正解です。
東京証券取引所が2021年4月30日に公表した「市場区分の見直しに向けた上場制度の整備に伴う有価証券上場規程等の一部改正について(第二次制度改正事項)」によると、2022年4月4日から問題文のとおり流通株式の定義の変更が行われることとなりました(問題文は正しいです)。
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2021年5月13日 流通株式時価総額基準クリアへ「意思表明」のリリース相次ぐ可能性も(会員限定)
正解です。
東京証券取引所が2021年4月30日に公表した「市場区分の見直しに向けた上場制度の整備に伴う有価証券上場規程等の一部改正について(第二次制度改正事項)」によると、2022年4月4日から問題文のとおり流通株式の定義の変更が行われることとなりました(問題文は正しいです)。
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2021年5月13日 流通株式時価総額基準クリアへ「意思表明」のリリース相次ぐ可能性も(会員限定)
不正解です。
2021年4月7日に東京証券取引所が公表したコーポレートガバナンス・コードの改訂案の補充原則4-11①によると、「取締役会は・・・各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したいわゆるスキル・マトリックスをはじめ、経営環境や事業特性等に応じた適切な形で取締役の有するスキル等の組み合わせを取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。」とされています。問題文の「スキルをマトリックス(表)形式で開示しなければコンプライしたことにならない」は誤りです)。
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2021年5月10日 表を用いない「取締役の有するスキル等の組み合わせ」の開示(会員限定)
正解です。
2021年4月7日に東京証券取引所が公表したコーポレートガバナンス・コードの改訂案の補充原則4-11①によると、「取締役会は・・・各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したいわゆるスキル・マトリックスをはじめ、経営環境や事業特性等に応じた適切な形で取締役の有するスキル等の組み合わせを取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。」とされています。問題文の「スキルをマトリックス(表)形式で開示しなければコンプライしたことにならない」は誤りです)。
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2021年5月10日 表を用いない「取締役の有するスキル等の組み合わせ」の開示(会員限定)
東北新社(JASDAQ)で、菅首相(当時は内閣官房長官)の長男を含む役職員が総務省職員との間で国家公務員倫理規程違反となる会食をしていた疑惑が「文春オンライン」および「週刊文春」の報道で明らかになった。また、同社は放送法の外資規制に抵触していたにもかかわらず、放送法上の認定を受けていたことも発覚した。
放送法の外資規制 : 外資が20%以上の議決権を有している会社には放送法に基づく認定ができないという規制。
東北新社が2021年5月24日に公表した「特別調査委員会の調査報告書」(以下、本調査報告書)等によると、一連の経緯は次のとおり。
2015年から2020年
2015年11月6日に特別調査委員会の調査対象となった会食の第1回目が開催。これ以降、2020年12月14日までの間に合計54件の会食が行われた。会食の費用はいずれも東北新社が負担していた。
2016年
10月17日:東北新社がBS ザ・シネマ4K(左旋)を申請する。しかし、その直前となる2016年9月末時点で同社は外資比率が20.75%に達しており、放送法の外資規制に抵触するため、本来は申請できないはずであった。
左旋 : らせん状に回転する電波が進行方向左回りのもの。右回りを「右旋」と言う。
2017年
1月24日:東北新社は、BS ザ・シネマ4K(左旋)の認定を受けた。総務省は認定にあたり東北新社が外資規制に抵触していたことを見逃しており、違法状態で認可していたことになる。
7月28日:東北新社は、取締役会において、グループ内のスカパー・エンターテイメント社、スーパーネットワーク社およびファミリー劇場社から、CS放送に係る事業を簡易吸収分割により承継する方針を固めた。
8月9日頃:東北新社の木田前執行役員が総務省情報流通行政局総務課長(当時。以下「情流局総務課長」という。)に対し、東北新社が外資規制への抵触につき報告したところ、総務省は「東北新社は認定を持つことができない」とのことであったため、承継先を変更する必要が生じた(これについて、情流局総務課長は、2021年3月16日の衆議院予算委員会において、そのような報告を受けたという事実の記憶は全くない旨の答弁を行っている)。
8月16日:東北新社は簡易吸収分割によるCS放送に係る事業の承継を中止する旨のリリースを行った。
8月18日:東北新社の木田前執行役員および三上前取締役において、総務省担当者に対し、外資規制への抵触を前提とした承継について報告・相談を行った。
8月28日:東北新社の木田前執行役員および岡本元取締役は、総務省担当者と会食を行った。その際にプロ野球の話で盛り上がったため、後日、東北新社はシート契約している東京ドームのチケットを総務省担当者に交付した。
9月1日:東北新社は100%子会社の東北新社メディアサービスを設立した。
10月14日:東北新社は東北新社メディアサービスにBS ザ・シネマ4K(左旋)の認定を承継させるとともに、グループ内のスカパー・エンターテイメント社、スーパーネットワーク社およびファミリー劇場社よりCS放送に係る事業を東北新社メディアサービスに承継させた。
