<解説>
CEOの独善化にストップをかける任意の委員会
日本企業では、長らく社長(以下、CEO)が後継者を含めた取締役の人選の最終決定権を有するとともに、株主総会で決議した役員報酬枠の範囲内で取締役会から報酬の具体的配分を一任されるという統治形態が一般的でした。つまり、CEOが自身で人選を行った取締役の報酬額を決定する構図となり、これにより他の取締役がCEOにものを言いづらい雰囲気が醸成され、その結果として取締役会はCEOの指名や報酬の追認機関となってしまい、ひいてはCEOが長期間その座に留まることを許すこととなる企業が少なくありませんでした。企業の業績が右肩上がりのうちはCEOの長期政権に対して不満が出にくいのですが、業績が頭打ちになると投資家から経営陣の交代の声が高まることとなります。すなわち、「現在のように変化の激しい経営環境の中では、適切な後継者指名が行われないリスクが高まっている」「このような従来型の方法で行われる後継者指名は、客観性と透明性が必ずしも十分ではない。そのため、後継者の指名の際に、社内論理や、現社長・CEOの主観的な判断や個人的な都合など、企業価値の向上以外の観点が優先され、幅広い候補者の中から最適な人材が選ばれていないのではないか、あるいは、経営トップの交代が最適なタイミングで行われていないのではないか、といった疑念を抱かれるおそれもある」「株主・投資家や従業員をはじめとする企業のステークホルダーに対して、適切な後継者指名であることについて説明責任が十分に果たされず、後継者指名に対する十分な信頼や納得感が得られないおそれもある」「新たに選ばれた社長・CEOが、自分を「選んでくれた」前社長・CEOの意向をおもんばかって、その路線を否定する経営改革に踏み切ることを躊躇してしまう」(経済産業省が2017年3月31日に策定(2018年9月28日に改訂)した「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(CGS ガイドライン)35ページより引用)といった懸念が強まることになります。
そういった懸念が、上場会社において社外取締役の選任を求める動きにつながるとともに、指名や報酬の決定に際してガバナンスを強めるために、任意の指名委員会・報酬委員会を設置したうえで、当該委員会に社外取締役を関与させる企業が増えるのを後押ししてきました。コーポレートガバナンス・コードの補充原則4-2①や補充原則4-10①などで任意の委員会の活用が規定されたこともあり、すでに東証一部上場企業の6割程度で任意の委員会が設置済みという状況になりました(東京証券取引所が2020年9月7日に公表した「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び指名委員会・報酬委員会の設置状況」を参照)。
指名委員会および指名委員会に属する社外取締役の役割は企業によって様々ですが、一例を示すと以下のとおりです(CGS ガイドライン【別紙 4:社長・CEOの後継者計画の策定・運用の視点】を参考)。
| 指名委員会の役割 | 指名委員会に属する社外取締役の役割 |
| 1 後継者計画関連 (1)後継者計画のロードマップの立案 (2)「あるべき社長・CEO像」と評価基準の策定(企業の基本的な経営戦略や経営計画と、それを実現するための現社長・CEOのミッションを現社長・CEOとの間で明確化しておく) (3)後継者候補の選出 (4)育成計画の策定・実施 (5)後継者候補の評価、絞込み・入替え(CEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続きの確立) (6)最終候補者に対する評価と後継者の指名 (7)指名後のサポート |
社内論理が優先されていないか、主観的・恣意的判断に陥っていないかなどをチェック 後継者計画全体のプロセス(ロードマップ)の妥当性の確認 「あるべき社長・CEO 像」や評価基準の妥当性の確認(多様な価値観や複眼的な思考を反映させる) 後継者候補の選出方針の妥当性の確認 後継者候補の育成方針・育成計画の妥当性についてプロセスを中心に確認 重要な後継者候補の育成状況や評価について、後継者候補一人ひとりを把握し、育成状況や評価を詳細に議論 最終候補者の選出理由やその妥当性の確認 |
| 2 現社長・CEOの評価指標や評価手続きの策定・見直し | 策定された指標・評価手続きの妥当性の検討 |
| 3 その他取締役の評価指標や評価手続きの策定・見直し | 策定された指標・評価手続きの妥当性の検討 |
