2018/01/31 2018年1月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
金融庁は平成29事務年度の金融行政方針で、「2014年のスチュワードシップ・コード策定(2017年改訂)、2015年のコーポレートガバナンス・コード策定など、各般の施策を講じ、改革の枠組みは整ってきている」としつつも、一方で、「経営者の資本コストに対する意識が不十分であることから、経営環境の変化に応じた事業選択などの果断な経営判断が行われていない」との指摘があることを紹介しています。以上より、問題文は誤りです。

こちらの記事で再確認!
2018/01/10 CGコード、フォローアップ会議メンバーから改訂案続出も実現性は?(会員限定)

2018/01/30 【役員会 Good&Bad発言集】子会社における内部通報制度のあり方(会員限定)

<解説>
実効性ある内部通報制度の構築はトップの責務

上場会社で不正が発覚すると、規模や重要性によっては社内外の調査委員による調査報告書が取りまとめられることになります。「内部通報制度が機能していなかったから長期間にわたり組織的不正が行われていたにもかかわらず、明るみに出なかった」という調査結果が良く見受けられます。そのような場合、必ずと言っていいほど「内部通報制度の充実」が再発防止策に掲げられます。

内部通報制度は根拠となる法律そのものがあるわけではなく、公益通報者保護法の理念に沿って、事業者が通報者を保護するとともに、組織の自浄作用を向上させるために設ける任意の制度です。内部通報制度を導入していないからと言って、法律で罰せられたり、適正な財務報告ができないとしてJ-SOX上問題になったりするわけではないのですが、内部通報制度は従業員3000人超の企業では99.2%の普及率となっています。もっとも、中小規模の事業者にはまだまだ浸透しておらず、例えば従業員が51人から100人の規模の企業では4社に1社程度(24.5%)の普及率に過ぎません。上場企業の場合、子会社への導入が課題と言えます(以上の調査結果については第1回公益通報者保護専門調査会の資料2の16ページを参照)。

内部通報制度を導入するには、規程の整備、社内外の窓口の設定、窓口において通報者の秘密を保持するための仕組みや教育(担当者の育成)が必要になり、制度導入後は窓口の維持、制度の周知等継続して取り組まなければなりません。特に重要となるのが、通報者の秘密の保持(後述)です。また、制度が周知されるためには、一度や二度のアナウンスでは足りず、繰り返し繰り返し告知する必要があります。さらに、経営トップが率先して内部通報制度の仕組みを重視する姿勢を見せることも重要となってきます。「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」(以下、民間事業者向けガイドライン)の4ページでは「経営トップの責務」として、「単に仕組みを整備するだけではなく、経営トップ自らが、経営幹部及び全ての従業員に向け、例えば、以下のような事項について、明確なメッセージを継続的に発信することが必要である」として、次の項目を掲げています。
・コンプライアンス経営推進における内部通報制度の意義・重要性
・内部通報制度を活用した適切な通報は、リスクの早期発見や企業価値の向上に資する正当な職務行為であること
・内部規程や公益通報者保護法の要件を満たす適切な通報を行った者に対する不利益な取扱いは決して許されないこと
・通報に関する秘密保持を徹底するべきこと
・利益追求と企業倫理が衝突した場合には企業倫理を優先するべきこと
・上記の事項は企業の発展・存亡をも左右し得ること

内部通報制度の実効性は「いかに通報者の秘密を守れるか」次第

内部通報制度の実効性を確保するには「いかに通報者の秘密を守れるか」が重要となってきます。また、公益通報者保護の理念そのものとも言えます。

そのためには、まず「通報の受付における秘密保持」が重要になってきます。これについて民間事業者向けガイドラインには、次のように記載されています(民間事業者向けガイドライン10ページ)。
(個人情報の保護)
○ 通報の受付方法としては、電話、FAX、電子メール、ウェブサイト等、様々な手段が考えられるが、通報を受け付ける際には、専用回線を設ける、勤務時間外に個室や事業所外で面談する等の措置を適切に講じ、通報者の秘密を守ることが必要である。
○ また、例えば、以下のような措置を講じ、個人情報保護の徹底を図ることが必要である。
・通報事案に係る記録・資料を閲覧することが可能な者を必要最小限に限定する
・通報事案に係る記録・資料は施錠管理する
・関係者の固有名詞を仮称表記にする
○ なお、通報に係る情報を電磁的に管理している場合には、さらに、以下のような情報セキュリティ上の対策を講じ、個人情報保護の徹底を図ることが望ましい。
・当該情報を閲覧することが可能な者を必要最小限に限定する
・操作・閲覧履歴を記録する

