正解です。
日本の会計基準では、「のれんは、資産に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する。」と定められています。問題文は償却年数に誤りがあります。
こちらの記事で再確認!
2025年5月12日 上場企業の経営者がM&Aを躊躇する最大の理由が解消する可能性(会員限定)
正解です。
日本の会計基準では、「のれんは、資産に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する。」と定められています。問題文は償却年数に誤りがあります。
こちらの記事で再確認!
2025年5月12日 上場企業の経営者がM&Aを躊躇する最大の理由が解消する可能性(会員限定)
不正解です。
IFRS採用企業はのれんの規則的償却の負担がない分、日本基準採用企業よりもM&Aの入札競争において高値をつけやすいと言われています。
こちらの記事で再確認!
2025年5月12日 上場企業の経営者がM&Aを躊躇する最大の理由が解消する可能性(会員限定)
正解です。
IFRS採用企業はのれんの規則的償却の負担がない分、日本基準採用企業よりもM&Aの入札競争において高値をつけやすいと言われています。
こちらの記事で再確認!
2025年5月12日 上場企業の経営者がM&Aを躊躇する最大の理由が解消する可能性(会員限定)
不正解です。
日本の上場企業では、グローバル投資家に対して説得力がある指名委員会等設置会社への移行が進まず、“過渡的”な組織形態とも評される監査等委員会設置会社が最多になろうとしています。この状況は、日本企業におけるガバナンス改革の本気度に疑問の目が向けられることにつながる恐れもあるため、気掛かりと言えます。
こちらの記事で再確認!
2025年5月9日 監査等委員会設置会社に移行する際の投資家への説明のポイント (会員限定)
正解です。
日本の上場企業では、グローバル投資家に対して説得力がある指名委員会等設置会社への移行が進まず、“過渡的”な組織形態とも評される監査等委員会設置会社が最多になろうとしています。この状況は、日本企業におけるガバナンス改革の本気度に疑問の目が向けられることにつながる恐れもあるため、気掛かりと言えます。
こちらの記事で再確認!
2025年5月9日 監査等委員会設置会社に移行する際の投資家への説明のポイント (会員限定)
上場会社S社の取締役会では、総務担当取締役より改正障害者差別解消法への対応状況について説明があり、これに関して次の4人が下記の発言を行いました。誰の発言がGood発言でしょうか?
取締役A:「障害のある人だけを特別扱いすることはいかがかと思います。」
取締役B:「当社はリアルの店舗があるので障害者差別解消法への対応が必須となりますが、BtoBの企業やリアルの店舗がないIT業のような業態では同法への対応が一切必要のない業態もありますね。」
取締役C:「BtoB の企業やIT業であっても障害者差別解消法が適用される場面は少なくありません。たとえば、株主総会の開催時は典型例ですね。」
取締役D:「そうですね。障害者差別解消法は雇用時にも適用されます。雇用時に障碍者を差別することがあってはならないことが障害者差別解消法でうたわれています。」
このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。
「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)が2021年5月に改正され、2024年4月1日に施行されました。本改正により、事業者に対し障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化されました(改正前は努力義務)。これにより、事業者が障害のある人から「社会的なバリアを取り除いてほしい」との意思を示された場合には、事業者はその実施に伴う負担が過重でない範囲で、バリアを取り除くために必要かつ合理的な対応をすることが義務となりました。なお、改正により努力義務が義務化されたものの、「合理的配慮」の水準が上がったわけではない点には注意が必要です。
「合理的配慮」は障害特性により異なります。たとえば肢体に障害がある方には物理的環境への配慮(例:車椅子で車両に乗り込むのを手伝う)が必要になり、視力や聴力に障害がある方には意思疎通への配慮(例:難聴者に筆談で商品説明を行う)が必要になります。障害特性に応じた具体的配慮については、管轄の省庁が定める対応指針を参考にしてください(経済産業省の場合、こちらを参照)。