| 4 現社長・CEOの定期的かつ具体的な評価 | 実際の手続きが評価手続きに沿っていることの確認 |
| 5 その他取締役の定期的かつ具体的な評価 | 実際の手続きが評価手続きに沿っていることの確認 |
| 6 取締役の選任基準の策定 | 必要なスキルを明確化 任期制を設けるかどうかの検討 |
| 7 新任の社外取締役候補者の推薦、評価 | 取締役や経営陣としての質の確保を前提としつつ、ジェンダーや国際性の面を含むダイバーシティ(多様性)を確保できているのかを確認 |
| 8 新任・再任の取締役候補者の選定 | スキルの質や経験を確認 候補者との 1 対 1 での面談や集団での意見交換の場に参加 取締役会で後継者候補に説明や質疑応答をさせ評価を行う 後継者候補へのコーチング 食事などのカジュアルな交流の場に参加 候補者のネガティブチェック 代表取締役の解任の要否の判断 |
| 9 取締役トレーニングの方針・実績の検証 | トレーニングの十分性の確認 トレーニングの進捗具合が評価に反映されていることの確認 |
また、報酬委員会および報酬委員会に属する社外取締役の役割は企業によって様々ですが、一例を示すと以下のとおりです(CGS ガイドライン【別紙 3:指名委員会・報酬委員会活用の視点】を参考)。なお、監査役設置会社を前提にしています。
| 報酬委員会の役割 | 報酬委員会に属する社外取締役の役割 |
| 1 社内取締役の報酬 ・自社における社長・CEO の役割・権限の明確化 ・報酬水準の明確化 ・固定報酬・業績連動報酬・自社株報酬の構成割合の決定 ・業績連動報酬の設計・仕組みの構築 ・自社株報酬の設計・仕組みの構築 ・個別報酬額の決定 ・対象者への説明 ・リスク管理メカニズムの仕組み(例えば、クローバック条項などの過度なリスクテイクを助長しないための仕組み等)の構築 |
・社長・CEO の役割・権限が適切かどうかの確認 ・報酬水準が明確になっているかの確認 ・経営陣の報酬を取り巻く状況の整理(情報収集)、他社事例との比較 ・固定報酬・業績連動報酬・自社株報酬の構成割合の妥当性(投資家が納得する内容か、経営者のインセンティブを確保できているか)の確認 ・業績連動報酬に関して、連動させる経営指標、経営計画において目標とした経営指標との関係、連動させる程度、業績目標の妥当性などを確認 ・自社株報酬に関して、株式交付のタイミング、譲渡制限期間・業績条件の設定の有無、インセンティブ機能などを確認 ・個別報酬額は、上記の方針にのっとり適切に算定されているかを確認 ・リスク管理メカニズムがない場合、導入の是非を検討 |
| 2 社外取締役の報酬 社外取締役の報酬について、その方針策定と個別額の決定 |
・社外に説明できる水準かどうかを確認 |
任意の委員会を未設置の企業では、これらの役割のうちどこまでを委員会に委託するのか(委員会が最終決定できる範囲の明確化。委員会に諮問する対象者の範囲、自社の取締役だけなのか子会社の取締役も含むのか、CEOを指名する委員会とCEO以外の取締役を指名する委員会を別組織にするのかなど)、どういう委員構成にするのか(社外取締役の比率、外部人材の有無)、委員長を誰にするのかといった委員会のあり方・ガバナンスについて取締役会で議論し、決議する必要があります。指名と報酬は密接に連動している以上、指名委員会と報酬委員会を合体した指名・報酬委員会を設置することも検討すべきです。
なお、取締役会の諮問機関である指名委員会・報酬委員会が取締役会に対する説明責任を果たすために、その審議経緯や判断根拠などを文書として残しておく必要があります。
| 指名委員会 | ・指名委員会の年間スケジュール ・詳細な発言内容を記した議事録 ・後継者計画のロードマップ ・後継者計画・後継者指名に関する指名委員会の役割・権限 ・「あるべき社長・CEO像」や評価基準 ・重要な後継者候補やその育成方針 ・取締役選任基準や必要なスキル ・候補者リスト ・最終候補者やその選定理由 ・解職基準 |
| 報酬委員会 | ・報酬委員会の年間スケジュール ・社長・CEO の役割・権限 ・報酬ポリシー ・報酬テーブル ・固定報酬・業績連動報酬・自社株報酬の構成割合 ・業績連動報酬の計算方法 ・自社株報酬の仕組み ・参考にした他社の報酬事例 ・取締役個人の評価結果 ・具体的な個別報酬額 |
それらの文書を取締役会に開示することで、委員会のメンバーではない取締役や監査役に両委員会の活動内容と存在意義を理解してもらうことが可能になります。
