正解です。
役員の会社に対する損害賠償責任を完全に免除するには「総株主の同意」が必要です(問題文の「特別決議」は誤りです)。役員の会社に対する損害賠償責任は、株主が1人でも反対すれば、完全に免除することはできません。
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「役員の責任を軽減できないか検討したい」の「役員の責任を免除する3つの方法とそれぞれの問題点」はこちら
正解です。
役員の会社に対する損害賠償責任を完全に免除するには「総株主の同意」が必要です(問題文の「特別決議」は誤りです)。役員の会社に対する損害賠償責任は、株主が1人でも反対すれば、完全に免除することはできません。
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役員の会社に対する損害賠償責任を完全に免除するには「総株主の同意」が必要です(問題文の「特別決議」は誤りです)。役員の会社に対する損害賠償責任は、株主が1人でも反対すれば、完全に免除することはできません。
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役員の責任は退職すれば免除されるものではなく、時効消滅するには10年の歳月が必要となります。すなわち、役員は退職後も10年間は訴訟リスクを抱えることになります。
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役員の責任は退職すれば免除されるものではなく、時効消滅するには10年の歳月が必要となります。すなわち、役員は退職後も10年間は訴訟リスクを抱えることになります。
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| チェック事項 | 備考 | 対応未了 | 対応済 |
|---|---|---|---|
| 取締役会決議で責任の一部免除をできる旨の定款の定めが無い場合、そのような規定を設けることの是非を検討したか。 | |||
| 社外取締役等との責任限定契約締結を可能にする規定を設けるために定款を変更する議案を株主総会に提出する場合、監査役は、社外取締役等と責任限定契約を締結することの是非について、しっかりと検討・議論したか。 | 会社法427条3項 | ||
| D&O保険(会社役員損害賠償責任保険)に加入しているか。 | 一部では「責任限定契約を締結すればD&O保険は不要である」との誤解もあるので注意が必要。責任限定契約で役員の責任が限定されるのは「善意でかつ重大な過失がない」場合に限られる。現実に起きている株主代表訴訟や第三者訴訟の多くは役員の過失を問うものであり、なかには責任限定契約の対象にならないものもあるため、D&O保険への加入は必須となる。 | ||
| D&O保険の普通保険約款と株主代表訴訟担保特約では、保険料の税務上の取扱いが異なることを確認したか。 | 株主代表訴訟補償特約の保険料については、「取締役会の承認」「社外取締役が過半数の構成員である任意の委員会の同意または社外取締役全員の同意の取得」の2つの要件を満たす場合に限り、会社負担としても給与課税されない。一方、普通保険約款の保険料にはそのような制約はなく、保険料を会社負担にしても給与課税されることはない。 | ||
| 定款に責任限定契約に関する規定を設けた旨を登記したか。 | |||
| 責任限定契約の締結が社外取締役等就任の条件となる場合、取締役・監査役は、その社外取締役等の候補者に、責任限定契約という株主にとってのデメリットを上回る価値があるか否か、報酬の妥当性などについて検討を行ったか。 | もし、候補者が辞退した場合、その理由を調べ、その改善に努めることが、コーポレート・ガバナンスの状況改善に必要である。 | ||
| 責任限定契約を締結した会社が、その社外取締役等の任務懈怠により損害を受けた場合には、それを知った後に最初に招集された株主総会において、(1)責任の原因となった事実、社外取締役等が負う損害賠償責任の額、損害賠償額のうち免除することができる額の限度およびその算定の根拠、(2)責任限定契約の内容とその契約を締結した理由、(3)社外取締役等が賠償する責任を負わないとされた額、を開示したか。 | 会社法427条4項 | ||
| 責任限定契約を締結した社外取締役等が、その会社またはその子会社の業務執行取締役、執行役、支配人に就任していないか。 | 会社法427条2項 | ||
