<解説>
親会社による上場子会社の完全子会社化、それ自体にも利益相反リスクが
前回の【役員会 Good&Bad発言集】「子会社と利益相反(1)」で見たとおり、親子上場には利益相反のリスクが付きまといます。「上場子会社という形態は、少数株主との構造的な利益相反リスクを内在しており、その独立性の担保に特段の配慮が求められるため、グループとしての全体最適と上場子会社としての部分最適が緊張関係にあり、事業ポートフォリオや経営資源の配分における制約となること、親会社として出資以外の投資(人材育成やインフラ提供等)を行ってもその利益の一部がグループ外に流出することや、上場の意義も時の経過により変化しうること等も踏まえ、グループとしての企業価値向上や資本効率性の観点からこうした形態が最適なものであるか、定期的に点検(レビュー)することが重要」となります(2019年3月15日版のグループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(仮)6.2.1)。具体的には次のような施策が考えられます。
・取引条件の設定を子会社側に不利益が発生しないようにする。
・上場子会社を維持することがグループ全体の企業価値向上にとってメリットがあるか、つまり、少数株主利益に配慮しなければならないことからくる制約やコスト(グループの全体最適のためにリソースを活用しにくい等)に比して資金調達等のベネフィットが上回っているということを取締役会で審議する。
・親会社として上場子会社の取締役(特に独立社外取締役)に対する選解任権限の行使に当たり、上場子会社におけるガバナンス体制の実効性確保の観点から、必要な資質を備えた独立社外取締役が十分な数、選任されるように配慮する。
ここで注意したいのは、「子会社のガバナンス強化」と言っても「親会社からの統制を強める」のではなく「子会社が親会社から独立性を高めることができるようにするために子会社のガバナンスを強化する」ということです。そして、こういった施策を投資家等に向けて説明していくことも重要となります。
以前は昨今ほどには上場子会社の存在が問題視されてはいませんでした。経営者層の中にはそのような時代の記憶で止まっている方も少なくありません。上場子会社を取り巻く環境は確実に変化してきており、その変化に対応するために、親会社として取り得る選択肢は上場子会社を完全子会社化するのか、外部に売却するのかの二択に絞られていくことでしょう。なお、完全子会社化により少数株主が不本意な株価で売却を迫られる可能性もあります。利益相反リスクを回避するための完全子会社化の手続き自体が利益相反リスクを抱えるわけです。そのためには「公正なM&Aの在り方に関する指針」の遵守が必要になってきます(2019年4月19日のニュース「M&Aの説明責任、特別委員会の設置と開示が鍵に」を参照)。
さて、以上の解説をご覧いただければ、どれがGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。
<正解>
取締役B:「やはり親子上場というのは無理がありますね。親子上場の解消を急ぐべきです。」
(コメント:Bの発言は親子上場を取り巻く環境の変化に対応したものでありGoodです。具体的な解消方法(全株を売却するのか、あるいは完全子会社化を目指すのか。もし、売却するとしたらどこに売却するのが子会社の一般株主にとっての価値を最大化できるのか等)についても指摘できればなおGoodでした。)
取締役A:「子会社株式を上場させて親会社が上場利益を手にすることの何が悪いことなのでしょうか。これは正当な経済行為です。親子上場を問題視する理由が分かりません。」
(コメント:子会社株式を上場させること自体は確かに正当な経済行為です。上場とともにすべてを売り出せば何も問題は生じませんでした。売り出しを一部に留めたことで親子上場になってしまい、子会社の少数株主との利益相反の問題が生じてしまいました。以前は親子上場を問題視する声も少なかったことから、経営者層の中には取締役Aのような考えの持ち主も少なくないものと思われます。親子上場を取り巻く環境の変化に鈍感であることがばれてしまった発言でした。)
取締役C:「私も取締役Bの意見に賛成です。これ以上の利益相反リスクを回避するためには、S社を完全子会社にしなければなりません。」
(コメント:親子上場の利益相反リスクに気付いているのはGoodですが、完全子会社化という手続き自体が利益相反リスクの塊(子会社株式の株価は、親会社としては安ければ安いほど望ましいが、子会社の少数株主からすれば高ければ高いほど望ましい)であることから、「これ以上の」という表現は不適切と言えます。完全子会社化の手続きについての利益相反リスクに触れることができればGood発言になっただけに惜しいと言わざるを得ません。)
製造業のP社(東証一部上場)の取締役会では、前回に引き続き、P社とS社(上場子会社)との関係が話題になっています。取締役会における取締役A・B・Cの次の発言のうち、誰の発言がGood発言でしょうか?