2021年
2月3日:文春オンラインが菅首相の長男を含む東北新社の役職員が総務省職員との間で国家公務員倫理規程違反となる会食をしていたことを報道。
2月12日:東北新社は特別調査委員会を設置。
2月26日:特別調査委員会が中間報告書を東北新社に提出。
3月15日・16日:参議院予算委員会および衆議院予算委員会で東北新社中島社長が、2017年8月9日頃に、木田前執行役員が総務省情流局総務課長に対し、東北新社が外資規制に抵触するおそれがあることを報告した旨答弁を行った(情流局総務課長は当該報告を受けた記憶はないと答弁)。
3月17日:総務省は東北新社およびNTTによる一連の接待が行政にどのような影響を与えたのかを調査するため、第1回情報通信行政検証委員会を開催(2021年5月28日現在、第2回以降の委員会は開催されていない)。
3月26日:総務省は外資規制抵触を理由に東北新社メディアサービスが保有する衛星基幹放送業務の認定(ザ・シネマ4K)を2021年5月1日付けで取消すことを発表。
4月30日:東北新社メディアサービスはBS ザ・シネマ4K(左旋)の放送を終了。
5月1日:東北新社メディアサービスはBS ザ・シネマ4K(左旋)の認定を取り消された。
5月20日:本調査報告書の内容が毎日新聞で報道される(*)。報道を受け、東北新社は「本日の毎日新聞朝刊において、当社の総務省幹部に対する接待問題に関する記事が掲載されましたが、これは当社が発表したものではございません。なお、本日開催されました臨時取締役会において、当社が本件の事実関係の解明および東北新社グループのガバナンス強化に取り組むために設置した「特別調査委員会」からの調査報告書を、5月24日に受領することが報告されましたので、受領次第当日夕刻以降速やかに開示する予定です。」とのリリースを公表。
5月24日:特別調査委員会が本調査報告書を東北新社に提出。
東北新社が2021年5月24日に公表した「特別調査委員会の調査報告書」によると、特別調査委員会の調査結果で判明した事実ならびに原因および当該不正を受けて策定した改善策は次のとおりとされている。
| 問題の所在と調査結果 | (問題の所在) 衛星放送事業(放送法に基づく国の免許事業)を営む東北新社の役職員が、同事業を管轄する総務省の担当部局の公務員への接待を繰り返していた。東北新社の役職員には菅首相の長男も含まれていた。当該接待が国家公務員倫理規程に反するものではないか、また国家公務員に何らかの働きかけを行ったのではないかが問題になった。 (調査結果) ■会食の目的 ・本件各会食の大半は、木田前執行役員が設定したものである。木田前執行役員は、総務省職員との間で日々の業務上の接点を持つことに加えて会食を行うことで、相談等を気軽に行いやすくする関係構築ができるだけでなく、衛星放送業界に関する総務省の考え方を的確に把握してそれに沿った事業展開が可能となり、また事業者としてのニーズを総務省に伝達するルート作りができると考えていた。関係性を継続することで、東北新社グループが衛星放送の業界において主導的な役割を担っていることを理解してもらうという意図もあった。 ・故植村元社長は、木田前執行役員が総務省職員と会食を含む懇親の機会を持ち、情報交換等を行うことを肯定的に捉え、これを慫慂していた面がある。二宮前社長は、少なくとも総務省職員との会食についての故植村元社長の姿勢を明確に否定する対応は取っていなかった。 ・三上前取締役は、木田前執行役員の総務省担当としての役割を承継しようと自らも会食を設定していた。 ・菅前統括部長は、木田前執行役員または三上前取締役の指示を受けて会食に出席していたが、自身は、認定等の申請手続に関する業務を担当しておらず、また、自ら積極的に会食を設定することはなかった。 ・実際に会食の場または会食前後のメールのやり取りで不当な働きかけが行われた例は確認できなかった。しかし、東北新社が、単なる情報交換を超えて、あわよくば昼間の打合せ等では得ることのできない情報等を取得することまでをも目的としていたとの疑念を持たれる可能性があったことは否定できない。 ・木田前執行役員または三上前取締役が、菅前統括部長に対して総務省職員との会食に同席するように求めた理由は、同氏のコミュニケーション能力や総務省での職務経験等を踏まえ、会食時の会話が盛り上がり懇親の意義が高まると考えたためで、それを超えて、東北新社と前官房長官とのつながりがあるかのように示唆して何らかの働きかけをする意図があったものではない。 ■東北新社による総務省への不当な働きかけの有無 ・本件各会食において、少なくとも免許の更新、認定、承継手続きに関しては話題に上がったと考えるのが自然であり、東北新社が、会食の際に昼間の打合せ等では得ることのできない情報等を取得できるのではないかと期待していたとの疑念を持たれる可能性があったと言わざるを得ず、コンプライアンス上重大な問題があるものと考えられる。 ・実際の認定等の申請手続の経過においては、東北新社が、東北新社グループの衛星基幹放送の業務の認定等の申請手続に関して不当な働きかけを行ったことをうかがわせる事情は認められない。 |
