2021/05/25 「中核人材」に関する開示例と人材のカウント方法(会員限定)

今月(2021年5月)末か来月頭にも“確定版”が公表される改訂コーポレートガバナンス・コードの目玉の一つが、「企業の中核人材の多様性の確保」について規定した新設の補充原則2-4①だ。

補充原則2-4①
上場会社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきである。
また、中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針をその実施状況と併せて開示すべきである。

ここでは、①中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方、②自主的かつ測定可能な目標とその状況、③多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針、その実施状況、の開示が求められているが、これらの中で多くの企業が頭を悩ませているのが「自主的かつ測定可能な目標」の開示である。

「多様性の確保についての考え方」や「多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針」は自社の考え方は定性的なものであるため書きようもあろう。また、「(実施)状況」については現状を開示するしかない。これに対し「自主的かつ測定可能な目標」については、「測定可能な」という文言を踏まえると、数値目標を前提としているようにも見える。

しかし、そもそも詳細な数値目標を立てること自体が困難であるケースや、例えばドメスティックな事業に集中しているため、女性と中途採用は増やす予定だが、外国人を増やす予定がないといったケースもあろう。こうした各社の事情に鑑み、下記のような記載方法も容認される方向であることが当フォーラムの取材により確認された。

・現状の数値を示した上で、「現状より増加させる予定」あるいは「現状を維持する予定」といった定性的な記載にとどめる方法。
・女性の管理職登用は〇%、中途採用者は現状より〇%増加させていく方針といった形で数値目標を示すが、外国人の登用については、自社の事業が国内中心であるという特性に鑑みて、測定可能な目標は示さない方法(目標を示さない理由を開示する方法)。

また、「自主的かつ測定可能な目標」とはどの程度の精緻さを求めているのかも気になるところだが、現状の数値を示したうえで、「将来的に〇%、あるいは、〇人程度まで拡充する予定」といった程度の記載でも足りるとのことだ。

このほか補充原則2-4①を巡っては、「外国人」「中途採用」のカウントの仕方や、持株会社の取扱いについての疑問も多い。

まず、補充原則2-4①にいう「外国人」には、「海外子会社」に所属する外国人は含まれないので注意したい。これは、コーポレートガバナンス・コードはあくまで日本企業を対象としたものであるため。

「中途採用」のカウントにおいては、そもそも「中途採用」の定義が明確でないとの声が聞かれるが、これは各社が自主的に決めてよいとのことだ。例えば、新卒からアルバイトで入社した人材を数年後に正社員に登用した場合や、最近増加(むしろ推奨している企業もある)している“出戻り社員”(一度退職し、他社での就労や留学、資格取得などを経て再び入社してきた社員)などを「中途採用」に含めるかどうかは各社の判断に委ねられる。

また、持株会社が上場しているケースも多いが、持株会社では役職員が少なかったり、子会社と掛け持ちしたりしている役職員も多い。こうした持株会社について補充原則2-4①が求める「中核人材の多様性の確保」の状況等を示しても意味がないため、あくまで中核子会社について、「中核人材の多様性の確保」の状況等を開示することになる。「重要性」の観点から、対象とする子会社を限定することも選択肢となろう。

2021/05/24 来年以降のバーチャルオンリー総会開催視野に定款変更実施する企業も 自社がとるべき対応は?

現行会社法では開催できない「場所の定めのない株主総会」、いわゆるバーチャルオンリー株主総会を開催することを上場会社に認める「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律」(以下、改正産競法)案の審議が遅れている。改正産競法案は2021年2月5日に閣議決定され、衆議院に提出されたものの、ようやく5月20日に衆議院の本会議で可決され、参議院に送付された(改正産競法については2021年2月8日のニュース「バーチャルオンリー総会が事実上恒久化へ 企業はどう運営する?」を参照)。審議の途中で新旧対照表等の一部に誤りがあったことが発覚、正誤表で対応することになったものの、審議の遅れの一因となったようだ。今後、参議院の本会議での可決を経て成立することとなる。

バーチャルオンリー株主総会 : リアル株主総会を開催せず、全出席者が遠隔地からインターネット等で参加する株主総会。日本の会社法では、株主総会を招集するには、開催する「場所」を定めることを求めていることから(会社法298条1項1号)、実現は困難とされている。
産業競争力強化法 : 日本経済の3つの歪みとされる「過剰規制」「過小投資」「過当競争」を是正するため、収益力の飛躍的な向上に向けた事業再編などの企業の取り組みを後押しする法律。

