2020年(中小企業は2021年)4月1日からは、「同一労働同一賃金」の名の下、正規労働者(正社員)と非正規労働者(有期雇用社員、パートタイマー、派遣社員等)の間の不合理な待遇格差を設けることが禁止されるが、この同一労働同一賃金の実現に向け、日本企業に長年根付いて来た「住宅手当」のあり方が問われている。
厚生労働省は、2018年12月『同一労働同一賃金ガイドライン(厚生労働省告示第430号)』により、正社員にのみ支給される各種手当についてその待遇差が問題となるか否か、具体例を挙げて解説しているものの、この指針では、「住宅手当」などいくつかの手当については具体例が示されず、「労使で議論していくことが望まれる」と記載するにとどめている。企業からすれば、「自社の業態や労使慣行等を踏まえて自ら考えよ」という“宿題”を負わされたような格好となっている。
そこで本稿では、手当の代表格である「住宅手当」について、その存廃を含めた対応策を検討する。企業の選択肢としては以下の3つが考えられる。
【選択肢A】 廃止する
そもそも住宅手当は従業員間に不公平感が生まれやすい制度であるため(例えば居住エリアによって家賃が異なる、実家住まいの人はもらえない、ルームシェアや事実婚などライフスタイルの変化に対応した支給基準の設定が難しいなど)、これを機に廃止してしまうのも一案と言える。ただ、これは明らかな「労働条件の不利益変更」にあたることから、労働契約法に則った手順(まず現在の支給対象者に個別に同意を取り(労働契約法8条)、その後、就業規則の変更により労働条件を変更する(労働契約法11条))を踏まなければならず、また、不支給となる者には当面「調整手当」等の名目で一定額を支給するなど、激変緩和措置を講じる必要もあろう。
【選択肢B】 非正規労働者にも支給する
年齢や出勤日数などの支給要件を設けている住宅手当であれば、要件に合致する非正規労働者にも支給しなければならない(高松高判R1.7.8)。支給要件を設けていない、いわゆる「第2基本給」的な意味合いなら、なおさら支給が求められる。会社にとっては当然コストアップとなる。
【選択肢C】 正社員にのみ支給する(従来通り)
住宅手当が、例えば転居を伴う配転が予定されている正社員に対し、住宅費用を補助する趣旨で支給されるものであるなら、非正規労働者には支給しないという運用が可能な場合もある(最二判H30.6.1「ハマキョウレックス事件」 2019年1月17日のニュース「70歳までの継続雇用義務付けと同一労働同一賃金の関係」参照)。一方、転居を伴う配転が予定されていない社員にも支給しされている場合にはその前提が崩れることになり、非正規労働者には支給しないという理屈が通らない可能性が出て来る。
住宅手当に限ったことではないが、手当の支給を見直す際に検討しなければならない視点は2つある。1つは「手当とは何か(支給目的や支給基準など)」、もう1つは「雇用形態や業務内容(例えば、非正規労働者にはどのような業務を任せるのかなど)」だ。これらを明確化する作業を進めるうちに、存廃を含む手当のあり方も自ずと見えてこよう。逆に、現時点でこれらが明確になっていない企業は、目前に迫った「同一労働同一賃金」時代に向け、検討を急ぐ必要がある。