2018/09/21 役員報酬の決定に関する会社法改正に影響を与えかねない注目判決

これまで多くの上場会社で役員報酬の決定は代表取締役の専権事項とされてきたが、今年6月1日に施行された改訂コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の補充原則4-10①では、監査役会設置会社や委員会等設置会社であっても任意の報酬委員会を設置しなければ「エクスプレイン」が求められることになったところだ(2018年4月5日のニュース『任意の諮問委員会、設置しなければ「エクスプレイン」必要に』参照)。とはいえ、プリンシプルベースの立場をとるCGコードは「法律」ではないため、会社によっては「エクスプレインすればよい」と割り切るところが出てくる可能性も否定はできない。実際、CGコード改訂前の2017年7月14日時点のデータではあるが、補充原則4-10①をエクスプレインした上場会社(東証一部・二部)は592社にのぼっており(東証一部・二部上場会社2,540社の約23.3%に相当)、東証が「“説明”率が20%を超える原則」として挙げた5つの原則のうちの一つ(第5位)に数えられている(東証が2017年9月5日に公表した「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況」4ページ参照)。

プリンシプルベース : 大まかな原理・原則だけを定め、細かな運用は現場の判断に任せるという規制方法のこと。プリンシプルベース(原則主義)の反意語は「ルールベース(細則主義)」である。

こうした中、・・・

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2018/09/21 役員報酬の決定に関する会社法改正に影響を与えかねない注目判決(会員限定)

これまで多くの上場会社で役員報酬の決定は代表取締役の専権事項とされてきたが、今年6月1日に施行された改訂コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の補充原則4-10①では、監査役会設置会社や委員会等設置会社であっても任意の報酬委員会を設置しなければ「エクスプレイン」が求められることになったところだ(2018年4月5日のニュース『任意の諮問委員会、設置しなければ「エクスプレイン」必要に』参照)。とはいえ、プリンシプルベースの立場をとるCGコードは「法律」ではないため、会社によっては「エクスプレインすればよい」と割り切るところが出てくる可能性も否定はできない。実際、CGコード改訂前の2017年7月14日時点のデータではあるが、補充原則4-10①をエクスプレインした上場会社(東証一部・二部)は592社にのぼっており(東証一部・二部上場会社2,540社の約23.3%に相当)、東証が「“説明”率が20%を超える原則」として挙げた5つの原則のうちの一つ(第5位)に数えられている(東証が2017年9月5日に公表した「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況」4ページ参照)。

プリンシプルベース : 大まかな原理・原則だけを定め、細かな運用は現場の判断に任せるという規制方法のこと。プリンシプルベース(原則主義)の反意語は「ルールベース(細則主義)」である。

こうした中、今年(2018年)4月に、代表取締役の一存による自身の役員報酬の大幅な増額を容認する判決が東京地裁で下されていたことが当フォーラムの取材により分かった。

この上場会社(以下、甲社とする)の2014年11月期の株主総会では、取締役の報酬総額を30億円とすること(いわゆる“枠取り”)と、各取締役の報酬額の決定は取締役会に一任することが決議され、さらに株主総会後に開催された取締役会では、各取締役の報酬額の決定を代表取締役に一任することが決議された。これを受け代表取締役は、自身の報酬額を14億5百万円(基本報酬7億7千5百万円、賞与3億3千万円、特別手当3億円)、自身を含む全取締役(8人)の報酬総額を16億2千5百万円と決定した。前期(2013年11月期)の代表取締役の報酬額は8億3千4百万円(全取締役の報酬総額は9億9百万円)だったことから、一気に5億7千1百万増額されたことになる(ちなみに、代表取締役は2011年11月期~2013年11月期にかけても、自身の報酬を1億3千6百万円→4億6千5百万円→8億3千4百万円と急激に増額している)。

これに対し株主は、代表取締役が合理的な根拠に基づかずに自身の報酬額を大幅に増加させたことは会社法上の善管注意義務違反に当たり、会社は代表取締役の報酬の増額分の損害を被ったとして、会社法423条(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)1項に基づき、代表取締役に対し当該増額分(5億7千1百万円)を会社に対して損害賠償金として支払うよう求め、株主代表訴訟を東京地裁で提起した。

