2021/01/13 IFRSで「のれん」の償却再導入も(会員限定)

日本企業の時価総額トップに君臨するトヨタ自動車がIFRS(国際会計基準)の適用に踏み切る(2021年3月期〜)など、IFRS適用企業は「時価総額」ベースでは既に全上場企業の40%を突破している。ただ、「企業数」で見ると、IFRS適用企業は200社超に過ぎず、未だ多くの企業がIFRSを適用するには至っていない。その大きな要因の一つとなっているのが、のれんの会計処理だ。

のれん : 企業を買収したり合併したりする際における「支払対価-企業の時価純資産」こと(これがプラスの場合、「正ののれん」という。以下は「正ののれん」を前提とする)。のれんは「財務諸表には表れない企業の価値」と言える。つまり、のれんは投資原価の一部を構成している。このため、そこで日本の会計基準では、のれんについては「20年以内の期間」で償却し、のれんの価値が下がった場合には「減損」を行うことになっている。一方、IFRSおよび米国会計基準では、「のれん」の定期償却は認められていない(減損処理しか認められない)。そこには、利益の平準化を好む日本型経営と、業績好調時にはできるだけ利益を出し、逆に業績悪化時にはすべて“膿”を出すという欧米型経営の発想の違いがある。

現状、IFRSではのれんを償却しなくてよいことになっている。これに対し、日本が中心となって「のれんの償却処理」の再導入を主張していることを受け、IFRSを策定する国際会計基準審議会(IASB)は現在、のれんの会計処理を検討している。多くの市場関係者からも、「IFRSにおいてはのれんの減損認識が“too little, too late”(少なすぎて、遅すぎる)」という問題が指摘されており、IASBでは「のれんの減損と償却」が優先テーマとされてきた。こうした経緯を踏まえ、IASBは2020年12月31日を意見募集の期限として、ディスカッションペーパー「企業結合―開示、のれん及び減損」を公表し、今後の検討課題を整理している。

減損 : 固定資産による将来の現金回収見込額が簿価を下回った場合に、下回った分だけ損失を計上すること。

ディスカッションペーパーでは、「取得に関する開示の改善」が優先課題とされ大量のページが割かれており、特に「取得」について多くの情報開示(注記)を求めている。

具体的には、「取得に関する戦略的根拠および最高経営意思決定者の目的」「当該目的を果たしているかどうかに関する情報の開示(以下、モニタリング指標)」「シナジー」についての詳細な内容が要求されている。

「取得に関する戦略的根拠及び最高意思決定者の目的」は、既に我が国でもMD&A等の非財務情報開示の中で企業の判断により開示が行われており、財務諸表の注記の枠組みにおいてさらに開示を求めることは疑問と言える。

MD&A : 「Management’s Discussion and Analysis of Financial Condition and Results of Operations」の略で、「経営陣による財政状態および経営成績の検討と分析」と訳される。有価証券報告書では【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】欄に記載する。

「モニタリング指標」「シナジー」の大半は商業上の機密事項に該当するため、開示することは困難と言える。仮に商業上の機密事項に該当しない情報を開示したとしても、投資家にとって何ら有益な情報とはならない。もし誤って商業上の機密事項に該当する内容を開示するようなことがあれば、同業他社等にそれを知られることで企業価値が毀損され、結果として投資家にとって不利益となる恐れがある。また、そもそもシナジーやモニタリング指標といった内部的な数値目標について、その妥当性を監査で確かめることはおよそ困難との指摘もある。

以上のとおり、「取得に関する開示の改善」には企業から強い反発が予想され、ディスカッションペーパーが公開草案を経て最終的に「成案」となるかどうかは疑問がある。とはいえ、仮に上記の開示がIFRSで求められれば、IFRS適用企業には大きな負荷が生じることになるだろう。

のれんの会計処理についてディスカッションペーパーでは、「のれんに係る減損損失の適時な合理的なコストでの認識における有効性を著しく高める減損テストの設計が実行可能ではない」とし、現行の減損処理を前提とした場合には「too little, too late」問題の解消につながらないことを認めた。しかし、のれんの償却の再導入についてのIASBでの決議が過半数には至らなかった(6対8で否決)ことから、再導入を見送ることを提案している。

減損テスト : IFRSでは、のれんを償却しない代わりに、減損の兆候の有無を評価し、兆候があれば帳簿価額と回収可能価額とを比較する「減損テスト」を毎期実施しなければならない。

その一方で、のれんの償却の再導入を求める動きは徐々に広まりつつある。米国の会計基準設定主体であるFASB(Financial Accounting Standards Board:財務会計基準審議会)は、ボードの議決(6対1)として、米国基準において償却処理の導入に向けた検討を行うことを決め、既に償却年数や償却処理等の具体的な検討に入っている。当フォーラムの取材によると、償却年数は「10年」をベースに検討が行われているようだ。これに加え、EUから離脱した英国も、IASBの公開草案に対して、のれんの償却を求める意見を出す見込みだ。さらに、EUでも「非償却」で“一枚岩”となっているわけではなく、例えば製造業の多いドイツでは償却を支持する企業が多い。

このように、主要国は軒並み償却の再導入を求める状況にある。今後コロナ禍がさらに拡大しかねない状況の中、業績のボラティリティの拡大を懸念する企業側は、これまで以上に償却の再導入を求めることになるだろう。IASBも、国際的な会計基準設定主体として、このような声を無視し続けることは難しいと考えられ、今後、償却の再導入に向け、議論の方向性を軌道修正することも十分に考えられる。IFRSの任意適用を検討している企業にとっては今後の動向が注目されるところだ。

2021/01/13 IFRSで「のれん」の償却再導入も

日本企業の時価総額トップに君臨するトヨタ自動車がIFRS(国際会計基準)の適用に踏み切る(2021年3月期〜)など、IFRS適用企業は「時価総額」ベースでは既に全上場企業の40%を突破している。ただ、「企業数」で見ると、IFRS適用企業は200社超に過ぎず、未だ多くの企業がIFRSを適用するには至っていない。その大きな要因の一つとなっているのが、のれんの会計処理だ。

