2024/02/29 2024年2月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
責任投資を推進する英国のNGOであるShareActionが世界の大手運用会社69社を対象に調査(英語版)を実施したところ、サステナビリティ関連の株主提案に対する支持率の顕著な低下が見られました(問題文の「上昇」は誤りです)。その背景には、ブラックロック、フィデリティ、ステートストリート、バンガードといった米国の大手運用会社による賛成率の大幅な低下があります。

こちらの記事で再確認!
2024年2月1日 サステナビリティ関連の株主提案への支持率が低下(会員限定)

2024/02/28 【失敗学第116回】エージェントの事例(会員限定)

概要

人材サービス業等を営む株式会社エージェント(東京プロマーケットに上場)で、事業部長がクレジットカードの不正使用を行っていた(会社の損害額は4年で21百万円)。

経緯

エージェントが2023年12月26日に公表した「第三者委員会の調査報告書」等によると、一連の経緯は次のとおり。

2020年
8月:エージェントの従業員Xが人材紹介業を営むキャリアソリューション事業部(当時。現CS事業部)の事業責任者に就任した。Xは着任後まもなく会社のクレジットカードでギフトカードを購入し、それを売却した代金を着服する不正を開始。

2023年
9月:Xによるクレジットカードの不正使用の疑義が発覚した。エージェントでは9月25日より第三者委員会による調査がスタートする。
12月26日:エージェントが「第三者委員会の調査報告書」を公表する。

内容・原因・再発防止策

エージェントが2023年12月26日に公表した「第三者委員会の調査報告書」によると、クレジットカードの不正使用の内容、原因および再発防止策は次のとおりとされている(架空売上計上の問題も指摘されているが、ここでは割愛する)。

クレジットカードの不正使用
内容 エージェントのキャリアソリューション事業部の責任者Xは、求職者向けセミナーを開催していないにもかかわらず開催したことにして、セミナー参加者への謝礼という名目で、法人名義のクレジットカードを使って金券(ギフトカード)を購入し、これを現金化して着服していた。
原因 (財務経理部門の協力者の存在)
エージェントでは、法人名義のクレジットカードを利用する際は、事業責任者が利用報告書を作成・押印して利用の際の領収書等のエビデンスとともに経理に回付し、経理は、カード利用明細とエビデンスの照合、利用報告書からの情報で仕訳計上を行うという内部統制を設けていた。しかし、財務経理部門のYは、例外的にXに対して当該内部統制を適用せず、ノーチェックのままカードの引き落とし金額を販売促進費として会計処理していた。
(監査法人の指摘を放置)
エージェントは監査法人より、「販売促進費の購入稟議が不十分であること」「キャンペーン時にギフトカードを配布する際の受払管理簿がないこと」の問題点を継続的に指摘されていた。しかし、エージェントでは、何度指摘を受けようが当該状況を改善しようとせず、放置し続けていた。
(財務経理担当のマンパワーの不足)
エージェントの財務経理担当者は2名体制であり、不自然な出金があっても目が行き届かなかった。
(相互監視の弛緩)
エージェントでは、従業員ないし役員が各人の人的信頼に過度に依存し相互監視が弛緩していた。
再発防止策 (1)法人名義のクレジットカードの使用、その他社内で購入時の稟議決裁の徹底や受払管理の徹底等当社が支払いを負担する際の手続きを確定しそれを厳格に運用する
(2)従業員のコンプライアンスの意識を高め、手続きを守らなければならないという意識を高める
(3)財務経理担当者の不正な利用を決して許してはいけないという意識を高め、事後のチェックを厳格に行うこと、そのために適切な責任者を配置する
(4)財務経理担当者一人当たりの負担を減らす(確認する人員を増員する)
(5)使用された費用の詳細を複数で検討する仕組みを作る
(6)財務管理部の管理監督を強化する
<この事例から学ぶべきこと>

エージェントの第三者委員会は、調査の結果、財務経理部門のYについて、Xのギフトカードの購入を「不正であると認識していたか、又は、不正の可能性が高いと認識しながら、黙認し、正当な経費であるかのように計上し続けた」と認定しています(第三者委員会の調査報告書の13ページ)。それではなぜ経理財務部のYはXの不正を黙認するようになったのでしょうか。それは、YがXから利得を得ていたからと思われます。Yは、第三者委員会の調査に対して、「Xから誕生日プレゼント(釣り竿(1万円程度)、サーカスショーのチケット(2~3万円程度)、結婚祝い(ディズニーのチケット及びホテル宿泊券)、ディズニーランドのペアチケット(4~5回程度)に加え、2023年の中間決算が終わったタイミングでゲーム機(プレイステーション5)などをもらった」と述べています(第三者委員会の調査報告書の16ページ)。また、YはXから飲食代をおごってもらったり、妻の就職祝い金(30万円)をもらったりしていました。YはXより数々の便宜を図ってもらう中で、Xのことを「怪しい」と思いつつも、黙認という形で不正に加担していったものと思われます。