合理的配慮は事業者等の事務や事業の目的・内容・機能に照らし、次の三つを満たす必要があります。
・必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること。
・障害のない人との比較において、同等の機会の提供を受けるためのものであること。
・事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと。
なお、合理的配慮の提供については、上述したとおり、その提供に伴う負担が過重でないことも要件となります。
負担が「過重かどうか」は一律に定めることはできません。以下の要素などを考慮して、個別の事案ごとに具体的な場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することになります。
(1) 事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
(2) 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
(3) 費用・負担の程度
(4) 事務・事業規模
(5) 財政・財務状況
そして、合理的配慮の提供に当たっては、社会的なバリアを取り除くために必要な対応について、事業者と障害のある人との間で対話を重ね、共に解決策を検討することが重要となります。これは「建設的対話」と言われるものです。障害のある人からの申出への対応が難しいとしても、障害のある人・事業者の双方が持っている情報や意見を伝え合い、代替的な対応策を探ることが必要となります。代替的な対応策により障害のある人が直面している社会的なバリアを取り除くことができるよう知恵を出し合うべきです。
建設的対話を効果的に行うためには、事業者から次のような対応(発言)をしないようにしましょう(政府広報オンラインより引用)。建設的対話を一方的に拒むことは、改正障害者差別解消法で事業者の義務となった「合理的配慮の提供義務」に違反する可能性もあるため注意が必要です。
| 不適切な対応(発言) | 理由 |
| 前例がないので、対応できません | 合理的配慮の提供は個別の状況に応じて柔軟に検討する必要があるものであり、前例がないことは対応を断る理由にはなりません。 |
| 障害のある人だけを特別扱いできません | 合理的配慮は障害のある人もない人も、同じようにできる状況を整えることが目的であり、「特別扱い」ではありません。 |
| もし何かあったらいけないので、対応できません | 漠然としたリスクの可能性だけでは断る理由になりません。どのようなリスクが生じ、そのリスクを低減するためにどのような対応ができるのかを具体的に検討する必要があります。 |
| ●●の障害がある人には、対応できません | 同じ障害でも程度などによって適切な配慮が異なるので、ひとくくりにせず、個別に検討する必要があります。 |
各省庁が管轄の事業者向けに指針を定めており、事業者はそれを参考にして対応方針をマニュアル化するなど自主的な取り組みを行うことが望まれます(経済産業省の場合、こちら)。
実際に障害のある人等から相談を受けたときに一次的に対応した方が対応に困らないよう事前にマニュアルを整備しておくべきです。また、一次的に対応した方が社内で相談できるよう社内の相談窓口を設けておき、組織的な対応ができるようにしておきましょう。
また、ホームページ等を活用し、障害のある方からの相談窓口に関する情報を周知しておくことも一案です。実際の相談事例は、相談者のプライバシーに配慮しつつ順次社内に蓄積し社内共有を図り、以後の合理的配慮の提供等に活用することが望まれます。
事業者は、研修・啓発、障害を理由とする差別の解消の推進に資する制度を整備するようにしましょう。管轄の省庁が提供する対応方針などの情報を参考に、事業者の内部規則やマニュアル等について、障害者へのサービス提供等を制限するような内容が含まれていないかについて点検するようにしましょう。
各省庁が定める対応指針に記載されている具体例はリアルな店舗での対応を念頭にしていることが多いのですが、障害者差別解消法上、事業者は対面やオンラインなどサービス等の提供形態の別を問われていません。リアルな店舗を持たない事業者は「当社には関係がない話」と誤解しないようにしましょう。たとえば、いずれの会社も株主総会の場で障害者差別解消法が適用されます。そのため、株主総会の招集通知等で障害者差別解消法に対応した記載(最寄りの駅から総会会場までのバリアフリーのルートの記載など)を行う会社は、3月開催の上場会社で76社(3月総会全体の14.0%)ありました(WEBセミナー『2025年3月株主総会の状況』のセミナー資料を参照)。聴覚障碍者が株主総会に出席するケースに備えて、リアルタイムの字幕をモニターに表示するサービスを導入する会社もあります。