| 原因 | (国家公務員倫理法令に関する研修の不足) 東北新社では、公務員との関係を定める規程等は存在せず、国家公務員倫理法令に関する研修等が行われたこともなかった。 (経営トップの問題意識の欠如) 経営トップにおいて、少なくとも国家公務員倫理法規程違反に関与することを避けるべきとの基本的な法令遵守の明確な意識が欠如していた。 (会食の慣行化と経営トップによる慫慂) 本件各会食に出席したメディア事業部所属の役職員は、明確な法令違反という意識まではなかったものの、コンプライアンス上望ましくない行為であるという認識は多かれ少なかれ有していた。にもかかわらず、結果的に本件各会食が行われたのは、慣行的に行われてきたもので、第三者や総務省職員が誘いに応じた場合は特に問題なく、自らは法令違反にあたらないものと理解していた。経営トップも、総務省職員との会食を止めようとはせず、故植村元社長に至ってはむしろこれを慫慂していた。 (メディア事業部の閉鎖性) 総務省職員との信頼関係の構築は、個人に委ねるのではなく、メディア事業部全体としてその役割を担うべきであったが、本件では木田前執行役員ほぼ1人がその役割を担当し、ある意味で聖域化してしまい、是正の契機を失った。 (不十分な監査) 東北新社の監査等委員である社外取締役3名は、いずれも長年にわたる放送メディア業界の経験者であり、他の業種での経験を有する社外者は含まれていない。このため、少なくともメディア事業部の活動に対して異なる業種等の視点による監査の契機が乏しく、結果として、本件各会食の防止に至らなかった可能性がある。 また、内部監査室による内部監査は、飲食費の多寡に着目した監査は行っていたものの、国家公務員倫理法令に留意しなければならないという点を意識した内部監査は行っていなかった。 (内部通報制度が利用されなかったこと) 本件各会食について、当該窓口に通報がなされたことはなかった。本件各会食についてこれまで通報がなされなかったのは、東北新社の役職員において、国家公務員倫理法令についての意識が希薄または欠如していたことが大きな理由であると考えられるが、内部通報制度が十分に周知されていなかった可能性も否定できない。 (カリスマ性の強い経営トップの存在) 東北新社においては、経営トップであった故植村元社長の意向を重視する社内の雰囲気が醸成されていたことがうかがわれた。このことが背景・遠因となって、会社全体として国家公務員倫理法令についての明確な問題意識を持つ機会を失った可能性がある。 また、故植村会長が先鞭をつけて拡大していった様々な事業は、事業の拡大等を経て各セグメントで縦割り化し、セクショナリズムが生じていったものと考えられる。 経営トップの意向を重視する社内の雰囲気の下、取締役会や監査等委員会は十分な機能を果たせず、組織内・セグメント間での相互牽制機能も働かない状況に陥り、会社全体として明確な問題意識を持つ機会を失った可能性がある。 |
| 再発防止策 | 1 トップコミットメント 経営トップは、東北新社が上場企業であり、すべての株主を含むステークホルダーのため持続的成長と企業価値を向上させることを宣言し、コンプライアンス確保のため十分な体制を構築することを約束するべきである。そして、国家公務員倫理法令との関係では、公務員との会食は原則禁止するというルールを明確に打ち出すべきである。 2 コンプライアンス関係に造詣の深い社外取締役の選任、特別の諮問機関設置 放送業界ではなく他業界の経験、特にコンプライアンス関係に造詣の深い社外取締役を少なくとも1名以上選任し、監督・監査体制を強化すべきである。 また、新たな体制が軌道に乗るまでの一定期間、取締役会の諮問機関として、外部の有識者(顧問弁護士等の専門家)を含む特別の機関を設置し、経営陣を監視することが必要である。 3 コンプライアンス体制の構築 (1)コンプライアンス担当部署の設置(放送法関係) メディア事業部の閉鎖性を打破するために、まずはメディア事業部にコンプライアンス担当を設置し、第1線としてのチェック機能を持たせる。これに加え、メディア事業部から独立した部署として、コンプライアンス担当部署(以下「独立コンプラ部署」という。)を設置し、第2線としての機能を持たせる必要がある。独立コンプラ部署は、部内コンプラ担当と緊密に連携をとり、その活動を補完するほか、国家公務員倫理法令に関する社内研修、内部通報制度の幅広い周知等、東北新社役職員全体の規範意識の醸成を図ることが期待される。 (2)経理部門による国家公務員倫理法令の遵守に関する内部統制 経理部門は、部内コンプラ担当におけるチェックと併せ、メディア事業部の役職員が総務省職員の出席する会食に出席し、その費用を支出する場合、総務省職員の費用を負担することとなっていないか、別途の立場から十分に注意し確認を行うことが不可欠である。 また、必要に応じて、独立コンプラ部署と連携をとり、第2線としてのチェック機能を発揮することが期待される。 (3)実効的な内部監査(国家公務員倫理法令関係) 内部監査部門が、本件の教訓を活かして実効的な内部監査を行い、第3線としての役割を発揮する。 具体的には、メディア事業部の会食に関する支出については、経理部門に任せることなく、毎事業年度重点的に監査を行うべきである。 また、認定等の申請手続については、当該申請の経緯等に不自然な点がないか、当該事業年度または翌事業年度に重点的に監査を行うべきである。 そして、本件の大きな原因が経営トップの問題意識の欠如にあったことを踏まえ、内部監査部門のレポートラインについて、代表取締役社長だけでなく、取締役会への報告も実施すべきである。 (4)内部通報制度の周知等 内部通報制度は、内部統制における最後の砦であり、通報者が安心・信頼して通報制度を利用できることが不可欠である。 本件各会食について、「企業倫理相談窓口」および「監査等委員会通報制度」に通報がなされたことがなかったことを踏まえ、まずは独立コンプラ部署において、内部通報制度の幅広い周知を図る必要がある。また、現在設けられている外部の第三者機関窓口は主としてハラスメント関連の窓口として認識されていることを踏まえ、新たに外部の弁護士を窓口とする通報先を設置する必要がある。 (5)社内規程の整備 公務員との会食を原則として禁止するとしても、東北新社グループにおいて衛星放送事業を行っていくにあたり、総務省職員との接点は不可避的に生じる。そして、総務省職員との間の信頼関係構築は、東北新社の衛星放送事業の維持・拡大の観点からも必要であるといえる。 そこで、少なくとも以下の内容を含む規程を整備する必要がある。 〇 総務省職員が出席する会食(業界団体のパーティを含む)に出席する必要がある場合、 ・総務省職員の出席費を東北新社が負担しないこと ・事前に出席者や会費を明確にした上で、メディア事業部の担当役員以外の取締役の承認を受けること ・上記承認を受けた支出について、定期的に監査等委員会に報告すること |