次に通報を受けて行う調査においても、秘密保持に配慮しなければなりません。通報者が特定されることを困難にするため、調査の端緒が通報であることを関係者に認識させないために下記のような工夫も必要です(民間事業者向けガイドライン11ページ)。
・定期監査と合わせて調査を行う
・抜き打ちの監査を装う
・該当部署以外の部署にもダミーの調査を行う
・核心部分ではなく周辺部分から調査を開始する
・組織内のコンプライアンスの状況に関する匿名のアンケートを、全ての従業員を対象に定期的に行う

公益通報者保護法の改正に向けた動き

2018年1月26日に公益通報者保護専門調査会が約6年半ぶりに開催されました(前回の開催は2011年8月)。これは、公益通報者保護法(平成16年法律第122号)における規律の在り方や行政の果たすべき役割等に係る方策に関する事項について、内閣総理大臣から諮問を受けた消費者委員会の求めに応じて設置された専門調査会です。

専門調査会では2016年11月に公表された「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」ワーキング・グループ報告書での議論(2016年12月16日のニュース「内部通報制度の導入義務化へ 保護対象となる公益通報者の範囲も大幅拡大」を参照)に沿って検討を進めていき(論点については第1回公益通報者保護専門調査会の資料2の26ページを参照)、2018年7月頃に中間的な論点整理を公表し、秋ごろには消費者委員会へ報告を上げる予定です。企業側にとっては「改悪」との声も上がっており、改正の動向は注目しておく必要がありそうです。

さて、以上の解説をご覧いただければ、どれがGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役B:「通報者が特定されることを困難にするための工夫はいろいろ考えられます。また、内部通報のためのインフラも当社のものを使えば低コストで運用できるはずです。」
コメント:企業規模にかかわらず、通報者が特定されないよう民間事業者向けガイドラインに掲げられているような工夫をする余地はあるので、運用面で解決することを提案する取締役Bの発言はGoodと言えます。また、子会社が親会社における内部通報インフラに利用するのは一般的に行われており、グループのガバナンス力を高めるためにも推奨される手法と言えます。

BAD発言はこちら
取締役A:「当社の子会社の規模は小さいので、内部通報制度を導入して仮に通報があったとしても、不正実施者への調査が始まればすぐに通報者が特定されてしまいます。規模が小さい会社では内部通報制度はなじまないのではないでしょうか?また、内部通報制度の維持にはコストがかかる以上、子会社が当該コストを負担するのは費用対効果に欠けるのではないでしょうか。」
コメント:通報者の特定を防ぐための工夫はいろいろ考えられますし、企業規模が小さいのであれば内部通報制度に関する親会社のインフラを使うことも一案です(取締役Bの発言を参照)。また、内部通報制度のような法令順守コストは単純な費用対効果の議論はなじまないところがあります。仮に費用対効果の議論をするのであれば、一部大企業において品質評価に関する組織的不正が問題になった昨今の事例において、仮に内部通報制度が機能して早期に不正が発覚していたら、多額の損失計上やレピュテーションの低下は防げたはずであることを考慮すると効果は絶大と評価することもできます。以上よりBad発言です
取締役C:「重要な子会社であれば内部通報制度を導入していないとJ-SOXの監査が通らないのではないでしょうか。」
コメント:J-SOXでは財務報告の適正性を確保するために必要な体制として、内部通報制度の導入を必須としているわけではありません。不十分な知識をもとにしたCの発言はBadです

2018/01/30 【役員会 Good&Bad発言集】子会社における内部通報制度のあり方

東証一部に上場しているサービス業のZ社では内部通報制度を導入していますが、Z社の子会社では内部通報制度をまだ導入していません。Z社の取締役会では、子会社に内部通報制度を導入すべきかどうか議論が行われているところです。これに対して取締役A・B・Cが下記の発言をしました。誰の発言がGood発言でしょうか?