のれん : 企業を買収したり合併したりする際における「支払対価-企業の時価純資産」こと(これがプラスの場合、「正ののれん」という。以下は「正ののれん」を前提とする)。のれんは「財務諸表には表れない企業の価値」と言える。つまり、のれんは投資原価の一部を構成している。このため、そこで日本の会計基準では、のれんについては「20年以内の期間」で償却し、のれんの価値が下がった場合には「減損」を行うことになっている。一方、IFRSおよび米国会計基準では、「のれん」の定期償却は認められていない(減損処理しか認められない)。そこには、利益の平準化を好む日本型経営と、業績好調時にはできるだけ利益を出し、逆に業績悪化時にはすべて“膿”を出すという欧米型経営の発想の違いがある。

現状、IFRSではのれんを償却しなくてよいことになっている。これに対し、日本が中心となって「のれんの償却処理」の再導入を主張していることを受け、IFRSを策定する国際会計基準審議会(IASB)は現在、のれんの会計処理を検討している。多くの市場関係者からも、「IFRSにおいてはのれんの減損認識が“too little, too late”(少なすぎて、遅すぎる)」という問題が指摘されており、IASBでは「のれんの減損と償却」が優先テーマとされてきた。こうした経緯を踏まえ、IASBは2020年12月31日を意見募集の期限として、ディスカッションペーパー「企業結合―開示、のれん及び減損」を公表し、今後の検討課題を整理している。

減損 : 固定資産による将来の現金回収見込額が簿価を下回った場合に、下回った分だけ損失を計上すること。

ディスカッションペーパーでは、「取得に関する開示の改善」が優先課題とされ大量のページが割かれており、特に「取得」について多くの情報開示(注記)を求めている。

具体的には、・・・

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2021/01/12 上場企業の役員が押さえておきたい直近のガバナンス関連のイベント

一橋大学大学院 経営管理研究科 准教授
金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」メンバー
円谷 昭一

2021年は上場企業の役員はもちろん、経営企画、総務、IR等の担当者にとっても重要な年となる。東証の市場区分変更への対応が本格化し、それと歩を合わせてコーポレートガバナンス・コード(CGコード)の改訂が行われる。また、株主総会のオンライン化はさらに広がりを見せるであろう。これらについては昨年12月、既にそれぞれ動きがあったが、本稿ではそのポイントを紹介する。・・・

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2021/01/12 上場企業の役員が押さえておきたい直近のガバナンス関連のイベント(会員限定)

一橋大学大学院 経営管理研究科 准教授
金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」メンバー
円谷 昭一

2021年は上場企業の役員はもちろん、経営企画、総務、IR等の担当者にとっても重要な年となる。東証の市場区分変更への対応が本格化し、それと歩を合わせてコーポレートガバナンス・コード(CGコード)の改訂が行われる。また、株主総会のオンライン化はさらに広がりを見せるであろう。これらについては昨年12月、既にそれぞれ動きがあったが、本稿ではそのポイントを紹介する。

東証の市場区分の見直し
周知のとおり、昨年12月25日、東証は「市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について(第二次制度改正事項)」を公表している(2021年1月8日のニュース「続報・第二次制度改正事項 新市場区分への移行時の上場審査の有無」、2021年1月7日のニュース『速報・新市場区分の第二次改正事項 流通株式比率の「改善期間」は“なし”』参照 引用:上場会社役員ガバナンスフォーラム)。この中では新市場区分の全体像、上場会社の移行プロセス、経過措置等が示されており、2021年2月26日までパブリック・コメントを募集したうえで、その結果を踏まえて今春に「制度要綱」が公表される予定となっている。

新市場区分では現行の4市場区分が、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編され、2022年4月4日に新市場へと一斉移行する。現在の東証1部企業の多くはプライム市場への移行を希望しているようであるが、報道等によれば、東証1部企業約2,200社のうち約600社が現時点でプライム市場への(第二次制度改正事項で示された)上場基準を満たしていないという。上場会社自身による市場選択手続きは今年9~12月に行われる予定であるが、自社がどの市場を選択するかは企業経営上、重要な判断となる。

コーポレートガバナンス・コードの改訂
東証の市場区分の見直しと軌を一にしてCGコードの改訂が進められている。改訂版のCGコードは今春に公表される予定であるが、それに先立って12月18日に金融庁から「「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(5)-コロナ後の企業の変革に向けた取締役会の機能発揮及び企業の中核人材の多様性の確保」が公表(2020年12月18日のニュース「改訂CGコードの一部内容が確定 時価総額大きければ過半数の社外取締役も」、2020年12月23日のニュース「表のスキル・マトリックスと裏のスキル・マトリックス」参照 引用:上場会社役員ガバナンスフォーラム)された(なお、筆者はフォローアップ会議のメンバーである)。この意見書の目的は、CGコードの改訂の方針を先行して公表することで、企業側に対応するための時間を確保してもらうことにある。意見書の最大のポイントは、「プライム市場の上場企業に対し、独立社外取締役の3分の1以上の選任を求めるべきである」「それぞれの経営環境や事業特性等を勘案して必要と考える企業には、独立社外取締役の過半数の選任を検討するよう促すべきである」と明記したことである。新市場区分でプライム市場への上場を検討する企業はCGコード改訂の動向を常にウォッチしておく必要がある。

バーチャル株主総会の実施
昨年12月23日、経済産業省より「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド(別冊)実施事例集(案)」が公表され、1月22日まで意見募集が行われている。

