TMI総合法律事務所
パートナー 弁護士 鈴木 貴之
1.改正会社法の概要
2019年12月4日に会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第70号。以下「改正会社法」といいます。)及び会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(令和元年法律第71号。以下「整備法」といいます。)が成立し、2019年12月11日に公布されました。
改正会社法は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日に施行することとされていましたが、2020年11月20日に会社法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令等が公布され、原則として、2021年3月1日から施行されることになりました(なお、株主総会資料の電子提供制度の創設等に関する改正規定は公布の日から3年6箇月を超えない範囲内において政令で定める日から施行されることになっており、2022年度中の施行が予定されています。)
今回の会社法改正は、会社法の施行(2006年5月)後2度目、社外取締役を置いてない場合には「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明する旨や監査役等委員会設置会社の新設などを盛り込んだ改正以来約5年ぶりの大改正であり、(i)株主総会に関する改正として、「株主総会資料の電子提供制度の創設」、「株主提案権の濫用的な行使を制限するための規定の整備」、(ii)取締役に関する改正として、「取締役に対する報酬の付与や費用の補償等に関する規定の整備」、「監査役会設置会社における社外取締役の設置の義務付け」等、実務上の関心が高いと思われる項目が多く含まれています。
そこで、本稿では、2020年11月27日に公布された会社法施行規則等の一部を改正する省令(令和2年法務省令第52号。以下「改正法務省令」といいます。)の内容も踏まえ、改正会社法のうち2021年3月1日に施行されるものの内容を中心に整理するとともに、施行に向けて留意しておくべきポイントを解説します。
2 取締役の報酬に関する改正
(1)取締役の報酬等の決定方針の決定の義務付け
現行会社法上、指名委員会等設置会社以外の株式会社は、取締役の報酬等を定款又は株主総会の決議によって定めることとされていますが、各取締役に支給される報酬等の内容を具体的に定めることまでは求められていません。そのため、実務上は、取締役会に報酬等の内容の決定を委任し、委任を受けた取締役会が、代表取締役に報酬等の内容の決定を一任するということが行われています。
改正会社法では、「監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限ります。)であって、その発行する株式について有価証券報告書の提出義務を負う会社(上場会社等)」及び「監査等委員会設置会社」の取締役会は、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針として法務省令で定める事項を決定することが義務付けられました。
公開会社 : (定款で)株式に譲渡制限を付していない会社のこと(会社法2条5号)。発行する株式のうち1株でも譲渡制限を付していなければ、公開会社となる。したがって、上場会社はすべて公開会社である。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
大会社 : 負債200億円以上または資本金5億円以上の株式会社(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
改正法務省令では、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定方針として決議すべき事項を次のとおり定めています(青字で記載した部分が改正法務省令の内容。以下、同じ。)。
①取締役の個人別の報酬等の額又はその算定方法の決定方針(業績連動型報酬等・非金銭報酬等に関するものを除く)
②業績連動型報酬等がある場合には、業績連動型報酬等に係る業績指標の内容及び業績連動型報酬等の額又は数の算定方法の決定方針
③非金銭報酬等がある場合には、非金銭報酬等の額若しくは数又はその算定方法の決定方針
④上記①から③の各報酬等の額の取締役の個人別の報酬等の額に対する割合の決定方針
⑤取締役に対し報酬等を与える時期又は条件の決定方針
⑥取締役の個人別の報酬等の内容についての決定の全部又は一部を取締役その他の第三者に委任することとするときには、次に掲げる事項
・委任を受ける者の氏名又は株式会社における地位若しくは担当
・委任を受ける者に委任する権限の内容
・委任を受ける者により委任する権限が適切に行使されるようにするための措置を講ずることとするときは、その内容
⑦取締役の個人別の報酬等の内容についての決定の方法(上記⑥に掲げる事項を除く)
⑧上記①から⑦に掲げる事項のほか、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する重要な事項 |
【ポイント】