取締役A:「当社の子会社の規模は小さいので、内部通報制度を導入して仮に通報があったとしても、不正実施者への調査が始まればすぐに通報者が特定されてしまいます。規模が小さい会社では内部通報制度はなじまないのではないでしょうか?また、内部通報制度の維持にはコストがかかる以上、子会社が当該コストを負担するのは費用対効果に欠けるのではないでしょうか。」

取締役B:「通報者が特定されることを困難にするための工夫はいろいろ考えられます。また、内部通報のためのインフラも当社のものを使えば低コストで運用できるはずです。」

取締役C:「重要な子会社であれば内部通報制度を導入していないとJ-SOXの監査が通らないのではないでしょうか。」

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2018/01/30 【失敗学第44回】INESTの事例(会員限定)

概要

INEST(JASDAQ)では、社長が子会社の資金を複数の取引先を経由して妻の口座に還流させることで不正に受領していた(資金流出額は約160百万円)。

経緯

INESTが、2017年11月に元社長の不正に関する内部調査委員会の調査報告書を公表し、その翌月(12月)に再発防止策を取りまとめるまでの経緯を時系列で示すと、次のとおり。

2009年
7月:ユニバーサルソリューションシステムズ(INESTの当時の社名)が光通信の子会社になる。

2012年
5月:ユニバーサルソリューションシステムズのI代表取締役社長が、自身が代表取締役を務める連結子会社から外部の緊密な取引先を介して、妻の口座に資金を流出させはじめた(2016年6月まで)。

2016年
6月:ユニバーサルソリューションシステムズ光通信の関連会社になる。
7月:ユニバーサルソリューションシステムズが商号をINESTに変更する。

2017年
9月20日:INESTに税務調査が入る。
9月21日:I代表取締役社長が税務調査官に対し、2012年頃から断続的にINESTおよびINESTの子会社(日本企業開発支援:以下、NKS)の資金を取引先を経由して不正に受領していたと申告をした。
9月22日:INESTは「当社元役員による不正行為の疑いに関するお知らせ」および「代表取締役の辞任」をリリースするとともに、社外監査役2名を含む内部調査委員会を設置する。
9月29日から11月7日:調査委員会が調査を実施。
12月8日:INESTは「不正行為に関する再発防止策等に関するお知らせ」を公表

内容・原因・改善策

INESTが、2017年11月に公表した「内部調査委員会の調査報告書」によると、本件の問題点の主な内容とその原因、対応策および再発防止策は次のとおりである。

代表取締役による会社および子会社の資金の自己(妻の口座)への還流
内容 INESTのI代表取締役社長が、自身が代表取締役を務める連結子会社と外部の緊密な取引先の間で「顧客紹介契約」や「メディア業務提携契約」を締結し、それらの会社に連結子会社から実体のない紹介料を支払い、取引先に手数料相当の利益を落として、妻の口座に還流させていた。
原因 (動機)
・I代表取締役社長は、自身の地位(INESTにおける代表取締役社長)が今後も維持されるかどうかが不安になり、生計維持のため資金の確保の必要性を感じていた。
・I代表取締役社長は毎日のように社内外の者と外食していたが、これらの接待交際費のうち会社に請求できない部分は自己負担しなければならず、自由に使える資金が必要であった。

(機会)
・INESTのI代表取締役社長は営業力があり管理能力も高かったことから、社内から絶大な信頼を得ていた。そのため、I代表取締役社長に対して業務執行に関する権限移譲が相当程度なされており、「役員相互間の監視監督が緩くなっていた」(調査委員会の調査報告書85ページ)。
・NKSの代表取締役社長はINESTのI代表取締役社長が兼任しており、I代表取締役社長にとっては自由に使える「ハコ」であった。
・NKSは従前は取締役会および監査役設置会社であったところ、定款変更により取締役(代表取締役)一人会社に変更された。その結果、INESTのガバナンスが弱くなり、I代表取締役社長はNKSの資金を意のままに扱うことができた。

再発防止策 不正行為実行者との関係遮断
不正行為実行者である元役員をINESTおよびINESTの子会社から排除することを徹底する(今後においても、顧問や相談役等として関係を持つことはしない)。

内部監査機能の強化
内部監査室への通報窓口(ホットライン)を設置し、当社グループの役職員からの情報を直接入手できるようにすることで、内部監査の機能をより広範かつ実効的なものとする。