会社法の解釈上、日本ではバーチャル「のみ」で株主総会を開催することはできないとされている。したがって、バーチャル株主総会を開催するとすれば、リアル開催とバーチャル開催を組み合わせた「ハイブリッド型」で実施せざるを得ない。さらに、バーチャル株主総会も議決権の行使ができる「出席型」と議決権の行使はできない「参加型」に分類される(バーチャル株主総会の詳細は(新用語・難解用語)ハイブリッド型バーチャル株主総会 参照 引用:上場会社役員ガバナンスフォーラム)。経済産業省がとりまとめた現在パブコメ中の実施事例集(案)によれば、2020年6月株主総会で「出席型」ハイブリッド型株主総会を実施した企業は9社、「参加型」ハイブリッド型株主総会を実施した企業は113社あった。今後、出席型・参加型ともにハイブリッド型株主総会を実施する企業数は増えていくと思われるが、企業にとっては懸念や不安、疑問点も多いものと思われる。2020年6月にハイブリッド型総会を実施した企業の事例を紹介しながら、そうした疑問点へのガイドラインを示したのが今回の実施事例集である。実務担当者にとっては貴重な情報源であり、一読をおすすめしたい。なお、バーチャル「のみ」の株主総会の開催に向けて関係諸機関も動き始めている点を付記しておきたい。

コーポレートガバナンス・ランキング(2020年)
最後に、アジア諸国のコーポレートガバナンスのあり方に対し発言力を持つACGA(Asian Corporate Governance Association=アジア・コーポレート・ガバナンス協会)が隔年で公表しているアジア諸国のコーポレートガバナンスガバナンスランキング「CG Watch」が(例年に従えば)1月中に公表される可能性がある。アジアにおける日本のコーポレートガバナンスの相対順位は2016年の3位から、2018年には7位に後退しており、関係者に衝撃を与えた(2019年4月9日のニュース『ACGAが「更なる変更を要する」としたCGコードの論点』ほか、本記事で引用されているニュース参照 引用:上場会社役員ガバナンスフォーラム)。今月公表される可能性がある2020年のランキングは、筆者の予想ではそれほど順位は変動していないと思われる(上がっていても下がっていても1~2位程度か)。この順位は間接的に日本の政策決定者に影響を与える可能性もあり、筆者も注目している。

このように、2021年は企業経営の根幹に関わる大きな制度改正等のイベントが控えているが、どの新市場を選択するかは企業の判断次第であり、コーポレートガバナンス・コードも「コンプライ・オア・エクスプレイン」の枠組みはこれまで通りである。また、バーチャル株主総会を開催するかどうかも企業が自由に選択できる。企業にとっては検討の負担も大きいであろうが、横並び意識を捨て、自社にとって最適な選択が何なのかを今から真剣に議論しておくべきであろう。

2021/01/10 【2020年12月の課題】改正会社法・政省令の施行に向けた企業の対応(会員限定)

TMI総合法律事務所
パートナー 弁護士 鈴木 貴之

1.改正会社法の概要

2019年12月4日に会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第70号。以下「改正会社法」といいます。)及び会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(令和元年法律第71号。以下「整備法」といいます。)が成立し、2019年12月11日に公布されました。

改正会社法は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日に施行することとされていましたが、2020年11月20日に会社法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令等が公布され、原則として、2021年3月1日から施行されることになりました(なお、株主総会資料の電子提供制度の創設等に関する改正規定は公布の日から3年6箇月を超えない範囲内において政令で定める日から施行されることになっており、2022年度中の施行が予定されています。)

今回の会社法改正は、会社法の施行(2006年5月)後2度目、社外取締役を置いてない場合には「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明する旨や監査役等委員会設置会社の新設などを盛り込んだ改正以来約5年ぶりの大改正であり、(i)株主総会に関する改正として、「株主総会資料の電子提供制度の創設」、「株主提案権の濫用的な行使を制限するための規定の整備」、(ii)取締役に関する改正として、「取締役に対する報酬の付与や費用の補償等に関する規定の整備」、「監査役会設置会社における社外取締役の設置の義務付け」等、実務上の関心が高いと思われる項目が多く含まれています。

そこで、本稿では、2020年11月27日に公布された会社法施行規則等の一部を改正する省令(令和2年法務省令第52号。以下「改正法務省令」といいます。)の内容も踏まえ、改正会社法のうち2021年3月1日に施行されるものの内容を中心に整理するとともに、施行に向けて留意しておくべきポイントを解説します。

2 取締役の報酬に関する改正

(1)取締役の報酬等の決定方針の決定の義務付け
現行会社法上、指名委員会等設置会社以外の株式会社は、取締役の報酬等を定款又は株主総会の決議によって定めることとされていますが、各取締役に支給される報酬等の内容を具体的に定めることまでは求められていません。そのため、実務上は、取締役会に報酬等の内容の決定を委任し、委任を受けた取締役会が、代表取締役に報酬等の内容の決定を一任するということが行われています。

改正会社法では、「監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限ります。)であって、その発行する株式について有価証券報告書の提出義務を負う会社(上場会社等)」及び「監査等委員会設置会社」の取締役会は、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針として法務省令で定める事項を決定することが義務付けられました。

公開会社 : (定款で)株式に譲渡制限を付していない会社のこと(会社法2条5号)。発行する株式のうち1株でも譲渡制限を付していなければ、公開会社となる。したがって、上場会社はすべて公開会社である。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
大会社 : 負債200億円以上または資本金5億円以上の株式会社(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

改正法務省令では、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定方針として決議すべき事項を次のとおり定めています(青字で記載した部分が改正法務省令の内容。以下、同じ。)。

①取締役の個人別の報酬等の額又はその算定方法の決定方針(業績連動型報酬等・非金銭報酬等に関するものを除く)
②業績連動型報酬等がある場合には、業績連動型報酬等に係る業績指標の内容及び業績連動型報酬等の額又は数の算定方法の決定方針
③非金銭報酬等がある場合には、非金銭報酬等の額若しくは数又はその算定方法の決定方針
④上記①から③の各報酬等の額の取締役の個人別の報酬等の額に対する割合の決定方針
⑤取締役に対し報酬等を与える時期又は条件の決定方針
⑥取締役の個人別の報酬等の内容についての決定の全部又は一部を取締役その他の第三者に委任することとするときには、次に掲げる事項
・委任を受ける者の氏名又は株式会社における地位若しくは担当
・委任を受ける者に委任する権限の内容
・委任を受ける者により委任する権限が適切に行使されるようにするための措置を講ずることとするときは、その内容
⑦取締役の個人別の報酬等の内容についての決定の方法(上記⑥に掲げる事項を除く)
⑧上記①から⑦に掲げる事項のほか、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する重要な事項