取締役の報酬等の決定方針の決定を義務付けられた会社であるにもかかわらず、報酬等の決定方針を決定しなかったり、報酬等の決定方針に違反して、取締役の個人別の報酬等の内容を決定した場合、その決定は違法であり、無効であると解されています。
そのため、「監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限ります。)であって、その発行する株式について有価証券報告書の提出義務を負う会社(上場会社等)」や「監査等委員会設置会社」は、2021年3月1日までに、取締役会で、取締役の報酬等の決定方針を決定しておくことを検討する必要があります。
(2)エクイティ報酬に関する決議事項の明確化
現行会社法では、「報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容」を定款又は株主総会決議で定めなければならないとしていますが、株式や新株予約権を報酬等とする場合に「具体的な内容」としてどのような事項を定めなければならないかまでは定められていません。
改正会社法及び改正法務省令では、株式や新株予約権を報酬等とする場合に決定することが必要となる具体的な内容を、次のとおり報酬等の内容に応じて定めています。
| 報酬等の種類 |
決議事項 |
| 株式 |
①株式の数(種類株式発行会社では株式の種類・種類ごとの数)の上限
②その他法務省令で定める事項
・一定の事由が生ずるまで株式を他人に譲り渡さないことを取締役に約させることとするときは、その旨及び一定の事由の概要
・一定の事由が生じたことを条件として株式を株式会社に無償で譲り渡すことを取締役に約させることとするときは、その旨及び一定の事由の概要
・その他取締役に対して株式を割り当てる条件を定めるときは、その条件の概要 |
| 新株予約権 |
①新株予約権の数の上限
②その他法務省令で定める事項
・新株予約権の目的である株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法
・新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法
・金銭以外の財産を新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは、その旨並びに財産の内容及び価額
・新株予約権を行使することができる期間
・一定の資格を有する者が新株予約権を行使することができることとするときは、その旨及び一定の資格の内容の概要
・その他新株予約権の行使の条件を定めるときは、その条件の概要
・譲渡による新株予約権の取得について株式会社の承認を要することとするときは、その旨
・新株予約権について、株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができることとするときは、その内容の概要
・取締役に対して新株予約権を割り当てる条件を定めるときは、その条件の概要 |
また、実務上は、次のような形で、株式や新株予約権が報酬等として交付されています。
(i) 株式と引換えにする払込みに充てるための金銭を取締役の報酬等とした上で、取締役に当該報酬支払請求権を現物出資財産として会社に払込みさせることと引換えに株式を交付すること
(ii) 新株予約権と引換えにする払込みに充てるための金銭を取締役の報酬等とした上で、当該報酬支払請求権と相殺することによって取締役に新株予約権を交付すること
そこで、改正会社法及び改正法務省令では、このような場合に株主総会で決定することが必要となる具体的な内容を次のとおり定めています。
| 報酬等の種類 |
決議事項 |
| 株式と引き換えにする払込に充てるための金銭 |
①取締役が引き受ける株式(種類株式発行会社では株式の種類・種類ごとの数)の数の上限
②その他法務省令で定める事項
・一定の事由が生ずるまで株式を他人に譲り渡さないことを取締役に約させることとするときは、その旨及び一定の事由の概要
・一定の事由が生じたことを条件として株式を株式会社に無償で譲り渡すことを取締役に約させることとするときは、その旨及び一定の事由の概要
・その他取締役に対して株式と引換えにする払込みに充てるための金銭を交付する条件又は取締役に対して株式を割り当てる条件を定めるときは、その条件の概要 |
| 新株予約権と引き換えにする払込に充てるための金銭 |
①取締役が引き受ける新株予約権の数の上限
②その他法務省令で定める事項
・新株予約権の目的である株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法
・新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法
・金銭以外の財産を新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは、その旨並びに財産の内容及び価額
・新株予約権を行使することができる期間
・一定の資格を有する者が新株予約権を行使することができることとするときは、その旨及び一定の資格の内容の概要
・その他新株予約権の行使の条件を定めるときは、その条件の概要
・譲渡による新株予約権の取得について株式会社の承認を要することとするときは、その旨
・新株予約権について、株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができることとするときは、その内容の概要
