2018年6月1日から施行された改訂コーポレートガバナンス・コードに対応したコーポレートガバナンス報告書の提出期限(2018年12月末)からわずか2か月後の今年2月、同報告書の記載要領が一部変更されている。東証は「積極的な記載をご検討ください」と通達(2月21日付)を出したうえで、新たな記載要綱を公表している。
今回の主要な変更項目の一つである「指名委員会又は報酬委員会に相当する任意の委員会の有無」の補足説明においては、記載事項として新たに「主な検討事項」と「個々の委員の出席状況」が追加されたのみならず、記載することが「考えられます」から「望まれます」へと変更された(8ページ参照)。上場会社に対し示された「ご質問と回答」によると、「考えられます」は「記載が想定される事項を例示列挙している」ことを意味する一方、「望まれます」は「記載することを推奨している」ことを意味しているという。すなわち、強制力こそ伴っていないものの、東証が積極的に記載を求めている事項と言える。
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2019/05/08 任意の委員会に関するCG報告書記載要領が改正、著名企業でも対応不十分(会員限定)
2018年6月1日から施行された改訂コーポレートガバナンス・コードに対応したコーポレートガバナンス報告書(CG報告書)の提出期限(2018年12月末)からわずか2か月後の今年2月、同報告書の記載要領が一部変更されている。東証は「積極的な記載をご検討ください」と通達(2月21日付)を出したうえで、新たな記載要綱を公表している。
今回の主要な変更項目の一つである「指名委員会又は報酬委員会に相当する任意の委員会の有無」の補足説明においては、記載事項として新たに「主な検討事項」と「個々の委員の出席状況」が追加されたのみならず、記載することが「考えられます」から「望まれます」へと変更された(8ページ参照)。上場会社に対し示された「ご質問と回答」によると、「考えられます」は「記載が想定される事項を例示列挙している」ことを意味する一方、「望まれます」は「記載することを推奨している」ことを意味しているという。すなわち、強制力こそ伴っていないものの、東証が積極的に記載を求めている事項と言える。
※今回、この「開催頻度」と新たに追加された「主な検討事項」「個々の委員の出席状況等」を総称して、「委員会の活動状況」と括られた。
そこで当フォーラムが、2019年2月27日に公表された「GPIFの国内株式運用機関が選ぶ『優れたコーポレートガバナンス報告書』」において4つ以上の運用機関から高い評価を得た7社のうち、監査役会設置会社である2社(花王、資生堂)と監査等委員会設置会社である1社(カゴメ)のCG報告書をサンプルに、上記「記載することが望まれる事項」をどの程度記載しているか、報酬諮問委員会について調査したのが下表だ(空欄は情報なし)。
| CG報告書に記載すること が望まれる事項 |
花王 | カゴメ | 資生堂 |
| 委員の選定方法 | 全社外取締役/全社外監査役 取締役会会長 全代表取締役 |
3名以上で構成 半数以上は独立社外取締役 |
|
| 委員の氏名 | |||
| 選定理由/役割 | |||
| 開催頻度 | 2018年は1回 | 2018年度は8回 | |
| 主な検討事項 | 取締役/執行役員の報酬制度、報酬水準 | 経営環境や会社業績に応じた適正な報酬制度、報酬水準および個別業績に応じた個別報酬の妥当性 | 取締役/執行役員の個人別報酬、報酬制度 新たな長期インセンティブ型報酬の導入 |
| 委員の出席状況 | 全委員の出席 | ||
| 事務局の状況 |
運用機関から優れたCG報告書を作成していると評価されている3社だが、いずれも本件については東証が期待する情報量に及ばないことが分かる。統合報告書など他の媒体で開示していることはあり得るが、少なくともCG報告書において開示の充実を図る余地は未だに大きいと言えるだろう。
2019/05/07 グループ・ガバナンス実務指針案、上場子会社の扱いに“特段の配慮”
経済産業省のCGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会(第2期))が、上場子会社の利益相反構造に関する実務指針である「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(以下、実務指針)を(2019年)6月にも公表する予定であることは既報のとおり(2019年3月15日のニュース『「親子上場」問題でCGコード改訂の可能性も』、2019年3月29日掲載の【役員会 Good&Bad発言集】子会社と利益相反(1)参照)。2019年2月13日にはその骨子案が公表されている。骨子案は24ページと短いものにとどまっているが、・・・
