2018/09/28 2018年9月度チェックテスト第2問解答画面(不正解)

不正解です。
会社法制(企業統治等関係)部会で検討中の「要綱案たたき台」では、EDINETを通じて株主総会関係資料を電子提供することを認める案が廃案となりました。仮にEDINETを通じて有価証券報告書と一体化した株主総会関係資料を電子提供することが認められれば、定時株主総会は必然的に有価証券報告書提出“後”の開催となることから、現状の有価証券報告書提出までの一般的なスケジュール(決算日後2か月半を超えるタイミングで提出)を考慮すると、株主総会の後ろ倒し開催と親和性があり、株主総会を後ろ倒しで開催する上場会社が増えるとの期待する向きもありました。しかし、EDINET活用案が白紙となったことで、株主総会の後ろ倒し開催の普及はまた一歩遠のいたとも言えそうです。

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2018/09/07 株主総会資料、EDINETでの提供は認めず 書面交付をふるい落す措置も(会員限定)

2018/09/28 2018年9月度チェックテスト第2問解答画面(正解)

正解です。
会社法制(企業統治等関係)部会で検討中の「要綱案たたき台」では、EDINETを通じて株主総会関係資料を電子提供することを認める案が廃案となりました。仮にEDINETを通じて有価証券報告書と一体化した株主総会関係資料を電子提供することが認められれば、定時株主総会は必然的に有価証券報告書提出“後”の開催となることから、現状の有価証券報告書提出までの一般的なスケジュール(決算日後2か月半を超えるタイミングで提出)を考慮すると、株主総会の後ろ倒し開催と親和性があり、株主総会を後ろ倒しで開催する上場会社が増えるとの期待する向きもありました。しかし、EDINET活用案が白紙となったことで、株主総会の後ろ倒し開催の普及はまた一歩遠のいたとも言えそうです。

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2018/09/07 株主総会資料、EDINETでの提供は認めず 書面交付をふるい落す措置も(会員限定)

2018/09/28 2018年9月度チェックテスト第1問解答画面(不正解)

不正解です。
日本版司法取引の適用対象となる犯罪は談合、贈収賄、詐欺、背任、横領だけはありません。改正刑事訴訟法350条の2第2項には「その他の財政経済関係犯罪として政令で定めるもの」(改正刑事訴訟法350条の2第2項三号)も対象となるとされており、政令(刑事訴訟法350条の2第2項第三号の罪を定める政令)には、各種の業法のほか、税法、金商法、会社法など、企業にとってお馴染みの法律が並んでいます。つまり、これらの法律に規定されている刑罰は全て司法取引の対象になるということです。「日本版司法取引」を可能にする改正刑事訴訟法が(2018年)6月1日に施行されてから1か月余りで早速初の適用事例が出ましたが、近い将来二番目の適用事例が出てきても不思議ではありません。

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2018/09/05 「日本版司法取引」の活用を検討する際の企業・役員の留意点(会員限定)

2018/09/28 2018年9月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
日本版司法取引の適用対象となる犯罪は談合、贈収賄、詐欺、背任、横領だけはありません。改正刑事訴訟法350条の2第2項には「その他の財政経済関係犯罪として政令で定めるもの」(改正刑事訴訟法350条の2第2項三号)も対象となるとされており、政令(刑事訴訟法350条の2第2項第三号の罪を定める政令)には、各種の業法のほか、税法、金商法、会社法など、企業にとってお馴染みの法律が並んでいます。つまり、これらの法律に規定されている刑罰は全て司法取引の対象になるということです。「日本版司法取引」を可能にする改正刑事訴訟法が(2018年)6月1日に施行されてから1か月余りで早速初の適用事例が出ましたが、近い将来二番目の適用事例が出てきても不思議ではありません。

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2018/09/05 「日本版司法取引」の活用を検討する際の企業・役員の留意点(会員限定)

2018/09/27 【失敗学第52回】ジャストシステムの事例(会員限定)