コンプライアンス意識の醸成
経営陣や従業員に対する階層別にコンプライアンス研修を実施する。

業務執行についての適切な権限分配
取締役会の頻度を現状の四半期開催から月次開催へ変更するとともに、社外役員による監視監督機能が十分に発揮されるよう、社外役員への継続的かつ十分な情報提供に努める。

子会社の整理統合
子会社の必要性の検討、適宜子会社の整理統合を進める。

子会社に関するモニタリング強化
子会社の意思決定事項に関しては、INESTとの事前協議を徹底させる。
INESTの内部監査室において子会社の社内稟議のモニタリングの強化を図る。

取引決裁プロセスの運用の見直し
取引決裁プロセスの厳格な運用を行い、内部監査室がモニタリングするなどの仕組みを構築する。

<この失敗から学ぶべきこと>

親会社やオーナーが存在する上場企業では、たとえ代表取締役社長という社内トップの地位にある者でも、”安泰”な地位にあるとは言えません。親会社やオーナーの期待を損なえば、すぐに解任されることから、親会社やオーナーがいない上場企業で同じ地位にある者よりもシビアな立場にあると言えます。光通信グループに属するINESTの元代表取締役社長I氏も同じプレッシャーにさらされていたものと思われます。なぜなら、INESTの代表取締役社長が会社のパソコンに「降格する可能性がある→赤字になる→生活維持が出来ない→給料が38万円も下がる可能性がある」等つづっていた(調査委員会の調査報告書52ページを参照)からです。

また、INESTの元代表取締役社長I氏は毎日のように交際費を使っており、そのすべてを会社にチャージできていなかったため、自由に使える多額の資金を必要としていました。そこで”財布”として使われたのが、自身が取締役を兼任している子会社NKSです。子会社NKSは取締役が一人しかいない会社であり、I氏は唯一の取締役として、ガバナンスが効いていない会社(NKS)の資金を取引先を使って不正に受領することができました。一般的に規模の小さい子会社ほどガバナンスが簡素化される傾向にあります。ガバナンスが簡素化された子会社に対して、どのように「子会社の業務の適正を確保するための体制」を実現するのか、親会社の取締役・監査役は「メリハリの利かせ方」を問われていると言えます。

2018/01/29 (新用語・難解用語)サステナブル・ストックエクスチェンジ・イニシアティブ(SSEイニシアティブ)

サステナブル・ストックエクスチェンジ・イニシアティブ(以下「SSEイニシアティブ」)とは、国連貿易開発会議(UNCTAD)国連グローバル・コンパクト(UNGC)国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)責任投資原則(PRI)によって2009年に創設されたネットワーで、証券取引所が、投資家、規制当局、企業と協働しながら、サステナブル投資の促進、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する企業の透明性や企業の長期的なパフォーマンス向上のためにどのような取り組みを行うべきかを(証券取引所同士で)自主的に議論し、学ぶ場である。これまで、ニューヨーク証券取引所、ナスダック、ロンドン取引所、ドイツ証券取引所、シンガポール証券取引所をはじめとする67の取引所が参加していたが、昨年(2017年)11月30日には、日本取引所グループも68番目の参加者としてSSEイニシアティブに参加(参加取引所のリストはこちら)することを表明している(東証のリリースはこちらの最終ページ参照)。

国連貿易開発会議(UNCTAD) : 発展途上国の経済開発促進と南北問題(開発途上国と先進国の間の経済的格差から生じる政治問題や経済問題の総称。先進国が北半球に、開発途上国が南半球に多く存在することからこのように呼ばれる)の経済格差是正のために国際連合が設けた会議で、国際連合の補助機関である。UNCTAD とは「United Nations Conference on Trade and Development」の略。
国連グローバル・コンパクト(UNGC) : 1999年のダボス会議でアナン国連事務総長(当時)が提唱したイニシアティブ。人権・労働権・環境・腐敗防止に関する10原則を順守し実践するよう要請している。
国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI) : 世界各地の銀行・保険・証券会社等と政策者、規制当局と協調し、経済的発展とESG(環境・社会・ガバナンス)への配慮を統合した金融システムへの転換を進めるパートナーシップ。「UNEP FI(United Nations Environment Programme – Finance Initiative)」のUNEP(=国連環境計画)とは、1972年ストックホルム国連人間環境会議で採択された「人間環境宣言」および「環境国際行動計画」の実行機関として同年の国連総会決議に基づき設立された国連の補助機関である。
責任投資原則(PRI) : 経済、環境、社会の持続性に配慮した投資手法であり、具体的には、経済的なパフォーマンスに加え、ESGに配慮して投資先を選定することと言える。サステナブル(sustainable)とは「持続可能」を意味する。ちなみに、サステナブル投資を日本で普及させる活動を行うNPO法人 日本サステナブル投資フォーラムは、サステナブル投資を、1. 地球と社会の持続可能性に配慮した投資であること、2. 原則1の投資プロセスや社会的な効果を資金の供給者に対して開示していること、の2つの原則を満たすものとしている。