なお、事業者は雇用分野での障害者差別(事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別)が禁止されており、雇用分野での合理的配慮の提供義務も課されていますが、これは「障害者の雇用の促進等に関する法律」によるものです。障害者差別解消法は雇用分野では適用範囲外となります(下記の同法13条を参照)。
|
障害者差別解消法13条 行政機関等及び事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)の定めるところによる。 |
さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。
取締役C:「BtoBの企業やIT業であっても障害者差別解消法が適用される場面は少なくありません。たとえば、株主総会の開催時は典型例ですね。」
(コメント: 取締役Cの発言は顧客との対面対応をイメージしにくい業態であっても、障害差別解消法は適用されることを指摘しており、GOODです。「株主総会の開催時」という具体例も適切です。)
取締役A:「障害のある人だけを特別扱いすることはいかがかと思います。」
(コメント: 合理的配慮は障害のある人もない人も同じようにできる状況を整えることが目的であり、「特別扱い」ではありません。取締役Aの発言は障害者差別解消法において事業者に求められる社会的なバリアを取り除くための対応の意味合いを正しく理解していないBad発言です。)
取締役B:「当社はリアルの店舗があるので障害者差別解消法への対応が必須となりますが、BtoBの企業やリアルの店舗がないIT業のような業態では同法への対応が一切必要のない業態もありますね。」
(コメント:障害者差別解消法は事業者に一律に適用されるものであり、リアルの店舗の有無によって適用の有無が異なるものではありません。)
取締役D:「そうですね。障害者差別解消法は雇用時にも適用されます。雇用時に障碍者を差別することがあってはならないことが障害者差別解消法でうたわれています。」
(コメント:確かに、事業者は雇用分野での障害者差別(事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別)が禁止されており、雇用分野での合理的配慮の提供義務も課されています。しかし、障害者差別解消法とは別の法律の「障害者の雇用の促進等に関する法律」によるものです。障害者差別解消法は雇用分野では適用範囲外となります(障害者差別解消法13条を参照)。)
フィデューシャリーアドバイザーズ代表
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター招聘研究員 吉村一男
6月の株主総会シーズンを前に、今年もアクティビストの動きが活発となっている。現在、日本は米国に次ぐ世界2 位の“アクティビスト大国”となっており、アクティビストの公開キャンペーンを受けた日本企業の数は年々増加している。
アクティビストはいわゆるバリュー投資家であるため、株価が「企業価値」を大きく下回っている企業に投資する。ただ、一般的なバリュー投資家と違って分散投資のメリットを放棄しており、短期の企業価値ではなく中長期的な企業価値である「本源的価値」を享受したいと考えている。すなわち、経営方針改善のカタリストとなり、株価を本源的価値に近付け、その段階でエグジットすることを志向している。
バリュー投資家 : 企業の財務状況、業績、資産価値などを分析し、企業の本質的な価値(ファンダメンタルズ)に対して市場価格が過小評価されている銘柄を探し、長期的な視点で投資を行う投資家のこと。
カタリスト : 元々は「化学反応を促進する物質」である触媒(Catalyst)のことだが、そこから派生して、株価や株式市場などに対して重要な影響を与える要因という意味で使われる。
その証拠に、米国のリサーチ会社が公表しているアクティビストの公開キャンペーンのテーマを見ると、経営方針の改善を直接的に要求するもの(戦略、オペレーション、キャピタルアロケーション、M&A等)と間接的に要求するもの(取締役や経営陣の選解任)が上位を占めている。史上最大、最高額のプロキシーファイト(委任状争奪合戦)の一つとして衆目を集めた、ネルソン・ペルツ氏率いるトライアン・パートナーズによるディズニーへのプロキシーファイトで同氏は「我々はディズニーの変革を促進する十分な能力を有している。なぜなら、我々はブルーチップ企業に投資したうえで、取締役会に参画し、経営陣・取締役会と協力してコーポレートガバナンス、戦略、オペレーションおよびキャピタルアロケーションを最適化してきた豊富な経験を有しているからである。」と述べている。