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2019/05/07 グループ・ガバナンス実務指針案、上場子会社の扱いに“特段の配慮”(会員限定)
経済産業省のCGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会(第2期))が、上場子会社の利益相反構造に関する実務指針である「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」(以下、実務指針)を(2019年)6月にも公表する予定であることは既報のとおり(2019年3月15日のニュース『「親子上場」問題でCGコード改訂の可能性も』、2019年3月29日掲載の【役員会 Good&Bad発言集】子会社と利益相反(1)参照)。2019年2月13日にはその骨子案が公表されている。骨子案は24ページと短いものにとどまっているが、当フォーラムの取材によると、実務指針は120ページを超えるものとなる模様。実務指針(現段階では「案」であり、未公表。以下同じ)は下記のとおり7つのパートから構成される。骨子案と比較すると、骨子案にはなかった「事業ポートフォリオマネジメントの在り方」が追加されているほか、骨子案では「上場子会社の在り方」とされていたパートが「上場子会社に関するガバナンスの在り方」へと変更されている(赤字部分)。
1. はじめに(*)
2. グループ設計の在り方
3. 事業ポートフォリオマネジメントの在り方
4. グループ内部統制システムの在り方
5. 子会社経営陣の指名・報酬の在り方
6. 上場子会社に関するガバナンスの在り方
7. さいごに
*ガイドラインの位置付け、目的、対象など
膨大な量に及ぶ実務指針だが、その肝となるのが「6. 上場子会社に関するガバナンスの在り方」だ。実務指針を策定した最大の目的は、一般株主と利益相反が生じやすい「上場子会社」のガバナンスを律することにあると言っても過言ではない。この点は、実務指針案の「はじめに」の中で、「グループガバナンスにおいて、少数株主との利益相反が問題となりうる上場子会社の扱いについては“特段の配慮”が必要となる」ことから独立した章(6. 上場子会社に関するガバナンスの在り方)を設けることとした旨が説明されていることからも明らかだ(骨子案にはこのような記載はない。少数株主との利益相反事例は骨子案の19ページの図参照)。
一般株主 : 「支配株主」以外の株主のこと。「支配株主」とは、議決権の50%超を有している者や議決権の40%以上を有している者で、かつ、取締役の過半数を派遣していたり重要な財務および事業の方針の決定を支配する契約書が存在していたりする者を指す(東証 有価証券上場規程施行規則3条の2)。上場会社の支配株主自体も上場しているケースを「親子上場」という。
利益相反 : 例えば親会社の要請を受け、上場子会社のサービスを親会社にだけ一般価格よりも割安の価格で提供した場合、親会社はコストダウンを図ることができる一方で、子会社の収益機会はその分損なわれ、ひいては子会社の一般株主の配当減や株価下落につながることになる。
その中でも企業にとって特に関心が高いのは、やはり事実上の“数値基準”を伴う事項だろう。
実務指針案は、上場子会社においては「支配株主である親会社と上場子会社の一般株主の間に利益相反リスクが存在する」と指摘したうえで、「上場子会社における実効的なガバナンス体制の構築を通じ、一般株主の利益に十分配慮した対応を行うことが求められる」とする。この「上場子会社における実効的なガバナンス体制」を構築する上でキーワードとなるのが「独立性」だ。実務指針案では、上場子会社としての独立性を担保する役割の多くを上場子会社の「独立社外取締役」に求めている。まず、「10年以内」に親会社に所属していた者は上場子会社の独立社外取締役に選任しないこと検討すべき、とする。この点、東証の独立性基準では、「最近まで親会社・兄弟会社の取締役等であった者」は独立社外取締役の独立性を満たさないこととされているが、親会社・兄弟会社の取締役等であったのが「1年以上前」であれば「最近」には該当しない(すなわち、独立性基準に抵触しない。東証「独立役員の確保に係る実務上の留意事項(2015年6月改訂版)」4ページ参照)。実務指針案が求める内容に従うとすれば、多くの上場子会社が独立社外取締役の選び直しを迫られる可能性がある。
上場子会社の取締役会における独立社外取締役の比率については、「1/3以上や過半数等」を目指すことが基本、としている。実務指針案では、独立社外取締役の候補人材の不足等によりこのような対応が直ちに困難である場合であっても、「重要な利益相反取引」が発生する局面では、「独立社外取締役又は独立社外監査役」のみから構成される又は過半数を占める委員会(監査等委員会や監査委員会を活用する方法もあり)において、一般株主の利益保護の観点から審議・検討し、取締役会もその審議結果を尊重する仕組みを作ることを検討すべきとしている。いずれにせよ上場子会社は、取締役会、あるいは重要な利益相反取引の可否を審議する委員会における独立社外取締役の比率を高めることが求められる。また実務指針案では、各社が「重要な利益相反取引」の具体的な範囲や委員会のミッションを定めることも求めている。