バーチャルオンリー株主総会を開催するためには、それが経済産業省令・法務省令で定める要件に該当することについて、経済産業大臣および法務大臣の確認を受けることが条件となるが、法律が成立していない以上、両大臣の確認の前提となる要件が示されている経済産業省令・法務省令も当然ながら公表されていない。東証に上場する3月決算会社の定時株主総会は最も早いケースでは2021年5月28日に開催される。このように定時株主総会を早期に開催する上場会社では既に「株主総会の場所を定めた」株主総会招集通知(以下、招集通知)の発送が始まっている(招集通知は株主総会の日の2週間前までに発送しなければならず(会社法299条1項)、2021年3月1日より東証上場会社は株主総会の日の3週間前までに招集通知等株主総会資料をウェブ開示するよう努める必要がある(努力義務))。また、早期に開催しない場合でも招集通知の差し替えはほぼ間に合わない時期に入っているため、3月決算の上場会社が今定時株主総会をバーチャルオンリー株主総会とするのはスケジュール的に相当困難になったと言わざるを得ない。実際、東証の調査によると、3月決算の上場会社で定時株主総会をバーチャルオンリー株主総会として開催する予定としているのはガーラ(2021年6月26日開催予定)の1社のみに過ぎない(2021年5月16日時点の調査結果であり、今後の更新により社数が変動する可能性がある)。

もっとも、3月決算上場会社の中には、①株主総会までに改正産競法が成立し、バーチャルオンリー株主総会の開催を可能にする改正産競法(第三章第四節)が施行されることと、②自社が開催しようとしているバーチャルオンリー株主総会が経済産業省令・法務省令で定める要件に該当することについて経済産業大臣および法務大臣の確認を受けることを条件として、今定時株主総会で定款変更を行うことを議案に掲げるところも出てきている(下表参照)。・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合は
ログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2021/05/24 来年以降のバーチャルオンリー総会開催視野に定款変更実施する企業も 自社がとるべき対応は?(会員限定)

現行会社法では開催できない「場所の定めのない株主総会」、いわゆるバーチャルオンリー株主総会を開催することを上場会社に認める「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律」(以下、改正産競法)案の審議が遅れている。改正産競法案は2021年2月5日に閣議決定され、衆議院に提出されたものの、ようやく5月20日に衆議院の本会議で可決され、参議院に送付された(改正産競法については2021年2月8日のニュース「バーチャルオンリー総会が事実上恒久化へ 企業はどう運営する?」を参照)。審議の途中で新旧対照表等の一部に誤りがあったことが発覚、正誤表で対応することになったものの、審議の遅れの一因となったようだ。今後、参議院の本会議での可決を経て成立することとなる。

バーチャルオンリー株主総会 : リアル株主総会を開催せず、全出席者が遠隔地からインターネット等で参加する株主総会。日本の会社法では、株主総会を招集するには、開催する「場所」を定めることを求めていることから(会社法298条1項1号)、実現は困難とされている。
産業競争力強化法 : 日本経済の3つの歪みとされる「過剰規制」「過小投資」「過当競争」を是正するため、収益力の飛躍的な向上に向けた事業再編などの企業の取り組みを後押しする法律。

バーチャルオンリー株主総会を開催するためには、それが経済産業省令・法務省令で定める要件に該当することについて、経済産業大臣および法務大臣の確認を受けることが条件となるが、法律が成立していない以上、両大臣の確認の前提となる要件が示されている経済産業省令・法務省令も当然ながら公表されていない。東証に上場する3月決算会社の定時株主総会は最も早いケースでは2021年5月28日に開催される。このように定時株主総会を早期に開催する上場会社では既に「株主総会の場所を定めた」株主総会招集通知(以下、招集通知)の発送が始まっている(招集通知は株主総会の日の2週間前までに発送しなければならず(会社法299条1項)、2021年3月1日より東証上場会社は株主総会の日の3週間前までに招集通知等株主総会資料をウェブ開示するよう努める必要がある(努力義務))。また、早期に開催しない場合でも招集通知の差し替えはほぼ間に合わない時期に入っているため、3月決算の上場会社が今定時株主総会をバーチャルオンリー株主総会とするのはスケジュール的に相当困難になったと言わざるを得ない。実際、東証の調査によると、3月決算の上場会社で定時株主総会をバーチャルオンリー株主総会として開催する予定としているのはガーラ(2021年6月26日開催予定)の1社のみに過ぎない(2021年5月16日時点の調査結果であり、今後の更新により社数が変動する可能性がある)。