| 問題の所在と調査結果 | (問題の所在) 2016年10月17日に東北新社がBS ザ・シネマ4K(左旋)を申請したが、その直前となる2016年9月末時点で同社は外資比率が20.75%に達しており、放送法の外資規制に抵触するため、本来は申請できないはずであった。 (調査結果) ・申請手続を行った担当者は、放送法の要件を正確に理解していなかったため、正確な確認を行わないまま、申請書の「欠格事由の有無」欄の「無」にチェックを記して申請書を提出した。 ・申請手続は、メディア事業部の担当者のみが関与し、複数人でチェックする体制とはなっておらず、担当者1名に任せる実務となっていた。 |
| 原因 | (放送法の外資規制の要件への理解不足) 申請手続を担当したメディア事業部の T1氏は、 外資規制の要件を正確に理解しておらず、放送法 93 条1項7号ニの要件について、外国の法人または団体である1株主が議決権割合の5分の1以上を占めていなければよいと誤解しており、議決権を有する同号イからハまでに掲げる者が複数存在する場合にその議決権数を合計する必要があるとは考えていなかった。このため、T1氏の確認は、申請書添付の事業計画書の別紙の「主たる出資者及び 議決権の数」の記載を一覧し、「備考」欄に「外国法人」と記載された株主について、議決権割合の5分の1以上を占めていないことを確認するほか、当該時点までに提出されている大量保有報告書において議決権割合の5分の1以上を占めている株主がいないことを確認する限度で行われた。この確認を経て、T1氏は、申請書の「欠格事由の有無」欄の「無」にチェックを記し、申請書を提出した。 申請当時、T1氏のほかに、欠格事由該当性についてチェックをした者はおらず、複数人でチェックする体制にもなっていなかった。また、他の部署が関与する体制にもなっていなかった。 衛星放送事業を行うにあたっては、放送法に基づき認定を受ける必要がある。放送法をはじめとする関連法令は、外資規制を含め、法令の条文を正確に辿り、文言を正確に読み解き理解する必要があり、これは容易なものではない。一方、欠格事由に該当すれば、認定を受けることができなかったり、一旦認定を受けることができたとしてもこれを取り消されるという重大な結果を招来することになる。経営トップは、このようなリスクを正確に理解し、衛星放送事業を行うことが求められる。しかし、東北新社では、放送法をはじめとする関連法令について、研修が行われたことがない上、組織的に対応する体制が構築されていなかった。これは、経営トップの問題意識が欠如していたものというほかない。 (メディア事業部の閉鎖性) 放送法上の外資規制に抵触していたことを見逃していた件は、メディア事業部の閉鎖性が大きな原因となったと考えられる。すなわち、総務部は、株主総会実務、コーポレート・ガバナンス報告書作成等にあたり、株主名簿管理人である信託銀行から議決権所有割合を含む情報を取得していた。このため、申請手続において、メディア事業部だけでなく総務部が関与していれば、外資規制への抵触を事前に察知できた可能性は否定できない。 (経営トップの意向を重視する社内の雰囲気) 経営トップの意向を重視する社内の雰囲気が背景・遠因となって、放送法をはじめとする関連法令についての明確な問題意識を持つ機会を失った可能性がある点も、国家公務員倫理法令の原因分析で述べたところが同様に妥当する。 |
| 再発防止策 | 上記の「国家公務員接待問題」に記載した再発防止策以外に下記の再発防止策の実施が必要。 コンプライアンス体制の構築 (1)コンプライアンス担当部署の設置(放送法関係) メディア事業部の閉鎖性を打破するために、コンプライアンス担当部署を設置する必要がある。 (2)総務部による放送法等の関係法令の遵守に関する内部統制 総務部は、部内コンプラ担当におけるチェックに不備がないかのダブルチェックと共に、認定等に係る申請の経緯等に不自然な点がないかについても独自の立場からダブルチェックすることが不可欠である。 また、必要に応じて、独立コンプラ部署と連携をとり、第2線としてのチェック機能を発揮することが期待される。 (3)実効的な内部監査(放送法関係) 内部監査部門が、本件の教訓を活かして実効的な内部監査を行い、第3線としての役割を発揮することが、今後の再発防止には不可欠である。 (4)社内規程の整備 放送法をはじめとする関連法令は、外資規制を含め、正確に理解することが容易ではない。 そこで、申請手続に関連する法令について、その遵守の重要性を説明するとともに、担当者が分かりやすく理解できるように解説したマニュアルを整備することが必要である。 |
東北新社では業法を順守する体制が十分でなかったことが今回の問題を招いたと言えます。世間的には菅首相の長男が接待をしていた点や放送行政に歪みが生じたのか否かという点に注目が集まっていますが、本稿では調査主体に焦点を当ててみたいと思います。
企業不祥事の際に第三者委員会による調査が行われるケースが増えてきましたが、まだまだ第三者委員会を設置せずに社内調査委員会による調査で終えているケースの方が多いのが現状です。その理由としては、第三者のみで調査委員会を構成すると、①委員の中に社内事情を理解している者がいないために当該事情を理解する手間が増える、②第三者を委員に招請するにはコストがかかるため軽微な不祥事の調査では費用対効果に欠けるといった理由が挙げられます。企業側の本音としては、第三者委員会にしてしまうと調査が思いもよらない方向に進むリスクがあることから、社内調査委員会にとどめて調査の方向性をグリップしておきたい(社内調査委員会の調査結果を“無罪放免”のための免罪符にしたい)という意図もあるかもしれません。しかし、結論ありきの調査では、調査結果について信頼を得ることは困難ですし、委員は調査対象者の責任回避に加担したと非難される可能性もあります。実際に、社内調査委員会の調査結果が、後日、第三者委員会の調査により否定されることもあります。また、当初は“軽微”な問題であると判断して社内調査委員会を設置して調査にあたったものの、“軽微ではない”との判断に傾いたり、世論や証券取引所等ステークホルダーの声に押されたりして、社内調査委員会による調査では信頼性に欠けるとの判断から第三者委員会を設置し、第三者委員会に調査を引き継ぐケースもあります。