このように内部牽制をベースとした内部統制は、協力者の存在でいとも簡単に破られてしまいます。上場会社の役員としては、「エージェントが上場しているのは東京プロマーケット(J-SOXが任意であり、エージェントはJ-SOXに基づく内部統制の評価を行っていない)だから、こういった不正が起きた。当社はJ-SOXに基づく内部統制の評価をしっかり行っているから、こういったずさんな不正は起きようがない」と考えるべきではありません。J-SOXに基づく内部統制の評価であっても、結局のところ、チェック者が協力者であった場合に備えた補完的統制まで十分に用意されている訳ではないのが通常であるからです。つまり、東京プロマーケット以外の市場の上場会社であっても、このような不正が起こり得ると考えられます。経営者による内部統制の構築や内部監査・監査役監査にあたっては、「仮にチェック者が不正に協力(黙認)していたとしたら」という不正シナリオも想定して対応を図るべきです。

2024/02/27 【役員会 Good&Bad発言集】カスタマーハラスメント防止に向けた取組み(1)

東京都が全国初のカスタマーハラスメント防止条例の制定を目指している旨の報道を目にした上場会社A社の社外取締役が、取締役会において自社におけるカスハラ対策の現況を尋ねたところ、次の3人が下記の発言を行いました。誰の発言がGood発言でしょうか?

取締役A:「会社としてとくに何か手当てをしているわけではありません。基本的には会社というより個人の資質の問題ではないでしょうか?業務時間外の消費者教育まで会社がフォローするのは困難です。」

取締役B:「カスハラを取り締まる法律はないので、東京都の取組みに注目しています。東京都の条例ができたあとは、取引先をカスハラしないように従業員の教育に力を入れる必要がありますね。」

取締役C:「カスハラは当社の役職員が「する」だけではなく「される」ことも想定すべきですし、むしろ「される」ことへの対応の方が重要です。会社が取り組むべきは「されない」ための仕組みづくりや「された」場合の従業員の心のケアではないでしょうか。」

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2024/02/27 【役員会 Good&Bad発言集】カスタマーハラスメント防止に向けた取組み(2)(会員限定)

<解説>
パワハラ指針にカスハラの記載あり

2019年6月5日に女性の職業生活における活躍の推進等に関する法律等の一部を改正する法律が公布され、労働施策総合推進法に「職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題の解決の促進」(ハラスメント対策)が国の施策として明記されました。そして、2020年6月1日より「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号。以下、パワハラ指針)が適用され、事業主としては職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが義務となりました。

このパワハラ指針の7には、「事業主が他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組の内容」として、下記の記載があります。このうち赤字部分がカスハラを指しています。

パワハラ指針の7
7 事業主は、取引先等の他の事業主が雇用する労働者又は他の事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為(暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等)により、その雇用する労働者が就業環境を害されることのないよう、雇用管理上の配慮として、例えば、(1)及び(2)の取組を行うことが望ましい。また、(3)のような取組を行うことも、その雇用する労働者が被害を受けることを防止する上で有効と考えられる。
(1) 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
事業主は、他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関する労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、4(2)イ及びロの例も参考にしつつ、次の取組を行うことが望ましい。
また、併せて、労働者が当該相談をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発することが望ましい。
イ 相談先(上司、職場内の担当者等)をあらかじめ定め、これを労働者に周知すること。
ロ イの相談を受けた者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
(2) 被害者への配慮のための取組
事業主は、相談者から事実関係を確認し、他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為が認められた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための取組を行うことが望ましい。
(被害者への配慮のための取組例)
事案の内容や状況に応じ、被害者のメンタルヘルス不調への相談対応、著しい迷惑行為を行った者に対する対応が必要な場合に一人で対応させない等の取組を行うこと。
(3) 他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為による被害を防止するための取組
(1)及び(2)の取組のほか、他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為からその雇用する労働者が被害を受けることを防止する上では、事業主が、こうした行為への対応に関するマニュアルの作成や研修の実施等の取組を行うことも有効と考えられる。
また、業種・業態等によりその被害の実態や必要な対応も異なると考えられることから、業種・業態等における被害の実態や業務の特性等を踏まえて、それぞれの状況に応じた必要な取組を進めることも、被害の防止に当たっては効果的と考えられる。