概要

日本語ワープロソフト「一太郎」や日本語入力システム「ATOK」等の開発販売を手掛けるジャストシステム(東証市場第一部)で、事業部長が法人向け事業の一部製品を会社に無断で返品を保証して販売店に販売していたことがわかり、2018年3月期で1,084百万円の売上高の減額訂正が必要になった。

経緯

ジャストシステムが、2018年9月に「特別調査委員会の調査報告書」を公表するまでの経緯を時系列で示すと、次のとおり。

2012年頃
ジャストシステムのC事業部(以下、事業部)でZ元事業部長(以下、事業部長)が主導して販売店に対して返品を保証した取引(以下、返品保証付販売取引)が開始。返品保証付販売取引は、事業部のマネージャーやリーダーといった営業担当の上位者が関与して、下位の者や事業部外には仕組みを知らせずに行われた。

2014年頃
事業部では、対前年売上の20%増の予算を毎年策定し、それを前提に営業部門別、グループ別、エリア別、個人別の予算も決められており、事業部長が予算達成のために返品保証付販売取引の拡大を推進したことに伴い、返品保証付販売取引の金額が膨らんでいった。

2018年
事業部長のグループウェアのスケジュールと本人のスケジュールに齟齬がある点が発覚したため、事業部長に対する社内調査が行われ、それをきっかけとして経営企画室は会社に無断で返品保証付販売取引が行われていた可能性を認識するに至った。
7月3日~5日:取締役および経営企画室による事業部長に対するインタビューが実施され、事業部長は返品保証付販売取引を認めた。その後、事業部長は2018年7月5日付で退職届を提出した。
7月24日:ジャストシステムが特別調査委員会を設置(リリースはこちら)。
9月12日:ジャストシステムが「特別調査委員会の調査報告書」を公表。