キャピタルアロケーション : 調達した資金、事業活動を通じて得た資金をどこに投資するか、どのように使うかを判断すること
プロキシーファイト(委任状争奪合戦) : 株主総会において、会社提案の議案を否決したり、株主提案の議案を可決させたりするために、株主が会社の経営陣と委任状(議決権)を奪い合うこと。ファンド等の株主が、会社提案の否決または株主提案への賛成を求める委任状を他の株主に送付する形で行われる。自社が敵対的買収のターゲットとなった場合には、会社と買収者がともに委任状勧誘を行う委任状争奪合戦(プロキシー・ファイト=proxy fight)へと発展することが多い。
ブルーチップ企業 : 財務的に安定し、収益性や成長性に優れた優良企業のこと
アクティビストの公開キャンペーンの中で日本企業に対して多いのが、「キャピタルアロケーション」だ。キャピタルアロケーションをテーマとするキャンペーンは、①経営者が投資家から資本をどのように集めるかという・・・
このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。
フィデューシャリーアドバイザーズ代表
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター招聘研究員 吉村一男
6月の株主総会シーズンを前に、今年もアクティビストの動きが活発となっている。現在、日本は米国に次ぐ世界2 位の“アクティビスト大国”となっており、アクティビストの公開キャンペーンを受けた日本企業の数は年々増加している。
アクティビストはいわゆるバリュー投資家であるため、株価が「企業価値」を大きく下回っている企業に投資する。ただ、一般的なバリュー投資家と違って分散投資のメリットを放棄しており、短期の企業価値ではなく中長期的な企業価値である「本源的価値」を享受したいと考えている。すなわち、経営方針改善のカタリストとなり、株価を本源的価値に近付け、その段階でエグジットすることを志向している。
バリュー投資家 : 企業の財務状況、業績、資産価値などを分析し、企業の本質的な価値(ファンダメンタルズ)に対して市場価格が過小評価されている銘柄を探し、長期的な視点で投資を行う投資家のこと。
カタリスト : 元々は「化学反応を促進する物質」である触媒(Catalyst)のことだが、そこから派生して、株価や株式市場などに対して重要な影響を与える要因という意味で使われる。
その証拠に、米国のリサーチ会社が公表しているアクティビストの公開キャンペーンのテーマを見ると、経営方針の改善を直接的に要求するもの(戦略、オペレーション、キャピタルアロケーション、M&A等)と間接的に要求するもの(取締役や経営陣の選解任)が上位を占めている。史上最大、最高額のプロキシーファイト(委任状争奪合戦)の一つとして衆目を集めた、ネルソン・ペルツ氏率いるトライアン・パートナーズによるディズニーへのプロキシーファイトで同氏は「我々はディズニーの変革を促進する十分な能力を有している。なぜなら、我々はブルーチップ企業に投資したうえで、取締役会に参画し、経営陣・取締役会と協力してコーポレートガバナンス、戦略、オペレーションおよびキャピタルアロケーションを最適化してきた豊富な経験を有しているからである。」と述べている。
キャピタルアロケーション : 調達した資金、事業活動を通じて得た資金をどこに投資するか、どのように使うかを判断すること
プロキシーファイト(委任状争奪合戦) : 株主総会において、会社提案の議案を否決したり、株主提案の議案を可決させたりするために、株主が会社の経営陣と委任状(議決権)を奪い合うこと。ファンド等の株主が、会社提案の否決または株主提案への賛成を求める委任状を他の株主に送付する形で行われる。自社が敵対的買収のターゲットとなった場合には、会社と買収者がともに委任状勧誘を行う委任状争奪合戦(プロキシー・ファイト=proxy fight)へと発展することが多い。
ブルーチップ企業 : 財務的に安定し、収益性や成長性に優れた優良企業のこと