・取締役に対して新株予約権と引換えにする払込みに充てるための金銭を交付する条件又は取締役に対して新株予約権を割り当てる条件を定めるときは、その条件の概要 |
【ポイント】
改正会社法の施行前になされたエクイティ報酬に関する株主総会の決議が、上記のような内容を網羅していない場合には、会社法施行後に、株主総会の決議を取り直さなければならないと考えられますので、改正会社法の施行前の株主総会の決議内容を確認・検討する必要があります。
(3)取締役の報酬等に関する開示の充実
現行会社法上、公開会社は、会社役員の報酬等に関する事項を事業報告で開示することになっていますが、現行会社法で開示を求められている事項は十分ではなく、事業報告による開示事項を充実すべきでとの指摘がありました。
これを受け、改正法務省令は、公開会社の事業報告の内容に含めなければならない事項として、次の各事項を追加しています。
| 項目 |
内容 |
| 報酬等の総額・額 |
業績連動報酬等又は非金銭報酬等である場合には、業績連動報酬等又は非金銭報酬等の総額及び員数・額並びにそれら以外の報酬等の総額及び員数・額 |
| 業績連動型報酬 |
・業績連動報酬等の額又は数の算定の基礎として選定した業績指標の内容及び業績指標を選定した理由
・業績連動報酬等の額又は数の算定方法
・業績連動報酬等の額又は数の算定に用いた業績指標に関する実績 |
| 非金銭報酬等 |
非金銭報酬等の内容 |
| 会社役員の報酬等についての定款の定め又は株主総会の決議による定め |
・定款の定めを設けた日又は株主総会の決議の日
・定めの内容の概要
・定めに係る会社役員の員数 |
| 取締役の報酬等の決定方針 |
・方針の決定の方法
・方針の内容の概要
・事業年度に係る取締役の個人別の報酬等の内容が方針に沿うものであると取締役会が判断した理由 |
| 取締役会から委任を受けた取締役その他の第三者による個人別の報酬等の決定 |
・取締役会から委任を受けた取締役その他の第三者が個人別の報酬等の内容の全部又は一部を決定したこと
・委任を受けた者の氏名並びに内容を決定した日における株式会社における地位及び担当
・委任を受けた者に委任された権限の内容
・委任を受けた者に権限を委任した理由
・委任を受けた者により権限が適切に行使されるようにするための措置を講じた場合にあっては、その内容 |
| 職務執行の対価として交付した株式会社の株式 |
次に掲げる者の区分ごとの株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)及び株式を有する者の人数
・取締役(監査等委員である取締役及び社外役員を除き、執行役を含む。)
・社外取締役(監査等委員である取締役を除き、社外役員に限る。)
・監査等委員である取締役
・取締役(執行役を含む。)以外の会社役員 |
【ポイント】
2021年3月1日以降に末日が到来する事業年度に係る事業報告には、改正法務省令で追加された内容を記載することが必要になります。
したがって、例えば3月末決算会社であれば、2021年6月に開催する定時株主総会の事業報告に上記各事項を盛り込むことを前提に事業報告の作成を進める必要があります。
3 会社補償及びD&O保険に関する改正
(1)補償契約に関する規定の新設
補償契約とは、会社と役員等の間で締結する契約で、会社が役員等に対して、一定の費用又は損失の全部又は一部を補償することを約する契約のことをいいます。
もっとも、現行会社法には会社補償に関して直接定める規定はなく、どのような手続により、どのような範囲の費用や損失を補償することができるかは、解釈に委ねられていました。
このような現状を踏まえ、改正会社法は、補償契約の内容の決定に関する手続や補償の範囲等について、次のように定めることとしました。
【補償契約の内容の決定に関する手続】
・補償契約の内容を決定するためには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議を要する。
・取締役会は、この決定を取締役または執行役に委任することができない。
【補償の範囲・返還請求】
・補償契約を締結している場合であっても、①通常要する費用の額を超える費用や、②役員等がその職務を行うにつき悪意又は重大な過失があったことにより第三者に対して損賠賠償責任を負う場合の損失等については補償することができない。
・役員等が自己若しくは第三者の不正の利益を図り、又は株式会社に損害を与える目的で職務を執行したことを知った場合には、役員等に対して補償した費用に相当する金銭を返還することを請求することができる。
【取締役会への報告】
・補償契約に基づく補償をした取締役及び補償を受けた取締役は、遅滞なく、補償についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。
|
また、改正法務省令は、(i) 役員等の選任議案を提出する場合で、候補者との間で、補償契約を締結しているとき又は補償契約を締結する予定があるときは、株主総会参考書類に、「補償契約の内容の概要」を記載しなければならないとするとともに、(ii) 公開会社が、役員等との間で補償契約を締結している場合には、事業報告に、次の各事項を記載しなければならないとしています。
・会社役員の氏名
・補償契約の内容の概要(補償契約によって会社役員の職務の執行の適正性が損なわれないようにするための措置を講じている場合にあっては、その内容を含む。)
