2017/09/05 懲戒の意義

上場会社の役員ともなれば所掌部門に属する社員の数も多く、そのマネジメントの相当部分は部・課長等(以下、上司)に託すことになる。このため、自らの所掌部門に属する社員が不祥事を起こした場合には、その上司を厳しく叱責するのみならず、上司にも懲戒処分を科すというケースがよく見られる。

もっとも、上司にしてみれば、自分が不祥事の当事者でもないのに懲戒処分を受けることは納得がいかないところだろう。また、そもそも不祥事の当事者以外の者に対する懲戒処分は法的に問題ないのかという疑問もわく。・・・

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2017/09/05 懲戒の意義(会員限定)

上場会社の役員ともなれば所掌部門に属する社員の数も多く、そのマネジメントの相当部分は部・課長等(以下、上司)に託すことになる。このため、自らの所掌部門に属する社員が不祥事を起こした場合には、その上司を厳しく叱責するのみならず、上司にも懲戒処分を科すというケースがよく見られる。

もっとも、上司にしてみれば、自分が不祥事の当事者でもないのに懲戒処分を受けることは納得がいかないところだろう。また、そもそも不祥事の当事者以外の者に対する懲戒処分は法的に問題ないのかという疑問もわく。

会社は、企業秩序を維持するため従業員に対して懲戒処分を科すことができるとされているが、そのためには予め懲戒の対象となる事由と懲戒処分の種類を就業規則等に定め、従業員に周知しておく必要がある(最二小判平成15.10.10)。この点を踏まえると、就業規則等に「部下が懲戒処分を受けたときはその上司も懲戒することがある」といった明文規定がない限り上司に懲戒処分を科すことはできないようにも見える。しかし実際には、部下の監督や指導を行う立場の者がそれを怠ったために不祥事が起きた場合、例えば通常は就業規則に明記されている「故意または過失により会社に損害を与えたとき」という条項を適用して懲戒処分を科すことが可能だ。部下が横領を働いていたのを見逃した上司を「重大な過失により会社に損害を与えた」という理由で懲戒解雇した事件(大阪地判平成10.3.23)でも、裁判所は会社側の言い分を認めている。

このように部下の不祥事を起因とする上司への懲戒処分は合法とはいえ、例えば十分な指導や注意をしていたにもかかわらず部下が不祥事を起こしてしまったという場合には、たとえ上司の責任はゼロとはならなくても軽減されて然るべきだろう。すべての懲戒処分に共通して言えることだが、「行為」と「処分」の均衡を図らなければ、必ず処分を受けた者の不満を生み、やがてその不満は「理不尽な会社」といった会社への不信感となって周囲に広がる。中長期的には社員の定着率や社風にも影響していくことも考えられる。

経営陣は、懲戒の目的はあくまで「企業秩序の維持」にあることを忘れず、決して「部下の不始末は上司の責任」といった“精神論的スローガン”や“見せしめ”として懲戒を利用することのないよう、心掛けたい。

2017/09/04 事業に必要な免許や許認可を維持したままでのスピンオフが可能に?(会員限定)

コングロマリット・ディスカウントの解消を後押しするため、平成29年度税制改正では、不振事業や不振子会社を切り離した場合においても法人税を課税しないこととする「スピンオフ税制」が新たに導入されたが(2016年11月17日のニュース「不振事業、不振子会社の切り離しが容易に」参照)、12月にも概要が固まる平成30年度税制改正でその拡充が図られる方向であることが当フォーラムの取材で分かった。

スピンオフ : 企業や組織の一部を分離し、別個の独立した企業や組織とすること。

平成29年度税制改正で導入されたスピンオフ税制は、(1)好調な事業と不振な事業を切り離して別会社とする(詳細は新用語・難解用語辞典「コングロマリット・ディスカウント」の図1参照)、(2)親子関係を解消する(同図2参照)――の2つのスピンオフを対象としているが、平成30年度税制改正で見直しが検討されそうなのが、(2)の親子関係を解消するためのスピンオフだ。