もっとも、3月決算上場会社の中には、①株主総会までに改正産競法が成立し、バーチャルオンリー株主総会の開催を可能にする改正産競法(第三章第四節)が施行されることと、②自社が開催しようとしているバーチャルオンリー株主総会が経済産業省令・法務省令で定める要件に該当することについて経済産業大臣および法務大臣の確認を受けることを条件として、今定時株主総会で定款変更を行うことを議案に掲げるところも出てきている(下表参照)。

バーチャルオンリー株主総会開催を可能にする定款変更を実施する予定の3月決算の上場会社の例
会社名 株主総会開催予定日
アイ・アールジャパンホールディングス 2021年6月10日
リクルートホールディングス 2021年6月17日
ソフトバンク 2021年6月22日
LIXIL 2021年6月22日
三井住友フィナンシャルグループ 2021年6月29日
武田薬品工業 2021年6月29日

例えばアイ・アールジャパンホールディングスの場合、次の内容の定款変更を予定している。

現行定款 変更後
(新設)
 
 
 
 
(新設)
(場所の定めのない株主総会の開催)
第18条 当会社は、株主総会を場所の定めのない株主総会とすることができる。

以下、条数繰り下げ
(附則)
第18条の変更は、産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律(令和三年閣法第二三号法案の再提出等により法案番号が変更された場合には変更後の法案番号による)が成立し、産業競争力強化法第三章第四節が改正及び施行されること、ならびに、当会社が、当該改正後の産業競争力強化法に基づき、経済産業省令・法務省令で定める要件に該当することについて経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けることを条件として効力を生ずるものとする。本附則は、第18条の効力の発生日の経過により削除する。

こうした定款変更はあくまで2022年の定時株主総会か、あるいはそれまでに開催されるかもしれない臨時株主総会を想定したものである。しかも、3月決算上場会社が2022年の定時株主総会でバーチャルオンリー株主総会を開催するためには2021年定時株主総会で定款変更を実施しておくべきかと言うと、必ずしもその必要はない。改正産競法施行後2年間は、経済産業大臣および法務大臣の確認を受ければ「定款の定めがある」とみなし(すなわち、定款変更のための株主総会を開催する必要がない)、バーチャルオンリー型株主総会を開催できるとする経過措置が設けられるからだ(改正産競法附則3条1項)。コロナ禍において2回目の開催となる3月決算上場会社の2021年定時株主総会では、せいぜい「バーチャルオンリー株主総会開催を可能にするための定款変更をしないのはなぜか」という株主からの質問に備えた想定問答を整えておく程度で十分と言えよう。

2021/05/21 アクティビストが投資先のもとから去った理由

アクティビストが自社の株式を保有していることが判明した場合、多くの企業は戦々恐々とするのが通常だろう。逆に、アクティビストが自社のもとから去った場合には、その理由も気になるところだ。

モノ言う株主として知られる・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合は
ログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2021/05/21 アクティビストが投資先のもとから去った理由(会員限定)

アクティビストが自社の株式を保有していることが判明した場合、多くの企業は戦々恐々とするのが通常だろう。逆に、アクティビストが自社のもとから去った場合には、その理由も気になるところだ。

モノ言う株主として知られる英国のエドワード・ブランソン氏率いる投資会社シャーボーン・インベスターズ(Sherborne Investor s)は2018年に同国大手銀行バークレイズ(Barclays)の株式を6%取得、それ以来一貫して同行に「低迷が続く投資銀行部門の縮小」と「より収益性の高い部門への経営資源の集中」を求めてきた。これに対し、同行のCEOジェス・ステーリー氏は「多角化」路線を譲らず、シャーボーン・インベスターズの要求を拒否し続けてきた。様々な部門を持ち、収益源を多様化した方が経済情勢の悪化にも耐え得るというのがその理由だ。

両者の考えがかみ合わず膠着状態が続く中、シャーボーン・インベスターズはバークレイズの経営陣にさらに圧力をかけるべく、2019年にブランソン氏を同行の取締役に選任するための株主提案を同行の株主総会に提出した。しかし、この提案は英国保険会社大手のアビバ(Aviva)など機関投資家を含む株主の支持をほとんど得られず、同年5月に開催された同行の株主総会において賛成率はわずか12.79%で否決された。