・補償契約に基づき費用を補償した場合において、株式会社が、会社役員が職務の執行に関し法令の規定に違反したこと又は責任を負うことを知ったときは、その旨
・補償契約に基づき損失を補償したときは、その旨及び補償した金額 |
【ポイント】
改正法務省令により、補償契約を締結すると、事業報告に一定の事項を記載することを求められますが、改正法務省令はその施行日である2021年3月1日以降に締結された補償契約に適用されることになっているため、2021年3月1日より前に締結された補償契約に関する事項は事業報告に記載して開示する必要はありません。
これに対して、株主総会参考書類への記載に関する法務省令では、候補者との間で補償契約を締結している場合のみならず、補償契約を締結する「予定がある場合」も株主総会参考書類に記載することが求められています。したがって、例えば2021年3末決算に係る定時株主総会において選任する役員等との間で補償契約を締結する予定がある場合も株主総会参考書類への記載が求められる点に留意する必要があります。
(2)D&O保険に関する規定の新設
D&O保険とは、会社役員が、その業務遂行のために行った行為に起因して、保険期間中に損害賠償請求を受けたことによって被る損害を填補する保険のことをいいます。
もっとも、現行会社法にはD&O保険に関して直接定めた規定はなく、D&O保険の範囲や、どのような手続により保険を付保できるかは、解釈に委ねられていました。
このような現状を踏まえ、改正会社法及び改正法務省令では、D&O保険の範囲や保険契約の内容の決定に係る手続について、次のように定められました。
【D&O保険の範囲】
株式会社を保険契約者、役員等を被保険者とする保険契約であり、役員等がその職務の執行に関し責任を負うこと又は責任の追及に係る請求を受けることによって生ずることのある損害を保険者が填補することを約するもの。
但し、保険契約を締結することにより被保険者である役員等の職務の執行の適正性が著しく損なわれるおそれがない、次のものを除く。
| 改正法務省令 |
具体例 |
| 被保険者に保険者との間で保険契約を締結する株式会社を含む保険契約であって、株式会社がその業務に関連し第三者に生じた損害を賠償する責任を負うこと又は責任の追及に係る請求を受けることによって株式会社に生ずることのある損害を保険者が塡補することを主たる目的として締結されるもの |
生産物賠償責任保険
企業総合賠償責任保険 |
| 役員等が第三者に生じた損害を賠償する責任を負うこと又は責任の追及に係る請求を受けることによって役員等に生ずることのある損害(役員等がその職務上の義務に違反し若しくは職務を怠ったことによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負うこと又は当該責任の追及に係る請求を受けることによって役員等に生ずることのある損害を除く。)を保険者が塡補することを目的として締結されるもの |
自動車賠償責任保険
海外旅行保険 |
【D&O契約の内容の決定に関する手続】
・保険契約の内容を決定するためには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議を要する。
・取締役会は、この決定を取締役または執行役に委任することができない。
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また、改正法務省令は、 (i) 役員等の選任議案を提出する場合で、候補者を被保険者とする役員等賠償責任保険契約を締結しているとき又は締結する予定があるときは、株主総会参考書類に、「役員等賠償責任保険契約の内容の概要」を記載しなければならないとするとともに、(ii)公開会社が保険者との間で役員等賠償責任保険契約を締結している場合には、事業報告に次の各事項を記載しなければならないとしています。
●役員等賠償責任保険契約の被保険者の範囲
●役員等賠償責任保険契約の内容の概要
・被保険者が実質的に保険料を負担している場合にあってはその負担割合
・塡補の対象とされる保険事故の概要
・役員等賠償責任保険契約によって被保険者である役員等(当該株式会社の役員等に限る。)の職務の執行の適正性が損なわれないようにするための措置を講じている場合にあってはその内容 |
【ポイント】
改正法務省令により、役員等賠償責任保険契約を締結すると事業報告に一定の事項を記載することが求められますが、改正法務省令はその施行日である2021年3月1日以降に締結された役員等賠償責任保険契約に適用されることになっているため、2021年3月1日より前に締結された役員等賠償責任保険契約に関する事項は事業報告に記載して開示する必要はありません。
これに対して、株主総会参考書類への記載に関する法務省令では、候補者を被保険者とする役員等賠償責任保険契約を締結している場合のみならず、役員等賠償責任保険契約を「締結する予定がある」場合にも株主総会参考書類に記載することが求められています。したがって、例えば2021年3月末決算に係る定時株主総会において選任する役員等との間で役員等賠償責任保険契約を締結(更新を含みます。)する予定がある場合も株主総会参考書類への記載が求められる点に留意する必要があります。
4 社外取締役に関する改正
(1)社外取締役を置くことの義務付け