重要な利益相反取引 : 例えば、市場価格による取引や少額取引、また同一条件で繰り返される取引等は、通常、利益相反リスクが大きくないため、「重要な利益相反取引」には含まれないと考えられる。
さらに実務指針案では、上場子会社に対し、上述したような実効的なガバナンスを実現するための方策を積極的に情報開示すべきとしている。
一方、実務指針案は上場子会社の「親会社」に対しても対応を求めている。具体的には、当面の間「上場子会社」を維持する場合には、①当該子会社を上場子会社として維持することの合理的理由、②上場子会社のガバナンス体制の実効性確保について取締役会で審議し、投資家などに対して情報開示を通じて十分な説明責任を果たすことが求められるとしている。①では、上場子会社の一般株主利益に配慮しなければならないことに伴う制約やコストと比較して、自社グループにとって当該子会社の上場を維持するベネフィットが上回っていることを具体的に説明する必要があるとする。加えて実務指針案では、ベストプラクティスとして、「独自ブランドを有するわけでもなく、親会社の一部機能を担っているだけの上場子会社(例えば、製造委託を行う上場子会社)については、上場させている意味がないので完全子会社化した」という日本企業の取組例を紹介している(その一方で、「完全子会社化しなくても、グループ全体の企業価値が高まるという考え方があってもよい」との意見も紹介している)。
実務指針案の冒頭では、実務指針は「コーポレートガバナンス・コードを補完するもの」と明記されている。「これに沿った対応を行わなかったことが取締役等の善管注意義務違反を構成するものではない」とはしつつも、「反対に、本ガイドラインに沿った対応を行った場合には、他に特段の事情がない限り、通常は善管注意義務を十分に果たしていると評価されるであろうと考えられる」とも言っている。善管注意義務違反に敏感な経営陣は、実務指針を意識せざるを得ないだろう。
日本の上場子会社数は減少傾向にはあるとはいえ、2018年時点で東証上場会社のうち628社(全体の17.2%)が上場子会社に該当する。このうち親会社が上場会社である上場子会社は311社(同8.5%)に上る。さらに実務指針案では、「一般株主との利益相反リスクに対応するためのガバナンスの在り方に関する部分については、上場子会社に限らず、その他の支配株主を有する上場会社においても基本的に妥当するものと考えられる」としているほか、主要株主等が形式的には支配株主の定義に該当しない場合(例えば、議決権保有割合が40%未満の場合)であっても、「実際の議決権行使率などを総合的に勘案し、実質的に子会社を支配していると考えられる場合には、同様の利益相反リスクが存在すると考えられるため、本指針の趣旨を踏まえ、適切なガバナンスの在り方を検討することが期待される」としていることから、実務指針の影響は広範な企業に及ぶことになりそうだ。
2019/04/30 【WEBセミナー】~3月総会の動向から 6月総会をシュミレーションする~ 2018年12月決算会社・3月株主総会分析
概略
【セミナー開催日】2019年4月19日(金)
3月決算会社においては、2019年6月の定時株主総会に向けた準備が本格化していることでしょう。改訂コーポレートガバナンス・コードに対応したコーポレートガバナンス報告書の提出が昨年12月末をもって締め切られたことから、今6月総会では政策保有株式への対応や資本コストの把握、独立した諮問委員会の活用など、主要改訂項目が論点になることが予想されます。また、2017年5月に実施されたスチュワードシップ・コードの改訂により機関投資家に議決権行使結果の個別開示が求められて以来、国内機関投資家の議決権行使基準とそれに基づく議決権行使姿勢の厳格化が顕著となっており、予想以上の反対票を投じられる議案もしばしば見受けられるようになりました。
本セミナーでは、株主総会実務や株主総会分析の第一人者であり、全国株懇連合会の理事も務める三菱UFJ信託銀行の中川雅博様をお招きし、3月決算に次いで社数が多い12月決算会社の3月総会を分析していただきます。議案への賛否動向や、特徴的な株主提案や株主からの質問など3月総会の動向を押さえておくことは、6月総会をシュミレーションする上でも役に立つはずです。また、開催日の集中度合いや個人株主に来場してもらうための工夫など、株主総会の運営面についてもご報告いただきます。
【講師】三菱UFJ信託銀行
法人マーケット統括部 次長
中川 雅博(なかがわ まさひろ)様
| セミナー資料 | ~3月総会の動向から6月総会をシュミレーションする~2018年12月決算会社・3月株主総会分析.pdf(0.97MB) |