| 責任限定契約に基づき責任を一部免除された社外取締役等に対し退職慰労金などの財産上の利益を与える場合、株主総会の承認決議を経たか。 | 会社法施行規則115条 |
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会社に不祥事が生じた場合、役員等(*)が責任を問われることがあります。役員等の責任問題は、次のステップで考える必要があります。
| <役員等の会社に対する責任問題> ステップ1:役員等はどのような義務を負っているのか。 ↓ ステップ2:その義務にどのように違反したのか。 ↓ ステップ3:それにより会社がどのような損害を負ったのか。 ↓ ステップ4:その損害について当該役員等はどの程度責任を負うのか。 ↓ ステップ5:その責任を軽減することは可能か。 |
役員等と会社の関係は、会社法上は、(会社から役員等に対する)委任または準委任(*1)の関係(会社法330条)にありますので、善管注意義務(民法644条)を負いますが(ステップ1)、役員等のうち取締役および執行役は、善管注意義務に加えて、会社に対する忠実義務も負います(*2 会社法355条、419条2項)。
したがって、役員等は、具体的な法律や定款の規定に違反(ステップ2)した場合だけでなく、例えば、従前から問題とされてきた子会社への不正融資について原因の解明や調査を行わずに放置し、会社の損害を拡大した場合のように、一般的な善管注意義務または忠実義務に違反(ステップ2)して会社に損害を与えた場合にも、会社に対し、これによって生じた損害(ステップ3)を賠償する責任(*)を負う(ステップ4)ことになります(会社法423条1項)。実際、取締役や監査役が株主代表訴訟のターゲットとなった場合、善管注意義務や忠実義務違反が問われるケースは多数あります。
もっとも、役員等が会社に対して損害賠償責任を負う場合であっても、株主がこれを免除しても構わないということであれば、賠償額の支払いが免除されるという道が残されています(ステップ5)。具体的には、総株主、すなわち株主全員から同意をもらえれば、損害賠償責任のすべてが免除(完全免除)されます。ただし、完全免除のためには、すべての株主の同意が必要ですので、持株数にかかわらず1人でも免除に反対する株主がいれば、完全免除はされません。このように、完全免除は非常にハードルが高いと言えます。
また、株主総会の決議による責任の一部免除という方法もあります。もっとも、監査役設置会社の場合、責任免除の議案の提出に際して、監査役全員の同意が必要になります。そのため、責任免除の議案提出に監査役が1人でも反対したら、議案の提出自体ができないことになります。無事、議案の提出ができたとしても、株主総会の決議は特別決議(*1)が必要とされるため、普通決議よりも要件が厳しく、必ずしも株主総会で承認されるとは限らないことになります。また、一部免除に際しては、退職慰労金の受取や新株予約権の行使がない場合、次の算式で算定される最低責任限度額(*2)を超えて免除することができません。ここで「最低責任限度額」とは、下表<最低責任限度額>の(1)と(2)の合計額をいいます。簡単に言えば、(1)は「会社からもらった年収に所定の年数を乗じた額」、(2)は「ストック・オプションの行使により得た利益」を指しています。
| (1)役員等がその在職中に会社から職務執行の対価として受け、または受けるべき財産上の利益の1年間当たりの額に相当する額として法務省令(会社法施行規則113条)で定める方法により算定される額 × 所定の年数(代表取締役は年間報酬の6年分、一般の取締役は4年分、監査役や社外取締役は2年分) (2)役員等が会社の新株予約権を引き受けた場合(*)における当該新株予約権に関する財産上の利益に相当する額として法務省令(会社法施行規則114条)で定める方法により算定される額 |
そのため、賠償額が多額にのぼる場合には、たとえその一部が免除されたとしても、役員等は依然として高額の賠償額を背負わされる可能性が残されています。
このほか、取締役会決議で責任の一部免除をできるよう定款の定めを設けることもできます(*1)。株主総会決議による免除よりも、免除される可能性は高いのが一般的と言えます。しかし、株主総会決議による免除の場合と同様、監査役全員の同意が必要になります。また、必ずしも取締役会で責任の免除が決議されるとは限りませんし、全部を免除することできない(*2)ので役員等は依然として高額の賠償額を背負わされる可能性があることから、役員等としては不安が残るところでしょう。
| 責任免除の種類 | 役員側から見た問題点 |