なお、来年(2021年)3月には改正会社法が施行され、「監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る)である有価証券報告書提出会社」や「監査等委員会設置会社」では、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針を定める必要があります。当該方針には、株主総会から取締役会に報酬の決定が一任された後、取締役会からさらに再一任する場合、当該委任を受ける者の氏名又は当該株式会社における地位および担当、委任する権限の内容等も盛り込む必要があり、当該方針は事業報告や有価証券報告書での開示が必要になります。報酬委員会が再一任先になるのであれば、どのように開示されるのかについても意識しなければならなくなりました(2020年12月4日のニュース「改正会社法施行規則が公布、パブコメで反対の多かった改正案の行方は?」を参照)。
任意の委員会が実質的に機能するための方策
コーポレートガバナンス・コードの補充原則4-2①や補充原則4-10①などのコードをコンプライすることを目的として任意の(報酬・指名)委員会を立ち上げた上場企業の中には、任意の委員会が形ばかりの運営に留まり、実質的には単なる追認機関としてしか機能していない企業もあることでしょう。そういった企業では、コーポレートガバナンスの強化の観点から、任意の委員会の活性化を検討しなければなりません。
そこで、CGSガイドラインでは、任意の委員会に実効性を持たすために次のような策が提案されています。
・審議時間(開催回数や委員会1回あたりの時間)が十分かどうか検討。
・委員会の事務局を設置する。
また、金融庁のスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(以下、フォローアップ会議)が2020年12月18日に公表した「コロナ後の企業の変革に向けた取締役会の機能発揮及び企業の中核人材の多様性の確保(スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議 意見書(5))」によると、今後、同会議では、下記のとおり、任意の委員会について構成員による自己評価や外部機関による外部評価を行い、当該評価結果の概要を投資家に開示する仕組みをコーポレートガバナンス・コードに盛り込むかどうかについて、検討をさらに深めるとしています(2020年12月18日のニュース「改訂CGコードの一部内容が確定 時価総額大きければ過半数の社外取締役も」を参照)。
| 加えて、コロナ後の企業の変革を主導するとの観点から、 (中略) ・取締役会の評価の充実(個々の取締役や法定・任意の委員会を含む自己・外部評価の開示の充実等) 等の論点について、今後、コーポレートガバナンス・コード改訂に向け、検討を更に深めていく。 |
このコーポレートガバナンス・コードの改訂が実現すれば、“名ばかり委員会”が実質的にも機能するきっかけになることが期待されます。
さらに、スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議での議事録には、下記のとおり上場企業が任意の委員会の実効性を確保するためのヒントが多数挙げられているので、こちらも参考にしたいところです。
| 発言者 | 発言内容(任意の委員会の実効性を確保するためのヒント) |
| 田中メンバー | 指名委員会なんですけれども、指名委員会の委員になると辞めさせられないという立場になると思っている人が結構いるようです。指名委員というのは、一種取締役に対する人事権を持つわけですから、やはりそういう意味では任期を設けて交代していくということが必要でしょうし、ローテーションするということが欧米では一般的だと私は聞いています。かつ、指名委員会にはCEOとか会長とかがやっぱり入っちゃいけないんですね。その人たちは指名委員会にやはり身柄を預けるという覚悟が必要で、(中略)基本的には、CEOは必要な時にだけ指名委員会に参加することとして、指名委員会そのものは全てが独立社外取締役で構成されるという必要が私はあるだろうと思います。 |
| 佃メンバー | 現職CEOが指名委員会に入るかどうかの問題があります。日本企業では、現職CEOが指名委員会に入る場合が大多数でしたけれども、ここ一、二年ほど、現職CEOの職務執行状況を評価するために、現職CEOを指名委員としない指名委員会が増えています。 |