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2019/04/30 【WEBセミナー】~上場会社に求められる対応と優先順位~ 「会社法(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」のポイント
概略
【セミナー開催日】2019年4月19日(金)
周知のとおり、2017年4月から1年半以上の時間をかけて会社法見直しに向け議論を重ねてきた法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会は2019年1月16日、「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」(以下、要綱案)を確定しました。要項案には、株主総会資料の電子提供制度の導入、社外取締役の選任義務付け、株主提案議案の制限、役員報酬に関する決定方針等に関する開示の充実、株式交付制度の創設、D&O保険や会社補償の内容の開示や株主総会での決議の義務付けなど、コーポレートガバナンスに関する重要改正事項が多数盛り込まれています。
会社法改正法案の今通常国会への提出こそ見送られたものの、近い将来改正会社法が成立・施行されることは規定路線であり、上場会社は、対応に時間を要する事項については今のうちから対応方針を検討したり、対応に向けた準備を始めておく必要があります。
本セミナーでは、今回の会社法改正を早い段階からウォッチし、改正の経緯にも精通するTMI総合法律事務所 パートナーの池田賢生弁護士をお招きし、要綱案の内容を解説していただきつつ、各改正により上場会社に求められる対応を示していただくとともに、対応の優先順位付けも行っていただきます。
【講師】TMI総合法律事務所
パートナー 弁護士
池田 賢生(いけだ けんせい)様
| セミナー資料 | 「改正会社法会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」のポイント.pdf(0.97MB) 会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案.pdf(71.7KB) |
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2019/04/30 【WEBセミナー】~3月総会の動向から 6月総会をシュミレーションする~ 2018年12月決算会社・3月株主総会分析(会員限定)
概略
【セミナー開催日】2019年4月19日(金)
3月決算会社においては、2019年6月の定時株主総会に向けた準備が本格化していることでしょう。改訂コーポレートガバナンス・コードに対応したコーポレートガバナンス報告書の提出が昨年12月末をもって締め切られたことから、今6月総会では政策保有株式への対応や資本コストの把握、独立した諮問委員会の活用など、主要改訂項目が論点になることが予想されます。また、2017年5月に実施されたスチュワードシップ・コードの改訂により機関投資家に議決権行使結果の個別開示が求められて以来、国内機関投資家の議決権行使基準とそれに基づく議決権行使姿勢の厳格化が顕著となっており、予想以上の反対票を投じられる議案もしばしば見受けられるようになりました。
本セミナーでは、株主総会実務や株主総会分析の第一人者であり、全国株懇連合会の理事も務める三菱UFJ信託銀行の中川雅博様をお招きし、3月決算に次いで社数が多い12月決算会社の3月総会を分析していただきます。議案への賛否動向や、特徴的な株主提案や株主からの質問など3月総会の動向を押さえておくことは、6月総会をシュミレーションする上でも役に立つはずです。また、開催日の集中度合いや個人株主に来場してもらうための工夫など、株主総会の運営面についてもご報告いただきます。
【講師】三菱UFJ信託銀行
法人マーケット統括部 次長
中川 雅博(なかがわ まさひろ)様
| セミナー資料 | ~3月総会の動向から6月総会をシュミレーションする~2018年12月決算会社・3月株主総会分析.pdf(598KB) (レジュメ4ページ目の差替版はこちら) |
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2019/04/30 【WEBセミナー】~上場会社に求められる対応と優先順位~ 「会社法(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」のポイント(会員限定)
概略
【セミナー開催日】2019年4月19日(金)