【ポイント】
取締役の報酬等の決定方針の決定を義務付けられた会社であるにもかかわらず、報酬等の決定方針を決定しなかったり、報酬等の決定方針に違反して、取締役の個人別の報酬等の内容を決定した場合、その決定は違法であり、無効であると解されています。

そのため、「監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限ります。)であって、その発行する株式について有価証券報告書の提出義務を負う会社(上場会社等)」や「監査等委員会設置会社」は、2021年3月1日までに、取締役会で、取締役の報酬等の決定方針を決定しておくことを検討する必要があります。

(2)エクイティ報酬に関する決議事項の明確化
現行会社法では、「報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容」を定款又は株主総会決議で定めなければならないとしていますが、株式や新株予約権を報酬等とする場合に「具体的な内容」としてどのような事項を定めなければならないかまでは定められていません。

改正会社法及び改正法務省令では、株式や新株予約権を報酬等とする場合に決定することが必要となる具体的な内容を、次のとおり報酬等の内容に応じて定めています。

報酬等の種類 決議事項
株式 ①株式の数(種類株式発行会社では株式の種類・種類ごとの数)の上限
②その他法務省令で定める事項
・一定の事由が生ずるまで株式を他人に譲り渡さないことを取締役に約させることとするときは、その旨及び一定の事由の概要
・一定の事由が生じたことを条件として株式を株式会社に無償で譲り渡すことを取締役に約させることとするときは、その旨及び一定の事由の概要
・その他取締役に対して株式を割り当てる条件を定めるときは、その条件の概要
新株予約権 ①新株予約権の数の上限
②その他法務省令で定める事項
・新株予約権の目的である株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法
・新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法
・金銭以外の財産を新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは、その旨並びに財産の内容及び価額
・新株予約権を行使することができる期間
・一定の資格を有する者が新株予約権を行使することができることとするときは、その旨及び一定の資格の内容の概要
・その他新株予約権の行使の条件を定めるときは、その条件の概要
・譲渡による新株予約権の取得について株式会社の承認を要することとするときは、その旨
・新株予約権について、株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができることとするときは、その内容の概要
・取締役に対して新株予約権を割り当てる条件を定めるときは、その条件の概要

また、実務上は、次のような形で、株式や新株予約権が報酬等として交付されています。

(i) 株式と引換えにする払込みに充てるための金銭を取締役の報酬等とした上で、取締役に当該報酬支払請求権を現物出資財産として会社に払込みさせることと引換えに株式を交付すること
(ii) 新株予約権と引換えにする払込みに充てるための金銭を取締役の報酬等とした上で、当該報酬支払請求権と相殺することによって取締役に新株予約権を交付すること

そこで、改正会社法及び改正法務省令では、このような場合に株主総会で決定することが必要となる具体的な内容を次のとおり定めています。 

報酬等の種類 決議事項
株式と引き換えにする払込に充てるための金銭 ①取締役が引き受ける株式(種類株式発行会社では株式の種類・種類ごとの数)の数の上限
②その他法務省令で定める事項
・一定の事由が生ずるまで株式を他人に譲り渡さないことを取締役に約させることとするときは、その旨及び一定の事由の概要
・一定の事由が生じたことを条件として株式を株式会社に無償で譲り渡すことを取締役に約させることとするときは、その旨及び一定の事由の概要
・その他取締役に対して株式と引換えにする払込みに充てるための金銭を交付する条件又は取締役に対して株式を割り当てる条件を定めるときは、その条件の概要
新株予約権と引き換えにする払込に充てるための金銭 ①取締役が引き受ける新株予約権の数の上限
②その他法務省令で定める事項
・新株予約権の目的である株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法
・新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法
・金銭以外の財産を新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは、その旨並びに財産の内容及び価額
・新株予約権を行使することができる期間
・一定の資格を有する者が新株予約権を行使することができることとするときは、その旨及び一定の資格の内容の概要
・その他新株予約権の行使の条件を定めるときは、その条件の概要
・譲渡による新株予約権の取得について株式会社の承認を要することとするときは、その旨
・新株予約権について、株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができることとするときは、その内容の概要
・取締役に対して新株予約権と引換えにする払込みに充てるための金銭を交付する条件又は取締役に対して新株予約権を割り当てる条件を定めるときは、その条件の概要

【ポイント】
改正会社法の施行前になされたエクイティ報酬に関する株主総会の決議が、上記のような内容を網羅していない場合には、会社法施行後に、株主総会の決議を取り直さなければならないと考えられますので、改正会社法の施行前の株主総会の決議内容を確認・検討する必要があります。

(3)取締役の報酬等に関する開示の充実
現行会社法上、公開会社は、会社役員の報酬等に関する事項を事業報告で開示することになっていますが、現行会社法で開示を求められている事項は十分ではなく、事業報告による開示事項を充実すべきでとの指摘がありました。

