの改定でも、日興アセットマネジメントは気候変動対応に関する開示を求める議案について、「企業の取組みが提案内容を満たしている場合」と「提案内容の実現により企業の不利益または事業活動の制約になる場合」を除き、原則賛成するとしています。三井住友DSアセットマネジメントは「求める開示内容、範囲、項目等が適切と判断できる場合」に原則賛成する株主提案として、「役員報酬や資本コスト等、ガバナンス強化に資する情報開示に関する株主提案」を追加しました。りそなアセットマネジメントは賛成することもある議案の例示に、役員報酬の個別開示とサステナビリティ課題に関する定款変更を追加しています。

さらに、三菱UFJ信託銀行は株主還元を求める株主提案に対する基準を新設し、財務の健全性や資本効率性の観点から行使判断を行う姿勢を示しています。

その他注目すべき基準変更
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その他注目すべき基準変更としては、①大和アセットマネジメントによる「プライム市場上場企業が任意の指名・報酬委員会を設置していない場合に代表取締役の再任に反対する」旨の規定の新設、②野村アセットマネジメントによる「取締役の任期が2年の場合に会長・社長等の再任に反対する」旨の規定の新設、③同じく野村アセットマネジメントによる「法定または任意の指名委員会が過半数の社外取締役によって構成されていない企業に対して過半数の社外取締役選任を求める」旨の規定の変更が挙げられます。

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株主総会に付議予定の議案について票読み行う場合には、前年の賛成率をベースとして自社の状況やや株主の変動などを加味することが一般的です。ただし、自社の業績やガバナンス体制、株主構成に大きな変化がない場合でも、株主の議決権行使基準の厳格化により、議案の賛成率が低下することがあります。

本稿で分析対象とした主要10機関投資家は、その運用資産額の大きさから多くの日本企業の実質的な大株主となっていることが多いと考えられます。これらの投資家を中心に、自社の大株主の議決権行使基準の改定動向については毎年確認する必要があると言えるでしょう。

2024/04/09 賃金水準が上昇基調にある状況で企業がとるべきアクション(会員限定)

2023年の賃上げはおよそ30年ぶりの高水準だったとされており、政府は「2024年度の賃金上昇率は、2023年度を上回る」と見込んでいる(「令和6年度政府経済見通しの概要」参照)。実際、2024年に入ってから大幅な賃上げを打ち出す企業が相次いでいる。今後の焦点は“継続的な賃上げ”の実現にあるが、現在の状況から判断する限り、日本企業における賃金水準(以下、適宜「処遇水準」という)は上昇フェーズに向かう機運が確実に高まっていると言えるだろう。そこで本稿では、これまで固定的に推移してきた従業員の賃金水準が今後本格的な上昇フェーズに入った場合、企業にはどのような対応が求められるか、整理しておきたい。

1) 一律の賃上げ対応から、生産性・企業価値向上に寄与するポジション等への重点配分へ
一時的な賃上げではなく、将来にわたって継続的に賃金水準の見直しを実施していく場合、全員一律の対応(例:ベースアップ)を継続するのは企業にとってハードルが高い。「無い袖は振れない」ことから、従業員の賃上げは、それが企業の生産性向上、さらには企業価値向上につながることを前提にする必要がある。したがって、賃上げするかどうかの判断にあたっては、自社において生産性向上に寄与するポジションは何か、それらのポジションへの登用をどのように行うべきか、それらのポジションに就いた人材のパフォーマンスをどのようにして最大化し、どのように評価するかといった“生産性視点”での検証が不可欠となる。

米国では、人件費のうち企業の成長につながる投資がどの部分かを明示させるため、人的資本に関する開示ルールの改正が進んでいる。従業員の処遇は、人手不足等に起因した受け身の対応としてではなく、企業の生産性向上・企業価値向上というストーリーの中で対外的に語られるべき非財務情報として位置付けられよう。

2) 自社の処遇水準の競争力の検証
これまでの日本企業における処遇水準は「長らく低迷していた」と総括できるが、多くの企業が処遇水準の引上げに舵を切る中、今後は従来よりも高い精度かつ頻度で自社の処遇水準の競争力を検証する必要が出てくるだろう。企業の開示情報からポジション別・階層別の処遇水準が詳細に得られることは稀であるため、人事コンサルティング会社が実施している報酬調査を活用することが考えられる。

実際、以前はこうした報酬調査に参加するのは主に外資系企業の日本法人だったが、ここ数年で日本企業の参加が増加する傾向にある。また、自社の処遇水準を分析するためには、自社のみならず他社を含む報酬マーケット全体の大量の統計データを分析しなければならないため、外資系企業におけるいわゆる“Comp”(Compensation(報酬)、コンプと呼ばれる)担当のような、報酬データ分析に長けた人員の増強も(内部異動にせよ外部採用にせよ)見越しておく必要があるだろう。

3) 株式報酬の付与対象の拡大
株式報酬も論点となる。これまで日本企業では、株式報酬は「役員報酬」として語られることがほとんどであり、付与対象も基本的に取締役または執行役員以上に限定されてきた。しかし、近年はコーポレートガバナンス・コード(例えば【原則5-2.経営戦略や経営計画の策定・公表】)や人材版伊藤レポート(2020年9月版はこちら、 2022年5月版はこちら)において人的資本投資の重要性が強調され、CGSガイドライン(2022年7月改訂)が「幹部候補人材に対する自社株報酬や持株会の活用」に言及し(48ページ参照)、さらに東証の「投資者の視点を踏まえた『資本コストや株価を意識した経営』のポイントと事例」(2024年2月1日)においても「役員に限らず、マネジメント層や一般社員に対しても、自社株式やストックオプションの付与など、企業価値向上に向けたインセンティブを与えることは、幅広い社員における株主・投資者目線の理解・浸透に繋がり、企業価値向上に向けた経営の促進に有効な手段」と解説されている(17ページ参照)。従業員の処遇を検討する際にはいわゆる「賃上げ」(現金報酬の増額)だけでなく、株式報酬も含めた総報酬での検証が求められていると言え、これまで以上に役員と従業員層を一体的に分析する場面が増えていくと考えられる。

以上をまとめると、日本企業には、従来の「一律」的な賃上げから生産性・企業価値向上に寄与する重要ポジション等への重点的な配分、自社の処遇水準の競争力を念頭により高い精度・高い頻度での処遇水準の分析・検証、現金のみならず株式報酬も含めた総報酬での従業員の処遇の検討、が求められる。各社においては目先の労使交渉における議論だけでなく、今後の日本における報酬マーケットを見据えた人事制度の再検証・ブラッシュアップが必要になろう。