周知のとおり、2017年4月から1年半以上の時間をかけて会社法見直しに向け議論を重ねてきた法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会は2019年1月16日、「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」(以下、要綱案)を確定しました。要項案には、株主総会資料の電子提供制度の導入、社外取締役の選任義務付け、株主提案議案の制限、役員報酬に関する決定方針等に関する開示の充実、株式交付制度の創設、D&O保険や会社補償の内容の開示や株主総会での決議の義務付けなど、コーポレートガバナンスに関する重要改正事項が多数盛り込まれています。
会社法改正法案の今通常国会への提出こそ見送られたものの、近い将来改正会社法が成立・施行されることは規定路線であり、上場会社は、対応に時間を要する事項については今のうちから対応方針を検討したり、対応に向けた準備を始めておく必要があります。
本セミナーでは、今回の会社法改正を早い段階からウォッチし、改正の経緯にも精通するTMI総合法律事務所 パートナーの池田賢生弁護士をお招きし、要綱案の内容を解説していただきつつ、各改正により上場会社に求められる対応を示していただくとともに、対応の優先順位付けも行っていただきます。
【講師】TMI総合法律事務所
パートナー 弁護士
池田 賢生(いけだ けんせい)様
| セミナー資料 | 「改正会社法会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」のポイント.pdf(0.97MB) 会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案.pdf(71.7KB) |
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2019/04/26 2019年4月度チェックテスト
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【問題1】
ACGA(アジア・コーポレート・ガバナンス協会)のCG Watch 2018におけるコーポレートガバナンス・ランキングで日本が2016年の4位から7位に後退した理由として、「ガバナンスや開示の制度の複雑さ」が考えられる。
2019/04/26 【2019年3月の課題】補充原則4-10①をエクスプレインした企業における報酬委員会に関する開示(会員限定)
任意の報酬委員会の活動内容等を開示できる上場企業は多くない
周知のとおり、金融庁は2019年1月末、役員報酬をはじめとするコーポレートガバナンス関連の開示の大幅な充実を求める改正開示府令を公布・施行しました。改正開示府令には、2019年3月決算の有価証券報告書から適用されるものと、2020年3月決算の有価証券報告書から適用されるものがありますが、2019年3月決算の有価証券報告書から開示内容の拡充が求められるものの一つが役員報酬です。
<関連記事>
2018年11月5日のニュース『速報 「コーポレート・ガバナンスの状況等」の記載内容が大幅改正へ』
【2018年11月の課題】新たな有報における「役員報酬」と「政策保有株式」の記載事項
2019年2月8日のニュース『EUでは「10年」が上限の継続監査期間、監査法人変更でも合算のケースも』
2019年1月31日の【役員会 Good&Bad発言集】継続監査期間
2019年2月15日のニュース「社外役員、報酬、政策保有等今3月期から必要な開示への金融庁の考え方」
今回の開示府令の改正により、役員報酬に関する開示は、大きく分けて下表の3項目から構成されることになりました(赤字が今回の改正により追加された部分。中段「報酬実績と業績との関係性」の①②は報酬の種類が変更)。
| 開示項目の大分類 | 具体的な開示項目 |
| 報酬プログラム (報酬の決定に関する⽅針) |
① 報酬の決定に関する⽅針(無い場合はその旨) ② 業績連動報酬と業績連動報酬以外の報酬の⽀給割合の決定に関する⽅針 ③ 業績連動報酬にかかる指標(KPI)、KPIの選定理由、⽀給額の決定⽅法 ④ 役職ごとの報酬の決定に関する⽅針 ⑤ 役員報酬にかかる株主総会の決議年⽉⽇、決議内容(当該定めに係る役員の員数含む) ※指名委員会等設置会社は開⽰不要 |
| 報酬実績と業績との関係性 | ①役員区分ごとの報酬総額及び報酬の種類別総額開⽰ ※ 種類別とは、例えば、固定報酬、業績連動報酬、退職慰労⾦等の区分 ※ 対象となる役員数も記載 ② 連結報酬総額1億円以上の役員の個別報酬開⽰ ③ 最近事業年度の業績連動報酬にかかる指標(KPI)の⽬標及び実績 |
| 報酬ガバナンス (報酬委員会) |
① 「報酬の決定に関する⽅針」の決定権限を有する者の⽒名・名称、権限の内容・裁量の範囲 ② 「報酬の決定に関する⽅針」の決定に関与する任意の報酬委員会等が存在する場合における⼿続の概要 ③ 最近事業年度にかかる報酬額の決定過程における取締役会・任意の報酬委員会等の活動内容 |