これを受け、改正法務省令は、公開会社の事業報告の内容に含めなければならない事項として、次の各事項を追加しています。

項目 内容
報酬等の総額・額 業績連動報酬等又は非金銭報酬等である場合には、業績連動報酬等又は非金銭報酬等の総額及び員数・額並びにそれら以外の報酬等の総額及び員数・額
業績連動型報酬 ・業績連動報酬等の額又は数の算定の基礎として選定した業績指標の内容及び業績指標を選定した理由
・業績連動報酬等の額又は数の算定方法
・業績連動報酬等の額又は数の算定に用いた業績指標に関する実績
非金銭報酬等 非金銭報酬等の内容
会社役員の報酬等についての定款の定め又は株主総会の決議による定め ・定款の定めを設けた日又は株主総会の決議の日
・定めの内容の概要
・定めに係る会社役員の員数
取締役の報酬等の決定方針 ・方針の決定の方法
・方針の内容の概要
・事業年度に係る取締役の個人別の報酬等の内容が方針に沿うものであると取締役会が判断した理由
取締役会から委任を受けた取締役その他の第三者による個人別の報酬等の決定 ・取締役会から委任を受けた取締役その他の第三者が個人別の報酬等の内容の全部又は一部を決定したこと
・委任を受けた者の氏名並びに内容を決定した日における株式会社における地位及び担当
・委任を受けた者に委任された権限の内容
・委任を受けた者に権限を委任した理由
・委任を受けた者により権限が適切に行使されるようにするための措置を講じた場合にあっては、その内容
職務執行の対価として交付した株式会社の株式 次に掲げる者の区分ごとの株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)及び株式を有する者の人数
・取締役(監査等委員である取締役及び社外役員を除き、執行役を含む。)
・社外取締役(監査等委員である取締役を除き、社外役員に限る。)
・監査等委員である取締役
・取締役(執行役を含む。)以外の会社役員

【ポイント】
2021年3月1日以降に末日が到来する事業年度に係る事業報告には、改正法務省令で追加された内容を記載することが必要になります。

したがって、例えば3月末決算会社であれば、2021年6月に開催する定時株主総会の事業報告に上記各事項を盛り込むことを前提に事業報告の作成を進める必要があります。

3 会社補償及びD&O保険に関する改正

(1)補償契約に関する規定の新設
補償契約とは、会社と役員等の間で締結する契約で、会社が役員等に対して、一定の費用又は損失の全部又は一部を補償することを約する契約のことをいいます。

もっとも、現行会社法には会社補償に関して直接定める規定はなく、どのような手続により、どのような範囲の費用や損失を補償することができるかは、解釈に委ねられていました。

このような現状を踏まえ、改正会社法は、補償契約の内容の決定に関する手続や補償の範囲等について、次のように定めることとしました。

【補償契約の内容の決定に関する手続】
・補償契約の内容を決定するためには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議を要する。
・取締役会は、この決定を取締役または執行役に委任することができない。
【補償の範囲・返還請求】
・補償契約を締結している場合であっても、①通常要する費用の額を超える費用や、②役員等がその職務を行うにつき悪意又は重大な過失があったことにより第三者に対して損賠賠償責任を負う場合の損失等については補償することができない。
・役員等が自己若しくは第三者の不正の利益を図り、又は株式会社に損害を与える目的で職務を執行したことを知った場合には、役員等に対して補償した費用に相当する金銭を返還することを請求することができる。
【取締役会への報告】
・補償契約に基づく補償をした取締役及び補償を受けた取締役は、遅滞なく、補償についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。

また、改正法務省令は、(i) 役員等の選任議案を提出する場合で、候補者との間で、補償契約を締結しているとき又は補償契約を締結する予定があるときは、株主総会参考書類に、「補償契約の内容の概要」を記載しなければならないとするとともに、(ii) 公開会社が、役員等との間で補償契約を締結している場合には、事業報告に、次の各事項を記載しなければならないとしています。

・会社役員の氏名
・補償契約の内容の概要(補償契約によって会社役員の職務の執行の適正性が損なわれないようにするための措置を講じている場合にあっては、その内容を含む。)
・補償契約に基づき費用を補償した場合において、株式会社が、会社役員が職務の執行に関し法令の規定に違反したこと又は責任を負うことを知ったときは、その旨
・補償契約に基づき損失を補償したときは、その旨及び補償した金額

【ポイント】
改正法務省令により、補償契約を締結すると、事業報告に一定の事項を記載することを求められますが、改正法務省令はその施行日である2021年3月1日以降に締結された補償契約に適用されることになっているため、2021年3月1日より前に締結された補償契約に関する事項は事業報告に記載して開示する必要はありません。

これに対して、株主総会参考書類への記載に関する法務省令では、候補者との間で補償契約を締結している場合のみならず、補償契約を締結する「予定がある場合」も株主総会参考書類に記載することが求められています。したがって、例えば2021年3末決算に係る定時株主総会において選任する役員等との間で補償契約を締結する予定がある場合も株主総会参考書類への記載が求められる点に留意する必要があります。

(2)D&O保険に関する規定の新設
D&O保険とは、会社役員が、その業務遂行のために行った行為に起因して、保険期間中に損害賠償請求を受けたことによって被る損害を填補する保険のことをいいます。

もっとも、現行会社法にはD&O保険に関して直接定めた規定はなく、D&O保険の範囲や、どのような手続により保険を付保できるかは、解釈に委ねられていました。

このような現状を踏まえ、改正会社法及び改正法務省令では、D&O保険の範囲や保険契約の内容の決定に係る手続について、次のように定められました。

【D&O保険の範囲】
株式会社を保険契約者、役員等を被保険者とする保険契約であり、役員等がその職務の執行に関し責任を負うこと又は責任の追及に係る請求を受けることによって生ずることのある損害を保険者が填補することを約するもの。
但し、保険契約を締結することにより被保険者である役員等の職務の執行の適正性が著しく損なわれるおそれがない、次のものを除く。

改正法務省令 具体例
被保険者に保険者との間で保険契約を締結する株式会社を含む保険契約であって、株式会社がその業務に関連し第三者に生じた損害を賠償する責任を負うこと又は責任の追及に係る請求を受けることによって株式会社に生ずることのある損害を保険者が塡補することを主たる目的として締結されるもの 生産物賠償責任保険
企業総合賠償責任保険
役員等が第三者に生じた損害を賠償する責任を負うこと又は責任の追及に係る請求を受けることによって役員等に生ずることのある損害(役員等がその職務上の義務に違反し若しくは職務を怠ったことによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負うこと又は当該責任の追及に係る請求を受けることによって役員等に生ずることのある損害を除く。)を保険者が塡補することを目的として締結されるもの 自動車賠償責任保険
海外旅行保険