スピンオフを利用して親子関係を解消するにあたっては、その前段階で、まずは親会社が自社の一部の事業(以下、「旧事業」)を切り出して“受皿会社”となる100%子会社を作り、そこに親会社の事業を移管した後で、親子関係を解消することにより、結果として親会社の旧事業をスピンオフするという2ステップを踏むケースが少なくない。最初に受皿会社を設立するのは、事業に必要な免許や許認可を当該受皿会社に先行取得させるためである。旧事業を切り出す方法としては、分社型分割現物出資があるが、分社型分割や現物出資には資産の移転が伴う。本来、資産の移転は課税対象となる(資産の取得価額よりも移転価額が高ければ、その差額が課税対象となる)が、組織再編のたびに税金がかかるとなると、企業が必要な組織再編すら躊躇してしまう可能性がある。そこで法人税法では「組織再編税制」という制度を設け、一定の要件の満たす組織再編については、資産の移転に課税を行わないことにしている。その要件の一つに、「100%の親子関係の継続が見込まれている」ことを求める「完全支配関係継続要件」というものがある。本来であれば資産の移転(典型的には事業の売却)は課税対象となるところだが、100%親子関係を創るための資産移転であれば、企業グループ全体で見ると資産は企業グループ内にとどまっているため、(100%子会社設立後も100%親子関係の継続が見込まれている場合には)課税対象から外そうというのがこの「完全支配関係継続要件」だ。分社型分割や現物出資によって子会社を創った後、子会社株式を親会社の株主に現物配当することが決まっているとなれば、当然ながら100%の親子関係が継続することが“見込まれている”とは言えず、完全支配関係継続要件を満たせない。しかし、スピンオフの前段階での分社型分割や現物出資にまでこの完全支配関係継続要件を適用すれば、スピンオフを実行する企業が減ってしまう恐れがある。そこで平成29年度税制改正では、スピンオフの前段階で「分社型分割」あるいは「現物出資」を行って100%子会社を創った場合には、その後スピンオフのために(100%子会社の株式を親会社の株主に現物配当することにより)100%親子関係を解消したとしても、完全支配関係継続要件には抵触しないこととされた。

分社型分割 : 会社を分割した際に、分割の対価としての株式の割当先が「分割会社」である会社分割のこと。これに対し、分割の対価としての株式の割当先が分割会社の株主である会社分割を「分割型会社分割」という。
現物出資 : 株式会社の設立や新株の発行に際し、金銭以外の財産を出資すること。

ただ、企業側には、スピンオフを実施するにあたり、まずは親会社が現金出資により「受皿会社」となる100%子会社を設立した上で、そこに親会社の事業を吸収分割することにより移管(その後、当該子会社の株式を親会社の株主に現物配当)したいとのニーズがある。これは事業に必要な免許や許認可を受皿会社に先行取得させるためだ。しかし、上述のとおり、現行の法人税法では、スピンオフの前段階で行う組織再編で完全支配関係継続要件に抵触しないこととされるのは、「分社型分割」あるいは「現物出資」に限定されている。

吸収分割 : 分割した事業を既存の別会社に承継させること。

そこで平成30年度税制改正では、現金出資により設立した受皿会社に事業を移転するための吸収分割により100%子会社関係を解消した場合も、完全支配関係継続要件には抵触しないこととするよう法人税法を改正することを検討する。免許や許認可は企業にとって大きな問題であるだけに、この改正が実現すれば、スピンオフの利用を検討する企業が増える可能性もありそうだ。

2017/09/01 現行の有報より厚く? 事業報告と有報を“兼用”する開示書類案が浮上

上場企業の開示負担()軽減の観点から政府内で検討されているのが、会社法上の開示書類(事業報告・計算書類(以下、事業報告等))と金融商品取引法上の開示書類(有価証券報告書)の一体的開示だ。・・・

 3月決算の上場企業の一般的なスケジュールでは、5月中旬までに決算短信、6月上旬に事業報告、6月下旬に有価証券報告書と、短期間のうちに3つの開示書類を作成・開示しており、親会社の開示部門や子会社の経理部門等に大きな負荷がかかっている。

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2017/09/01 現行の有報より厚く? 事業報告と有報を“兼用”する開示書類案が浮上(会員限定)

上場企業の開示負担()軽減の観点から政府内で検討されているのが、株主総会の後ろ倒しとともに政府内で検討されているのが、会社法上の開示書類(事業報告・計算書類(以下、事業報告等))と金融商品取引法上の開示書類(有価証券報告書)の一体的開示だ(政府の成長戦略である日本再興戦略 2016(149ページの「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示」)および未来投資戦略2017(117ページの4行目以降)参照)。日本再興戦略を引き継いだ未来投資戦略2017には、「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示を可能とするため、・・・本年中に成案を得る。」と明記されていることから、今年(2017年)12月までには一体化案の骨子が明らかになるはずだ。