「パワハラ指針」という略称に引っ張られて、「パワハラ指針には「パワハラ」のことしか記載されていない」と思い込みがちですが、パワハラ指針にカスハラの記述があることは知っておきましょう。もっともパワハラ指針の4において「事業主は、当該事業主が雇用する労働者又は当該事業主(略)が行う職場におけるパワーハラスメントを防止するため、雇用管理上次の措置を講じなければならない。」とあることと対比すると、カスハラ対策は(1)と(2)が「望ましい」で(3)が「有効」と“トーンダウン”しているので、取組みが未了の会社もまだまだ多いのが現状と言えます。

カスハラはパワハラとは異なる難しさも

そのような中、東京都が「全国初」のカスタマーハラスメント防止条例の制定を目指している旨の報道がありました。確かに「正面からカスハラを禁止するというルールは日本で初めて」(東京都が設置したカスタマーハラスメント防止対策に関する検討部会(第3回)の議事録12ページの原委員の発言)であることは事実ですが、そもそもカスハラが刑法の「強要罪」「脅迫罪」「恐喝罪」「暴行罪」等に該当する行為であれば刑事事件になり得ますし、実際に刑事事件となった例もあります。東京都が制定に向けて取り組んでいる条例は、カスハラを「正面から禁止」という意味で「全国初」の「条例」ではあるものの、現行刑法でもカスハラは刑事罰の対象になりうる点には留意が必要です。

東京都の条例には刑事罰が設けられない可能性が高いと言われていますが、東京都の取組みが報道されることで、カスハラについての理解が進み、上場会社等においてカスハラ防止に向けての取組みが加速することは十分に期待して良いでしょう。もっとも、カスハラを受ける場合、パワハラと違って、加害者が顧客などの第三者であることから、パワハラ時のように加害者を指導・懲戒等することができません。また、カスハラ対策に過敏になりすぎると顧客が離反する可能性もゼロではありません。カスハラ防止にはそういったパワハラとは違った難しさがあると言えるでしょう。

カスハラ防止に向けての取組みにあたって参考にしたいのが、厚生労働省が作成した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」です。これには「カスハラ対策の必要性」から「企業が具体的に取り組むべきカスハラ対策」まで記載されており、上場会社等が具体的な取組みを進めるにあたって必ず参考になるはずです。

さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役C:「カスハラは当社の役職員が「する」だけではなく「される」ことも想定すべきですし、むしろ「される」ことへの対応の方が重要です。会社が取り組むべきは「されない」ための仕組みづくりや「された」場合の従業員の心のケアではないでしょうか。」
コメント:取締役Cは、カスハラをめぐる論点の整理ができたうえで、重点の置きどころや会社が取り組むべき事項を指摘しています。取締役Cの発言は芯をとらえたGOOD発言です。

BAD発言はこちら

取締役A:「会社としてとくに何か手当てをしているわけではありません。基本的には会社というより個人の資質の問題ではないでしょうか?業務時間外の消費者教育まで会社がフォローするのは困難です。」
コメント:どうやら取締役Aは自社の役職員がプライベートでBtoC企業に対してカスハラをするケースしか念頭に置いていないようで、うまく議論がかみ合っていません。自社の役職員が業務において下請先等にカスハラをする可能性や自社の役職員が業務において顧客からカスハラを受ける可能性に思慮が及んでいないために焦点がずれてしまったBAD発言です。

取締役B:「カスハラを取り締まる法律はないので、東京都の取組みに注目しています。東京都の条例ができたあとは、取引先をカスハラしないように従業員の教育に力を入れる必要がありますね。」
コメント:取締役Bは自社の役職員が業務に携わる中で下請先などの取引先に対してカスハラをするケースを想定している点で取締役Aよりは“まし”ですが、自社の役職員がカスハラをされるケースに備えるという視点に欠けています。また、カスハラが刑法の「強要罪」「脅迫罪」「恐喝罪」「暴行罪」等に該当する行為であれば刑事事件になり得ることから、東京都の条例ができるまで待つ必要はなく、今すぐにでも従業員の教育に力を入れて欲しいところです。