これまでも日本取引所グループでは、ESG指数に連動したETFの上場を認めたり、女性活躍推進に優れた上場企業を「なでしこ銘柄」として、また、従業員の健康管理に経営的な視点から戦略的に取り組んでいる企業を「健康経営銘柄」として選定したりしてきたほか、さらに昨年からは、東京証券取引所が実施する「企業価値向上表彰」の審査にESGに対する認識等を評価尺度として取り入れた「価値協創ガイダンス」を組み込むなど、ESG投資の促進に取り組んできたが、SSEイニシアティブに参加したことで、自ら設定したコーポレートガバナンス・コード原則2-3【社会・環境問題をはじめとするサステナビリティーを巡る課題】(下記参照)に一層積極的に取り組む姿勢を明確にしたと言える。

ESG指数 : 企業をこのESGの観点から評価し、その評価が高い企業によって構成される株価指数(株式市場の動きを示す指標のこと。日経平均株価や東証株価指数は代表的な株価指数である)のこと。
ESG投資 : ESGに優れた企業に投資すること。

【原則2-3.社会・環境問題をはじめとするサステナビリティーを巡る課題】
上場会社は、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティ―(持続可能性)を巡る課題について、適切に対応を行うべきである。

もっとも、サステナビリティに関しては、・・・

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2018/01/29 (新用語・難解用語)サステナブル・ストックエクスチェンジ・イニシアティブ(SSEイニシアティブ)(会員限定)

サステナブル・ストックエクスチェンジ・イニシアティブ(以下「SSEイニシアティブ」)とは、国連貿易開発会議(UNCTAD)国連グローバル・コンパクト(UNGC)国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)責任投資原則(PRI)によって2009年に創設されたネットワーで、証券取引所が、投資家、規制当局、企業と協働しながら、サステナブル投資の促進、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する企業の透明性や企業の長期的なパフォーマンス向上のためにどのような取り組みを行うべきかを(証券取引所同士で)自主的に議論し、学ぶ場である。これまで、ニューヨーク証券取引所、ナスダック、ロンドン取引所、ドイツ証券取引所、シンガポール証券取引所をはじめとする67の取引所が参加していたが、昨年(2017年)11月30日には、日本取引所グループも68番目の参加者としてSSEイニシアティブに参加(参加取引所のリストはこちら)することを表明している(東証のリリースはこちらの最終ページ参照)。

国連貿易開発会議(UNCTAD) : 発展途上国の経済開発促進と南北問題(開発途上国と先進国の間の経済的格差から生じる政治問題や経済問題の総称。先進国が北半球に、開発途上国が南半球に多く存在することからこのように呼ばれる)の経済格差是正のために国際連合が設けた会議で、国際連合の補助機関である。UNCTAD とは「United Nations Conference on Trade and Development」の略。
国連グローバル・コンパクト(UNGC) : 1999年のダボス会議でアナン国連事務総長(当時)が提唱したイニシアティブ。人権・労働権・環境・腐敗防止に関する10原則を順守し実践するよう要請している。
国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI) : 世界各地の銀行・保険・証券会社等と政策者、規制当局と協調し、経済的発展とESG(環境・社会・ガバナンス)への配慮を統合した金融システムへの転換を進めるパートナーシップ。「UNEP FI(United Nations Environment Programme – Finance Initiative)」のUNEP(=国連環境計画)とは、1972年ストックホルム国連人間環境会議で採択された「人間環境宣言」および「環境国際行動計画」の実行機関として同年の国連総会決議に基づき設立された国連の補助機関である。
責任投資原則(PRI) : 経済、環境、社会の持続性に配慮した投資手法であり、具体的には、経済的なパフォーマンスに加え、ESGに配慮して投資先を選定することと言える。サステナブル(sustainable)とは「持続可能」を意味する。ちなみに、サステナブル投資を日本で普及させる活動を行うNPO法人 日本サステナブル投資フォーラムは、サステナブル投資を、1. 地球と社会の持続可能性に配慮した投資であること、2. 原則1の投資プロセスや社会的な効果を資金の供給者に対して開示していること、の2つの原則を満たすものとしている。