 3月決算の上場企業の一般的なスケジュールでは、5月中旬までに決算短信、6月上旬に事業報告、6月下旬に有価証券報告書と、短期間のうちに3つの開示書類を作成・開示しており、親会社の開示部門や子会社の経理部門等に大きな負荷がかかっている。

これに先立ち、日本公認会計士協会の開示・監査制度一元化検討プロジェクトチームは(2017年)8月22日、監査人の視点から一体的開示のあり方をとりまとめた「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示についての検討」と題する報告書を公表している。

一口に「一体的開示」といっても、これには「内容の一体化」と「開示時期の一体化」の2つの論点がある。

内容の一体化 会社法、金商法それぞれが求める開示事項をともに網羅しつつ、両者の記載内容を共通化する。
開示時期の一体化 開示時点を合わせる。

「内容の一体化」と「開示時期の一体化」の両方を同時に満たす方法として報告書で示されたのが、会社法と金商法が求める開示項目のすべてを網羅する下図のような“兼用”の開示書類だ。これであれば、開示が1回(決算短信を含めると2回)で済み、企業の開示負担が緩和される。

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報告書8ページより抜粋。なお、横軸は時間)

“兼用”の開示書類は、株主にとっても、議決権行使に必要な情報を一度にまとめて入手できるというメリットがある。さらに、株主が議案を検討する時間を十分に確保するためには、株主総会開催時期を後ろ倒し(株主総会の後ろ倒し開催については2017年1月31日のニュース「株主総会の7月開催を検討する会社が増加傾向も、残されたボトルネック」を参照)したうえで、“兼用”の開示書類を株主総会の1か月以上前に株主へ提供するのが望ましい。その場合の株主総会までのスケジュール例(3月決算を前提)は下図のとおりとなる(報告書13ページのシナリオ3より抜粋)。

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上のスケジュールは現行の有価証券報告書提出時期(6月下旬)に“兼用”の開示書類を開示する例となっているが、“兼用”の開示書類の開示時期を早める余力のある上場企業では、開示時期の早期化により、株主の議案検討時間をより長く確保できる。例えば、監査法人による金商法の財務諸表の監査が終了するタイミング(例えば6月前半)に“兼用”の開示書類を株主に提供できれば、株主は7月下旬の株主総会までの1か月半近くを議案の検討時間に充てることができ、株主との対話により資するスケジュールとなる。

ただ、画期的に見える“兼用”の開示書類にも問題がないわけではない。

一つは、過年度遡及が必要となった場合に、会社法上の計算書類と金商法上の財務諸表に違いが生じるという問題だ。会社法上の計算書類では当期1期分しか財務報告が開示されないのに対し、金商法上では2期分の財務報告が併記して開示される。このため、仮に会計方針の変更による過年度遡及が必要になった場合、会社法上の計算書類では影響額を「当期首」の残高に影響させるのに対し、金商法上の財務諸表では影響額を「前期首」の残高に影響させることになる。これに伴い、会社法上の計算書類と金商法上の財務諸表では、当期の株主資本等変動計算書に記載される数値や会計方針の変更に伴う影響額の注記の金額が相違することになる。“兼用”の開示書類を実現するうえでは、こうした相違をどのように開示するのかが検討課題となろう。

過年度遡及 : 会計上の変更(会計方針の変更、表示方法の変更および会計上の見積りの変更)や過去の誤謬の訂正により、過年度の財務諸表を作り直すこと。

もう一つの問題はコスト面だ。現状、事業報告等よりも有価証券報告書の方が分厚いが、“兼用”の開示書類は有価証券報告書よりもさらに分厚くならざるを得ない。そうなると、(現在の有価証券報告書と比べて)印刷および郵送のコストの増加が懸念されるところだが、政府が検討している株主総会招集通知添付書類の原則電子化(2017年8月29日のニュース「全株懇、株主総会資料の電子提供義務付けを提言」を参照)が実現すれば、現在の事業報告等の印刷・郵送は不要となるため、トータルのコストはむしろ減るだろう。