【D&O契約の内容の決定に関する手続】
・保険契約の内容を決定するためには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議を要する。
・取締役会は、この決定を取締役または執行役に委任することができない。

また、改正法務省令は、 (i) 役員等の選任議案を提出する場合で、候補者を被保険者とする役員等賠償責任保険契約を締結しているとき又は締結する予定があるときは、株主総会参考書類に、「役員等賠償責任保険契約の内容の概要」を記載しなければならないとするとともに、(ii)公開会社が保険者との間で役員等賠償責任保険契約を締結している場合には、事業報告に次の各事項を記載しなければならないとしています。

●役員等賠償責任保険契約の被保険者の範囲
●役員等賠償責任保険契約の内容の概要
・被保険者が実質的に保険料を負担している場合にあってはその負担割合
・塡補の対象とされる保険事故の概要
・役員等賠償責任保険契約によって被保険者である役員等(当該株式会社の役員等に限る。)の職務の執行の適正性が損なわれないようにするための措置を講じている場合にあってはその内容

【ポイント】
改正法務省令により、役員等賠償責任保険契約を締結すると事業報告に一定の事項を記載することが求められますが、改正法務省令はその施行日である2021年3月1日以降に締結された役員等賠償責任保険契約に適用されることになっているため、2021年3月1日より前に締結された役員等賠償責任保険契約に関する事項は事業報告に記載して開示する必要はありません。

これに対して、株主総会参考書類への記載に関する法務省令では、候補者を被保険者とする役員等賠償責任保険契約を締結している場合のみならず、役員等賠償責任保険契約を「締結する予定がある」場合にも株主総会参考書類に記載することが求められています。したがって、例えば2021年3月末決算に係る定時株主総会において選任する役員等との間で役員等賠償責任保険契約を締結(更新を含みます。)する予定がある場合も株主総会参考書類への記載が求められる点に留意する必要があります。

4 社外取締役に関する改正

(1)社外取締役を置くことの義務付け
現行会社法は、社外取締役の選任を義務付けておらず、事業年度の末日において監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限ります。)であってその発行する株式について有価証券報告書の提出義務を負う会社(以下「上場会社等」といいます。)が社外取締役を置いていない場合、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明しなければならないとされるに留まっています。

これに対して、改正会社法は、上場会社等に社外取締役を置くことを義務付けることとし、改正法務省令は、株主総会参考書類・事業報告に「社外取締役を置くことが相当でない理由」を記載しなければならないとする規定を削除しました。

【ポイント】
改正会社法の社外取締役を置くことを義務付ける規定は、改正会社法が施行される2021年3月1日以降で最初に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までは適用しないとしています。

したがって、例えば3末決算の上場会社等で、社外取締役を1名も選任していない会社は、改正会社法の施行後に臨時株主総会を開催してまで社外取締役を選任する必要はありませんが、2021年3末決算に係る定時株主総会、つまり2021年6月に開催する定時株主総会において社外取締役を1名以上選任する必要があります。

この点、上場会社は、(i)有価証券上場規程において、独立役員(一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役をいいます。)を1名以上確保することを義務付けられ、また(ii)コーポレート・ガバナンスコードにおいて、独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきであるとされており、その結果、2020年9月7日時点において全上場会社の約98.9%が社外取締役を1名以上選任済みとなっているため、影響を受ける上場会社等は多くありませんが、社外取締役を置いていない上場会社等は、選任に向けて候補者の選定作業を進めていく必要があります。

(2)社外取締役に関する開示の充実
改正法務省令は、株主総会参考書類及び事業報告に、次に事項を記載することを求めています。

株主総会参考書類 (社外取締役の選任に関する議案を提出する場合)当該候補者が社外取締役に選任された場合に果たすことが期待される役割
事業報告 (社外役員のうち社外取締役である者が存する場合)当該社外役員が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要

【ポイント】
社外取締役に関する開示の充実を求める改正法務省令は、2021年3月1日から施行されますが、(i)改正会社法が施行される2021年3月1日より前に招集の手続が開始された株主総会に係る株主総会参考書類には適用されず、また、(ii)施行日前にその末日が到来した事業年度のうち最終のものに係る事業報告にも適用されないとされています。

したがって、例えば3月末決算会社が2021年6月に開催する予定の定時株主総会に係る株主総会参考書類及び事業報告には、「社外取締役に選任された場合に果たすことが期待される役割」や「社外取締役が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要」を記載することになりますので、その前提で準備を進めていただく必要があります。

5 その他の改正

(1)役員候補者に関する開示の充実
現行会社法施行規則は、取締役や監査役の選任に関する議案を提出する場合に、①候補者が過去5年間に親会社等の業務執行者であったことを知っているときは、「親会社等における地位及び担当」、②候補者が過去5年間に特定関係事業者の業務執行者若しくは役員であったことを知っているときは「その旨」などを株主総会参考書類に記載することを求めていますが、改正法務省令では、対象期間が「過去5年間」から「過去10年間」に拡大されています。

【ポイント】
役員候補者に関する開示の充実を求める改正法務省令は、2021年3月1日から施行されますが、施行日以後にその末日が到来する事業年度のうち最初のものに係る定時株主総会より前に開催される株主総会に係る株主総会参考書類には適用されないことになっています。

したがって、例えば3月末決算会社が2021年6月に開催する予定の定時株主総会に係る株主総会参考書類は、改正法務省令に従って準備することが必要になります。

(2)株式会社の現況に関する開示の充実
公開会社は、【株式会社の現況に関する事項】として「重要な親会社及び子会社の状況」を事業報告に記載しなければなりませんが、改正法務省令により、「重要な親会社及び子会社の状況」には「親会社と株式会社との間に株式会社の重要な財務及び事業の方針に関する契約等が存在する場合には、その内容の概要」も記載することが求められます。