これまでも日本取引所グループでは、ESG指数に連動したETFの上場を認めたり、女性活躍推進に優れた上場企業を「なでしこ銘柄」として、また、従業員の健康管理に経営的な視点から戦略的に取り組んでいる企業を「健康経営銘柄」として選定したりしてきたほか、さらに昨年からは、東京証券取引所が実施する「企業価値向上表彰」の審査にESGに対する認識等を評価尺度として取り入れた「価値協創ガイダンス」を組み込むなど、ESG投資の促進に取り組んできたが、SSEイニシアティブに参加したことで、自ら設定したコーポレートガバナンス・コード原則2-3【社会・環境問題をはじめとするサステナビリティーを巡る課題】(下記参照)に一層積極的に取り組む姿勢を明確にしたと言える。

ESG指数 : 企業をこのESGの観点から評価し、その評価が高い企業によって構成される株価指数(株式市場の動きを示す指標のこと。日経平均株価や東証株価指数は代表的な株価指数である)のこと。
ESG投資 : ESGに優れた企業に投資すること。

【原則2-3.社会・環境問題をはじめとするサステナビリティーを巡る課題】
上場会社は、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティ―(持続可能性)を巡る課題について、適切に対応を行うべきである。

もっとも、サステナビリティに関しては、既に自ら先進的な取り組みを行っている企業もある。例えばオムロンでは、中長期業績連動報酬(対象:社外取締役を除く取締役・執行役員)に、「業績連動部分(60%)と非業績連動部分(40%)」からなる株式報酬を支給したうえで、業績連動部分には、中期経営計画に基づき設定した売上高、EPS、ROEの目標値に対する達成度に加え、「第三者機関の調査に基づくサステナビリティ評価」等を反映することとしている(その結果、業績連動部分は0%~200%の範囲で変動。オムロンのリリースはこちら)。

また、キリンホールディングスでは、長期経営構想「新・キリン・グループ・ビジョン2021」において、社会と共に持続的に成長していくため「CSV」(Creating Shared Value=共通価値の創造)を経営の根幹に位置付けている。具体的には、重点的に取り組む社会課題として「健康」「地域社会への貢献」「環境」及び酒類を扱う企業グループの前提としての「酒類メーカーとしての責任」を選定し、それらの社会課題について、SDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略で、「人間、地球及び繁栄」のための行動計画として国連が掲げる世界共通の目標。詳細は2017年8月21日のニュース「上場企業の間で徐々に対応が進むSDGs」参照)等を参照しながら、同社が中長期的に目指す姿として「画期的な新薬の継続的な創出」など16のコミットメントを策定している(キリンホールディングスのリリースはこちら)。

こうした動きはまだ先進的企業だけに限られているが、日本取引所がSSEイニシアティブに参加し、上述したコーポレートガバナンス・コード原則2-3「社会・環境問題をはじめとするサステナビリティーを巡る課題」への取り組みに本腰を入れ始めたことで、同様の動きが他企業にどこまで広がるのか、注目される。

2018/01/26 新しい有報では「経営者の視点」への注目必至

近年活発化している企業と機関投資家との対話では、機関投資家から中長期的な企業価値評価・分析や企業価値向上のための提案が行われることが多い。こうした対話のベースとなる資料として重宝されているのが、中期経営計画、ESG(環境・社会・ガバナンス)情報、統合報告などだ。これに対し、雛形的記載が多く内容も過去の情報に偏っている有価証券報告書(以下、有報)は、事業ごとの業績予測に有益なセグメント情報を除き活用される場面は少ない。しかし、金融庁が本日(2018年1月26日)公表した改正「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下、開示府令)は、対話における有報の扱われ方に変化が起こす可能性を秘めている(有報の改正の経緯については2017年11月1日のニュース「有報のMD&Aの改正案が公表、“中長期投資家との四半期ごとの対話”促進も」を参照)。