会社法423条1項
取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

しかし結論から言うと、東京地裁は代表取締役に善管注意義務違反はなかったとして、株主の主張を斥けている。

東京地裁は、代表取締役が取締役会から各取締役の報酬額の決定について一任を受けた場合には善管注意義務および忠実義務を果たす必要があり、仮にこれに違反して会社に損害を与えれば損害賠償責任を負うことになるとの考えは示した。しかし、取締役会から各取締役の報酬額の決定について一任を受けた代表取締役は、各取締役の業績や活動実績をどのように評価し、どの程度の報酬を支給するかについて広い裁量を有しており、報酬額の決定に至るまでの判断プロセスや判断内容に明らかに不合理な点がない限り、善管注意義務違反により責任を問われることはないとした。そして本件の場合、報酬額の決定時点で甲社の業績が前年度を上回り、前年度赤字だった事業が黒字に転換することが見込まれていたいたことなどに基づく報酬額の妥当性や、15億円近い報酬を自身に支払うことのリスク(訴訟リスク、税務リスクなど)などが検討されていたと認定。「報酬額の決定に至るまでの判断プロセスや判断内容に明らかに不合理な点があるとは言えない」として、株主側敗訴の判決を下している。

忠実義務 : 取締役には、会社との委任関係に基づいて「善良な管理者の注意をもって職務を遂行する義務」すなわち「善管注意義務」(会社法330条、民法644条)と、「法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行なう義務」すなわち「忠実義務」(会社法355条、419条②)が求められる。一見両者の関係は分かりにくいが、忠実義務に関する規定は善管注意義務を一層明確にしたに過ぎないため、両者の内容は同質であると考えてよい。
税務リスク : 法人税法上、同規模同業種の企業との比較等から「過大」と認められる役員報酬は損金(≒経費)として認められない恐れがある。

また、東京地裁は「取締役がその評価・決定にあたり適切に権限を行使したか否かは基本的には株主総会における取締役の選任・解任の過程を通じて株主が決すべきもの」との考えを示している。要するに、取締役(本件では代表取締役)の判断に問題があるのであれば株主総会で選任議案に反対票を投じればよいということだが、2018年8月29日のニュース「任意の報酬委員会の社内的位置付け」(下から2段落目参照)でお伝えしたとおり、現在コーポレートガバナンス関係の会社法改正を検討している法務省の法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会が取りまとめた「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」では、「取締役の個人別の報酬等の決定を代表取締役に再一任する場合には株主総会決議を求める」との案(6ページ (3) 取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定の再一任【A案】参照)が提案されている。東京地裁で敗訴した株主は控訴しているが、今回の判決を見る限り、「報酬額の決定に至るまでの判断プロセスや判断内容に明らかに不合理な点がある」として代表取締役に善管注意義務違反を問うのは容易ではないだろう。会社法が改正されない限り、報酬額の決定を代表取締役に一任するという慣行は今後も一部の上場会社では存続する可能性がありそうだ。

2018/09/20 “ESG融資”のモデルアプローチが一般公開

2018年7月27日のニュース「気候変動対応、地銀やその融資先に強まるプレッシャー」でお伝えしたとおり、政府は直接金融市場(証券市場を通じた金融)におけるESG投資のみならず、間接金融市場(地方銀行を含む銀行融資を通じた金融)にも“ESG融資”を通じ企業の環境行動を促すよう求めているが、今月(2018年9月)14日、・・・

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2018/09/20 “ESG融資”のモデルアプローチが一般公開(会員限定)

2018年7月27日のニュース「気候変動対応、地銀やその融資先に強まるプレッシャー」でお伝えしたとおり、政府は直接金融市場(証券市場を通じた金融)におけるESG投資のみならず、間接金融市場(地方銀行を含む銀行融資を通じた金融)にも“ESG融資”を通じ企業の環境行動を促すよう求めているが、今月(2018年9月)14日、オランダの大手銀行INGが低炭素社会実現に向けた「貸付ポートフォリオ」の構築アプローチ「The Terra Approach」を発表した。同アプローチは、INGの貸付先企業に対して、パリ協定で定められた気温上昇を2度未満に抑える目標の達成に向けた取り組みを促し、低炭素社会実現に貢献する貸付ポートフォリオを構築することを目標としており、同社の貸付額5,800億ユーロ(約76兆円)に適用するという。

ESG投資 : ESGに優れた企業を選定して投資すること。ESGとは、「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。
Terra : ラテン語で「大地」「陸地」「地球」といった意味がある。
パリ協定 : 2015年末にパリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で採択された2020年以降の温暖化対策の国際的枠組み。パリ協定では、18世紀後半に起きた産業革命前と比較し、気温の上昇を「2℃以内」にとどめることを目標としており、各国に対し、温室効果ガスの排出削減目標を設定のうえ、5年ごとに進捗報告およびより厳しい目標への更新を行うことを義務付けている。

一見すると「遠い海の向こうの話」に見えるかもしれないが、INGはこの「貸付ポートフォリオ」アプローチを“オープンソース”として一般に公開し、他の銀行も利用可能とする方針を示している。このような大規模な貸付ポートフォリオの方針が示されたのは史上初であり、既に気候変動に関する取り組みを進める欧米の大手銀行のほか、上述のとおり政府から “ESG融資”の推進を求められている日本の銀行にも影響を与える可能性がある。

INGのアプローチでまず注目されるのが、温室効果ガス排出量の多い貸付先からの撤退(融資の中止)だ。具体的には、一般的に温室効果ガスの排出量が多く、気候変動に与える影響が大きい「エネルギー(石油・ガス等)」「鉄鋼」「自動車」「船舶・航空」「商業不動産」などの業種に属する企業が主なターゲットとなる。

逆に、電気自動車といった気温上昇抑制への貢献度が高い技術に対しては積極的に貸付けを行っていく。ただし、こうした技術に対して闇雲に融資するのではなく、気温上昇を2度未満に抑えるためには企業が現在使用する技術のどの部分を変えればよいのかを特定したり、企業に環境に優しい技術に移行するための戦略を確認したりするなどしたうえで、低炭素技術の発展に貢献し得る企業への貸付けに努めるという。また、このようにして構築された貸付ポートフォリオを評価し、低炭素社会の実現を促すものとなっているかを検証する。

INGは2025年までに石炭火力向けの投融資をゼロとする方針を既に打ち出しているが、今回の「貸付ポートフォリオ」アプローチを通じ、貸付先企業の経営層にも気候変動に関する議論を促していくという。日本でもESG投資に続き“ESG融資”が一般化する日はそう遠くはないだろう。

2018/09/19 取締役会議長には誰が就任するべきか

2015年5月に施行された改正会社法により上場会社等における社外取締役の選任が実質義務化(*1)された当時は、上場会社でさえ“とりあえず”1名の社外取締役を選任するだけで精一杯というところが少なくなかった。そのような状況で社外取締役を選任しても有効に活用できず、結局は“お飾り”として置いているに過ぎなかったというのが実態ではないだろうか。しかし、改正会社法施行から3年以上が経過し、また、2015年6月に施行されたコーポレートガバナンス・コードの原則4-8(独立社外取締役の有効な活用)が「2名以上」の独立社外取締役選任を求めたことで、今や社外取締役を複数選任することは一般的となった(*2)。そして、当時選任された社外取締役が任期満了を迎え、そのうちの大部分が再選される中で、投資家の社外取締役への期待値のハードルが上がり、社外取締役に求められる役割も大きく変化している。

*1 監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る)であって金融商品取引法24条1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない会社は、定時株主総会で「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明するとともに、事業報告および株主総会参考書類においてその理由を記載する必要がある。
*2 東京証券取引所の調査結果によると東証一部上場企業の94.6%で2名以上の社外取締役を選任している。

大会社 : 資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社

取締役会議長には社外取締役が就任すべきとする声もその一つと言える。取締役会議長と言えば、これまでは代表取締役社長・CEOの“指定席”だった。会長を擁する企業では会長が取締役会議長に就任するケースも見られるが、いずれにしろ社内取締役の序列のトップが取締役会の議長席に座るのが当然のように考えられていたと言える。そこには「コーポレートガバナンスの観点から誰を取締役協会議長にするべきか」という問題意識はなく、むしろ多くの上場会社が「社内取締役の序列トップが取締役会の議論をリードするのは当たり前」という固定観念の下、一種の思考停止状態に陥っていたものと思われる。しかし最近は、ガバナンス先進企業と言われる・・・

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2018/09/19 取締役会議長には誰が就任するべきか(会員限定)

2015年5月に施行された改正会社法により上場会社等における社外取締役の選任が実質義務化(*1)された当時は、上場会社でさえ“とりあえず”1名の社外取締役を選任するだけで精一杯というところが少なくなかった。そのような状況で社外取締役を選任しても有効に活用できず、結局は“お飾り”として置いているに過ぎなかったというのが実態ではないだろうか。しかし、改正会社法施行から3年以上が経過し、また、2015年6月に施行されたコーポレートガバナンス・コードの原則4-8(独立社外取締役の有効な活用)が「2名以上」の独立社外取締役選任を求めたことで、今や社外取締役を複数選任することは一般的となった(*2)。そして、当時選任された社外取締役が任期満了を迎え、そのうちの大部分が再選される中で、投資家の社外取締役への期待値のハードルが上がり、社外取締役に求められる役割も大きく変化している。

*1 監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る)であって金融商品取引法24条1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない会社は、定時株主総会で「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明するとともに、事業報告および株主総会参考書類においてその理由を記載する必要がある。
*2 東京証券取引所の調査結果によると東証一部上場企業の94.6%で2名以上の社外取締役を選任している。

大会社 : 資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社

取締役会議長には社外取締役が就任すべきとする声もその一つと言える。取締役会議長と言えば、これまでは代表取締役社長・CEOの“指定席”だった。会長を擁する企業では会長が取締役会議長に就任するケースも見られるが、いずれにしろ社内取締役の序列のトップが取締役会の議長席に座るのが当然のように考えられていたと言える。そこには「コーポレートガバナンスの観点から誰を取締役協会議長にするべきか」という問題意識はなく、むしろ多くの上場会社が「社内取締役の序列トップが取締役会の議論をリードするのは当たり前」という固定観念の下、一種の思考停止状態に陥っていたものと思われる。しかし最近は、ガバナンス先進企業と言われる武田薬品工業やTDKのほか、三井住友トラスト・ホールディングスやみずほフィナンシャル・グループなどバーゼル銀行監督委員会が定めた「銀行のためのコーポレート・ガバナンス諸原則」()の順守が求められる金融機関で取締役会議長に社外取締役が就任するケースが散見されるようになってきた。

 バーゼル銀行監督委員会は2015年に「銀行のためのコーポレート・ガバナンス諸原則」を公表しており、そこでは、取締役会の議長は「独立取締役」あるいは「非執行取締役」が務めなければならないとされている。

バーゼル銀行監督委員会 : 国際業務を営んでいる銀行を監督するための国際ルールを協議する機関で、スイスのバーゼルにある国際決済銀行(BIS)内に事務局が置かれている。

また、東芝や神戸製鋼のように、不祥事後の信頼回復策の一環として社外取締役が取締役会議長に就任するケースもある。

このように、取締役会の監督を受ける立場にある会長・社長・CEOといった執行側の役員が議長として議案の選定や議事進行を行うよりも、監督を行う立場にある社外取締役などの非業務執行取締役が議長を務め、執行側の役員は議長や非業務執行取締役の求めに応じて「業務執行に関する説明責任」を果たす役割に徹する方が、取締役会の監督機能の実効性を確保しやすいという、コーポレートガバナンスの“基本中の基本”と言える考え方は浸透しつつある。

とはいえ、実際に社外取締役が取締役会議長となっている上場会社はまだまだ少ない。経済産業省に設置されている第2期CGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)が東証1部・2部上場会社を対象に昨年(2017年)12月から今年の1月にかけて実施した「平成29年度コーポレートガバナンスに関するアンケート調査」(第2期CGS研究会の第3回会合における配布資料の「参考資料2」)(回答数:941社)によると、社長・CEOや会長が取締役会議長に就任している上場会社が96%と圧倒的多数を占めており、社外取締役が取締役会議長に就任している上場会社はわずか2%に過ぎなかった(下表は上記のアンケート調査結果の3ページ下の13番より引用)。

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もっとも、今後は社外取締役を取締役会の議長にする上場会社が増えるかもしれない。これは、今月(2018年9月)末に公表される予定の改訂版「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(CGSガイドライン)に「自社の取締役会の役割・機能等を踏まえて、誰が取締役会議長を務めることが適切かを検討すべき」「取締役会の監督機能を重視する場合には、社外取締役などの非業務執行取締役が取締役会議長を務めることを検討すべき」という文章が盛り込まれる可能性が高いからだ(9月5日に開催された第2期CGS研究会の第9回会合で検討された改訂案はこちらを参照)。

改訂案は、社外取締役が取締役会議長を務めることのメリットとして、「監督側が取締役会議長を務めることで、付議基準に従って取締役会に上程される案件だけでなく、経営戦略に関する議論を充実させることや、監督の観点からは重要であるが執行側では上程する必要性を認識していなかった案件を取締役会に上程させること、 重要な案件を適切な時期に取締役会に上程させて実質的な議論を行うことなどが行いやすくなる」「また、取締役会の議事進行役を担う取締役会議長には、取締役会を自由闊達で建設的な議論・意見交換の場とし、審議の活性化を図ることが求められるところ、監督側が取締役会議長を務めた方が、取締役会の審議が監督側を中心に行われ、監督側に対する十分な説明や情報の提供、十分な審議時間の確保や、監督側が議論や問題提起をしやすい雰囲気を作ることなどが実現されやくなる」といった点を挙げている。上場会社に対するアンケート調査でも「社外取締役が取締役会議長になれば、その裁量で、(議案を否決まではしなくとも)採決をせずに、保留にしたり、継続審議としたりすることも可能となる」「監督側が取締役会議長を務める場合、情報が不足していたときに追加説明を促すことも容易になる」と、社外取締役が取締役会議長を務めることのメリットを指摘する回答があった。

グローバルでは、取締役会議長とCEOを分離させるのがトレンドとなっている(海外の潮流については【2018年3月の課題】取締役会改革に向けた取り組み を参照)。これに対し日本では、「社内事情に精通していない社外取締役にとって取締役会議長は荷が重い」といった指摘もある。そうであれば、社外取締役に社内事情を説明する時間を増やせば良さそうにも思えるが、ただでさえ多忙な社外取締役が果たしてそれにどれほどの時間を割いてくれるのかという問題がある。取締役会議長を務めている社外取締役の中には、自身が業務等に充てる全時間の3分の1を当該1社の社外取締役の職務(取締役会に向けた準備時間等を含む)を全うするため割いている者もいるという(改訂CGSガイドライン案の18ページ)。社外取締役という職務に真剣に取り組めば、それだけの時間を要するということだ。また、社外取締役が取締役会議長になれば、その会社のガバナンスの“顔”として、投資家との対話にも応じざるを得ないだろう。

ただ、月に1~2回、各数時間程度の出社を前提に就任を承諾した社外取締役にそこまでのコミットを求めるのは酷であろう。当然ながら役員報酬もコミットに相応した額になっているはずだ。そう考えると、取締役会議長には「社内取締役ではあるが業務執行をしていない者(社内非業務執行取締役)」を起用する案も検討に値しよう(社内非業務執行取締役を取締役会議長にする策については【2018年5月の課題】改訂コーポレートガバナンス・コードへの対応 を参照)。

今月(2018年9月)末に「社外取締役などの非業務執行取締役が取締役会議長を務めることを検討すべき」とする改訂CGSガイドラインが公表された場合、取締役会議長を非業務執行取締役に変更する上場会社が一気に増える可能性がある。それに備え、自社の社外取締役や社内の非業務執行取締役に取締役会議長を引き受ける意向の有無をヒアリングしておくとともに、場合によっては役員報酬の増額を予算に計上することも検討しておいた方がよさそうだ。

2018/09/18 経営者による「セグメントごとの財政状態の分析」、大部分の企業で記載なし

既報のとおり、2018年3月期の有価証券報告書(以下、有報)から「経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の記載が求められている(2018年4月23日のニュース『具体例で見る「MD&Aに書くべきこと」』参照)。金融庁が公表している開示府令の“記載マニュアル”(記載上の注意)では下記のように説明されている(第二号様式記載上の注意より抜粋)。

(32) 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
a 届出書に記載した事業の状況、経理の状況等に関して投資者が適正な判断を行うことができるよう、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下(32)において「経営成績等」という。)の状況の概要を記載した上で、経営者の視点による当該経営成績等の状況に関する分析・検討内容を、具体的に、かつ、分かりやすく記載すること。
(中略)
(e) 経営成績等の状況に関して、事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとに、経営者の視点による認識及び分析・検討内容(例えば、経営成績に重要な影響を与える要因についての分析)を記載すること。(以下略)

(e)でいう「経営成績等」とは、aにあるとおり「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー」を意味する。したがって、aと(e)を合わせて読めば、(e)は以下のように書き換えることができる(第二号様式記載上の注意より抜粋)。

(e)´ 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関して、事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとに、経営者の視点による認識及び分析・検討内容(例えば、経営成績に重要な影響を与える要因についての分析)を記載すること。

企業が見落としているケースが多いのが、「財政状態」と「セグメント情報に記載された区分ごとに」という文言の関係だ。・・・

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2018/09/18 経営者による「セグメントごとの財政状態の分析」、大部分の企業で記載なし(会員限定)

既報のとおり、2018年3月期の有価証券報告書(以下、有報)から「経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の記載が求められている(2018年4月23日のニュース『具体例で見る「MD&Aに書くべきこと」』参照)。金融庁が公表している開示府令の“記載マニュアル”(記載上の注意)では下記のように説明されている(第二号様式記載上の注意より抜粋)。

(32) 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
a 届出書に記載した事業の状況、経理の状況等に関して投資者が適正な判断を行うことができるよう、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下(32)において「経営成績等」という。)の状況の概要を記載した上で、経営者の視点による当該経営成績等の状況に関する分析・検討内容を、具体的に、かつ、分かりやすく記載すること。
(中略)
(e) 経営成績等の状況に関して、事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとに、経営者の視点による認識及び分析・検討内容(例えば、経営成績に重要な影響を与える要因についての分析)を記載すること。(以下略)

(e)でいう「経営成績等」とは、aにあるとおり「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー」を意味する。したがって、aと(e)を合わせて読めば、(e)は以下のように書き換えることができる(第二号様式記載上の注意より抜粋)。

(e)´ 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関して、事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとに、経営者の視点による認識及び分析・検討内容(例えば、経営成績に重要な影響を与える要因についての分析)を記載すること。

企業が見落としているケースが多いのが、「財政状態」と「セグメント情報に記載された区分ごとに」という文言の関係だ。(e)´を読めば明らかなとおり、「財政状態」は、「経営成績」や「キャッシュ・フロー」と同様(キャッシュ・フローについては後述)、「事業全体」とともに、「セグメント情報に記載された区分」ごとに、経営者の視点による認識及び分析・検討内容を記載することが求められている。財政状態については、従来はセグメントごとに「経営者の視点による認識及び分析・検討内容」を記載する必要はなかったが、2018年3月期の有報からは記載が必須となっている点、企業は留意する必要がある。「経営者の視点による認識及び分析・検討内容」の記載の有無を「財政状態」「経営成績」「キャッシュ・フロー」ごとに整理すれば下表のとおりとなる。

  「経営者の視点による認識及び分析・検討内容」の記載の要否
事業全体 セグメント情報に記載された区分ごと
財政状態 記載する 記載する
経営成績 記載する 記載する
キャッシュ・フロー 記載する セグメントごとにキャッシュ・フローの状況を把握していれば記載することが望ましい(注)

(注)通常、セグメント別のキャッシュ・フロー計算書は作成されないため、キャッシュ・フローの状況をセグメント別に記載することが求められるのは、その状況を把握している場合に限られる。

実際、当フォーラムがTOPIX100の3月決算会社82社のうち、単一セグメントの企業または有報の第5【経理の状況】の【セグメント情報】においてセグメント別の財政状態(資産)を開示していない企業を除いた60社の記載状況を調べたところ、下表のとおり73%の会社が、「経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」にセグメント別の財政状態を記載していないことが分かった。

  社数 割合
記載 16社 27%
記載せず 44社 73%

上記44社が記載をしなかった理由は不明だが、たとえ有報の第5【経理の状況】の【セグメント情報】でセグメント別の財政状態を記載したとしても、「経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載がない以上、投資家から「経営者がセグメント別の財政状態の分析・検討を行っていないのではないか」との疑念を持たれるリスクがある。

もっとも、有報の第5【経理の状況】の【セグメント情報】で開示されている情報は、当然ながら「最高経営意思決定機関に対して定期的に提供され、使用されている」はずだ。例えば、有報の第3【設備の状況】の3【設備の新設、除却等の計画】では、セグメント別の設備投資計画等の記載が求められているが、各セグメントにおける投資の意思決定において、経営者が当該セグメントの財政状態について何ら分析・検討を行わないということは考えにくい。要するに、実際には経営者による分析・検討が行われているにもかかわらず、「経営者の視点による認識及び分析・検討内容」への記載を失念していたということが考えられる。

(2018年)6月28日に金融庁から公表された 「ディスクロージャーワーキング・グループ報告 -資本市場における好循環の実現に向けて-」(5ページの下部)に「セグメント分析に際しては、経営管理と同じセグメントに基づいて、セグメントごとの資本効率も含め、セグメントの状況がより明確に理解できるような情報が開示されることが必要である。」との記述があるように、セグメント別の分析はこれまで以上に投資家に重要視される可能性が高い。今回「経営者の視点による認識及び分析・検討内容」への記載を行わなかった企業は、次回の有価証券報告書作成時には確実に記載するようにしたい。

最後に、文字通り「財政状態に関して、事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとに、経営者の視点による認識及び分析・検討内容を記載」した事例を、‟ベストプラクティス”として紹介しておく。

<(㈱デンソー 2018年3月期)>
セグメント別の状況については、日本は、車両生産の増加により、売上収益は3兆838億円(前年度比3,978億円増、14.8%増)と増収になりました。営業利益は、生産の増加や合理化努力により2,007億円(前年度比705億円増、54.2%増)の増益になりました。資産は、その他の金融資産や営業債権及びその他の債権の増加等により、3兆5,191億円(前年度末比4,971億円増)となりました。
北米地域は、拡販等により、売上収益は1兆1,563億円(前年度比790億円増、7.3%増)と増収、営業利益は、償却費の増加等により、425億円(前年度比174億円減、29.1%減)と減益になりました。資産は、現金及び現金同等物や営業債権及びその他の債権の増加等により、5,776億円(前年度末比676億円増)となりました。
欧州地域は、車両生産の増加や拡販により、売上収益は6,623億円(前年度比851億円増、14.7%増)と増収、営業利益は、償却費の増加等により、201億円(前年度比1億円減、0.5%減)と減益になりました。資産は、有形固定資産や棚卸資産の増加等により、4,326億円(前年度末比532億円増加)となりました。
アジア地域は、車両生産の増加や拡販により、売上収益は1兆3,228億円(前年度比1,835億円増、16.1%増)と増収、営業利益は、売上増加による操業度差益や合理化努力により、1,367億円(前年度比240億円増、21.3%増)と増益になりました。資産は、その他の金融資産や現金及び現金同等物の増加等により、1兆450億円(前年度末比1,406億円増)となりました。
その他地域は、売上収益は790億円(前年度比132億円増、20.0%増)と増収、営業利益は134億円(前年度比65億円増、94.7%増)と増益になりました。資産は、有形固定資産の減少等により、565億円(前年度末比19億円減)となりました。

2018/09/14 原則4-8(独立社外取締役の有効な活用)、開示をやめる企業が続出

(2018年)6月1日から施行されている改訂コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の目玉の一つに挙げられるのが、原則4-8(独立社外取締役の有効な活用)の内容が変更され、コーポレートガバナンス報告書(以下、CG報告書)への記載対象から外れたという点だ。

【原則4-8.独立社外取締役の有効な活用】 ※赤字が改訂部分
独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである。
また、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、自主的な判断により、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、上記にかかわらず、そのための取組み方針を開示十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである。

本原則の前段にある「独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべき」という内容は改訂前後で変わっておらず、独立社外取締役が2名未満でない限り、企業はエクスプレインする必要はない。今回の改訂のポイントは後段にある。

改訂前は、「少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要」と考える場合には、「そのための取組み方針」を開示すべきとされていた。逆に言うと、「独立社外取締役は3分の1未満で問題ない」と考えている場合には開示義務はなく、あくまで「3分の1以上が必要と考えているが現在は3分の1未満しかいない」企業に限って「取組み方針」の開示が求められていたということになる。

一方、改訂後の本原則では、「3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える」場合、「十分な人数の独立社外取締役を選任すべき」としているものの、何らかの開示を求めているわけではない。そもそも、改訂前の本原則についての開示事例を分析すると、「3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える」ことによる開示ではなく、下記のような“任意の説明”が多く見られたが、

・3分の1以上の選任を「必要ない」としたうえで「検討を続ける」とするもの
・そもそも「3分の1以上」という基準に触れないもの

本原則の改訂で開示義務そのものがなくなったことを機に、“任意の説明”を含め一切の開示をやめてしまうかどうかという点は論点となろう。

そこで、2018年8月20日のニュース「現時点における各社の改訂CGコード対応状況」で紹介したTOPIX500採用企業のうち一部の原則でも改訂CGコードに対応したCG報告書を提出した「24社」のCG報告書を確認してみたところ、下表のとおり、原則4−8については半数超の企業で何ら記載がなく、しかも今回記載がなかった13社のうち半数を超える7社は改訂を機に開示を取りやめたことが確認された。・・・

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2018/09/14 原則4-8(独立社外取締役の有効な活用)、開示をやめる企業が続出(会員限定)

(2018年)6月1日から施行されている改訂コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の目玉の一つに挙げられるのが、原則4-8(独立社外取締役の有効な活用)の内容が変更され、コーポレートガバナンス報告書(以下、CG報告書)への記載対象から外れたという点だ。

【原則4-8.独立社外取締役の有効な活用】 ※赤字が改訂部分
独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである。
また、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、自主的な判断により、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、上記にかかわらず、そのための取組み方針を開示十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである。

本原則の前段にある「独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべき」という内容は改訂前後で変わっておらず、独立社外取締役が2名未満でない限り、企業はエクスプレインする必要はない。今回の改訂のポイントは後段にある。

改訂前は、「少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要」と考える場合には、「そのための取組み方針」を開示すべきとされていた。逆に言うと、「独立社外取締役は3分の1未満で問題ない」と考えている場合には開示義務はなく、あくまで「3分の1以上が必要と考えているが現在は3分の1未満しかいない」企業に限って「取組み方針」の開示が求められていたということになる。

一方、改訂後の本原則では、「3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える」場合、「十分な人数の独立社外取締役を選任すべき」としているものの、何らかの開示を求めているわけではない。そもそも、改訂前の本原則についての開示事例を分析すると、「3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える」ことによる開示ではなく、下記のような“任意の説明”が多く見られたが、

・3分の1以上の選任を「必要ない」としたうえで「検討を続ける」とするもの
・そもそも「3分の1以上」という基準に触れないもの

本原則の改訂で開示義務そのものがなくなったことを機に、“任意の説明”を含め一切の開示をやめてしまうかどうかという点は論点となろう。

そこで、2018年8月20日のニュース「現時点における各社の改訂CGコード対応状況」で紹介したTOPIX500採用企業のうち一部の原則でも改訂CGコードに対応したCG報告書を提出した「24社」のCG報告書を確認してみたところ、下表のとおり、原則4−8については半数超の企業で何ら記載がなく、しかも今回記載がなかった13社のうち半数を超える7社は改訂を機に開示を取りやめたことが確認された。

記載あり 11社
記載なし 13社 改訂前には記載あり 7社
改訂前から記載なし 6社

これら24社のうち、独立社外取締役が3分の1未満の企業は6社あった。このうち4社(アサヒグループホールディングス、日本電信電話、エヌ・ティ・ティ・データ、日本水産)は改訂前から本原則については一切開示がない。改訂を機に開示を取りやめたフジクラも、改訂前のCGコードに基づくCG報告書では「取締役14名のうち4名が独立社外取締役である」旨の“現状報告”にとどまっていた。一方、大和ハウス工業は改訂CGコードに対応したCG報告書で、「将来的に必要と考える水準としては具体的に設けていない」としつつ、「複数名選任すべきと考えており、今後も複数名の独立社外取締役を設置する予定」であると説明している。ただし、各社とも「3分の1以上」という基準には触れていない。

このように、現状における改訂原則4-8への対応を見ると、既に独立社外取締役が3分の1以上いる企業ほど何らかの開示を行う傾向にあったものの、CGコードの改訂を機に開示自体を取りやめるケースが少なくない。また、3分の1未満の企業では、もともと開示に後ろ向きだったところに、改訂を幸いとしてさらに開示を行わない事例の増加が予想される。

ただし、多くのグローバル機関投資家は「3分の1以上」を当然視しており、議決権行使基準において「3分の1未満の場合には経営トップの選任議案に反対する」旨を定めるケースも増えてきている(例えば、日本で約2,000社を投資対象とする米国ステートストリート・グローバル・アドバイザーズなど)。原則4-8に対する機関投資家の注目度は高いだけに、上場企業にあっては、任意開示を含む積極的な対応が望まれるところだ。