ESG経営やサステナブル経営と業績・株価の相関関係の分析や研究が進んでいるが、まだ“定説”と言えるものはないのが現状だ。ESG経営やサステナブル経営は将来の不確実性を軽減するという点で投資家にとってはリスク低減につながるという指摘や、ESG経営を実践している企業は企業価値が高く、資本コストが低いといったポジティブな評価が多くある一方で、ESG要素と投資パフォーマンスには相関関係がない、あるいはネガティブスクリーニング(ESGの観点から見て何らかの問題がある企業への投資を避ける手法)を行ったESG投資はむしろパフォーマンスが低いとった指摘も一部にはある。
こうした中、食品、洗剤、トイレタリーなど一般消費財を製造・販売するグローバル企業である英国のユニリーバの大株主として知られる投資家のテリー・スミス氏が、「同社の経営陣がサステナブル経営に注力しすぎており、企業経営の基本である利益追求を軽視している」との批判の声を上げたことが話題を呼んでいる。テリー・スミス氏は批判の理由として、①ユニリーバが子会社のアイスクリーム・ブランド(Ben & Jerry)がパレスチナ問題に対してイスラエルに批判的な立場を表明したこと、②英国の伝統的なマヨネーズブランドについて、食品ロス問題の克服をブランド目的の中心に掲げたことが、ブランドイメージに合わないとの指摘を受けていること、③ユニリーバの株価が昨年(2021年)後半から同業他社に比べて低迷していること、を挙げている。
資本コスト : 資本コストとは「資金提供者(債権者+株主)に対するリターン」を指す(なお、株主に対するリターンには、配当のほかキャピタルゲインも含まれる)。資金提供者に対するリターンが適切にできなければ、債権者は会社に資金の返還を求め、株主は株式を売却(=株価が下落する)せざるを得ない。したがって、会社にとって資本コストは「資金提供者に対するリターンの目標値」と言える。
ESG投資 : 「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」に優れた企業に投資すること。
これに対し、同社の他の株主やESGの専門家は、サステナビリティへの配慮は企業価値を高めるものであり、同社の株価低迷の要因ではないと反論している。
本件について当フォーラムが取材した機関投資家は、「サステナブル経営は決して株価や業績の低迷を許容するものではない」と語る。結局、投資家にとっての「サステナブル経営」とは、企業は最終的には投資家に対して利益をもたらす責任があるという大前提の下、その利益を上げるために、ESGやSDGsなどを考慮しなければ長期的に見て企業活動を継続することが困難となることがあるために必要となるもの、と整理することができる。
一口に「長期投資家」と言っても、5年、10年、あるいは年金基金のように基本的にずっと株式を保有し続けるところもあり、それによってサステナブル経営に対する意見も違ってくると考えられるが、いずれの投資家も、サステナブルな経営とともに、業績を上げていくことを企業に求めているということに変わりはない。ユニリーバの大株主による批判は、それを裏付けるものと言えそうだ。