この結果を受け、シャーボーン・インベスターズの出方が注目されていたが、このほど6%保有していたバークレイズの全株式を(2021年)5月7日に売却していたことが、シャーボーン・インベスターズが同社の株主に送付した書簡で明らかになった。書簡によると、バークレイズの全株式売却の理由の一つとして、「より大きなリターンが期待でき、当社が経営改革に関与できる見込みも高い」新たな投資先のターゲットが見つかったことを挙げている。同時に、2018年に株式を取得して以来要求し続けてきたバークレイズの経営改革は断念したことになる。

注目されるのは、シャーボーン・インベスターズが今回のバークレイズ株式の売却により売却損を出しているとみられることだ。シャーボーン・インベスターズは、バークレイズ株式の売却額を「1年前の株価の2倍以上にあたる1株1.86ポンドで売却した」とし、株価上昇の機会を捉えることができたと説明しているが、シャーボーン・インベスターズがバークレイズの株式を取得した2018年3月の株価は2ポンドを超えていた。

企業にとって、アクティビストが去ったことは朗報とも言える反面、今回のように損失を出してまで全株式を売却するというケースは、アクティビストが「投資先企業に見切りをつけた」結果とも言える。特にシャーボーン・インベスターズは、バークレイズの株式を取得する前、英国の資産運用会社F&Cアセットマネジメントや同投資会社のエレクトラ(Electra)・プライベート・エクイティの株式を取得し経営改革に成功していただけに、そのような見方は否定できないだろう。

もっとも、F&Cアセットマネジメントやエレクトラ・プライベート・エクイティと比べればバークレイズははるかに巨大であるうえ、シャーボーン・インベスターズにはバークレイズ以前に銀行への投資経験がなかったことから、シャーボーン・インベスターズが同行で要求を通すことは困難との指摘は当初からあった。アクティビストと巨大銀行、どちらが正しかったのかは、今後のバークレイズの業績や株価が示すことになる。日本でも多角化経営への風当たりは強まりつつあるだけに(2020年6月5日のニュース「事業再編研究会が近く指針公表、コロナ禍受け“キャッシュ”意識」参照)、バークレイズの多角化路線の行方が注目されるところだ。

2021/05/20 異常株高とステークホルダー・プライマシーが変える株式報酬への考え方

コーポレートガバナンス議論の高まりとともに、「株主価値向上へのコミットメント」という大義名分の下、多くの企業がこぞって導入してきた株式報酬への考え方が大きく変わり始めている。

その一つの要因となっているのが異常な株高だ。コロナ禍を受け多くの国が金融緩和を進める中、現在の株価が“金余り”の中で形成されていることは疑いようがない。すなわち、株主価値向上(≒株価向上)のためのインセンティブである株式報酬が、経営陣の頑張りとは関係のないところで暴騰しているというのが今の状況と言える。こうした中、上場企業の報酬委員会では、「株式報酬のベースとなる株価は正しいのか?」という疑問の声がしばしば上がるようになっている。

株式報酬への考え方を変えるもう一つの要因が、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合は
ログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2021/05/20 異常株高とステークホルダー・プライマシーが変える株式報酬への考え方(会員限定)

コーポレートガバナンス議論の高まりとともに、「株主価値向上へのコミットメント」という大義名分の下、多くの企業がこぞって導入してきた株式報酬への考え方が大きく変わり始めている。

その一つの要因となっているのが異常な株高だ。コロナ禍を受け多くの国が金融緩和を進める中、現在の株価が“金余り”の中で形成されていることは疑いようがない。すなわち、株主価値向上(≒株価向上)のためのインセンティブである株式報酬が、経営陣の頑張りとは関係のないところで暴騰しているというのが今の状況と言える。こうした中、上場企業の報酬委員会では、「株式報酬のベースとなる株価は正しいのか?」という疑問の声がしばしば上がるようになっている。