| 総株主の同意による損害賠償責任の完全免除 | 株主が1人でも反対したら、完全免除はされない。 |
| 株主総会の決議による責任の一部免除 | ・監査役不同意のリスク(監査役設置会社の場合、株主総会に責任免除の議案を提出することについて監査役が1人でも同意しない場合、議案が提出されない) ・否決のリスク(株主総会に提出された一部免除の議案が、必ずしも決議されるとは限らない) ・最低責任限度額の負担(一部免除の金額次第では、依然として高額の賠償責任を背負わされる。) |
| 取締役会の決議による責任の一部免除 | ・そもそも定款に規定がなければできない。 ・監査役不同意のリスク(監査役設置会社の場合、取締役会に責任免除の議案を提出することについて監査役が1人でも同意しない場合、議案が提出されない) ・否決のリスク(取締役会に提出された一部免除の議案が、必ずしも決議されるとは限らない) ・最低責任限度額の負担(一部免除の金額次第では、依然として高額の賠償責任を背負わされる) |
ただ、常勤の取締役や監査役ならともかく、おおかた月1~2回の取締役会等に出席するときにしか出社しないような社外取締役や社外監査役にまで、常勤の役員と同様の賠償責任を背負わせるのは酷と言えます。また、その結果、社外取締役や社外監査役の候補者が萎縮してしまい、なり手がいなくなってしまう可能性もあります。
そこで、社外取締役や社外監査役、会計参与、会計監査人(以下、社外取締役等)については、会社との間で所定の契約を事前に締結しておくことで、例外的に、株主全員の同意や株主総会、取締役会による決議を経ることなく、会社に対する賠償額に上限を設ける(=上限額を超えて責任を負うことはない)ことができます(上述の表中のステップ5)。これを「責任限定契約」と言います(会社法427条)。
責任限定契約を締結するためには、「社外取締役等と責任限定契約を締結できる」旨を定款に定める必要があります(*1)。逆に言うと、責任限定契約を締結できるよう定款を変更しておくことで、社外役員の候補者に就任を打診しやすくなります(*2)。
ただし、ここで注意したいのは、上述した損害賠償責任免除や責任限定契約は、会社に対する責任(*1)に限った話であるという点です。第三者に対する責任(*2)については、株主としては免除しようがありませんので、社外取締役等であっても回避するすべのないリスク(後述するD&O保険を除く)と言えます。
また、常勤の取締役はそもそも責任限定契約を締結することができません。そこで、責任限定契約の対象外である第三者への責任のみならず、会社への責任についても、(上述した損害賠償責任の免除を受けられない限り)その全額を背負うリスクがあります。
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取締役の一つ下の階層に「執行役員」を置き、業務執行に責任を持たせている上場企業は多い。執行役員制度が広く普及した理由の一つとして、取締役会のスリム化を図りたい企業が、取締役の員数を減らす分、「役員」を名乗ることができるポストを“水増し”する必要があったとの指摘もある。しかし、執行役員制度には、監査役(会)設置会社や監査等委員会設置会社において業務の執行と監督の分離を実現し、取締役会の監督機能を強化する、あるいは、特定の業務に責任を持たせたうえで、その仕事振りから将来の取締役候補を選別する「人材プール」として活用できるなどポジティブな効果もある。
このように執行役員制度は日本企業において重要な役割を果たしているものの、あくまで法的な根拠のない”任意“の制度に過ぎない(あえて法的根拠を求めるとすれば、執行役員は会社法上の「使用人」(会社法第3章第1節)ということになる)。この点、会社法で定義され(同法418条)、取締役と同様に会社法上の責任(善管注意義務・忠実義務)を負う指名委員会等設置会社の「執行役」とは異なる。すなわち、執行役員は執行役と同様、経営陣の一角として会社の業務執行を担っているにもかかわらず、執行役のような会社法上の責任は何ら負っていないというわけだ。また、取締役の報酬には報酬規制(全取締役の報酬の総額は株主総会で承認を受けた報酬枠の範囲内に収まる必要があるとする規制)が適用されるが、取締役ではない執行役員への給与はこの規制に服さず、さらに情報開示(全取締役の報酬総額は事業報告や有価証券報告書で開示され、また年間の報酬額が1億円を超える役員(取締役・監査役・執行役)は個人名とともに報酬額を開示しなければならない)の対象にもならない。