| 神作メンバー | 指名委員会につきましては、独立社外取締役の候補者を指名する場合と、それから経営陣を指名する場合とは、これまた機能がかなり異なると思われますので、もし可能であれば、指名委員会についても、誰を指名するのかということによって求められる組織の在り方が異なってくると思われます。特に、独立社外取締役の候補者を指名する場合には、経営陣の影響力というのは極力排除されていることが望ましいと思われます。すなわち、指名委員会の独立性が極めて高い必要があると思われます。これに対して経営陣の指名というのは、もう少し業務執行との密接な連携というのも必要になる場合があり得ると思われます。したがって、指名委員会についても、独立社外取締役の候補者を指名する場合と、経営陣を指名する場合とで、組織の在り方が違ってくるべきであるように思われます。ここについてもさらに議論を深めることができればと思います。 |
| 指名委員会や報酬委員会が機能するためにも、独立社外取締役の間での意思疎通、情報交換というのが非常に重要だと思われます。 | |
| 岡田メンバー | 社外取締役を増やしていく過程では、スキル・マトリックスなどを○×だけでなく、経験年数などスキルの実態の検証とか、そういうことを十分に行うということも必要になると思います。これは指名委員会の重要な役割になってくるのではないかと思います。 |
| 指名委員会について、指名委員会は本当に機能しているのかということを疑問に思っております。社外取締役が過半数を占める指名委員会が増えております。しかし日本の場合CEOは社内の取締役など社内から選任するケースが多いわけですが、社外取締役は社内の人材をほとんど知らないのが現状です。執行から上がってきた案を審議したと言っても、形式的で実質的に機能しているとは言い難いのではないかと考えます。 | |
| そこで、ガバナンス報告書に、指名を行うに当たっての方針と手続というように具体的な方法、考え方を記載するということが望まれると思っております。JPXの資料の中の16ページの下に「後継者計画の策定・運用のプロセス」の開示例がありますが、かなり細かく述べられております。私もこの開示方法が理想的だと思いますが、ほとんどの会社においては、「CEOの選定に関しては指名委員会で検討しております」と開示するにとどまっております。この開示の充実を求めれば、結果として指名委員会を実質的に機能させる必要があるのではないかと思います。 | |
| 三瓶メンバー | まず、権限集中回避、意思決定プロセスの透明化のためには、独立した指名委員会と独立した報酬委員会が必要だと思います。それを前提に、では、独立した委員会とは何かといったら、最低でも2名の独立社外取締役が必要であると。かつ、権限集中を避けるために、指名委員会と報酬委員会をそれぞれ委員長を別にする、または構成委員を完全に一致している状態ではないようにする、多少のずれを持たせる。 |
| (下記については2020年12月23日のニュース「表のスキル・マトリックスと裏のスキル・マトリックス」を参照) 特に指名委員会の実効性評価をしていただきたいんですけれども、その視点として、まず、企業の長期戦略等々、スキル・マトリックスという言葉がいろんな方から出ましたけれども、マトリックスの項目というのが大事で、項目とこの戦略の方向性は合っているのかということです。ある会社では、開示用のスキル・マトリックスと、裏というんですかね、指名委員会で使っているスキル・マトリックスが違うということがありました。ここでは、開示用は今の現状肯定型、現状を説明するもの。ただし、実際に指名委員会で使っているのは本来どうあるべきかというスキル・マトリックスになっています。ですから、これを全ての会社でやってもらわないといけないんだと思います。ただ、本来あるものと今とのギャップが大きい場合に、本来あるスキル・マトリックスで穴だらけのものは見せられないと思うので、指名委員会はそういったものをちゃんと活用しているのかどうかということを実効性評価で開示していただくというようなことが必要かなと考えます。また、指名委員会が提言したことが取締役会で採用決定されなかった場合、覆されるとかいう場合、こういったことがあったのか、ないのか、どんな内容だったのかということの開示も必要だと思います。こういった実効性の評価が必要だと考えます。 |
これらの発言を参考に、任意の委員会の実効性を確保するための方策として下記が考えられます。