株式報酬への考え方を変えるもう一つの要因が、シェアホルダー・プライマシー(株主第一主義)からステークホルダー・プライマシー(ステークホルダー第一主義)に資本市場の考え方が変化しているということだ(【特集】~株主からステークホルダー全体へ~ 世界中で台頭するコーポレートガバナンスの新たな考え方 参照)。この変化は企業にも影響を与えている。ステークホルダーの利益を重視することで株主利益が付いてくるのか、あるいは、株主価値を重視した結果としてステークホルダーに価値が還元できるのかという議論の帰結として、「ステークホルダー・プライマシーの観点からは株式報酬は好ましくない」という意見が有力に語られ始めている。今のところ株式報酬を廃止するという話にまでは至っていないが、これまで多くの企業が導入してきたパフォーマンス・シェア・ユニット(PSU)のような中長期の業績にコミットした株式報酬については「現在は導入すべきでない」というスタンスをとる企業が実際に現れている。

パフォーマンス・シェア・ユニット : 「パフォーマンス・シェア」とは文字通り一定期間(以下、業績等評価期間)における「業績」や「株価」によって交付する株式数が変動するタイプの株式報酬のこと。業績評価期間の最初に株式を交付するものは単に「パフォーマンス・シェア(通称:PS)」と呼ばれるが、まずポイント(ユニット=単位)を付与し、業績等評価期間終了後に評価の結果に応じてポイント数を変動させ、当該ポイントに応じた株式を交付するのが「パフォーマンス・シェア・ユニット(通称:PSU)」である。業績や株価条件のある株式交付信託は、パフォーマンス・シェア・ユニットに区分される。

もっとも、株主と目線を合わせるという意味での株式報酬の重要性は引き続き認識されており、それに最も適した株式報酬は「譲渡制限付株式報酬」(リストリクテッド・ストック=RS)であるというのがコンセンサスとなりつつある。ここでいうRSは基本的に「所定期間の勤務の継続」や「不正行為や不祥事に関与しないこと」のみを譲渡制限の解除条件とするものであり、「一定の業績等の達成」を解除条件とするものは含まれない。業績等を解除条件とした時点でPSU等と性格が変わらなくなるからだ。

譲渡制限付株式報酬 : 一定期間の譲渡制限が付された株式報酬で、企業が株式を無償取得することとなる事由(没収事由:例えば所定の期間勤務を継続しないなど)が定められているものを指す。「リストリクテッド・ストック」という呼び方も定着している。

さらに、株主との目線合わせとしてのRSについてさえも、長期目線を持ち続ける観点から、例えば3年間といった短期間で譲渡制限を解除するのではなく、退任時まで持ち続けるべきではないかとの意見も出てきている。在任中は譲渡制限が解除されないということになれば、RSは事実上の「退職所得」となる。

現在の異常な株高は、「株式報酬を持つこと自体が良くない」という極論も生んでいる。既に多くの企業がRSやPSUを導入している中、“周回遅れ”でこれから導入しようという企業も見受けられるが、コロナ禍を経て、既に株式報酬に対する考え方は大きく変わりつつあるということは認識しておくべきだろう。

2021/05/19 改訂CGコード、CEO以外の取締役等にも後継者計画求めるも実効性に課題

従来、「後継者計画」の対象としては基本的に経営トップ(社長、CEO)が想定されていたが、東証によるパブリックコメント(4月7日~5月7日)を経て間もなく確定する改訂コーポレートガバナンス・コードの補充原則4-10①(以下、改訂原則)では、任意の指名委員会の機能の一つとして「後継者計画」が追加されている(下記の赤字の下線部分のカッコ書き)。

補充原則4-10① (赤字が改訂部分)
上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名(後継者計画を含む)・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会など、独立した指名委員会・報酬諮問委員会を設置することにより、指名や・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり、ジェンダー等の多様性やスキルの観点を含め、これらの委員会の独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。
特に、プライム市場上場会社は、各委員会の構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本とし、その委員会構成の独立性に関する考え方・権限・役割等を開示すべきである。

「経営陣幹部・取締役の指名(後継者計画を含む)」の部分では、経営陣幹部や取締役にも「後継者計画」を作成することを求めている。改訂原則を読んだだけでは若干分かりにくいが、フォローアップ会議名で(2021年)4月6日に公表された「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について」には「・・・指名委員会・・・は、CEOのみならず取締役の指名や後継者計画・・・にも関与することが望ましい・・・」との記述がある(2ページ最下段参照)。スキル・マトリックスなどとともに「1.取締役会の機能発揮」の一部を構成していることを踏まえても、この記述には、取締役会を一つの“チーム”として機能させていくためには、CEOのみならず他の経営陣の後継者計画も必要であるとの趣旨が込められていると言えるだろう。