ただ、現状では、改正開示府令が開示を求める情報を全て埋められる上場企業の方が少ないと言われています。この点は金融庁も認識している模様であり、それは金融庁が4月に全国9か所を回って改正開示府令(政策保有株など役員報酬以外の改正部分を含む)の説明会を開催したことからもうかがえます。
特に企業が頭を悩ませているのが、報酬委員会に関する開示(上表の最下段「報酬ガバナンス(報酬委員会)」の部分)でしょう。東証が2019年1月28日に公表した「改訂コーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2018年12月末日時点)」によると、報酬や指名などに関する独立した諮問委員会の設置を求める補充原則4-10①のコンプライ率は前回調査時より27.2ポイントも減少し、本則市場(東証一部、二部)上場企業の52.1%にとどまっています。この数字からは、本則市場に上場する企業の相当数が独立した任意の報酬諮問委員会(以下、適宜「報酬諮問委員会」という)を持たず、「②任意の報酬委員会等が存在する場合における⼿続の概要」や「②任意の報酬委員会等の活動内容」を記載できない状態にあることが想定されます。
また、形式的には報酬諮問委員会を有する企業であっても、実際にその活動状況などを問われると、即答できないところが少なくないものと思われます。
金融庁は「社長一任」を注視
もっとも、補充原則4-10をコンプライアンスしているかどうかということと、改正開示府令を受けた役員報酬開示への対応は別の話であり、報酬諮問委員会を有していないからと言って、上表の「報酬ガバナンス(報酬委員会)」について開示をしなくてよいというわけではありません。会社法上、役員報酬について検討する第一義的責任は取締役会にあるため、現状報酬諮問委員会がないのであれば、「取締役会」による報酬ガバナンスについて開示する必要があります。実際、上表の「報酬ガバナンス(報酬委員会)」の① では『「報酬の決定に関する⽅針」の決定権限を有する者の⽒名・名称、権限の内容・裁量の範囲』の記載を求めていますが、「決定権限を有する者」を報酬諮問委員会に限定していません。また、③では「最近事業年度にかかる報酬額の決定過程における取締役会・任意の報酬委員会等の活動内容」と、取締役会の活動内容の開示も求めています。すなわち、報酬諮問委員会がないのであれば、ダイレクトに取締役会の活動内容等を開示しなければならないということです。
ここで問題になるのが、役員報酬の額や算定方法(以下、単に「役員報酬」という)の決定を代表取締役に一任しているケースです。報酬諮問委員会がなく、取締役会だけで役員報酬を検討しているという企業は、事実上、代表取締役に役員報酬の決定を一任していることが多いものと思われますが、今回の役員報酬開示の改正の中で最もスポットが当たっているのが、この「一任」の有無です。
一任を行っている企業からは、「役員報酬の決定を一任しているのは、各役員のプライバシーに配慮する必要があるため」との声も聞こえてきます。すなわち、「役員全員の報酬が全社業績やROEに連動して動くのであればともかく、個人評価や担当事業部門評価により各役員の報酬額に差が出て来る場合まで取締役会で個人の報酬をあけっぴろげに決めなければならないとなると、何故ある役員の評価が別の役員より高いのかを説明しなければならなくなり、社長としては非常にやりにくい。役員報酬決定プロセスの密室性はやむを得ない」というわけです。
しかし、まさにこのような密室の中での役員報酬決定が日産自動車事件を招いたのは周知のとおりです。外部からは見えないところで役員報酬が決まるという「一任」に対し金融庁は厳しい視線を注いでおり、経営トップが密室で役員報酬を決めている場合には、少なくとも投資家に「リスク情報」としても開示すべきというのが金融庁のスタンスです。金融庁は、たとえ役員報酬の(全体ではなく)一部でも一任している部分があればその旨を開示すべきとの考えを示しています(「開示府令案に対するパブリックコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」のNo.61参照)。
金融庁がこうした考え方を示している背景には、会社法の改正議論もあります。2019年1月16日に公表された「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」には、役員報酬の決定を代表取締役に一任している場合には、その旨を事業報告書で開示することを求める旨が明記されています( 2019年1月16日のニュース「会社法制(企業統治等関係)部会、会社法見直し要綱案を確定」参照)。会社法の改正法案は今通常国会への提出が間に合わず、今年(2019年)秋の臨時国会に提出されることになりそうですが、こうした会社法の改正議論を汲み、金融庁は有価証券報告書においても「一任」に関する開示は必須と判断したものと思われます。