アクティビストの公開キャンペーンの中で日本企業に対して多いのが、「キャピタルアロケーション」だ。キャピタルアロケーションをテーマとするキャンペーンは、①経営者が投資家から資本をどのように集めるかという「資本構成」に関するキャンペーン、②その資本をどの事業や資産に投下するのかという「事業」に関するキャンペーン、そして、③事業や資産から生み出されたキャッシュフローをどのように配分するかという「財務」に関するキャンペーンに大別される。例えば、現在フジ・メディア・ホールディングスに対するキャンペーンで注目を集めるダルトン・インベストメンツは昨年5月、トヨタ自動車の創業家によるMBOで話題となっている豊田自動織機に対しても、6 月の株主総会に向けて5,000億円を上限とする自社株買い等を提案した。提案の理由は、同社が企業価値を創造しない現預金や有価証券を保有していたことにある。すなわち、この提案は「財務」に関するキャンペーンと言える。提案を受け豊田自動織機は、将来的に政策保有株式を売却して1兆円程度の資金を創出し、1.2兆円程度の営業キャッシュフローと合算した2.2兆円のうち、成長投資と基盤投資に要する1.5兆円程度を除いた0.7兆円程度を株主還元に回すとともに、1,800億円の自社株買いや政策保有株式の大規模な売却方針を打ち出した。その結果、ダルトン・インベストメンツは株主提案を取り下げた。
では、アクティビストのターゲットにならないためにも、経営陣は自社のキャピタルアロケーションをどうすればよいのだろうか。
まずは目標とする「資本構成」を決める必要がある。M&Aの教科書では、「類似企業をベンチマークにして決めるのが一般的」という記述が散見される。しかし、これはM&Aを成約させるインセンティブが一致しているM&A当事者間では納得感があるかもしれないが、類似企業を探すのは困難である。また、コーポレートファイナンスの教科書では、「レバレッジを高めることによる金利の節税効果と、レバレッジを高めすぎると急増する財務的困窮コストとのトレードオフ」という記述も見受けられる。しかし、財務的困窮コストは定量化が困難である。そこで、キャッシュフローの水準でレバレッジの上限を決定するのが現実的と言える。レバレッジの水準は業種によって異なるが、実務的には財務的困窮コストが大きく増加する手前の投資適格レンジの債券格付け(A~BBB+程度)に対応するレバレッジ水準が目標レバレッジとなる。指標としては純有利子負債EBITDA 倍率が重視されており、1.0倍から3.0倍を目標とする企業が多い。
ベンチマーク : 何かを評価・比較する際の基準のこと。例えば、「業界の平均値」は典型的なベンチマークである。
レバレッジ : 株主資本(自己資本)を1とした場合、その何倍の総資産を有しているかを示す数値。「総資産/株主資本」によって計算される。レバレッジ(=テコ)が大きい会社とは、借入金の大きい会社である。レバレッジが大きければ、株主資本よりも大きな取引を行うことができる。ただし、その反面、有利子負債が増加して、金利負担、返済負担が増加し、会社の収益性が下がったり、財務リスクを抱えたりする可能性がある。
純有利子負債EBITDA 倍率 : 企業の財務健全性を測る指標の一つであり、企業の純有利子負債(借入金から現金・預金を差し引いた額)をEBITDA(利払い前・税引前・減価償却前利益)で割ったもの(純有利子負債EBITDA倍率=純有利子負債(有利子負債 – 現金・預金)÷ EBITDA(営業利益 + 減価償却費))。これは、企業がどれだけの期間で負債を返済できるかを示す。倍率が低いほど、企業の財務健全性、負債の返済能力が高いということになる。業界ごとの平均値を参考にしながら、企業の財務状況を評価する際に活用される。
次に「事業」や「財務」の方針を決めなければならない。資本コストを上回るリターンが見込まれる投資機会がある場合には、現金水準を高めに維持して事業に投資し、そうでない場合には、債権者や株主に還元することになる。株主還元を配当、自社株買のいずれにより実施するかを判断する際にはシグナリング効果を考慮しなければならない。なぜなら、一般的に増配は「長期的に収益力を維持しうる」というポジティブなシグナルとなる一方、自社株買いは「魅力的な投資機会がない」というネガティブなシグナルと受け止められるからだ。もっとも、自社株買いは、「資本構成」を速やかに調整したい場合には有効な手段である。
資本コスト : 「資金提供者(債権者+株主)に対するリターン」のこと(なお、株主に対するリターンには、配当のほかキャピタルゲインも含まれる)。資金提供者に対するリターンが適切にできなければ、債権者は会社に資金の返還を求め、株主は株式を売却(=株価が下落する)せざるを得ない。したがって、会社にとって資本コストは「資金提供者に対するリターンの目標値」と言える。