セグメント情報 : 企業グループの事業セグメントごとの業績等を開示する連結財務諸表の注記項目

従来の有報では、【業績等の概要】で経営成績等を示した後、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】で経営方針を、【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】でMD&A情報を開示するというスタイルとってきたが、これが一新される。新しい有報では、まず・・・

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2018/01/26 新しい有報では「経営者の視点」への注目必至(会員限定)

近年活発化している企業と機関投資家との対話では、機関投資家から中長期的な企業価値評価・分析や企業価値向上のための提案が行われることが多い。こうした対話のベースとなる資料として重宝されているのが、中期経営計画、ESG(環境・社会・ガバナンス)情報、統合報告などだ。これに対し、雛形的記載が多く内容も過去の情報に偏っている有価証券報告書(以下、有報)は、事業ごとの業績予測に有益なセグメント情報を除き活用される場面は少ない。しかし、金融庁が本日(2018年1月26日)公表した改正「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下、開示府令)は、対話における有報の扱われ方に変化が起こす可能性を秘めている(有報の改正の経緯については2017年11月1日のニュース「有報のMD&Aの改正案が公表、“中長期投資家との四半期ごとの対話”促進も」を参照)。

セグメント情報 : 企業グループの報告セグメントごとの業績等を開示する連結財務諸表の注記項目

従来の有報では、【業績等の概要】で経営成績等を示した後、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】で経営方針を、【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】でMD&A情報を開示するというスタイルをとってきたが、これが一新される。新しい有報では、まず【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】で経営方針や経営戦略、ROEなど経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標、対処すべき課題等を開示し、次に【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】で経営成績等とその分析結果を開示するスタイルとなる。これの流れを図解すると次のとおり。経営のPDCAサイクルと開示順序が一致しているのが新しい有報の特徴と言えるだろう。

MD&A : 「Management’s Discussion and Analysis of Financial Condition and Results of Operations」の略で、「経営陣による財政状態および経営成績の検討と分析」と訳される。有価証券報告書の【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】欄に記載する。
ROE : Return On Equity=株主資本利益率(当期純利益/株主資本)
PDCAサイクル : Plan→Do→Check→Actionのサイクルを繰り返しながら、目標を実現する手法。サイクル内に、軌道を修正したり、場合によっては目標を変更したりする仕組みを内包しており、状況変化に応じて迅速に対応することが可能となる。

32689

特に【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】で「経営者の視点」による経営成績等の状況に関する分析が求められる点は注目される。これまでの有報でも「提出会社の代表者による分析」の開示が求められてきたが、実際には機関投資家などから「雛形的記載が多く経営者の視点による分析・検討が欠けている例が多い」との指摘が聞かれたことを踏まえ、今回「経営者の視点」というより明確な言い回しに修正されたという経緯がある。この点について、改正案に対するパブリックコメントでは「『経営者の視点』の具体的な意味を雛形、例示等により示して頂きたい」といった要望も寄せられたものの、金融庁は「『MD&A』の記載内容は、各企業の実態に応じて経営者が主体的に判断すべきものと考えられるため、ご指摘のような「経営者の視点」の具体的な意味を雛形や例示等により示すことには慎重な検討が必要と考えられる」(開示府令改正に関するパブリックコメントに対する金融庁の考え方の2ページ下から3ページ上を参照)とし、これに否定的な考え方を示している。

こうした中、新しい有報(2018年3月期決算以降に開示する有報)でも従来通りの雛形的記載しかできていなければ、「この程度の分析しかできない経営者に経営を任せておいて大丈夫か」といった声が機関投資家などから上がる可能性もある。経営者としては、まずは「経営者の視点」とは何なのかを自分なりに整理したうえで、開示担当者に任せにすることなく、事業全体およびセグメント別の経営成績等に重要な影響を与えた要因を自ら分析し、開示内容を検討する必要がある。この一連のプロセスを踏むことは、投資家との建設的な対話の実現にも必ず役立つだろう。