では、実際に「一任」を行っている企業は、どのような開示をすればよいのでしょうか。日産自動車事件が世間を騒がせる中、「一任」を行っている企業側としては、あまり開示はしたくないというのが本音だと思われますが、基本的には正直に「役員報酬は社長一任で決めている」と書かざるを得ません。ただ、「書き方」には工夫の余地があります。例えば、「現在、取締役会では役員報酬決定の過程について・・・のような課題を認識しています。本年度は改正開示府令適用初年度ということで課題の解消には至りませんでしたが、来年度に向けて、コーポレートガバナンスに資する役員報酬の決定方法等を検討中です。」といった記載を行うことが考えられます。
「社長一任」を行っている企業の開示
もっとも、報酬諮問委員会を有している企業であっても、実質的には「社長一任」となっており、社長による各役員の個人評価が報酬諮問委員会の審議項目になっていないところがあります。社長には「役員個人の評価は社外の人が見ても分からないから」という言い分もあるかもしれませんが、たとえ個人評価は社長が行うとしても、報酬諮問委員会を活用すべきです。同じ社長一任でも、報酬諮問委員会で個人評価についても審議されたうえでの一任なのか、あるいは“手放し”での一任なのかは区別して評価しなければなりません。社長一任が問題視されている現状を踏まえれば、社長が個人評価を行う場合には、社長が起案する形で、報酬諮問委員会に当該個人評価についての審議を依頼すべきでしょう。そのうえで、「役員報酬については取締役会で概要を決定しているが、個人評価の部分は、報酬諮問委員会の審議を踏まえて社長に一任している。」と開示すれば、投資家にも一定の理解は得られるでしょう。
社長一任とまでは言えないものの、意外と多いのが、報酬諮問委員会が各役員の個別報酬額を見ていないケースです。例えば報酬諮問委員会はデータベース等を参考に役位別の標準報酬額だけを示し、業績評価、個人評価によって左右される各役員の実際の報酬額の決定は取締役会に任せているという話をよく耳にします。しかし、業績評価や個人評価を受けて各役員の個別の報酬額がどうなったのかまでウォッチし、その適否について審議しなければ、報酬諮問委員会が取締役会の機能強化に役立っているとは言えません。
また、社外役員のスケジュールを合わせるのが難しく、年に2回しか報酬諮問委員会を開催できないといった理由で、個人評価のような細かい事項は審議せず、役員報酬の算定式(公式=フォーミュラ)のみを審議対象としているという企業もあるようです。確かに、フォーミュラの適否の審議さえ終われば後は業績等の数値をフォーミュラに代入するだけなので、それで十分のようにも見えます。しかし現実には、いかにフォーミュラがしっかりしていても、単に数字を当てはめるだけで役員報酬額を決定することはないのが一般的です。例えば資源価格が乱高下した、あるいは為替が大きく変動したといった場合には、フォーミュラに数字を当てはめて出てきた役員報酬額と経営陣の努力・実力が整合しないことがあります。このように役員に帰責事由がない事象によりフォーミュラ上の役員報酬額が低く算出された場合には、「インセンティブ型報酬」としての実効性を回復するために、報酬諮問委員会が“事後的な調整”について審議し、その審議結果を踏まえて取締役会が最終的な役員報酬額を最終的に決定をするといったプロセスを踏むことが必要になる場合もあります(この点については2018年6月28日のニュース「インセンティブ報酬の事後調整」参照)。
このほか、当たり障りのないこと(例えば、報酬諮問委員会に諮るまでなく自動的に決まってしまう報酬等)しか報酬諮問委員会にかけていないというケースも少なくありません。
「報酬委員会内規」の公表も視野に
このように、報酬諮問委員において検討対象としているテーマは会社によってかなり違いがあります。その大きな原因として、報酬諮問委員会の権限等が明確になっていないということがあります。
上表のとおり、改正開示府令では、報酬諮問委員会の権限や審議範囲の範囲(上表最下段の① 「報酬の決定に関する⽅針」の決定権限を有する者の⽒名・名称、権限の内容・裁量の範囲)を明確にすることを求めていますが、報酬諮問委員会から出てきた答申内容が、どのようなルート・形で取締役会の決定に反映されるのかまでを開示しなければ、改正開示府令にいう「権限の内容・裁量の範囲」を明確化することはできません。例えば報酬諮問委員会の「こうあるべき」という答申に対し、取締役会は「貴重なご意見としておうかがいします」と言うだけで、実際には答申の内容とは全く別の判断をしているとなれば、そもそも報酬諮問委員会の存在意義はないでしょう。この点を踏まえると、報酬諮問委員会の権限や裁量を投資家に伝えるうえでは、開示の際にどのような表現を使うのかも重要です。「配慮して決める」「尊重して決める」「そのまま受け入れる」「異なる意見が出てきた場合には差し戻す」--等々、企業によって濃淡はあると思いますが、報酬諮問委員会を単なる“評論家”に位置付けるような表現は避けるべきでしょう。