執行役 : 取締会決議により選任・解任され(登記も必要)、取締役会決議によって委任された事項について会社業務を実行する役職。執行役が2人以上いる場合は会社を代表する代表執行役を選ぶ。取締役と同様、会社に対して善管注意義務および忠実義務を負い、株主代表訴訟の対象にもなる。「執行役員」も会社業務の実行に対して権限と責任を持つが、会社法上に定義はなく、あくまで重要な使用人に過ぎない点、執行役とは異なる。
執行役員制度を採用する企業が少なかったうちはこうした問題がクローズアップされることはほとんどなかったが、執行役員制度の普及とともに、重要な職責を担う執行役員の法的責任が使用人と同等で、報酬規制や情報開示の対象にもならないままでよいのか、問題視する声が高まりつつある。こうした中、・・・
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取締役の一つ下の階層に「執行役員」を置き、業務執行に責任を持たせている上場企業は多い。執行役員制度が広く普及した理由の一つとして、取締役会のスリム化を図りたい企業が、取締役の員数を減らす分、「役員」を名乗ることができるポストを“水増し”する必要があったとの指摘もある。しかし、執行役員制度には、監査役(会)設置会社や監査等委員会設置会社において業務の執行と監督の分離を実現し、取締役会の監督機能を強化する、あるいは、特定の業務に責任を持たせたうえで、その仕事振りから将来の取締役候補を選別する「人材プール」として活用できるなどポジティブな効果もある。
このように執行役員制度は日本企業において重要な役割を果たしているものの、あくまで法的な根拠のない”任意“の制度に過ぎない(あえて法的根拠を求めるとすれば、執行役員は会社法上の「使用人」(会社法第3章第1節)ということになる)。この点、会社法で定義され(同法418条)、取締役と同様に会社法上の責任(善管注意義務・忠実義務)を負う指名委員会等設置会社の「執行役」とは異なる。すなわち、執行役員は執行役と同様、経営陣の一角として会社の業務執行を担っているにもかかわらず、執行役のような会社法上の責任は何ら負っていないというわけだ。また、取締役の報酬には報酬規制(全取締役の報酬の総額は株主総会で承認を受けた報酬枠の範囲内に収まる必要があるとする規制)が適用されるが、取締役ではない執行役員への給与はこの規制に服さず、さらに情報開示(全取締役の報酬総額は事業報告や有価証券報告書で開示され、また年間の報酬額が1億円を超える役員(取締役・監査役・執行役)は個人名とともに報酬額を開示しなければならない)の対象にもならない。
執行役 : 取締会決議により選任・解任され(登記も必要)、取締役会決議によって委任された事項について会社業務を実行する役職。執行役が2人以上いる場合は会社を代表する代表執行役を選ぶ。取締役と同様、会社に対して善管注意義務および忠実義務を負い、株主代表訴訟の対象にもなる。「執行役員」も会社業務の実行に対して権限と責任を持つが、会社法上に定義はなく、あくまで重要な使用人に過ぎない点、執行役とは異なる。
執行役員制度を採用する企業が少なかったうちはこうした問題がクローズアップされることはほとんどなかったが、執行役員制度の普及とともに、重要な職責を担う執行役員の法的責任が使用人と同等で、報酬規制や情報開示の対象にもならないままでよいのか、問題視する声が高まりつつある。こうした中、2018年6月20日に開催された法務省の法制審議会・会社法制(企業統治等関係)部会の第13回会議では、経済産業省から「実務上執行役員等として選任されている者のうち、業務執行取締役と同等程度の特に重要な職責を果たす者について、例えば、指名委員会等設置会社における執行役と同様、監査役設置会社や監査等委員会設置会社においても、取締役会の決議によって執行役として選任することを認めた上で、会社法上一定の規律の対象とする、執行役として選任されている者以外についても同等の権限を有する者については同等の規律の対象とする等、会社の機関として会社法上の位置付けを与えることを検討してはどうか。」との提案が行われている(第13回会議の参考資料44の2ページを参照)。