取締役B:「やはり親子上場というのは無理がありますね。親子上場の解消を急ぐべきです。」
取締役A:「子会社株式を上場させて親会社が上場利益を手にすることの何が悪いことなのでしょうか。これは正当な経済行為です。親子上場を問題視する理由が分かりません。」
取締役C:「私も取締役Bの意見に賛成です。これ以上の利益相反リスクを回避するためには、S社を完全子会社にしなければなりません。」
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不正解です。
問題文のような論調が見受けられますが、そういった論調は根本的な認識の誤りに基づくものと言わざるを得ません(問題文は誤りです)。確かに、日銀はアセットオーナーとしてTOPIX構成企業(すなわち、全東証1部上場企業)の大株主になるが、議決権行使を含むエンゲージメントを行うのはアセットマネージャーである運用機関にほかならず、しかも、TOPIXに連動したETFを組成・運用するのも彼らであり、当然ながらスチュワードシップ・コードを受け入れています。したがって、日銀ETFの増加は、上場企業にとってむしろガバナンスが強化される要因となり得ます。
こちらの記事で再確認!
2019年4月24日 日銀ETFによりガバナンスは低下したか(会員限定)
不正解です。
親会社が上場子会社を完全子会社化するためにTOBを実施する際には、「マーケット・チェック」の機会を与えた(他の買収者による買収提案の機会の付与)ところで、親会社が第三者への売却に応じる意思が乏しいことが容易に想像されるため、真摯な対抗提案がなされることは考えにくいと言えます。そのような場合にマーケット・チェックの手法がが公正性担保措置として機能する場面は限定的となる点には注意が必要です。
こちらの記事で再確認!
2019年4月19日 M&Aの説明責任、特別委員会の設置と開示が鍵に(会員限定)
正解です。
問題文のような論調が見受けられますが、そういった論調は根本的な認識の誤りに基づくものと言わざるを得ません(問題文は誤りです)。確かに、日銀はアセットオーナーとしてTOPIX構成企業(すなわち、全東証1部上場企業)の大株主になるが、議決権行使を含むエンゲージメントを行うのはアセットマネージャーである運用機関にほかならず、しかも、TOPIXに連動したETFを組成・運用するのも彼らであり、当然ながらスチュワードシップ・コードを受け入れています。したがって、日銀ETFの増加は、上場企業にとってむしろガバナンスが強化される要因となり得ます。
こちらの記事で再確認!
2019年4月24日 日銀ETFによりガバナンスは低下したか(会員限定)
正解です。
親会社が上場子会社を完全子会社化するためにTOBを実施する際には、「マーケット・チェック」の機会を与えた(他の買収者による買収提案の機会の付与)ところで、親会社が第三者への売却に応じる意思が乏しいことが容易に想像されるため、真摯な対抗提案がなされることは考えにくいと言えます。そのような場合にマーケット・チェックの手法がが公正性担保措置として機能する場面は限定的となる点には注意が必要です。
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2019年4月19日 M&Aの説明責任、特別委員会の設置と開示が鍵に(会員限定)
正解です。
かつてはCSRを本業とは関係がない単なる“ボランティア活動”等と捉える経営者も少なくありませんでした。しかし、今やそのような経営者はだいぶ減ったと思われます。一口にCSR活動と言っても、本業にかかわる活動からそうではない活動まで様々です。本業の発展につながるCSR活動か否かは、業界との関連性や企業価値への影響といった軸で判断することも可能です。
こちらの記事で再確認!
2019年4月16日 「E」や「S」の経済的価値への換算(会員限定)