それでは「第三者委員会」による調査であれば信頼性は必ず確保されるのかと言うとそうとも言えないのが現実です。第三者委員会報告書格付け委員会などの事後的な検証により「第三者委員会としての適格性に欠けていた」と評価されることもしばしばです(たとえば、第三者委員会報告書格付け委員会は東芝の粉飾決算に係る第三者委員会について「第三者委員会の委員に、グループ会社との顧問契約を第三者委員会発足の直前まで締結していた弁護士がいたり、公認会計士の一人が東芝と取引関係のあった監査法人に2014年まで在籍していたなど、独立性に疑問がある」と指摘しています)。
「第三者委員会」による調査を実施するほどではないものの、社内の人材だけで調査委員会を構成したのでは調査内容の信頼性を外部に説明しづらい場合は、社内調査委員会をベースにしつつ、一部に外部の人材を据えるという委員構成にすることも少なくありません。例えば、委員長だけ外部の人材(たとえば利害関係のない弁護士)を据え置き、残りの委員は社内の人材であったり、社内人材の委員の数が外部人材の委員の数を上回っていたりするようなケースがよく見受けられます。なお、社外役員については日本弁護士連合会の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」でも「直ちに「利害関係を有する者」に該当するものではなく、ケース・バイ・ケースで判断されることになろう」と述べているように、利害関係性の判断が難しいところがある点には留意が必要です。こういった調査委員会は日本弁護士連合会「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」が定める第三者委員会の定義(企業等と利害関係を有する者は、委員に就任することができない)を充たさないことから、第三者委員会を名乗ることはありませんが、単なる社内調査委員会ではないということを強調するために「特別調査委員会」と名乗ることも少なくありません。いずれにせよ、社内人材を委員にする場合、調査対象に含まれる者を委員に選任してはなりません。調査委員会の調査の正当性が疑問視されるからです。
さて、今回の東北新社の調査報告書の調査主体は第三者委員会ではなく、まさに「特別調査委員会」でした。3名の委員のうち外部の第三者は委員長に就任した弁護士だけで、1名は副社長、もう1名は内部監査室長が就任しています。この点について本調査報告書は冒頭4ページにおいて「第三者委員会でないことについて」というタイトルを設けて、「当委員会は、本事案の報道等を受けて東北新社に設置された特別調査委員会であり、その委員長は東北新社及びその関係会社と利害関係を有しない弁護士であるものの、東北新社から独立した委員のみをもって構成された第三者委員会ではない。」と記載しています(本調査報告書の4ページ参照)。しかし、いくら第三者委員会ではないとしても、社内人材の委員の人選は慎重に行うべきでした。なぜなら、特別調査委員会の委員である副社長は今回の不祥事により減俸の対象になっており、もう1名の委員である内部監査室長も調査報告書では「国家公務員倫理法令に留意しなければならないという点を意識した内部監査は行われていなかった」として「不十分」(本調査報告書67ページ)とされているからです。それにもかかわらず、「当委員会は、本調査が、東北新社のステークホルダーのために中立・公正で客観的に実施され、その結果が本調査報告書に記載されていると考える。その意味で、本調査は、日本弁護士連合会「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」(2010年12月17日改訂)の趣旨に沿ったものであると考える。」と結論付けています(本調査報告書の5ページ)。しかし、本件に関して社長が参考人として国会に招致されており、いわば会社の非常事態であったことに加え、社会的な関心も高かったことを考慮すると、第三者委員会による調査とすべきであったように思われます。しかし、実際は第三者委員会ではない調査主体となりました。それにもかかわらず、「趣旨に沿ったもの」という言いまわしで同ガイドラインを持ち出すのは誤解を招く可能性があります。
また、「企業不祥事における第三者委員会ガイドライン」では調査報告書の事前非開示(第三者委員会は、調査報告書提出前に、その全部又は一部を企業等に開示しない)が定められていますが、毎日新聞が2021年5月20日に「総務省幹部に対する接待問題で、放送事業会社「東北新社」が設置した特別調査委員会が、同省の内部調査で公表されていない会食を複数確認したことが、同社関係者への取材で判明した」と報道している通り、東北新社の特別調査委員会の調査内容の一部が事前に「同社関係者」に漏れていました。事前非開示の趣旨は、調査委員会がドラフト企業に事前開示してしまうと、「問題があった」とする調査結果を「問題はなかった」に修正するよう委員が圧力をかけられるおそれがあるからです。一方、社内調査委員会の場合は、社内調査委員会が執行側に調査報告書ドラフトを事前開示して協議しながら着地点を探るケースもあるようです。本調査報告書では5ページ下の注書きで「なお、本調査報告書の開示前に本調査の内容の一部に関する報道がなされたことは遺憾であるが、これにより本調査の結果に影響が生じたことはない。」と記載されていますが、その経緯や責任の所在までは明らかにされていません。それでもなお本調査が第三者委員会ガイドラインの「趣旨に沿ったもの」と考えられる点についての十分な説明が欲しいところです。