現行会社法は、社外取締役の選任を義務付けておらず、事業年度の末日において監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限ります。)であってその発行する株式について有価証券報告書の提出義務を負う会社(以下「上場会社等」といいます。)が社外取締役を置いていない場合、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明しなければならないとされるに留まっています。
これに対して、改正会社法は、上場会社等に社外取締役を置くことを義務付けることとし、改正法務省令は、株主総会参考書類・事業報告に「社外取締役を置くことが相当でない理由」を記載しなければならないとする規定を削除しました。
【ポイント】
改正会社法の社外取締役を置くことを義務付ける規定は、改正会社法が施行される2021年3月1日以降で最初に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までは適用しないとしています。
したがって、例えば3末決算の上場会社等で、社外取締役を1名も選任していない会社は、改正会社法の施行後に臨時株主総会を開催してまで社外取締役を選任する必要はありませんが、2021年3末決算に係る定時株主総会、つまり2021年6月に開催する定時株主総会において社外取締役を1名以上選任する必要があります。
この点、上場会社は、(i)有価証券上場規程において、独立役員(一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役をいいます。)を1名以上確保することを義務付けられ、また(ii)コーポレート・ガバナンスコードにおいて、独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきであるとされており、その結果、2020年9月7日時点において全上場会社の約98.9%が社外取締役を1名以上選任済みとなっているため、影響を受ける上場会社等は多くありませんが、社外取締役を置いていない上場会社等は、選任に向けて候補者の選定作業を進めていく必要があります。
(2)社外取締役に関する開示の充実
改正法務省令は、株主総会参考書類及び事業報告に、次に事項を記載することを求めています。
| 株主総会参考書類 |
(社外取締役の選任に関する議案を提出する場合)当該候補者が社外取締役に選任された場合に果たすことが期待される役割 |
| 事業報告 |
(社外役員のうち社外取締役である者が存する場合)当該社外役員が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要 |
【ポイント】
社外取締役に関する開示の充実を求める改正法務省令は、2021年3月1日から施行されますが、(i)改正会社法が施行される2021年3月1日より前に招集の手続が開始された株主総会に係る株主総会参考書類には適用されず、また、(ii)施行日前にその末日が到来した事業年度のうち最終のものに係る事業報告にも適用されないとされています。
したがって、例えば3月末決算会社が2021年6月に開催する予定の定時株主総会に係る株主総会参考書類及び事業報告には、「社外取締役に選任された場合に果たすことが期待される役割」や「社外取締役が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要」を記載することになりますので、その前提で準備を進めていただく必要があります。
5 その他の改正
(1)役員候補者に関する開示の充実
現行会社法施行規則は、取締役や監査役の選任に関する議案を提出する場合に、①候補者が過去5年間に親会社等の業務執行者であったことを知っているときは、「親会社等における地位及び担当」、②候補者が過去5年間に特定関係事業者の業務執行者若しくは役員であったことを知っているときは「その旨」などを株主総会参考書類に記載することを求めていますが、改正法務省令では、対象期間が「過去5年間」から「過去10年間」に拡大されています。
【ポイント】
役員候補者に関する開示の充実を求める改正法務省令は、2021年3月1日から施行されますが、施行日以後にその末日が到来する事業年度のうち最初のものに係る定時株主総会より前に開催される株主総会に係る株主総会参考書類には適用されないことになっています。
したがって、例えば3月末決算会社が2021年6月に開催する予定の定時株主総会に係る株主総会参考書類は、改正法務省令に従って準備することが必要になります。
(2)株式会社の現況に関する開示の充実
公開会社は、【株式会社の現況に関する事項】として「重要な親会社及び子会社の状況」を事業報告に記載しなければなりませんが、改正法務省令により、「重要な親会社及び子会社の状況」には「親会社と株式会社との間に株式会社の重要な財務及び事業の方針に関する契約等が存在する場合には、その内容の概要」も記載することが求められます。
【ポイント】
株式会社の現況に関する開示の充実を求める改正法務省令は、2021年3月1日から施行されますが、施行日前にその末日が到来した事業年度のうち最終のものに係る事業報告には適用されないことになっています。
したがって、例えば3月末決算会社が2021年6月に開催する予定の定時株主総会に係る事業報告には、改正法務省令に従って準備することが必要になります。