内容・原因・改善策

ジャストシステムが、2018年9月に公表した「特別調査委員会の調査報告書」によると、本件の問題点の主な内容とその原因、再発防止策は次のとおりである。

会社に無断で行った返品保証付販売取引
内容 ジャストシステムでは、法人向け事業における製品の販売について、返品を保証した取引を認めていない。それにもかかわらず、法人向けの一部について、元従業員(事業部長)が会社に無断で返品条項を付帯して販売店に販売していた。返品条項を交わした販売店は57社に上った。返品を保証すると返品がないことが確定するまでは(すなわち販売店がエンドユーザーに販売するまでは)、ジャストシステムは在庫のリスクから解放されておらず、売上を計上することができない。調査の結果、2018年3月期で1,084百万円の売上高の減額が必要になった(ジャストシステムの2018年09月14日のリリース「第38期(平成31年3月期)第1四半期報告書及び四半期決算短信の提出、過年度の有価証券報告書と四半期報告書、決算短信等の訂正に関するお知らせ」を参照)。
原因 (動機)
・事業部長は返品条項を付けて販売店に押し込み販売することで事業部の売上をかさ上げすることができた。
・ジャストシステムの法人向け事業部では、特定のエンドユーザーへの販売が見込まれるものの、月末までの売上計上が間に合わない案件につき、ジャストシステム内の売上目標を達成するために販売店に出荷して売上を計上する取引がもともと行われていた。当初は返品条項が付されていなかったため、販売店が在庫リスクを負っていたが、返品を保証することで販売店側は在庫リスクから解放されるため、ジャストシステムとしても押し込み販売をしやすくなった。
(発覚しなかった理由)
・事業部長は販売店に対して口頭で返品を約束したり、「貴社のご判断によって残数一部または、全てを返品できるものとします。」「万が一、別紙記載受注予定月までに各ユーザー様または再販企業から貴社に発注がない場合、若しくは当社が他案件での代替販売もご提供できなかった場合は当社への返品をお受けします。」といった条項を付記した「合意書」や「覚書」を事業部長名で締結したりしていた(一部に見積書等で使用するとして不正に借り出した社判も用いられていたが、いずれにしろジャストシステムが法人として締結した契約に返品条項が付されていたわけではなかった)。
・事業部長が主導する返品保証付販売取引には事業部のマネージャーやリーダーといった上位者が関与していたが、事業部長は、部下にかん口令を敷くことで、不正が発覚することを回避していた。例えば、事業部長は部下に対して、返品保証書について「本書類は社内のコンプライアンスでは禁止事項です。情報の取り扱いには十分に気をつけて下さい。メール転送の禁止。プリントアウト禁止。当然、当社の経理部門、監査部門に情報が入ることもNGです。」と記載したメールを送信して、隠ぺい工作を行っていた。
・本販売スキームでは、当初予定したエンドユーザーへの販売が実現しなかった場合でも販売店からジャストシステムに対して返品処理が行われることはなく、別の販売店に対してマージンを載せて転売させていた。その結果、返品条項の存在が会社に発覚する可能性が少ないスキームであった。転売により在庫価格が膨れ上がり最終的にエンドユーザーに販売するときに赤字となる場合には、事業部長が調整を行い、赤字となった販売店が別の案件で利益を確保できるようにしたり、ジャストシステムが保守・サービスの大幅値引きをしたりしていた。
・ジャストシステムでは事業部制が導入されており、事業部長に広範な裁量権を与えておきながら、事業部の運営について経営陣が十分なチェック体制を構築していなかった。すなわち、コンプライアンス基本規程では、社長が同社におけるコンプライアンスの取組み状況等を定期的に検証し、その結果を取締役会および監査役会に報告すると規定されているものの、実際にはこうした報告がなされたことを議事録等から確認することができなかった。さらに、コンプライアンスに関する内部監査について、社長の承認を要する監査計画の作成や監査結果の社長への提出が行われている形跡もなかった。
・ジャストシステムでは、内部通報制度が存在するものの、ここ数年の通報実績は1件のみであり、活発に運用されてはいなかった。そもそも内部通報制度の存在を認知していない社員もいた。また、特別調査委員会が実施した職員アンケート調査では、問題となった事業部以外でも20名以上の従業員が返品保証付販売取引が行われている疑いを認識していたことが分かっており、他部門への無関心といった組織風土の問題に加えて、内部通報制度が機能していなかったことから、問題が公になるのが遅れてしまった。
再発防止策 ・関与者に対する厳正な対処
・管理部門の権限及び社長決裁権限の検討・見直し
・内部監査部門の充実
・管理部門の体制強化
・行動規範やコンプライアンス基本規程等の社内規程の見直し
・教育・研修の充実
・内部通報制度の改善
・販売店への注意喚起
・取締役会によるモニタリングなどガバナンスの強化
・組織風土の改善
<この失敗から学ぶべきこと>

ジャストシステムの特別調査委員会の調査報告書によると、同社で事業部制が導入され、事業部長が広範な裁量権を持つようになったことが不正を許す契機になったとされています。権限の分散に伴い弱まったコントロールをどのようにして穴埋めするのか、組織のデザインと内部統制のデザインは同時に検討すべき事項と言えます。

その際、内部統制の限界を認識するとともに、それへの対策もしておく必要があります。例えば契約締結を例にすると、契約締結にかかわる内部統制が構築されていない会社はないと言っても過言ではないでしょう。すなわち、契約書ドラフトの段階から法務部や取締役会、顧問法律事務所等がかかわり、一字一句までチェックされるのが通常です。また、押印の際にも二重三重のチェックが行われます。しかし、契約締結に関する内部統制をどんなに厳格に構築したところで、ジャストシステムの事業部長のように、役職者が会社に無断で返品を保証したり、自己名義の覚書を提出したりすることを事前に防ぐことは不可能です。すなわち、いったん内部統制のフローに乗った行為はコントロールしやすいものの、そもそも内部統制の入り口のところでフローに乗っていない行為に対しては、フローに乗ったことを前提とする内部統制は無力と言わざるをえません。そこで、こういった「既存の内部統制の限界」をリスクとして認識して、フローに乗っていない行為をカバーするための別のコントロールも用意しておく必要があります。ジャストシステムの特別調査委員会の調査報告書では「例えば、販売店を集めて当社の返品禁止のポリシーを説明する機会を設ける」といった形でそのリスクに備えておくべきであったと指摘されています。