ちなみに東北新社と同様、総務省接待問題を週刊文春に指摘されたNTTでは、同社の社外取締役を委員長とする特別調査委員会が調査にあたっています(NTTのリリースはこちら)。特別調査委員会は4名で構成されており、委員長以外の委員は社外取締役1名、外部の弁護士2名となっています。NTTが第三者委員会を設置しないでも十分であると判断した理由をどのように説明するのか、注目されるところです。
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周知のとおり、改訂コーポレートガバナンス・コードでは、プライム市場上場会社に対し、気候変動が自社の事業活動などに与える影響をTCFD等に基づき開示を求める補充原則3-1③が新設される(2021年4月7日のニュース「英文開示、気候変動開示はどこまでやればよい?」、2021年4月15日のニュース『改訂CGコード解説(4) 「中長期的な持続可能性」に関する補充原則』参照)。同原則に対し企業からは、「サステナビリティ全般の方針を示せというのであればともかく、コーポレートガバナンス・コードが気候変動という特定のテーマについて、しかも特定の開示フレームワークを推奨したうえで開示を求めることには違和感がある」との声が聞かれる。これらはマネジメントが対応を検討すればよいことである、というのがその理由だ。
TCFD : 主要国の金融当局(中央銀行、金融監督当局、財務省)やIMF(国際通貨基金)、世界銀行、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)などで構成される国際的な金融システムの安定を目的とする組織である金融安定理事会(FSB)が設置した組織。TCFDとは「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略である。TCFDが2017年6月に公表した最終提言は、気候変動リスクに関する情報開示のフレームワーク(枠組み)のグローバルスタンダードになりつつある。この開示フレームワークは制度開示書類、つまり日本においては有価証券報告書への適用を想定しているが、日本においては現状、金融庁が気候変動リスクについて「開示義務化の予定はない」と明言しており、有価証券報告書だけでなく、統合報告書など投資家向け任意開示書類を含む開示媒体への“自主的な”記載が推奨されている。
| 補充原則3-1③ 上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。 特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。 |
実は、気候変動やTCFDが“コーポレートガバナンス・マター”となった背景には、・・・
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周知のとおり、改訂コーポレートガバナンス・コードでは、プライム市場上場会社に対し、気候変動が自社の事業活動などに与える影響をTCFD等に基づき開示を求める補充原則3-1③が新設される(2021年4月7日のニュース「英文開示、気候変動開示はどこまでやればよい?」、2021年4月15日のニュース『改訂CGコード解説(4) 「中長期的な持続可能性」に関する補充原則』参照)。同原則に対し企業からは、「サステナビリティ全般の方針を示せというのであればともかく、コーポレートガバナンス・コードが気候変動という特定のテーマについて、しかも特定の開示フレームワークを推奨したうえで開示を求めることには違和感がある」との声が聞かれる。これらはマネジメントが対応を検討すればよいことである、というのがその理由だ。
TCFD : 主要国の金融当局(中央銀行、金融監督当局、財務省)やIMF(国際通貨基金)、世界銀行、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)などで構成される国際的な金融システムの安定を目的とする組織である金融安定理事会(FSB)が設置した組織。TCFDとは「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略である。TCFDが2017年6月に公表した最終提言は、気候変動リスクに関する情報開示のフレームワーク(枠組み)のグローバルスタンダードになりつつある。この開示フレームワークは制度開示書類、つまり日本においては有価証券報告書への適用を想定しているが、日本においては現状、金融庁が気候変動リスクについて「開示義務化の予定はない」と明言しており、有価証券報告書だけでなく、統合報告書など投資家向け任意開示書類を含む開示媒体への“自主的な”記載が推奨されている。
| 補充原則3-1③ 上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。 特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。 |
実は、気候変動やTCFDが“コーポレートガバナンス・マター”となった背景には、グローバル機関投資家の意向がある。
企業や取締役会にコーポレートガバナンス関連の助言などを提供する世界的なコンサルティング会社であるモロー・ソダリ(Morrow Sodali)社が欧米を中心とする40超のグローバル機関投資家を対象として2021年1月に実施した調査「INSTITUTIONAL INVESTOR SURVEY(機関投資家調査)2021」によると、昨年(2020年)1年間における企業とのエンゲージメントで“特に”取り上げたテーマは何かとの問いに対し、機関投資家の85%が気候変動を挙げた。コーポレートガバナンスにおける“王道”のテーマと言える「取締役会の構成と実効性」「役員報酬」、さらには「新型コロナウイルス感染症の影響」を抑えてトップとなっている。なお、「人的資本管理」が気候変動に次いで重要視されていることは、ステークホルダーに対する機関投資家の関心の高まりを裏付けていると言えよう(【特集】~株主からステークホルダー全体へ~ 世界中で台頭するコーポレートガバナンスの新たな考え方 参照)。