【ポイント】
株式会社の現況に関する開示の充実を求める改正法務省令は、2021年3月1日から施行されますが、施行日前にその末日が到来した事業年度のうち最終のものに係る事業報告には適用されないことになっています。

したがって、例えば3月末決算会社が2021年6月に開催する予定の定時株主総会に係る事業報告には、改正法務省令に従って準備することが必要になります。

2021/01/08 続報・第二次制度改正事項 新市場区分への移行時の上場審査の有無

2021年1月7日のニュース『速報・新市場区分の第二次改正事項 流通株式比率の「改善期間」は“なし”』でお伝えしたとおり、(2020年)12月25日にリリースされた「市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について(第二次制度改正事項)」によると、東証は、上場会社が各市場の上場基準に適合しているかどうかを今年7月中に通知し、新市場の上場基準に一部でも適合していない企業に対しては、「上場維持基準の適合に向けた計画書」(以下、計画書)の提出を求めるとしている。

そしてこの場合、上場審査の有無および計画書に対する東証の対応は以下のとおりとなることが当フォーラムの取材により判明した。・・・

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2021/01/08 続報・第二次制度改正事項 新市場区分への移行時の上場審査の有無(会員限定)

2021年1月7日のニュース『速報・新市場区分の第二次改正事項 流通株式比率の「改善期間」は“なし”』でお伝えしたとおり、(2020年)12月25日にリリースされた「市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について(第二次制度改正事項)」によると、東証は、上場会社が各市場の上場基準に適合しているかどうかを今年7月中に通知し、新市場の上場基準に一部でも適合していない企業に対しては、「上場維持基準の適合に向けた計画書」(以下、計画書)の提出を求めるとしている。

そしてこの場合、上場審査の有無および計画書に対する東証の対応は以下のとおりとなることが当フォーラムの取材により判明した。

まず、現在東証一部上場会社が「プライム市場」または「スタンダード市場」を選択する場合には、上場審査の対象とはならない(=上場審査なく、プライム市場またはスタンダード市場へに移行できる)。ただし、上述のとおり、選択した市場の上場維持基準に一部でも適合していない場合には、計画書の提出が必要となる。また、プライム市場を選択した場合には、プライム市場に適用されることとなる改訂ガバナンス・コードに基づくコーポレートガバナンス報告書(以下、CG報告書)の提出も必要になる。そして、計画書やCG報告書の内容次第では、東証からその追加・訂正が要請されることとなる点、留意したい。

一方、(レアケースと思われるが)東証一部上場会社がグロース市場を選択する場合には、計画書の提出は不要となるが、グロース市場の新規上場基準に適合するか否かの審査が行われることになる。

次に、現在東証二部またはジャスダック・スタンダード市場に上場している会社がスタンダード市場を選択する場合には、新規上場基準に適合するか否かの審査の対象とならないものの、スタンダード市場の上場維持基準に一部でも適合していない場合には、計画書の提出が必要となる。計画書の内容次第では、東証からその追加・訂正が要請されることになる。プライム市場またはグロース市場を選択する場合には計画書の提出は不要となるが、それぞれの市場の新規上場基準に適合するか否かの審査が行われることになる。

最後に、現在マザーズまたはジャスダック・グロース市場に上場している会社については、グロース市場を選択する場合には、新規上場基準に適合するか否かの審査の対象とはならないが、グロース市場の上場維持基準に一部でも適合していない場合には、計画書の提出が必要となる。計画書の内容次第では、東証からその追加・訂正が要請されることになる。プライム市場またはスタンダード市場を選択した場合には計画書の提出は不要だが、それぞれの市場区分の新規上場基準に適合するか否かの審査が行われることになる。

新規上場基準に適合するか否かの審査は、通常の新規上場審査と同じものとなる。したがって、提出が求められる資料も新規上場審査時の提出書類と同様となる。

なお、コーポレートガバナンス・コードについては「コンプライ」が義務とはされていないため、コンプライしない場合には「エクスプレイン」が必要となることは言うまでもない。

2021/01/07 速報・新市場区分の第二次改正事項 流通株式比率の「改善期間」は“なし”

東証は(2020年)12月25日、2月に公表した「新市場区分の概要等について」および10月に公表した「第一次改正事項」に続き、2022年4月4日に予定される新市場区分への一斉移行に向けた上場会社の市場選択の手続や新市場区分の上場維持基準を充たさない場合の経過措置などをまとめた「市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について(第二次制度改正事項)」(以下、第二次改正事項)を公表し、パブリックコメントの募集を開始した(第一次改正事項については、2020年8月4日のニュース『JASDAQ新規上場会社はCGコードがフル適用に』および『東証が市場再編に向け第一次制度改正を実施、原案との違いは?』参照)。募集は2021年2月26日までとされている。

第二次改正事項は主に・・・

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2021/01/07 速報・新市場区分の第二次改正事項 流通株式比率の「改善期間」は“なし”(会員限定)

東証は(2020年)12月25日、2月に公表した「新市場区分の概要等について」および10月に公表した「第一次改正事項」に続き、2022年4月4日に予定される新市場区分への一斉移行に向けた上場会社の市場選択の手続や新市場区分の上場維持基準を充たさない場合の経過措置などをまとめた「市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について(第二次制度改正事項)」(以下、第二次改正事項)を公表し、パブリックコメントの募集を開始した(第一次改正事項については、2020年8月4日のニュース『JASDAQ新規上場会社はCGコードがフル適用に』および『東証が市場再編に向け第一次制度改正を実施、原案との違いは?』参照)。募集は2021年2月26日までとされている。

第二次改正事項は主に、①新たな市場区分の概要(趣旨、上場基準)、②新たな市場区分の選択手続(申請期間、必要書類)、③経過措置、から構成されている。以下、それぞれについて解説しよう。