J-SOX(J-SOXについては【役員会 Good&Bad発言集】J-SOX対応の現況 を参照)の導入の際に内部統制の3点セットを作って以降、十分にメンテナンスできていない上場会社は少なくありません。内部統制の構築にあたりリスクとして想定した不正シナリオが十分かどうか、構築済みの内部統制の限界をカバーする別の内部統制も考えられないか、もう一度点検しておきたいところです。

2018/09/26 IFRSで非償却となるのは「のれん」だけではない

IFRS(国際会計基準)では「のれん」は非償却とされているため(2016年7月26日のニュース「のれんを償却すれば赤字に転落する企業も」参照)、日本の会計基準のように毎期のれんの償却費用が利益を圧迫するようなことはない。企業買収を通じて成長を図ろうとする企業にとって、のれんを償却する必要がないことは、IFRSを採用する大きな理由(メリット)の1つとなる。

のれん : 企業を買収したり合併したりする際における「支払対価-企業の時価純資産」こと(これがプラスの場合、「正ののれん」という。以下は「正ののれん」を前提とする)。のれんは「財務諸表には表れない企業の価値」(超過収益力=投資におけるプレミアム部分)である。日本の会計基準では、このプレミアム部分は時の経過とともに減衰していくと考え、投資の効果がなくなるまでの期間を見積もり(ただし最長20年)、当該期間が終了するまでに定期償却(規則的な費用化)することになっている。また、当初の見積もり以上に価値が減衰していれば減損を行う。一方、IFRSおよび米国会計基準では、「のれん」の定期償却は認められていない(減損処理しか認められない)。そこには、利益の平準化を好む日本型経営と、業績好調時にはできるだけ利益を出し、逆に業績悪化時にはすべて“膿”を出すという欧米型経営の発想の違いがある。

しかし、2018年7月に開催された国際会計基準審議会においては、以下とおり、のれんの償却を再導入するかどうかが検討テーマとなっており、果たして「のれん=非償却」の時代が終わりを迎えるのか、にわかに注目が集まっている。

国際会計基準審議会 : IFRS(国際会計基準)を策定している会議体で、英語名は「IASB= International Accounting Standards Board」

のれんと減損
(略)
e. のれんの会計処理の簡素化という目的を追求する際に、次のようにする。
(略)
ii. のれんの償却を再導入するかどうかを検討する。 14 名の審議会メンバーのうち 8 名がこの決定に賛成し、6 名が反対した。

ASBJ公表資料「IASB Update 2018年7月」5ページより抜粋

ASBJ : 日本の会計基準を策定している会議体で、日本名は「企業会計基準委員会」

IASBの会議でのれんの償却がテーマとなっているのは、現行の減損テスト(IFRSでは、のれんは非償却とされている代わりに、毎期減損テストを実施しなければならない)により認識されるのれんの減損損失が「少なすぎる」また「遅すぎる」(too little, too late)といったことが問題視されているからだ。減損損失は経営者の将来の見積りに大きく依存して算定されるため、減損損失が「too little, too late」ということは、経営者による楽観的で甘い見積りが多数見受けられるということを意味している。

減損テスト : 減損の兆候の有無を評価し、兆候があれば帳簿価額と回収可能価額とを比較すること

以上のように、IFRSでは「のれん=非償却」ということがよく話題となるが、IFRSにおいて非償却とされる資産は、実は「のれん」以外にもある。それは、・・・

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2018/09/26 IFRSで非償却となるのは「のれん」だけではない(会員限定)

IFRS(国際会計基準)では「のれん」は非償却とされているため(2016年7月26日のニュース「のれんを償却すれば赤字に転落する企業も」参照)、日本の会計基準のように毎期のれんの償却費用が利益を圧迫するようなことはない。企業買収を通じて成長を図ろうとする企業にとって、のれんを償却する必要がないことは、IFRSを採用する大きな理由(メリット)の1つとなる。