| 順位 | テーマ | 比率 |
| 1 | 気候変動(Climate Change) | 85% |
| 2 | 人的資本管理(Human Capital Management) | 64% |
| 2 | 取締役会の構成と実効性(Board Composition and Effectiveness) | 64% |
| 4 | 役員報酬(Executive Remuneration) | 55% |
| 5 | 新型コロナウイルス感染症の影響(The Impact of COVID-19) | 33% |
投資決定プロセスにおける気候変動の重要性については、58%が「非常に重要(Very important)」、39%が「やや重要(Somewhat important)」と回答している。また、気候変動について改善を期待する開示内容としては、「財務的なリスク/機会に対する明確な関連性(Clear connections to financial risks/opportunities)」が85%と、「評価基準、目標、成果の情報開示(Disclosure on metrics, targets and achievements)」の64%などを大きく引き離してトップとなっている。気候変動に対する取り組みが投資パフォーマンスに直結するという意識が、投資家の間で一般化していることの表れと言えよう。
気候変動をはじめとするESG関連の課題を開示するうえで望ましいフレームワークとしては「TCFD」が75%と突出して多く、SASBの53%を20ポイント以上上回っている。ブラックロックなど、TCFDとともにSASBを挙げている大手機関投資家もあるが、本調査によれば、グローバル投資家が気候変動の影響を分析するうえで、TCFDを最も重要な開示フレームワークと捉えていることは明らかだ。英国とニュージーランドが2023年にもTCFDの利用を義務化するなど、今後ますますTCFDの“オフィシャル化”が進むことが予想される。
SASB : 2011年に米国サンフランシスコを拠点に設立された非営利団体であるサステナビリティ会計基準審議会(SASB)が2018年11月に公表した、財務的インパクトが大きいESG情報を主に投資家に向けて開示するためのフレームワーク。11セクター77業種別に開示項目及びKPIが設定されている(例:温室効果ガス排出量 ・労働災害事故発生割合)。
| 順位 | フレームワーク | 比率 |
| 1 | TCFD | 75% |
| 2 | SASB | 53% |
| 3 | In-house proprietary framework focused on material topics(重要なトピックに焦点を当てた自社独自のフレームワーク) | 39% |
| 4 | CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト) | 33% |
| 5 | 統合報告(Integrated Reporting) | 17% |
CDP : 気候変動など環境分野に取り組む国際NGO
プライム市場が「グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場」と位置付けられる以上、グローバル機関投資家が高い問題意識を持つ「気候変動」、それに関する開示手段としての「TCFD」がプライム市場上場会社向けの特則である補充原則3-1③に盛り込まれたのは必然とも言えそうだ。
改訂コーポレートガバナンス・コード(以下、改訂CGコード)へのパブリックコメントの募集は(2021年)5月7日をもって締め切られ、今後は早ければ今月末、遅くとも6月上旬には“確定版”が公表・施行されるとともに、改訂CGコードに対応したコーポレート・ガバナンス報告書(以下、CG報告書)の記載要領が公表されることになる。
この記載要領には、プライム市場のみを対象とする内容も含まれることが当フォーラムの取材により確認されているが、一部で誤解が広がっているのが、(2021)12月末日までに提出が求められる「改訂CGコードに基づくCG報告書」の内容だ。・・・
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改訂コーポレートガバナンス・コード(以下、改訂CGコード)へのパブリックコメントの募集は(2021年)5月7日をもって締め切られ、今後は早ければ今月末、遅くとも6月上旬には“確定版”が公表・施行されるとともに、改訂CGコードに対応したコーポレート・ガバナンス報告書(以下、CG報告書)の記載要領が公表されることになる。
この記載要領には、プライム市場のみを対象とする内容も含まれることが当フォーラムの取材により確認されているが、一部で誤解が広がっているのが、(2021)12月末日までに提出が求められる「改訂CGコードに基づくCG報告書」の内容だ。
プライム市場への移行を目指す上場会社の中には、今年12月末日までに提出が求められる改訂CGコードに基づくCG報告書に、プライム市場上場会社のみを対象とする原則(*)に関する内容を盛り込む必要があると考えているところが散見されるが、これは間違いである。