報酬諮問を設置することが会社法で義務付けられている指名委員会等設置会社はもちろん、任意で報酬諮問委員を設けている監査役会設置会社や監査等委員会設置会社でも、「報酬委員会内規(報酬委員会規程)」を有しているのが一般的でしょう。改正開示府令が求める「権限の内容・裁量の範囲」の開示を実現するためには、この「報酬委員会内規」をそのまま公表してしまうということも一考です。「報酬委員会内規」は英語では「コミッティーチャーター」と呼ばれ、欧米企業は、法律上の要請により、これを自社のウェブサイトで公表しています。同様に、日本でも指名委員会等設置会社は報酬委員会内規をウェブサイトで公表していますので(例えば野村ホールディングスの「報酬委員会規程」はこちら)、改正開示府令への対応にあたっては参考にするとよいでしょう。もっとも、一般的には、指名委員会等設置会社の報酬委員会内規はそれほど網羅的な内容とはなっていません。これは、報酬諮問委員会はあくまで任意の委員会であり、取締役会の権限を委譲することができないのに対し、指名委員会等設置会社における報酬委員会は会社法上、報酬の決定権限が担保されているからです。したがって、報酬諮問委員会の内規は、報酬委員会の内規と同じレベルでは足りないと考えるべきです。特に「権限の内容・裁量の範囲」はより明確に記載する必要があります。
報酬諮問委員会が事実上活動していない企業の開示
「権限の内容・裁量の範囲」に加え、改正開示府令が報酬諮問委員会に開示を求めているのがその「活動内容」です(上表最下段の③最近事業年度にかかる報酬額の決定過程における取締役会・任意の報酬委員会等の活動内容)。
しかし、上述のように「年に2回しか報酬諮問委員会を開催していない」といった場合、活動内容を開示すること自体憚れるというのが企業側の本音でしょう。また、形だけは報酬諮問委員会を作ったものの実質的には活動していないというケースも同様です。
現実に活動をしていないのであれば、いくら開示ルールが出来たからといって活動内容を書くことは困難です。基本的には、活動していないのであればその旨を正直に書くしかないでしょう。もっとも、金融庁は、「活動の内容」としては「各会議の毎回の議論の詳細の開示までは求められておらず、報酬額の決定の過程が開示されていれば十分」との考えを示しており(開示府令案に対するパブリックコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方のNo.65参照)、報酬諮問委員会を開催した回数を明示することまでは求めていません。とはいえ、活動をしていないのであれば「報酬額の決定の過程」を開示することも困難でしょう。このような場合には、今後の活動の方向性などについて表明しておくことになると考えられます。
欧米企業の場合、報酬委員会の活動の年間スケジュールを開示しているのが通常であり、これを見れば、開催回数はもちろん、どのようなテーマが議論されているのかまで把握することができます。日本企業でも、書ける情報をたくさん持っているところは欧米企業並みの積極的な開示を行うところが出て来そうです。報酬諮問委員会の活動の内容に関する開示レベルは、企業によって大きな差が生じることになりそうです。
金融庁、「ベストプラクティス」のとりまとめも
改正開示府令が公布・施行されたのは2019年1月末であり、パブリックコメントに付されたのは2018年11月2日です。改正開示府令のベースとなった金融庁・金融審議会のディスクロージャー・ワーキング・グループ報告は2018年6月28日に公表されおり、その時点で改正開示府令の方向性は見えていたとはいえ、改訂コーポレートガバナンス・コードに対応したコーポレートガバナンス報告書の提出期限が2018年12月末とされていたこともあり、2019年3月決算の有価証券報告書から適用される改正開示府令に完璧に対応することができないとしても、やむを得ないと言えます。
結論として、ここまで述べてきたように、改正開示府令が求める内容を開示できない項目については、今回は現在認識している課題や今後の取り組みなどを開示しておくということも容認されるでしょう。実際、最近の有価証券報告書では、今後の取り組みを開示する事例が時折見られます。例えば12月決算の資生堂は、2019年3月に提出した有価証券報告書の中で、「新長期インセンティブ型報酬」を将来的には日本以外の地域本社の経営陣にも支給することを視野に入れている旨を明らかにしています(同社の有価証券報告書73ページの最終段落参照)。
金融庁は、多くの企業が改正開示府令への対応に苦慮している現状を踏まえ、いずれ優れた開示事例を「ベストプラクティス」としてとりまとめたい意向を持っているようです。来年度以降に本格化すると思われる改正開示府令への対応に向け、どのようなベストプラクティスが出て来るのか、注目されます。