もしこの提案が実現した場合、執行役員制度を導入している企業にとって規制強化であり、その影響は大きい。例えば、1億円以上の報酬を得ている執行役員の氏名が公表されたり、「取締役会の決議によって執行役として選任された」執行役員の報酬を考慮して株主総会で役員の報酬総額の増額決議を承認してもらう必要が生じたりする可能性がある。「取締役会の決議によって執行役として選任された」執行役員は、株主から代表訴訟を受ける可能性がある以上、会社役員賠償責任保険(D&O保険=Directors’ and Officers’ Liability Insurance)に加入する必要が生じる(D&O保険の詳細については「役員の責任を軽減できないか検討したい」の「D&O保険は万全か?」 を参照)。もし「取締役会の決議によって執行役として選任された」執行役員は会社との雇用契約が終了することとされ、かつ、実務上「業務執行取締役と同等程度の特に重要な職責を果たす者」の解釈が緩く運用されると、「名ばかり管理職」ならぬ「名ばかり執行役員」を多数選任して雇用の流動化を図ろうとするブラック企業が出てくるかもしれない。
もっとも、経産省の執行役員制度を法定化する旨の提案は、2018年2月28日に公表され、すでにパブリックコメント期間も締め切られた中間試案には含まれていない(中間試案の内容は2018年3月2日のニュース『ガバナンス関連の会社法改正「中間試案」公表、株式交付制度創設へ』参照)ことからすると、現在検討中の会社法改正案に取り込まれるかどうかは微妙なところ。法制審議会・会社法制(企業統治等関係)部会における本提案に関する議論の行方は、動きがあり次第、続報していきたい。
米国のアクティビストが日本企業に投資するケースが急増していることが分かった。
アクティビストが企業に経営改革を迫るといった活動は“アクティビスト・キャンペーン”とも呼ばれるが、米国のアクティビストが国外で行うアクティビスト・キャンペーンのうち3割はアジア企業が占めており、その件数は106件と、6年前の10件から10倍以上に急増している。そして、アジア企業の中でも最も多くのアクティビスト・キャンペーンを受けているのが日本企業で、その数は34件(全体の約32%)にも上る。例えば、米国のヘッジファンド「バリューアクト・キャピタル・マネジメント」は今年(2018年)5月末にオリンパスの株式を5%取得している。アクティビストとして著名なバリューアクト・キャピタル・マネジメントだが、日本企業への投資はこれが初だという。
「モノ言う株主」と言われるように、アクティビストに対しては「半ば強引に経営改革を迫る“厄介な存在”」という印象を持っている日本企業も少なくないだろう。確かに、アクティビストは株主の保有を背景に、株主還元や事業売却などを強硬に求めたり、企業に役員を送り込んだりといった行動に出ることが少なくない。最近では、香港の投資家オアシスがアルパインに対し大幅増配と社外取締役選任を求めたケース、英国のアセット・バリュー・インベスターズ(AVI)がTBSホールディングスに対し同社が政策保有する東京エレクトロン株の現物配当を求めたケース、日本のストラテジックキャピタルが蝶理に対し取締役の賞与を業績連動とすることを求めたケースなどがある。
一方、オリンパスに投資したバリューアクト・キャピタル・マネジメントは従来型のアクティビストとは毛色が異なる。取締役を派遣する場合でも、投資先の経営陣と合意を前提とし、取締役派遣後も内部から財務体質の改善を促すなど、その手法は“穏健”だ。これまでにも、マイクロソフトやシティグループなど著名企業を中心に40社以上に取締役を送り込んだ実績がある。
では、そもそもなぜ米国のアクティビストが日本企業を投資対象とするようになったのだろうか。その背景には、これまで日本企業に対する“アクティビスト・キャンペーン”がある程度の実績を収めたということもあるが、もう一つ大きな要因となっているのが、コーポレートガバナンス・コードの導入をはじめとする政府主導のコーポレート・ガバナンス改革の影響だ。日本のコーポレート・ガバナンス改革は、企業と投資家の対話を促進し、社外取締役の選任により企業経営の透明性を高めるなど、アクティビストにとっても日本企業に投資しやすい環境を生み出した。実際、バリューアクト・キャピタル・マネジメントがオリンパスに投資したのも、オリンパスの医療機器メーカーとしての競争力のみならず、2011年に発覚した損失隠し事件以降の同社のガバナンス強化を評価したことによる。また、米国のアクティビストが国外で行うアクティビスト・キャンペーンの対象となっているのは、上述のとおり件数が最も多い日本企業以外では、シンガポール、香港など、コーポレート・ガバナンス強化に向けての環境整備が進んだ国の企業が多くなっている。
バリューアクト・キャピタル・マネジメントは今後も“穏健なアクティビスト”として、日本企業への投資を展開していくとみられている。「物言う株主」の考え方、手法が日本企業に受け入れられれば、増配などを目的とした一時的な投資ではなく、長期投資を行うアクティビストが増えていく可能性もあろう。