・委員会のメンバーにCEOを入れない(仮に入れたとしても、委員長は社外取締役にする)
・委員会の実効性についての評価の実施
・取締役個人の評価の実施
・独立社外取締役の間での意思疎通、情報交換
・指名対象に応じて任意の指名委員会のメンバーを変える
・委員会の活動状況の共有
任意の委員会は、単に設置するだけで機能し始めるものではありません。投資家の期待に応えるためにも、上で紹介した方法など実効性を持たせるための方策を常に模索するのが上場会社の務めと言っても過言ではありません。
さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。
<正解>
社外取締役A:「私は両委員会のメンバーなので、一言言わせてください。両委員会が執行側が出してきた案を追認しただけのように見られたようですが、これはそもそも執行側より否決しようがない、良く練られた案を提案いただいた結果に過ぎないと考えています。もっとも、監査役から、そのような評価を受けたということは指名委員会が取締役会への説明責任を十分に果たせていないということであり、その事実は重く受け止めております。今後は議論の過程をしっかりと文書に残し、取締役会や監査役に対して説明できるようにしてまいります。また、任意の委員会の委員長が社長であることも、委員会に対する信頼性を阻害している可能性もあります。これを機に任意の委員会の委員長を社外取締役のどなたかに任せていただくのはいかがでしょうか。」
(コメント:両委員会が取締役会への説明責任を十分に果たせていない点について詫びるとともに、「委員会の判断プロセスの文書化」「委員長を社外取締役に交代」といった委員会活性策を具体的に提案できている点はGood発言です。)
「任意の委員会の活性化のために、委員会のメンバーを任期制にする案はいかがでしょうか。ただ、委員会の委員長についてはひとこと言わせてください。当社では任意の委員会の委員長の職を社長が務めていることで、取締役候補者の人選や報酬額の根回しが円滑に進んでいるのは事実であり、もし委員会の委員長の職を社外取締役が務めた場合にはこのような円滑な進行は期待できないのではないでしょうか。社長は当社の大株主でもあり、社長の判断は株主の目線と一致していると言えます。任意の委員会の委員長の交代は混乱をもたらすだけであり、百害あって一利なしと言えます。」
(コメント:前段の「委員会のメンバーを任期制にする案」はGoodです。ただ、後段で任意の委員会の委員長として社長が適任であると固執したのはBad発言です。そもそもコーポレートガバナンス・コード原則4-10や補充原則 4-10①が任意の指名委員会や報酬委員会の活用を重視しているのは、経営陣幹部・取締役の指名・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化することが目的であり、現職CEOが委員会の委員長を務めることで、当該目的が損なわれるというのが、“常識”になりつつあるからです。また、CEOが大株主でもあれば、CEOが「大株主としての目線」を有するとは言えても、逆に「少数株主の犠牲」のもと大株主の利益が確保されるように任意の委員会が用いられるのではないかという懸念も生じます。そうであれば、任意の委員会の委員長はCEOではなく、少数株主の保護(コーポレートガバナンス・コード原則4-7を参照)をミッションとする社外取締役の方が適していると言え、「百害あって一利なし」はBad発言です。)
「社外取締役の方々は、執行役員も含めた社内の経営陣の全容や社内事情については精通していらっしゃらないので、委員長に就任したところで果たして次のCEOの候補者を適切に選任できるのか疑問です。」
(コメント:任意の委員会の委員長を社外取締役にしたとしても、委員長である社外取締役だけで次のCEOの候補者を選任するわけではありません。委員長は委員会を招集して、議事を進行したり、委員会の事務局と協議したりする役割を担っているのであり、決定権限を託されているわけではないのです。取締役Cの発言は、任意の委員会の委員長がすべてを決めることができるかのような発言であり、Bad発言です。また、確かに社内取締役の多くが潜在的な後継者候補ではありますが、そうかと言って次のCEOの候補者が社内にしかいないわけでもありません。取締役Cの発言は、CEOとして外部人材を招聘する可能性についてまったく考慮しておらず、いささか視野が狭いと言わざるを得ません。)