| 補充原則1-2④ 特に、プライム市場上場会社は、少なくとも機関投資家向けに議決権電子行使プラットフォームを利用可能とすべきである。 補充原則3-1② 特に、プライム市場上場会社は、開示書類のうち必要とされる情報について、英語での開示・提供を行うべきである。 補充原則3-1③ 特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。 原則4-8 ・プライム市場上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも3分の1以上選任すべきである。 ・業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、少なくとも過半数の独立社外取締役を選任することが必要と考えるプライム市場上場会社は、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである。 補充原則4-8③ 支配株主を有する上場会社は、取締役会において支配株主からの独立性を有する独立社外取締役を少なくとも3分の1以上(プライム市場上場会社においては過半数)選任するか、または支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引・行為について審議・検討を行う、独立社外取締役を含む独立性を有する者で構成された特別委員会を設置すべきである。 補充原則4-10① 特に、プライム市場上場会社は、各委員会の構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本とし、その委員会構成の独立性に関する考え方・権限・役割等を開示すべきである。 各委員会 : ここでは指名委員会・報酬委員会を指す。 |
というのも、プライム市場への移行日は2022年4月4日であり、プライム市場上場会社のみを対象とする原則も同日から適用されるため。今年12月末日時点ではプライム市場は存在しないことを考えれば当然であろう。この点は、改訂CGコード案とともにフォローアップ会議名で公表された「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について」の「Ⅲ.本コードの改訂の適用について」でも下記(赤字部分)のとおり言及されている(7ページから抜粋)。
| 上場会社は、遅くとも本年12月までに、本コードの改訂に沿ってコーポレートガバナンス報告書の提出を行うことが望まれる。また、プライム市場上場会社のみに適用される原則等に関しては、準備期間等も鑑み、2022年4月以降に開催される各社の株主総会の終了後速やかにこれらの原則等に関する事項について記載した同報告書を提出するよう求めることが考えられる。 |
以上を整理すると、改訂CGコードに対応したCG報告書の“標準的な”提出時期は下表のとおりとなる。
| 提出期限 | CG報告書の内容 |
| 2021年6月定時株主総会後「遅滞なく」提出 | 現行CGコードに基づくもの |
| 準備ができ次第速やかに(遅くとも2021年12月末まで) | 改訂CGコードに基づくもの (プライム市場向けの原則は含まず) |
| 2022年6月定時株主総会後「遅滞なく」提出 | 改訂CGコードに基づくもの (プライム市場向けの原則を含む) |
| 提出期限 | CG報告書の内容 |
| 準備ができ次第速やかに(遅くとも2021年12月末まで) | 改訂CGコードに基づくもの (プライム市場向けの原則は含まず) |
| 2022年3月定時株主総会後「遅滞なく」提出 | 改訂CGコードに基づくもの (プライム市場向けの原則は含まず) |
| 2023年3月定時株主総会後「遅滞なく」提出 | 改訂CGコードに基づくもの (プライム市場向けの原則を含む) |
もっとも、プライム市場上場会社向けの原則に対応したCG報告書を前倒しで提出することは何ら問題がない。極論すれば、3月決算の上場会社が、今(2021年)6月総会直後にプライム市場向けの原則を含む改訂CGコードに対応したCG報告書を提出することも可能であり、この場合、その後内容に更新がなければ、2021年12月末や2022年6月定時株主総会後においてはCG報告書を提出する必要がない。また、改訂CGコードのうち対応可能となった部分(原則)が出てくる都度、CG報告書を提出(更新)することも可能である(例えば、3月決算会社が、2021年6月総会直後、2021年9月、2021年12月に提出するパターン)。
ただし、あまり提出(更新)が小刻みになると、投資家にとって分かりにくくなる恐れがある。提出の速さを競うよりも、取締役会や社内で十分に議論を尽くしたうえで、内容が充実したものを提出することをお勧めしたい。
今月(2021年5月)末か来月頭にも“確定版”が公表される改訂コーポレートガバナンス・コードの目玉の一つが、「企業の中核人材の多様性の確保」について規定した新設の補充原則2-4①だ。
| 補充原則2-4① 上場会社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきである。 また、中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針をその実施状況と併せて開示すべきである。 |
ここでは、①中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方、②自主的かつ測定可能な目標とその状況、③多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針、その実施状況、の開示が求められているが、これらの中で多くの企業が頭を悩ませているのが「自主的かつ測定可能な目標」の開示である。
「多様性の確保についての考え方」や「多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針」は自社の考え方は定性的なものであるため書きようもあろう。また、「(実施)状況」については現状を開示するしかない。これに対し「自主的かつ測定可能な目標」については、「測定可能な」という文言を踏まえると、数値目標を前提としているようにも見える。
しかし、そもそも詳細な数値目標を立てること自体が困難であるケースや、例えばドメスティックな事業に集中しているため、女性と中途採用は増やす予定だが、外国人を増やす予定がないといったケースもあろう。こうした各社の事情に鑑み、下記のような記載方法も容認される方向であることが当フォーラムの取材により確認された。
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