このほか新しい有報の【大株主の状況】では、会社法上の事業報告に歩み寄る改正も行われている。株主総会用の資料である事業報告の「株式会社の株式に関する事項」の部分では上位10名の株主の「議決権比率」(所有株数を「議決権のない自己株式を発行済株式総数から除いた株数」で除して算定した比率)を記載しているが、新しい有報でも事業報告と同様に議決権比率を記載(従来は所有株数を「発行済株式総数(自己株式を控除しない)」で除して算定した比率を記載)することとし、事業報告と記載内容の共通化を図っている。また、【大株主の状況】の記載時点を、事業年度末から原則「議決権行使基準日」へ変更し、定時株主総会を後ろ倒しで開催しやすくする改正(この改正については2017年12月20日のニュース「会社法施行規則改正案が公表、株主総会の後ろ倒しに向けた条件すべて整う」参照)も行われている。

以上のような有報の開示内容の見直しや会社法の事業報告等(事業報告+計算書類)との共通化に向けた取り組みは、今回の開示府令の改正とは別に、制度や省庁を横断した政府レベルの動きとしても進行しており(2018年1月15日のニュース「事業報告等と有価証券報告書、一体化に向け前進」を参照)、こちらも実現すれば、2018年3月期決算以降に開示する新たな有報の記載内容は前期までのものとは大きく異なるものとなる。開示部門を所掌する役員は情報のキャッチアップを怠らないようにしたいところだ。本件については、動きがあり次第、当フォーラムでも続報していきたい。

2018/01/25 【特集】EU株主権利指令の改正に伴う経営者報酬への影響(3・会員限定)

4.SRD改正がもたらす経営者報酬への影響

結論から言えば、SRDの改正は、EU各国における経営者報酬の実務/規制環境について、直ちに大きな転換を迫るようなものではない。上述のとおり、ペイ・レシオの開示の義務化や、報酬の方針(Policy)についての拘束的決議など、英国等のガバナンス先進国で実施されている厳格な規制の導入が見送られたからだ。

それでも、SRDの影響を過小評価してはならない。ここ数年、EU各国においては、政府のコーポレートガバナンス強化策や、投資家および議決権行使助言会社からの圧力により、企業による開示の充実、透明性の強化が叫ばれている。改正SRDは、上記のトレンドを引き続き推進していくものとなるだろう。今後、欧州企業は、こうしたガバナンス上の要請に対応するため、相当の時間と労力を割いていく必要がある。

その兆候は早速英国で表れている。SRDの改正承認後の2017年8月、英国では、コーポレートガバナンス・コードの改正案が示され、ペイ・レシオの開示をはじめ、経営者報酬の分野での更なる規制の強化が見込まれている。また、セイ・オン・ペイに関しても、賛成票率が80%を下回った上場企業については、その後の対応状況の開示を義務化することが提案されている。SRDは今後、こうした先進的な動きに追随する形で、EU域内の規制のスタンダードを形成する役割を担っていくだろう。

5.日本企業への示唆

冒頭で述べたように、現状、欧米と日本では経営者報酬の実態が大きく異なっている。欧米では、高額化する経営者報酬が絶えず批判に晒され、規制が強化されてきた歴史があるが、経営者報酬の水準が比較的低い日本において、本稿で紹介したような規制が直ちに導入されるとは考えづらい。

それでも、欧米の経営者報酬関連規制から日本企業が得られる示唆は多い。例えば、今般のSRDの改正にあたってはセイ・オン・ペイの法制化が目玉となったのは上述のとおりであるが、セイ・オン・ペイの判断基準として株主や投資家が重視する事項の一つに「ペイ・フォー・パフォーマンス」がある。ペイ・フォー・パフォーマンスとは、会社の業績と報酬の実支給額が見合っているか否かを検証するものであり、業績連動型のインセンティブ報酬の普及している欧米においては、インセンティブの有用性を担保する観点からも重要視されている。

日本においては、コーポレートガバナンス・コードの導入以降、中長期的な業績に連動したインセンティブ報酬の拡充が推奨されているものの、現時点では、セイ・オン・ペイのように、株主が経営者報酬について事後的に意見表明を行う枠組みは存在しない。しかしながら、今後、業績連動報酬の厚みが増してくるにつれて、報酬が業績に見合った形で適正に支払われているか、事後的に検証する必要性も高まってくると考えられる。

特に欧州型の経営者報酬を志向する日本企業は、欧米における最新の規制環境にも常に目を向けておくことが求められよう。