のれん : 企業を買収したり合併したりする際における「支払対価-企業の時価純資産」こと(これがプラスの場合、「正ののれん」という。以下は「正ののれん」を前提とする)。のれんは「財務諸表には表れない企業の価値」(超過収益力=投資におけるプレミアム部分)である。日本の会計基準では、このプレミアム部分は時の経過とともに減衰していくと考え、投資の効果がなくなるまでの期間を見積もり(ただし最長20年)、当該期間が終了するまでに定期償却(規則的な費用化)することになっている。また、当初の見積もり以上に価値が減衰していれば減損を行う。一方、IFRSおよび米国会計基準では、「のれん」の定期償却は認められていない(減損処理しか認められない)。そこには、利益の平準化を好む日本型経営と、業績好調時にはできるだけ利益を出し、逆に業績悪化時にはすべて“膿”を出すという欧米型経営の発想の違いがある。

しかし、2018年7月に開催された国際会計基準審議会においては、以下とおり、のれんの償却を再導入するかどうかが検討テーマとなっており、果たして「のれん=非償却」の時代が終わりを迎えるのか、にわかに注目が集まっている。

国際会計基準審議会 : IFRS(国際会計基準)を策定している会議体で、英語名は「IASB= International Accounting Standards Board」

のれんと減損
(略)
e. のれんの会計処理の簡素化という目的を追求する際に、次のようにする。
(略)
ii. のれんの償却を再導入するかどうかを検討する。 14 名の審議会メンバーのうち 8 名がこの決定に賛成し、6 名が反対した。

ASBJ公表資料「IASB Update 2018年7月」5ページより抜粋

ASBJ : 日本の会計基準を策定している会議体で、日本名は「企業会計基準委員会」

IASBの会議でのれんの償却がテーマとなっているのは、現行の減損テスト(IFRSでは、のれんは非償却とされている代わりに、毎期減損テストを実施しなければならない)により認識されるのれんの減損損失が「少なすぎる」また「遅すぎる」(too little, too late)といったことが問題視されているからだ。減損損失は経営者の将来の見積りに大きく依存して算定されるため、減損損失が「too little, too late」ということは、経営者による楽観的で甘い見積りが多数見受けられるということを意味している。

減損テスト : 減損の兆候の有無を評価し、兆候があれば帳簿価額と回収可能価額とを比較すること

以上のように、IFRSでは「のれん=非償却」ということがよく話題となるが、IFRSにおいて非償却とされる資産は、実は「のれん」以外にもある。それは、「耐用年数を確定できない無形資産」だ。

これまでIFRSがのれんを「非償却」としてきた根拠はいくつかあるが、その一番手としてよく挙げられるのは、「償却期間が不明なものまで無理やり償却すると、財務諸表が投資家に対して有用な情報提供とならなくなってしまう」というもの。これは、「耐用年数を確定できない無形資産」を非償却とする理由と同じである。

では、「耐用年数を確定できない無形資産」には、具体的にどのような無形資産が該当するのであろうか。下表は、IFRS任意適用会社各社の連結貸借対照表における「無形資産」のパートの注記に記載されている「耐用年数を確定できない無形資産」の金額と耐用年数を確定できない理由をまとめたものである。

会社名 耐用年数を確定
できない無形資産
帳簿価額(注) 耐用年数を確定できない理由
味の素 商標権 28,324百万円 事業期間が確定していない商標権は、事業が継続する限り基本的に存続するため、将来の経済的便益が流入する期間が予見できない
ヤフー 商標権 30,250百万円 事業を継続する限り基本的に存続するため
KDDI 商標権 63,379百万円 企業結合時に取得した商標権であり、事業が継続する限り存続するため
ソフトバンク
グループ
FCCライセンス 3,960,597百万円 FCCライセンスは規制当局の定める規制に準拠している限り、その更新・延長は最低限のコストで行うことができることから
商標権 63,379百万円 事業が継続する限りは法的に継続使用でき、かつ、予見可能な将来に渡ってサービスを提供することを経営陣が計画している
伊藤忠商事 商標権 99,711百万円 企業結合時に取得したものであり、その商標権の対象となる事業が継続する限り基本的に存続するため