では、企業としては具体的に何をすればよいのだろうか。実は・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合は
ログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2021/05/19 改訂CGコード、CEO以外の取締役等にも後継者計画求めるも実効性に課題(会員限定)

従来、「後継者計画」の対象としては基本的に経営トップ(社長、CEO)が想定されていたが、東証によるパブリックコメント(4月7日~5月7日)を経て間もなく確定する改訂コーポレートガバナンス・コードの補充原則4-10①(以下、改訂原則)では、任意の指名委員会の機能の一つとして「後継者計画」が追加されている(下記の赤字の下線部分のカッコ書き)。

補充原則4-10① (赤字が改訂部分)
上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名(後継者計画を含む)・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会など、独立した指名委員会・報酬諮問委員会を設置することにより、指名や・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり、ジェンダー等の多様性やスキルの観点を含め、これらの委員会の独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。
特に、プライム市場上場会社は、各委員会の構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本とし、その委員会構成の独立性に関する考え方・権限・役割等を開示すべきである。

「経営陣幹部・取締役の指名(後継者計画を含む)」の部分では、経営陣幹部や取締役にも「後継者計画」を作成することを求めている。改訂原則を読んだだけでは若干分かりにくいが、フォローアップ会議名で(2021年)4月6日に公表された「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について」には「・・・指名委員会・・・は、CEOのみならず取締役の指名や後継者計画・・・にも関与することが望ましい・・・」との記述がある(2ページ最下段参照)。スキル・マトリックスなどとともに「1.取締役会の機能発揮」の一部を構成していることを踏まえても、この記述には、取締役会を一つの“チーム”として機能させていくためには、CEOのみならず他の経営陣の後継者計画も必要であるとの趣旨が込められていると言えるだろう。

では、企業としては具体的に何をすればよいのだろうか。実は企業のみならず、人事系の専門家からも「後継者計画は非常に難しい分野」との声が聞かれる。後継者を選定するまでの「プロセス」を作るだけであればそれほど難しいことではないが、実際に候補者を選ぶ段階になると、その候補者を評価(アセスメント)する必要がある。このアセスメントには、テクニカルなインタビューとインタビュー結果の分析という高い専門性が必要であり、これを担える人材は人事コンサルティング会社などにおいても限られているのが現状だ。

企業が比較的容易に実行できるアセスメントの手法としては360度評価があるが、360度評価では、例えば高評価を得るために部下に嫌われないようにするなど、本来の目的とはかけ離れた弊害が生じる可能性があるため(360度評価については、ケーススタディ【人事・労務】「従業員にやる気を出させたい」の「360度評価は参考程度に」参照)、評価結果の“裏”を取るためには、やはり候補者へのインタビューおよびインタビュー結果の分析は必須となる。こうしたインタビュー等は、経営に携わるクラスの人材へのインタビューを大量にこなしているヘッドハンティング会社が得意であり、欧米企業では、自社の後継者計画における候補者のアセスメントにおいてヘッドハンティング会社を活用しているケースも少なくない。

改訂原則は、とりあえず取締役や経営陣幹部の「後継者計画」があればコンプライはできるものと考えられるが、後継者計画に実効性を持たせるという点は日本企業にとって今後の課題となりそうだ。

2021/05/18 監査役をスキルマトリックスの対象に含めるべきか

(2021年)5月7日まで東証からパブリックコメントに付されていた改訂コーポレートガバナンス・コードのうち下記の改訂補充原則4-11①は「いわゆるスキル・マトリックスをはじめ」とした適切な形で取締役の有するスキル等の組み合わせの開示を求めている。この改訂を受け、早ければ今年6月の株主総会シーズンでは、招集通知にスキル・マトリックスを記載する企業が増加することが予想される。まさに現在、多くの企業で開示内容や方法の検討が進んでいるところだろう。

補充原則4-11①(赤字が改訂部分)
取締役会は、経営戦略に照らして自らが備えるべきスキル等を特定した上で、取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定め、各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したいわゆるスキル・マトリックスをはじめ、経営環境や事業特性等に応じた適切な形で取締役の有するスキル等の組み合わせを取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。その際、独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべきである。

その際に論点となり得るのが、スキル・マトリックスの対象に監査役を含めるべきか、という点だ。・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合は
ログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから