2018/07/15 【ケーススタディミニテスト】役員の責任を軽減できないか検討したい 第2問解答画面(正解)

正解です。
役員の会社に対する損害賠償責任を完全に免除するには「総株主の同意」が必要です(問題文の「特別決議」は誤りです)。役員の会社に対する損害賠償責任は、株主が1人でも反対すれば、完全に免除することはできません。

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2018/07/15 【ケーススタディミニテスト】役員の責任を軽減できないか検討したい 第2問解答画面(不正解)

不正解です。
役員の会社に対する損害賠償責任を完全に免除するには「総株主の同意」が必要です(問題文の「特別決議」は誤りです)。役員の会社に対する損害賠償責任は、株主が1人でも反対すれば、完全に免除することはできません。

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2018/07/15 【ケーススタディミニテスト】役員の責任を軽減できないか検討したい 第1問解答画面(不正解)

不正解です。
役員の責任は退職すれば免除されるものではなく、時効消滅するには10年の歳月が必要となります。すなわち、役員は退職後も10年間は訴訟リスクを抱えることになります。

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2018/07/15 【ケーススタディミニテスト】役員の責任を軽減できないか検討したい 第1問解答画面(正解)

正解です。
役員の責任は退職すれば免除されるものではなく、時効消滅するには10年の歳月が必要となります。すなわち、役員は退職後も10年間は訴訟リスクを抱えることになります。

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2018/07/15 チェックリスト:役員の責任を軽減できないか検討したい(会員限定)

■チェックリスト:役員の責任を軽減できないか検討したい

チェック事項 備考 対応未了 対応済
取締役会決議で責任の一部免除をできる旨の定款の定めが無い場合、そのような規定を設けることの是非を検討したか。
社外取締役等との責任限定契約締結を可能にする規定を設けるために定款を変更する議案を株主総会に提出する場合、監査役は、社外取締役等と責任限定契約を締結することの是非について、しっかりと検討・議論したか。 会社法427条3項
D&O保険(会社役員損害賠償責任保険)に加入しているか。 一部では「責任限定契約を締結すればD&O保険は不要である」との誤解もあるので注意が必要。責任限定契約で役員の責任が限定されるのは「善意でかつ重大な過失がない」場合に限られる。現実に起きている株主代表訴訟や第三者訴訟の多くは役員の過失を問うものであり、なかには責任限定契約の対象にならないものもあるため、D&O保険への加入は必須となる。
D&O保険の普通保険約款と株主代表訴訟担保特約では、保険料の税務上の取扱いが異なることを確認したか。 株主代表訴訟補償特約の保険料については、「取締役会の承認」「社外取締役が過半数の構成員である任意の委員会の同意または社外取締役全員の同意の取得」の2つの要件を満たす場合に限り、会社負担としても給与課税されない。一方、普通保険約款の保険料にはそのような制約はなく、保険料を会社負担にしても給与課税されることはない。
定款に責任限定契約に関する規定を設けた旨を登記したか。
責任限定契約の締結が社外取締役等就任の条件となる場合、取締役・監査役は、その社外取締役等の候補者に、責任限定契約という株主にとってのデメリットを上回る価値があるか否か、報酬の妥当性などについて検討を行ったか。 もし、候補者が辞退した場合、その理由を調べ、その改善に努めることが、コーポレート・ガバナンスの状況改善に必要である。
責任限定契約を締結した会社が、その社外取締役等の任務懈怠により損害を受けた場合には、それを知った後に最初に招集された株主総会において、(1)責任の原因となった事実、社外取締役等が負う損害賠償責任の額、損害賠償額のうち免除することができる額の限度およびその算定の根拠、(2)責任限定契約の内容とその契約を締結した理由、(3)社外取締役等が賠償する責任を負わないとされた額、を開示したか。 会社法427条4項
責任限定契約を締結した社外取締役等が、その会社またはその子会社の業務執行取締役、執行役、支配人に就任していないか。 会社法427条2項
責任限定契約に基づき責任を一部免除された社外取締役等に対し退職慰労金などの財産上の利益を与える場合、株主総会の承認決議を経たか。 会社法施行規則115条

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2018/07/15 【役員の責任】役員の責任を軽減できないか検討したい(会員限定)

 

役員の責任を免除する3つの方法とそれぞれの問題点

会社に不祥事が生じた場合、役員等()が責任を問われることがあります。役員等の責任問題は、次のステップで考える必要があります。

 以下、取締役、監査役、執行役(経営の監督機能と業務執行機能が分離された指名委員会等設置会社で、業務執行を担当する役員のこと)、会計参与、会計監査人を総称して「役員等」と言います。
<役員等の会社に対する責任問題>
ステップ1:役員等はどのような義務を負っているのか。
 ↓
ステップ2:その義務にどのように違反したのか。
 ↓
ステップ3:それにより会社がどのような損害を負ったのか。
 ↓
ステップ4:その損害について当該役員等はどの程度責任を負うのか。
 ↓
ステップ5:その責任を軽減することは可能か。

役員等と会社の関係は、会社法上は、(会社から役員等に対する)委任または準委任(*1)の関係(会社法330条)にありますので、善管注意義務(民法644条)を負いますが(ステップ1)、役員等のうち取締役および執行役は、善管注意義務に加えて、会社に対する忠実義務も負います(*2 会社法355条、419条2項)。

*1 準委任とは、法律行為(例えば、契約の締結)ではない事務の委託(例えば新製品開発の意思決定や組織マネジメント等)のことを言います(民法656条)。
*2 善管注意義務(善良な管理者としての注意義務)とは、業務の委任を受けた者がその社会的地位や能力などから考えて通常期待される注意義務のことであり、忠実義務とは、法令、定款、株主総会の決議を遵守し、会社のために忠実にその職務を行う義務を言います。もっとも、忠実義務の規定は、善管注意義務を一層明確にしたに過ぎないものであり、両者の内容は同質であると考えられています。

したがって、役員等は、具体的な法律や定款の規定に違反(ステップ2)した場合だけでなく、例えば、従前から問題とされてきた子会社への不正融資について原因の解明や調査を行わずに放置し、会社の損害を拡大した場合のように、一般的な善管注意義務または忠実義務に違反(ステップ2)して会社に損害を与えた場合にも、会社に対し、これによって生じた損害(ステップ3)を賠償する責任()を負う(ステップ4)ことになります(会社法423条1項)。実際、取締役や監査役が株主代表訴訟のターゲットとなった場合、善管注意義務や忠実義務違反が問われるケースは多数あります。

 なお、役員の責任の時効は10年です。役員を退職したとしても10年間は訴訟リスクを抱えることになります。

もっとも、役員等が会社に対して損害賠償責任を負う場合であっても、株主がこれを免除しても構わないということであれば、賠償額の支払いが免除されるという道が残されています(ステップ5)。具体的には、総株主、すなわち株主全員から同意をもらえれば、損害賠償責任のすべてが免除(完全免除)されます。ただし、完全免除のためには、すべての株主の同意が必要ですので、持株数にかかわらず1人でも免除に反対する株主がいれば、完全免除はされません。このように、完全免除は非常にハードルが高いと言えます。

また、株主総会の決議による責任の一部免除という方法もあります。もっとも、監査役設置会社の場合、責任免除の議案の提出に際して、監査役全員の同意が必要になります。そのため、責任免除の議案提出に監査役が1人でも反対したら、議案の提出自体ができないことになります。無事、議案の提出ができたとしても、株主総会の決議は特別決議(*1)が必要とされるため、普通決議よりも要件が厳しく、必ずしも株主総会で承認されるとは限らないことになります。また、一部免除に際しては、退職慰労金の受取や新株予約権の行使がない場合、次の算式で算定される最低責任限度額(*2)を超えて免除することができません。ここで「最低責任限度額」とは、下表<最低責任限度額>の(1)と(2)の合計額をいいます。簡単に言えば、(1)は「会社からもらった年収に所定の年数を乗じた額」、(2)は「ストック・オプションの行使により得た利益」を指しています。

*1 出席株主の3分の2の賛成。詳細は「定時株主総会を開催する」の「定足数をゼロにできないケースとは?」を参照してください。
*2 最低責任限度額とは役員の報酬等を基礎に計算されます。例えば退職慰労金や新株予約権の行使がない場合、代表取締役は年間報酬の6年分、一般の取締役は4年分、監査役や社外取締役は2年分が最低責任限度額となります。たとえば、年間報酬が3千万円の代表取締役であれば、6年分の1億8千万が最低責任限度額となり、損害が3億円とすると1億2千万円が免除の上限となります(最低でも1億8千万円は負担しなければなりません)。最低責任限度額は、「自腹」を強制されるという点では、仕組みこそ異なりますが、健康保険や損害保険の自己負担分のようなイメージと言えます。報酬の高い者ほど自己負担分が増えることになります。
<最低責任限度額>
(1)役員等がその在職中に会社から職務執行の対価として受け、または受けるべき財産上の利益の1年間当たりの額に相当する額として法務省令(会社法施行規則113条)で定める方法により算定される額 × 所定の年数(代表取締役は年間報酬の6年分、一般の取締役は4年分、監査役や社外取締役は2年分)
(2)役員等が会社の新株予約権を引き受けた場合()における当該新株予約権に関する財産上の利益に相当する額として法務省令(会社法施行規則114条)で定める方法により算定される額
 「募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合において、金銭の払込みを要しないこととすることが当該者に特に有利な条件であるとき」や「募集新株予約権と引換えに金銭の払込みが必要な場合において、その払込金額が当該者に特に有利な金額であるとき」に限ります。

そのため、賠償額が多額にのぼる場合には、たとえその一部が免除されたとしても、役員等は依然として高額の賠償額を背負わされる可能性が残されています。

このほか、取締役会決議で責任の一部免除をできるよう定款の定めを設けることもできます(*1)。株主総会決議による免除よりも、免除される可能性は高いのが一般的と言えます。しかし、株主総会決議による免除の場合と同様、監査役全員の同意が必要になります。また、必ずしも取締役会で責任の免除が決議されるとは限りませんし、全部を免除することできない(*2)ので役員等は依然として高額の賠償額を背負わされる可能性があることから、役員等としては不安が残るところでしょう。

*1 取締役や監査役は、自社の定款に取締役会決議で責任の一部免除をできる旨の定めが無い場合、そのような規定を設けることの是非を検討すべきといえます。
*2 取締役会決議における責任の一部免除の場合も、株主総会決議における責任の一部免除の場合と同様、最低責任限度額については免除できません。
<責任免除の種類と役員側から見たそれぞれの問題点>
責任免除の種類 役員側から見た問題点
総株主の同意による損害賠償責任の完全免除 株主が1人でも反対したら、完全免除はされない。
株主総会の決議による責任の一部免除 ・監査役不同意のリスク(監査役設置会社の場合、株主総会に責任免除の議案を提出することについて監査役が1人でも同意しない場合、議案が提出されない)
・否決のリスク(株主総会に提出された一部免除の議案が、必ずしも決議されるとは限らない)
・最低責任限度額の負担(一部免除の金額次第では、依然として高額の賠償責任を背負わされる。)
取締役会の決議による責任の一部免除 ・そもそも定款に規定がなければできない。
・監査役不同意のリスク(監査役設置会社の場合、取締役会に責任免除の議案を提出することについて監査役が1人でも同意しない場合、議案が提出されない)
・否決のリスク(取締役会に提出された一部免除の議案が、必ずしも決議されるとは限らない)
・最低責任限度額の負担(一部免除の金額次第では、依然として高額の賠償責任を背負わされる)
責任限定契約では免除できない責任とは?

ただ、常勤の取締役や監査役ならともかく、おおかた月1~2回の取締役会等に出席するときにしか出社しないような社外取締役や社外監査役にまで、常勤の役員と同様の賠償責任を背負わせるのは酷と言えます。また、その結果、社外取締役や社外監査役の候補者が萎縮してしまい、なり手がいなくなってしまう可能性もあります。

そこで、社外取締役や社外監査役、会計参与、会計監査人(以下、社外取締役等)については、会社との間で所定の契約を事前に締結しておくことで、例外的に、株主全員の同意や株主総会、取締役会による決議を経ることなく、会社に対する賠償額に上限を設ける(=上限額を超えて責任を負うことはない)ことができます(上述の表中のステップ5)。これを「責任限定契約」と言います(会社法427条)。

責任限定契約を締結するためには、「社外取締役等と責任限定契約を締結できる」旨を定款に定める必要があります(*1)。逆に言うと、責任限定契約を締結できるよう定款を変更しておくことで、社外役員の候補者に就任を打診しやすくなります(*2)。

*1 責任限定契約に関する定款の定めの詳細については、後述の「責任限定契約の締結を株主にどう説明する?」を参照してください。
*2 社外役員の選任については「社外取締役を選任したい」を参照してください。

ただし、ここで注意したいのは、上述した損害賠償責任免除や責任限定契約は、会社に対する責任(*1)に限った話であるという点です。第三者に対する責任(*2)については、株主としては免除しようがありませんので、社外取締役等であっても回避するすべのないリスク(後述するD&O保険を除く)と言えます。

*1 会社に生じた損害に対する賠償責任を言います。例えば、分配可能額を超えた剰余金の配当、役員に対する会社資産の贈与や廉価販売、経営破綻した子会社への融資などにより会社が被った損害を賠償する責任を言います。
*2 役員等と会社以外の第三者(銀行や取引先や消費者など)に生じた損害に対する賠償責任を言います。例えば、放漫経営により債権者が損失を被った銀行などの債権者への責任、粉飾決算により損失を被った投資家への責任、欠陥商品により事故に遭った消費者への責任)を言います。

また、常勤の取締役はそもそも責任限定契約を締結することができません。そこで、責任限定契約の対象外である第三者への責任のみならず、会社への責任についても、(上述した損害賠償責任の免除を受けられない限り)その全額を背負うリスクがあります。

D&O保険は万全か?

こうした常勤の取締役や監査役の損害賠償リスク(対会社および第三者)、社外取締役等の第三者に対する損害賠償リスクを軽減するのが、会社役員賠償責任保険(D&O保険=Directors’ and Officers’ Liability Insurance)です。D&O保険とは、役員が業務遂行に起因して損害賠償請求を受けた場合、賠償額を補填する保険です(D&O保険の詳細については【2015年5月の課題】D&O保険(会社役員賠償責任保険)を参照)。

D&O保険は損害保険各社が販売しており、多くの上場会社がこれに加入しています。また、社外取締役の就任の条件として、責任限定契約の他に、D&O保険への加入を挙げる社外取締役候補者も少なくありません。ちなみに、監査役(社外監査役を含む)、会計監査人、会計参与も取締役と同様に損害賠償責任を負う可能性があるため、この保険の対象になります。

一部では「責任限定契約を締結すればD&O保険は不要である」との誤解もあるようですが、責任限定契約で役員の責任が限定されるのは「善意でかつ重大な過失がない」場合に限られます。現実に起きている株主代表訴訟や第三者訴訟の多くは役員の過失を問うものであり、なかには責任限定契約の対象にならないものもあるため、D&O保険への加入は必須となります(2015年4月22日のニュース「責任限定契約を締結すればD&O保険は不要か」参照)。

では、D&O保険は、役員が負う損害賠償責任のすべてを肩代わりしてくれるのでしょうか。

D&O保険の支払ルール等を定めた約款は、「普通保険約款」と「株主代表訴訟担保特約」(保険会社によっては「株主代表訴訟補償特約」とも呼ばれます)に分かれています。このうち「普通保険約款」でカバーされるのが、(1)株主代表訴訟(*1)や第三者訴訟(*2)で役員が“勝訴”した場合の訴訟費用(弁護士費用、申立手数料、証人や鑑定人の日当等)と、(2)第三者訴訟で役員が“敗訴”した場合の訴訟費用や損害賠償金(和解時の和解金も含む。以下、同様)です。裏を返すと、普通保険約款では、株主代表訴訟で役員が敗訴した場合に発生する損害賠償金はカバーしていないということになります。

*1 「会社が受けた損害」を回復するために、“株主が会社に代わって”会社役員に対して損害賠償を求める訴えを提起するもの。
*2 株主や取引先等の第三者が「自身が受けた損害」を回復するために、会社役員に対して損害賠償を求める訴えを提起するもの。

普通保険約款で担保していない部分をカバーするのが「株主代表訴訟担保特約」です。役員はこの特約を締結していれば、株主代表訴訟で“敗訴”した場合に発生する損害賠償金についても、保険金の支払いを受けることができます。

ただし、D&O保険には、(1)役員が私的な利益または便宜の供与を違法に得た場合、(2)役員の犯罪行為や、法令違反を認識しながら行った行為――等については保険金を支払わないとする「免責事項」が設けられています。この点は、飲酒運転による事故の際に飲酒運転者側の車の損害に保険金が支払われないのと同じ理屈で、犯罪行為等を犯した者には救済は与えられないというわけです。

また、会社が役員を訴える会社訴訟(会社法423条)がカバーされるかどうかは、特約次第といえます。以上をまとめると、下図のとおりです。

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最近では、第三者委員会を設置した場合に生ずる委員への支払報酬や委員が外部に委託して実施する調査に必要となるコストなどを補償する特約や、金融商品取引法に基づく法定開示書類の記載内容が不実であったことを理由として会社が株主から損害賠償を請求された場合に補償する保険も発売されています。社外取締役の増加に伴い、D&O保険のマーケットも拡大していることから、新商品・新特約も拡充していくことが考えられます。国税庁が、株主代表訴訟補償特約の保険料を会社負担とした場合に、「取締役会の承認」「社外取締役が過半数の構成員である任意の委員会の同意または社外取締役全員の同意の取得」の2つの要件を満たす場合は給与課税を行わない()旨の文書を公表したり(2016年2月26日のニュース「株主代表訴訟補償特約保険料の会社負担、給与課税不要に」を参照)、会社法にD&O保険を規定するよう改正が行われる方向で検討が進められている(2017年8月9日のニュース「D&O保険を巡る会社法改正議論の行方」を参照)などD&O保険の制度を巡る動きも活発化しています。上場会社の総務担当者や社外役員候補者はD&O保険の最新の状況についてアンテナを高くしておくべきと言えます(D&O保険の補償内容の見直しについては2017年10月31日のニュース「D&O保険の補償内容、見直しのポイント」を参照)。

 当該要件を満たさない場合、株主代表訴訟補償特約の保険料を会社負担にすると給与課税されます。なお、普通保険約款の保険料はそのような制約はなく、保険料を会社負担にしても給与課税されることはありません。
責任限定契約の締結を株主にどう説明する?

上述のとおり、責任限定契約は「社外取締役、会計参与、社外監査役、会計監査人(社外取締役等)」のみが対象となる特別な契約です。社外取締役等の責任を契約で軽減させる以上、そのような契約を締結することに関して株主間で合意しておく必要があります。株主間の合意は“定款”に取りまとめられますので、責任限定契約を締結するためには、社外取締役等と責任限定契約を締結することを可能にする規定が定款に定められている必要があります。そのような規定を定款に定めていない会社の場合、定款を変更しなければなりません()。したがって、責任限定契約を締結するためには、株主に納得してもらうことが前提となります。

 定款の変更は、株主総会の特別決議が必要になります(特別決議の要件については「定時株主総会を開催する」の「定足数をゼロにできないケースとは?」を参照してください。

もちろん、社外取締役等の候補者が自身のリスクを限定させたいと思うのは自然なことです。コーポレート・ガバナンスの程度が低い会社は不祥事の発生リスクが高く、社外取締役等の訴訟リスクも高いといえ、候補者としても尻込みしがちと言えます。そのような会社では候補者側から相場よりも高めの報酬や責任限定契約の締結を条件にされる可能性が高いと言えます。

しかし、視点を株主側に変えてみると、責任限定契約は株主からの責任追及に上限を付す契約であり、株主にとっては“不利益”となるものです。したがって、社外取締役等を迎え入れる側の取締役や監査役としては、その社外取締役等の候補者が、コーポレート・ガバナンスや企業価値の向上、コンプライアンスの確保といった観点から、責任限定契約という不利益を株主に我慢してもらってでも就任してもらう価値のある人物なのか、またその報酬は妥当か、責任限定契約の締結によりリスクが限定されたことに安心して職務がおろそかになる可能性はないかなどについて契約締結前に検討し、株主に理解を求める必要があります。

特に監査役は、社外取締役と責任限定契約を締結することを可能にする定款変更議案を株主総会に提出する前にこれに同意(監査役全員の同意が必要)しなければならないことになっていますので(会社法427条3項)、責任は重大です。監査役としては、社外取締役等との責任限定契約締結を可能にすることの是非について、自社のコーポレート・ガバナンスに関する方針と一致しているのか、責任限定契約の締結を条件にしないと社外取締役等のなり手がいない状況なのかどうか、責任限定契約の締結により職務がおろそかになる可能性はないのか、検討・議論をしておく必要があります。また、候補者が辞退した場合、その理由は是非ともヒアリングすべきといえます。相当程度の知見のある候補者が辞退という判断に至った理由を調べ、その改善に努めることでコーポレート・ガバナンスの状況を改善する糸口になるからです。

賠償責任額はどこまで抑えられる?

責任限定契約を締結できるようするためには、上述のとおり、事前に株主総会特別決議により定款を変更することが必要になります。具体的には、社外取締役等の責任を、「定款で定めた額の範囲内であらかじめ会社が定めた額」(*1)と「最低責任限度額」(*2)のいずれか高い額、すなわち、両方の額を比較して“高い方”の額に責任を限定する契約(責任限定契約)を締結することができる旨の定款規定を設けます。

*1 例えば、定款では「500万円以上の範囲内」と定めておいて、会社が責任の限度額を「1,000万円」と定めます。
*2 最低責任限度額については、上述の「役員の責任を免除する3つの方法とそれぞれの問題点」を参照してください。

要するに、「定款で定めた額の範囲内であらかじめ会社が定めた額」より「最低責任限度額」の方が高ければ、もし社外取締役等が負うべき賠償額が多額に上った場合でも、賠償責任は概ね「会社からもらった年収の2年分とストック・オプションの行使により得た利益の合計」が上限になるということです。

社外取締役と責任限定契約を締結することを可能にする定款変更議案の提出前には、監査役全員の同意が必要になる点は上述のとおりです。そして、定款変更議案が株主総会で決議された後は、定款に当該規定を設けた旨を登記することになります。

以上のような手続を経たうえで、社外取締役等の各候補者と責任限定契約を締結することになります。その際、責任限定契約を社外取締役Aとは締結するものの、社外取締役Bとは締結しないということも可能です。

責任限定契約を締結しても残るリスクへの対応

では、社外取締役等からみれば、責任限定契約の締結により高額な損害賠償責任を負うリスクを100%回避したことになるのでしょうか?

残念ながらそうではありません。実際に社外取締役等の責任問題に発展した場合に、責任限定契約に基づき社外取締役等の責任が限定されるためには、社外取締役等に「職務を行うに付き善意でかつ重大な過失がない」ことが条件となります。例えば、わずかな注意を払えば任務懈怠を回避できたというような場合には「重過失」が認められ、責任は限定されないことになります。言い換えると、社外取締役等は、責任限定契約を締結したからといって気を抜くことが許されるわけではなく、「どこまでやっておけば、少なくとも重大な過失がないレベルと言えるのか」を常に意識しながら職務を遂行していく必要があるということになります。

なお、責任限定契約を締結した会社が、その社外取締役等の任務懈怠により損害を受けた場合には、損害を受けたことを知った後に最初に招集された株主総会において、
(1)責任の原因となった事実、社外取締役等が負う損害賠償責任の額、 損害賠償額のうち免除することができる額の限度およびその算定の根拠
(2)責任限定契約の内容とその契約を締結した理由
(3)社外取締役等が賠償する責任を負わないとされた額
を開示しなければなりません(会社法427条4項)。

責任限定契約締結に伴い「制約」も発生

本来であれば、役員等は自らの善管注意義務や忠実義務違反により会社が被った損害に対しては無制限に責任を負うことになりますが、文字通りその責任を「限定」することとなる責任限定契約は、その当事者である社外取締役等にとっては非常にメリットが大きいと言えます。

ただ、そのようなメリットが無条件に与えられるはずもありません。

まず、そもそもの話として、責任限定契約により責任が限定されるのは、定款変更・責任限定契約締結の後に会社に生じた損害に限られます。

また、社外取締役等に「職務を行うに付き善意でかつ重大な過失がない」ことが条件となるのは上述のとおりです。

さらに、責任限定契約に基づき責任を一部免除された社外取締役等に対し退職慰労金などの財産上の利益を与える場合には、株主総会の承認を受けなければなりません(会社法427条5項、425条4項)。責任が限定されるわけですから、享受する利益についても制限を受けるのは当然でしょう。

せっかく締結した責任限定契約が効力を失う場合も

せっかく責任限定契約を締結しても、その契約が効力を失うことがあります。それは、責任限定契約を締結した社外取締役等が、その会社またはその子会社の業務執行取締役、執行役、支配人に就任した場合です。会社法では、そのような場合には、責任限定契約は将来に向かってその効力を失うと定められています(会社法427条2項)。責任限定契約の制度は、社外取締役等の人材確保のため、賠償責任への不安を除去すること等を目的としていますので、そもそも社外取締役等の地位でなくなった場合には、そのような目的にそぐわなくなるからです。とりわけ、下線を引いた“子会社”については「別法人だから関係ない」と誤解しがちなので注意が必要です。

なお、社外取締役や社外監査役の地位を外れることで、証券取引所が定める独立役員(一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役または社外監査役)の要件も充たさなくなってしまいます。その結果、独立役員が1名もいない状況になってしまえば、東京証券取引所が企業行動規範の「遵守すべき事項」として要請している「独立役員の1名以上確保」に違反することになります(有価証券上場規程436条の2第1項)。そのような事態になった場合、その上場会社の内部管理体制等について改善の必要性が高いと東京証券取引所が認めるときは、特設注意市場銘柄に指定されてしまうことになります。また、東京証券取引所では企業行動規範の「望まれる事項」として、「取締役である独立役員を少なくとも1名以上確保するよう努めなければならない」としています(有価証券上場規程445条の4第1項)。よって、独立役員である社外取締役が地位を外れることで、独立役員である社外取締役が1名もいない状況になってしまえば、それに違反してしまうことになります(こちらは「望まれる事項」なので罰則はありません)。こういった事態にならないよう、社外取締役等は、たとえ子会社であっても業務執行者の立場にならないよう留意する必要があります。

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2018/07/13 執行役員にも善管注意義務等負わせる案が浮上

取締役の一つ下の階層に「執行役員」を置き、業務執行に責任を持たせている上場企業は多い。執行役員制度が広く普及した理由の一つとして、取締役会のスリム化を図りたい企業が、取締役の員数を減らす分、「役員」を名乗ることができるポストを“水増し”する必要があったとの指摘もある。しかし、執行役員制度には、監査役(会)設置会社や監査等委員会設置会社において業務の執行と監督の分離を実現し、取締役会の監督機能を強化する、あるいは、特定の業務に責任を持たせたうえで、その仕事振りから将来の取締役候補を選別する「人材プール」として活用できるなどポジティブな効果もある。

このように執行役員制度は日本企業において重要な役割を果たしているものの、あくまで法的な根拠のない”任意“の制度に過ぎない(あえて法的根拠を求めるとすれば、執行役員は会社法上の「使用人」(会社法第3章第1節)ということになる)。この点、会社法で定義され(同法418条)、取締役と同様に会社法上の責任(善管注意義務・忠実義務)を負う指名委員会等設置会社の「執行役」とは異なる。すなわち、執行役員は執行役と同様、経営陣の一角として会社の業務執行を担っているにもかかわらず、執行役のような会社法上の責任は何ら負っていないというわけだ。また、取締役の報酬には報酬規制(全取締役の報酬の総額は株主総会で承認を受けた報酬枠の範囲内に収まる必要があるとする規制)が適用されるが、取締役ではない執行役員への給与はこの規制に服さず、さらに情報開示(全取締役の報酬総額は事業報告や有価証券報告書で開示され、また年間の報酬額が1億円を超える役員(取締役・監査役・執行役)は個人名とともに報酬額を開示しなければならない)の対象にもならない。

執行役 : 取締会決議により選任・解任され(登記も必要)、取締役会決議によって委任された事項について会社業務を実行する役職。執行役が2人以上いる場合は会社を代表する代表執行役を選ぶ。取締役と同様、会社に対して善管注意義務および忠実義務を負い、株主代表訴訟の対象にもなる。「執行役員」も会社業務の実行に対して権限と責任を持つが、会社法上に定義はなく、あくまで重要な使用人に過ぎない点、執行役とは異なる。

執行役員制度を採用する企業が少なかったうちはこうした問題がクローズアップされることはほとんどなかったが、執行役員制度の普及とともに、重要な職責を担う執行役員の法的責任が使用人と同等で、報酬規制や情報開示の対象にもならないままでよいのか、問題視する声が高まりつつある。こうした中、・・・

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2018/07/13 執行役員にも善管注意義務等負わせる案が浮上(会員限定)

取締役の一つ下の階層に「執行役員」を置き、業務執行に責任を持たせている上場企業は多い。執行役員制度が広く普及した理由の一つとして、取締役会のスリム化を図りたい企業が、取締役の員数を減らす分、「役員」を名乗ることができるポストを“水増し”する必要があったとの指摘もある。しかし、執行役員制度には、監査役(会)設置会社や監査等委員会設置会社において業務の執行と監督の分離を実現し、取締役会の監督機能を強化する、あるいは、特定の業務に責任を持たせたうえで、その仕事振りから将来の取締役候補を選別する「人材プール」として活用できるなどポジティブな効果もある。

このように執行役員制度は日本企業において重要な役割を果たしているものの、あくまで法的な根拠のない”任意“の制度に過ぎない(あえて法的根拠を求めるとすれば、執行役員は会社法上の「使用人」(会社法第3章第1節)ということになる)。この点、会社法で定義され(同法418条)、取締役と同様に会社法上の責任(善管注意義務・忠実義務)を負う指名委員会等設置会社の「執行役」とは異なる。すなわち、執行役員は執行役と同様、経営陣の一角として会社の業務執行を担っているにもかかわらず、執行役のような会社法上の責任は何ら負っていないというわけだ。また、取締役の報酬には報酬規制(全取締役の報酬の総額は株主総会で承認を受けた報酬枠の範囲内に収まる必要があるとする規制)が適用されるが、取締役ではない執行役員への給与はこの規制に服さず、さらに情報開示(全取締役の報酬総額は事業報告や有価証券報告書で開示され、また年間の報酬額が1億円を超える役員(取締役・監査役・執行役)は個人名とともに報酬額を開示しなければならない)の対象にもならない。

執行役 : 取締会決議により選任・解任され(登記も必要)、取締役会決議によって委任された事項について会社業務を実行する役職。執行役が2人以上いる場合は会社を代表する代表執行役を選ぶ。取締役と同様、会社に対して善管注意義務および忠実義務を負い、株主代表訴訟の対象にもなる。「執行役員」も会社業務の実行に対して権限と責任を持つが、会社法上に定義はなく、あくまで重要な使用人に過ぎない点、執行役とは異なる。

執行役員制度を採用する企業が少なかったうちはこうした問題がクローズアップされることはほとんどなかったが、執行役員制度の普及とともに、重要な職責を担う執行役員の法的責任が使用人と同等で、報酬規制や情報開示の対象にもならないままでよいのか、問題視する声が高まりつつある。こうした中、2018年6月20日に開催された法務省の法制審議会・会社法制(企業統治等関係)部会の第13回会議では、経済産業省から「実務上執行役員等として選任されている者のうち、業務執行取締役と同等程度の特に重要な職責を果たす者について、例えば、指名委員会等設置会社における執行役と同様、監査役設置会社や監査等委員会設置会社においても、取締役会の決議によって執行役として選任することを認めた上で、会社法上一定の規律の対象とする、執行役として選任されている者以外についても同等の権限を有する者については同等の規律の対象とする等、会社の機関として会社法上の位置付けを与えることを検討してはどうか。」との提案が行われている(第13回会議の参考資料44の2ページを参照)。

もしこの提案が実現した場合、執行役員制度を導入している企業にとって規制強化であり、その影響は大きい。例えば、1億円以上の報酬を得ている執行役員の氏名が公表されたり、「取締役会の決議によって執行役として選任された」執行役員の報酬を考慮して株主総会で役員の報酬総額の増額決議を承認してもらう必要が生じたりする可能性がある。「取締役会の決議によって執行役として選任された」執行役員は、株主から代表訴訟を受ける可能性がある以上、会社役員賠償責任保険(D&O保険=Directors’ and Officers’ Liability Insurance)に加入する必要が生じる(D&O保険の詳細については「役員の責任を軽減できないか検討したい」の「D&O保険は万全か?」 を参照)。もし「取締役会の決議によって執行役として選任された」執行役員は会社との雇用契約が終了することとされ、かつ、実務上「業務執行取締役と同等程度の特に重要な職責を果たす者」の解釈が緩く運用されると、「名ばかり管理職」ならぬ「名ばかり執行役員」を多数選任して雇用の流動化を図ろうとするブラック企業が出てくるかもしれない。

もっとも、経産省の執行役員制度を法定化する旨の提案は、2018年2月28日に公表され、すでにパブリックコメント期間も締め切られた中間試案には含まれていない(中間試案の内容は2018年3月2日のニュース『ガバナンス関連の会社法改正「中間試案」公表、株式交付制度創設へ』参照)ことからすると、現在検討中の会社法改正案に取り込まれるかどうかは微妙なところ。法制審議会・会社法制(企業統治等関係)部会における本提案に関する議論の行方は、動きがあり次第、続報していきたい。

2018/07/12 米国アクティビストによる日本企業への投資が急増

米国のアクティビストが日本企業に投資するケースが急増していることが分かった。・・・

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2018/07/12 米国アクティビストによる日本企業への投資が急増(会員限定)

米国のアクティビストが日本企業に投資するケースが急増していることが分かった。

アクティビストが企業に経営改革を迫るといった活動は“アクティビスト・キャンペーン”とも呼ばれるが、米国のアクティビストが国外で行うアクティビスト・キャンペーンのうち3割はアジア企業が占めており、その件数は106件と、6年前の10件から10倍以上に急増している。そして、アジア企業の中でも最も多くのアクティビスト・キャンペーンを受けているのが日本企業で、その数は34件(全体の約32%)にも上る。例えば、米国のヘッジファンド「バリューアクト・キャピタル・マネジメント」は今年(2018年)5月末にオリンパスの株式を5%取得している。アクティビストとして著名なバリューアクト・キャピタル・マネジメントだが、日本企業への投資はこれが初だという。

「モノ言う株主」と言われるように、アクティビストに対しては「半ば強引に経営改革を迫る“厄介な存在”」という印象を持っている日本企業も少なくないだろう。確かに、アクティビストは株主の保有を背景に、株主還元や事業売却などを強硬に求めたり、企業に役員を送り込んだりといった行動に出ることが少なくない。最近では、香港の投資家オアシスがアルパインに対し大幅増配と社外取締役選任を求めたケース、英国のアセット・バリュー・インベスターズ(AVI)がTBSホールディングスに対し同社が政策保有する東京エレクトロン株の現物配当を求めたケース、日本のストラテジックキャピタルが蝶理に対し取締役の賞与を業績連動とすることを求めたケースなどがある。

一方、オリンパスに投資したバリューアクト・キャピタル・マネジメントは従来型のアクティビストとは毛色が異なる。取締役を派遣する場合でも、投資先の経営陣と合意を前提とし、取締役派遣後も内部から財務体質の改善を促すなど、その手法は“穏健”だ。これまでにも、マイクロソフトやシティグループなど著名企業を中心に40社以上に取締役を送り込んだ実績がある。

では、そもそもなぜ米国のアクティビストが日本企業を投資対象とするようになったのだろうか。その背景には、これまで日本企業に対する“アクティビスト・キャンペーン”がある程度の実績を収めたということもあるが、もう一つ大きな要因となっているのが、コーポレートガバナンス・コードの導入をはじめとする政府主導のコーポレート・ガバナンス改革の影響だ。日本のコーポレート・ガバナンス改革は、企業と投資家の対話を促進し、社外取締役の選任により企業経営の透明性を高めるなど、アクティビストにとっても日本企業に投資しやすい環境を生み出した。実際、バリューアクト・キャピタル・マネジメントがオリンパスに投資したのも、オリンパスの医療機器メーカーとしての競争力のみならず、2011年に発覚した損失隠し事件以降の同社のガバナンス強化を評価したことによる。また、米国のアクティビストが国外で行うアクティビスト・キャンペーンの対象となっているのは、上述のとおり件数が最も多い日本企業以外では、シンガポール、香港など、コーポレート・ガバナンス強化に向けての環境整備が進んだ国の企業が多くなっている。

バリューアクト・キャピタル・マネジメントは今後も“穏健なアクティビスト”として、日本企業への投資を展開していくとみられている。「物言う株主」の考え方、手法が日本企業に受け入れられれば、増配などを目的とした一時的な投資ではなく、長期投資を行うアクティビストが増えていく可能性もあろう。