(注)いずれも3月決算会社で、金額は2018年3月期のもの

FCCライセンス : 米国のFCC(連邦通信委員会)が発行するアマチュア無線資格のこと。

「耐用年数を確定できない無形資産」の主なものは商標権だが、日本の会計基準を適用している企業では、10年の耐用年数を用いて償却しているケースが多いはずだ。

一方、IFRSでは、「耐用年数を確定できない無形資産」は、減損の対象とならない限り、耐用年数が確定するまで費用計上されない。耐用年数が確定できないかどうかは毎期チェックされ、状況が変化した場合には「耐用年数が確定できる無形資産」へと変更される。とはいえ、上記事例で、商標権について耐用年数が確定できないとされている理由として「事業が継続する限り存続すること」が挙げられていることを踏まえると、「耐用年数を確定できない無形資産」は減損対象とならない限り償却されることはないであろう。

減損 : 固定資産による将来の現金回収見込額が簿価を下回った場合に、下回った分だけ計上する損失のこと。

商標権は買収に伴い発生することが多いと考えられるが、上記事例のように「耐用年数を確定できない無形資産」の金額が多額になる場合がある。IFRSのメリットというと「のれんの非償却」に目が行きがちだが、IFRSを導入する際には、「耐用年数を確定できない無形資産」も非償却となることを認識したうえで、財務諸表への影響やメリットを考える必要がある。

2018/09/25 ESGやSDGsが迫る社会問題に対する経営トップの対応

企業のブランドを形成する要素には様々なものが考えられるが、その一つが、経営トップのパーソナリティや情報発信力だ。発言の内容は必ずしも企業経営に関することにとどまらない。日本企業でも、個性の強い経営トップの社会的発言(SNSでの発言を含む)が話題を呼ぶことがあるが、・・・

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2018/09/25 ESGやSDGsが迫る社会問題に対する経営トップの対応(会員限定)

企業のブランドを形成する要素には様々なものが考えられるが、その一つが、経営トップのパーソナリティや情報発信力だ。発言の内容は必ずしも企業経営に関することにとどまらない。日本企業でも、個性の強い経営トップの社会的発言(SNSでの発言を含む)が話題を呼ぶことがあるが、欧米企業の経営トップに比べると、まだまだ“大人しい”と言える。

例えば米国企業では、2016年にノースカロライナ州が出生証明書の性別と異なるトイレの使用を禁じる法律を可決したことにAppleやGoogleを含む90社以上のCEOが反発、法律の撤回を求める書簡に書名した。また、2017年には、大手製薬会社メルクのCEOが、バージニア州で白人至上主義団体と反対派が衝突した事件でトランプ大統領が人種差別主義者らを明確に非難しなかったことに強く抗議した(その後、大統領の助言役を辞任)。このほか、今年(2018年)2月にフロリダ州の高校で起きた銃乱射事件を受け、大手スポーツ用品大手ディックスのCEOが銃購入の年齢制限を引き上げと自動小銃の販売停止を発表、「銃規制の改革のために行動を取る」とコメントしている。

こうしたCEOの行動は「アクティビズム(社会を改善するための積極的な行動)」と呼ばれ、消費者の半数近くがCEOのアクティビズムを好意的に捉えており、同時に「CEOは社会問題について明確な立場を取る責任がある」と考えているとの調査結果もある。

一方で、「CEOは経営に集中すべき」と考える消費者も少なくないとの結果が出ているが、2018年における米国企業の株主総会では、気候変動リスクをはじめとする環境問題や銃規制などの社会問題への対応を問う株主提案が過去最高水準に達している。日本企業もESGSDGsへの対応が迫られる中、今後は経営トップが例えば気候変動やジェンダー差別といった社会問題について、株主総会で発言を迫られるシーンが出てくる可能性もある。“CEOアクティビズム”とまではいかないまでも、CEOは株主から社会問題について問われた際の対応策を準備しておかなければならない時代になったと言えそうだ。

ESG : ESGとは、「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。
SDGs : 「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、「エスディージーズ」と読む。「人間、地球及び繁栄」のための行動計画として国連が掲げる世界共通の目標であり、17の目標と169のターゲットからなる。2015年9月に開催された「国連持続可能な開発サミット」において150を超える加盟国首脳の参加のもとで採択され、2016年から2030年までの15年間での達成を目指している。