報告書では、下図のように、モジュール型開示システムを前提として、現行どおり会社法上の開示書類(事業報告等)と金商法上の開示書類(有価証券報告書)を別々に作成する案も併記されているが、この方法では、モジュール化により共通部分の作成を効率化できる(有価証券報告書の作成にあたり、事業報告等の開示書類と共通の部分を転用できる)というメリットはあるものの、2回開示を行わなければならず、開示負担の緩和にはつながらないという問題がある。

モジュール化 : まとまった構成要素を取り出す作業。あるべき姿として開示すべき情報の全体像を認識した上で、そこから投資家にとって必要な「モジュール(まとまった構成要素)」を切り出し、適切なタイミングで提供するという企業情報開示の基本的な設計思想(モジュール型開示システム)の下では、開示制度の設計に先立ちモジュール化が必須の作業となる。

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報告書8ページより抜粋。なお、横軸は時間)

この点からすると、開示書類を“兼用”する案に優位性があると言える。

金商法上の財務諸表や会社法上の計算書類を監査する立場にある監査人を束ねる団体である日本公認会計士協会の意見は、開示書類(事業報告等と有価証券報告書)の一体的開示の議論に影響を与える可能性が高い。この案が実現すれば、企業で開示を担当する部門の人員構成や働き方にも大きな影響を与えることになりそうだ。

2017/08/31 2017年8月度チェックテスト第10問解答画面(不正解)

不正解です。
消費者契約法8条1項1号では「損害賠償責任を免除する条項」が違法とされていますが、「事業者は、事業者が自らに過失があると認めた場合に限り損害賠償責任を負う」といった条項は、あくまで「損害賠償責任を負う」と言っている(「免除する」とは言っていない)以上、同条項に反するものではなく有効と解されています。

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2017/08/25 消費者契約法再改正へ 消費者団体の要望受け解釈権限付与条項を無効に(会員限定)

2017/08/31 2017年8月度チェックテスト第10問解答画面(正解)

正解です。
消費者契約法8条1項1号では「損害賠償責任を免除する条項」が違法とされていますが、「事業者は、事業者が自らに過失があると認めた場合に限り損害賠償責任を負う」といった条項は、あくまで「損害賠償責任を負う」と言っている(「免除する」とは言っていない)以上、同条項に反するものではなく有効と解されています。

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2017/08/25 消費者契約法再改正へ 消費者団体の要望受け解釈権限付与条項を無効に(会員限定)

2017/08/31 2017年8月度チェックテスト第9問解答画面(不正解)

不正解です。
東証は2017年8月2日に相談役・顧問等の開示に関する「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の記載要領を改訂しました。これにより、来年(2018年)1月1日以後に提出するコーポレート・ガバナンス報告書からは、退任した代表取締役等が相談役や顧問等に就任する場合、氏名、役職・地位、業務内容、勤務形態・条件(常勤・非常勤、報酬の有無等)、社長等の退任日、任期などの記載が求められることになります。もっとも、開示対象となるのはあくまで「上場会社の経営トップであった者」に限定されています。例えば元代表取締役副社長のように、代表権があっても「経営トップ」ではなかった元取締役などは要件を満たさず、退任後に相談役・顧問等に就任したとしてもコーポレート・ガバナンス報告書での開示対象にはなりません。

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2017/08/23 代表取締役社長が相談役・顧問等に就任でも開示対象外となるケース(会員限定)

2017/08/31 2017年8月度チェックテスト第9問解答画面(正解)

正解です。
東証は2017年8月2日に相談役・顧問等の開示に関する「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の記載要領を改訂しました。これにより、来年(2018年)1月1日以後に提出するコーポレート・ガバナンス報告書からは、退任した代表取締役等が相談役や顧問等に就任する場合、氏名、役職・地位、業務内容、勤務形態・条件(常勤・非常勤、報酬の有無等)、社長等の退任日、任期などの記載が求められることになります。もっとも、開示対象となるのはあくまで「上場会社の経営トップであった者」に限定されています。例えば元代表取締役副社長のように、代表権があっても「経営トップ」ではなかった元取締役などは要件を満たさず、退任後に相談役・顧問等に就任したとしてもコーポレート・ガバナンス報告書での開示対象にはなりません。

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2017/08/23 代表取締役社長が相談役・顧問等に就任でも開示対象外となるケース(会員限定)