最後に、「資本構成」が目標の範囲内に収まっているか否かを定期的に確認しなければならない。なぜなら、投資家は、「資本構成」が分かればWACCを推定できるからだ。資本構成は目標から乖離することがあるが、目標に戻すよう努める必要がある。
WACC : 「Weighted Average Cost of Capital=加重平均資本コスト」の略であり、要するに「資本コスト」である。WACCは文字通り負債コスト(金利)と株主資本コスト(配当+キャピタルゲイン)を加重平均して算定される。
自社のキャピタルアロケーションをどうするかは、自社の企業価値あるいは本源的価値をどうしたいかというという問いであり、アクティビストに指摘される前に、経営者自ら考えることが求められる。
サステナブル経営とは「ステークホルダーに価値を提供しながら、持続可能な社会への貢献を目指す経営」と言えますが、その出発点となるのが、「なぜ自社がサステナブル経営に取り組む必要があるのかという“起点”を明確にすることです。これは、自社の経営理念や目的とサステナブル経営のつながりを明確にするということでもあります。
そのために取締役会は、持続可能な社会の実現に貢献するための取り組みや自社にとってのマテリアリティ(重要課題)などを定めた「サステナビリティ基本方針」を定める必要があります。同方針を取締役会が策定・決定することで、サステナブル経営に対するトップマネジメントの強いコミットメントを示すことができます。また、同方針の方向性は、具体的な目標(例:温室効果ガス排出量削減目標、ダイバーシティ推進目標)やKPI、マテリアリティの特定プロセスなどを示すことでより明確となり、投資家や顧客、従業員などステークホルダーの評価を高めることにつながります。
マテリアリティ : 「重要性」を意味する用語であり、「自社にとって重要な課題は何か?」を明らかにするために特定し、開示される。マテリアリティには、企業が環境や社会から「受ける」財務的な影響を示す“投資家目線”のマテリアリティである「シングル・マテリアリティ」と、これに企業が環境や社会に「与える」影響を示す “(市民社会等を含む)マルチステークホルダー”目線のマテリアリティを統合した「ダブル・マテリアリティ」がある。
サステナブル経営の推進を担うのは執行サイドです。環境や社会といったサステナビリティ課題は各事業に横断的に関連しているため、個別の事業ごとではなく、CEOやCSO(最高サステナビリティ責任者)のリーダーシップの下、サステナビリティ基本方針に基づき、統合的・横断的な体制による対応が必要になります。具体的には、サステナビリティ委員会やサステナビリティ推進会議、各事業部門横断的なワーキング・グループなどを設置するケースや、情報共有のため、定期的に会議を開催したり、社内ポータルサイトを整備したりするケースも見受けられます。また、サステナビリティ基本方針を推進するうえで必要なリソース確保の視点からは、専門知識・スキルを有する人材の育成・採用計画、必要な予算の確保と配分も必要になります。
一方、執行サイドの監督を担うのが取締役会です。取締役会は「いかにサステナブル経営の遂行を後押しするか」という視点をもって監督にあたる必要があります。そもそもサステナブル経営を推進する執行側の体制が構築されていなければ、取締役会も監督しようがないからです。
(1)「サステナビリティ・ガバナンス」の実現
サステナブル経営が成長のドライバーとなるよう、取締役会による監督機能を強化するのが「サステナビリティ・ガバナンス」です。サステナビリティ・ガバナンスは、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)が「サステナビリティ課題を統合するガバナンス体制」として提唱したものです。これは、サステナビリティ課題がコーポレートガバナンスに完全に統合されている状態を指します。
統合の度合いは三つの段階に分けることができます。第一段階は、サステナビリティと戦略が分離している状態です。具体的には、時代の要請等を受けサステナビリティへの取り組みを開始したものの、活動や責任が取締役会から分離したチームに任せられており、サステナビリティ課題が取締役会の議題に入っていない状態を指します。第二段階は、サステナビリティ課題が取締役会で議論されている状態です。例えば監督側である取締役会にサステナビリティ・ガバナンス委員会を設置し、指名・報酬・監査の各委員会と協働させることで、サステナビリティ課題をコーポレートガバナンスに統合します。多くの日本企業はこの段階を目指していると言われています。第三段階は「恒常的なサステナビリティ・ガバナンス」と呼ばれる状態です。取締役会がサステナビリティ課題を監督し、課題の解決が恒常的に戦略的なアジェンダに組み込まれ、長期戦略とマテリアリティが統合されている状態と言えます。