① 新たな市場区分の概要
「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」という3つの新市場区分それぞれの意義および上場基準については、「新市場区分の概要等について」における説明から変わっていない。ただし、今回は上場基準の重要な要素である「流通株式」の定義が具体的に示された。

新市場区分の概要等について(2020年2月21日公表)10ページ
【現行の定義】
● 上場株式のうち、「上場株式数の10%以上を所有する株主が所有する株式」、「役員が所有する株式」、「自己株式」、「役員以外の特別利害関係者の所有する株式(新規上場・一部指定時のみ)」を除いたもの
→現在は上場株式数の10%未満であれば、実態として流通性が乏しいと考えられる株主の保有する株式も流通株式として取り扱っており、流通株式に関する基準が適切に機能していない懸念
【方向性】
● 実態として流通性が乏しいと考えられる株主の保有する株式については、株主の保有比率に関わらず流通株式から除外
※ 例えば、政策保有株などについて検討することが考えられる
第二次改正事項(2020年12月25日公表)12ページ
● 上場株式のうち、国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等(金融機関及び金融商品取引業者以外の法人)が所有する株式については、上場株式数の10%未満を所有する場合であっても、流通株式から除くこととします。ただし、所有目的が「純投資」であることが明らかな株式については、流通株式として取り扱うこととします。
● 役員以外の特別利害関係者の所有する株式について、上場維持基準に係る計算においても流通株式から除くこととするほか、当取引所が流通株式に含めることが適当でないと認める株式についても、流通株式から除くこととします。

上記のとおり第二次改正事項では、流通株式から「国内の普通銀行、保険会社及び事業法人等(金融機関及び金融商品取引業者以外の法人)が所有する株式」、すなわち政策保有株式が流通株式から除外されることが明確になった。「所有目的が純投資であることが明らかな株式」は流通株式として取り扱われるが、これは大量保有報告書において所有目的が「純投資」と記載されているものに限られる。

大量保有報告書 : 市場の透明性・公正性を高め、投資者保護を図ることを目的として、金融商品取引法上、株券等の大量保有者に対し提出が義務付けられている書類。具体的には、①保有割合が5%超となった場合、②その後、保有割合が1%以上増減するなど重要な変更があった場合、それぞれ提出事由が生じた日から5営業日以内に「大量保有報告書(or変更報告書)」の提出が求められる(②の場合に提出するのは「変更報告書」)。

流通株式数は東証が算出して2021年7月中に上場会社に通知されるが、その際には「直近の事業年度末日時点の数値」が用いられる。例えば、プライム市場の上場基準(流通株式数1,000単位、流通株式時価総額5億円、流通株式比率25%)に達していない3月決算の東証1部会社であれば、2021年3月末までに持合い解消を進めることなどにより、自社株式の流動性を高めておくことが考えられる。なお、後述する経過措置にも留意する必要がある。

流通株式時価総額 : 流通株式数に時価を乗じた額
流通株式比率 : 流通株式数を上場株式数で除した値

② 新たな市場区分の選択手続
「2021年9月1日から12月30日まで」の間に選択する市場区分を東証に申請する必要があることは既に「新市場区分の概要等について」で公表されていたとおりだが、今回、この選択期間に先立ち、東証が2021年6月30日(同日を「移行基準日」という)時点で各市場の上場基準に適合しているかを確認し、7月中に上場会社に通知することが明らかになった(別添1参照)。この通知を受けて上場会社は、以下の書類を添えて新市場区分の選択を申請する。上場基準の一部に適合していない場合には、「3. 上場維持基準の適合に向けた計画書」の提出が求められることになる。

1. 市場選択申請書
2. 市場選択の意向に関する取締役会の決議内容を証する書面
3. 上場維持基準の適合に向けた計画書(上場維持基準に適合していない場合
4. 改訂後コーポレートガバナンス・コードの内容を反映したコーポレートガバナンスに関する報告書

1~3の書類は申請日に提出することになるが、「4. 改訂後コーポレートガバナンス・コードの内容を反映したコーポレートガバナンスに関する報告書」は2021年12月30日までに提出すればよい。3月決算会社であれば、2021年6月の定時株主総会後“遅滞なく”現行コーポレートガバナンス・コードに基づくものを提出した後、今春にも内容が確定するとみられる改訂コーポレートガバナンス・コードに対応したコーポレートガバナンス報告書を再度2021年12月30日まで提出する必要がある。もっとも、それまでに改訂コーポレートガバナンス・コードに完全に対応できないプライム市場上場希望会社も多いだろう。その場合、対応できない原則についてはエクスプレインすればよい。

③ 経過措置
上場維持基準をクリアできない場合の経過措置として、“緩和”された基準が適用される。東証1部上場会社であれば「プライム市場」か「スタンダード市場」を選択する場合、東証2部上場会社であれば「スタンダード市場」を選択する場合のみが経過措置の対象となる。プライム市場における経過措置は下表のとおりとなっている。上場維持基準ではすべて改善期間が「1年」とされているのに対し、経過措置では売買代金が「6か月」、流通株式比率が「改善期間なし」とされている点、注目される。流通株式比率について「改善期間なし」とされているということは、流通株式比率「5%」という基準を満たせなければ即時上場廃止になるということを意味する点、要注意だ。

  上場維持基準 経過措置
流通株式数 20,000単位上(改善期間1年) 10,000単位上(改善期間1年)
流通株式時価総額 100億円上(改善期間1年) 10億円(改善期間1年)
売買代金 日平均売買代金0.2億円上(改善期間1年) 月平均売買高40単位(改善期間6か月
流通株式比率 35%上(改善期間1年) 5%(改善期間なし

経過措置の適用期間は定められていないが、長ければ数年間となることも想定される。上場基準をすべてクリアできない場合に提出が求められる「上場維持基準の適合に向けた計画書」の策定・遵守および改訂コーポレートガバナンス・コードへの対応の難易度と併せて、経過期間の内容も新市場区分の選択に際しての判断材料となろう。

2021/01/04 会員エリアにアクセスできない場合の対応について

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