現状では、サステナビリティの推進を監督する機能を担う委員会を設置している企業は少数にとどまっています。もっとも、必ずしも委員会の設置は必須というわけではなく、それよりも、サステナビリティ課題がガバナンスに統合されていることの方が重要です。取締役会に独立社外取締役を委員長としたサステナビリティ・ガバナンス委員会等を設置すれば対外的には説明しやすいとはいえ、取締役会でサステナビリティ関連の議題を定期的に設定することにより、監督機能を強化することは可能です。
(2)取締役会を「サステナビリティ課題を議論・承認する場」に
しかし、多くの企業では、取締役会においてサステナビリティ課題の議論が十分にできていないのが現状です。その原因として、取締役会で個別の業務執行の決定・報告に多くの時間が割かれていることが挙げられます。いまだ多くの上場企業が採用している機関設計である監査役会設置会社の最大の特徴は、会社法上、取締役会において重要な業務執行事項を決定することが強制されているという点です。そのため、監督機能に特化した取締役会にある程度近づけることはできるとしても、限界があると言われています。
近年は、取締役会の監督機能を重視し、決議事項をスリム化するために委員会型の機関設計に移行する動きが顕著となっています(2025年5月9日のニュース「監査等委員会設置会社に移行する際の投資家への説明のポイント」参照)。業務執行の意思決定権限を執行側に委ね、取締役会は監督機能に特化する(=執行と監督の分離)ことで、サステナビリティ課題についても十分な審議時間を確保することが期待できます。サステナビリティ課題を統合したコーポレートガバナンス体制を実現できるかどうかは、取締役会を「サステナビリティ課題を議論・承認する場」と捉え、議題をサステナブル経営にどれだけ振り切ることができるかにかかっていると言えるでしょう。
また、取締役による重要な業務執行にあたっては、意思決定の合理性・適切性を担保する仕組みが必要であり、経営会議のあり方や決裁基準など、執行体制の改革も必要になります。企業が目指す姿に向かって戦略を遂行する「執行」と、着実な戦略遂行を後押しする「監督」は、健全な緊張関係を保ちつつも、サステナブル経営という“共通の目的”を共有する必要があります。
取締役会から諮問を受けた指名・報酬・監査等の専門委員会は、サステナブル経営の推進上、集中的に議論すべき内容と各委員の役割を明確にし、執行を監督することになります。
指名委員会の役割としては、CEO・経営陣のサステナビリティに関する人材要件(ビジョン、知識、リーダーシップ等)の設定や評価項目への追加、サステナビリティに関する能力開発を考慮した次世代リーダーのサクセッションプランの策定・運用があります。報酬委員会は、サステナビリティに関する目標の達成度を報酬に反映させる仕組みや、経営陣が中長期的な視点でサステナブル経営に取り組むことを可能にするインセンティブ報酬制度を設計します。監査委員会は、サステナビリティ関連の情報開示の適正性・透明性を監査の範囲に含めるとともに、リスク(気候変動リスク、サプライチェーンにおける人権リスクなど)管理体制の有効性を評価します。
また、指名・報酬・監査の各委員会と協働しながら、事業戦略とサステナビリティ戦略を統合したガバナンスを実現し、サステナブル経営を高度化する役割を担う上述の「サステナビリティ・ガバナンス委員会」を設置する企業もあります。同委員会は、例えばサステナブル経営の観点から取締役会・経営陣に要求される人材要件を識別するスキルマトリックスを作成するために指名委員会と協働したり、サステナビリティ課題に関するKPIをインセンティブ報酬制度に組み込むために報酬委員会と協働したり、適切なリスクテイク(投資等)に向けESG情報を正確に報告するために監査委員会と協働したりします。また、サステナブル経営を織り込んだ中期経営計画の策定やビジネス・シナリオの分析、多様なステークホルダーとのエンゲージメントの強化といった役割も担います。
サステナブル経営の推進は単なるトレンドではなく、企業の長期的な競争力を左右する重要な要素となっています。取締役会の監督機能の強化、執行サイドとの連携によって、サステナブル経営を支える適切なサステナビリティ・ガバナンスを構築することは、企業にとって喫緊の課題と言えるでしょう。