2017/02/10 「会長」の社外役員兼職は何社までOK?

議決権行使助言の準大手グラスルイスは(2017年)2月2日に日本向け議決権行使助言方針(2017年)の要約和訳版を発表した。和訳版の公開は2016年に続いて2回目である。既に方針の内容自体は、昨年11月に公表された英語版で明らかになっているが(2016年12月27日のニュース『海外有力機関投資家、2017年度に「独立社外取締役比率3分の1」を要求も』参照)、今回の改訂項目を整理すると下表のとおりとなる。この中で注目したいのが、・・・

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2017/02/10 「会長」の社外役員兼職は何社までOK?(会員限定)

議決権行使助言の準大手グラスルイスは(2017年)2月2日に日本向け議決権行使助言方針(2017年)の要約和訳版を発表した。和訳版の公開は2016年に続いて2回目である。方針の内容自体は、既に昨年11月に公表された英語版で明らかになっているが(2016年12月27日のニュース『海外有力機関投資家、2017年度に「独立社外取締役比率3分の1」を要求も』参照)、今回の改訂項目を整理すると下表のとおりとなる。この中で注目したいのが、②の「取締役・監査役の兼職数」だ。

項目 2016年 2017年
①会社機関の独立性
(監査役会設置会社)
最低2人以上かつ取締役会の20%以上が社外取締役 取締役と監査役の総人数の3分の1以上が独立役員
②取締役・監査役の兼職数 業務執行者による兼務は4社まで、非業務執行者による兼務は6社まで 業務執行者による兼務は2社まで、非業務執行者による兼務は5社まで
③株式型報酬制度 交付可能株式総数 - 開示がない場合は反対助言する
権利行使価格 - 取締役会に一任する条項がある場合は反対助言する
付与対象者 1円ストックオプションの付与対象者に社外取締役、監査役が含まれる場合は反対助言する 業績連動型でなければ、社外取締役、監査等委員、監査役が付与対象者に含まれても自動的には反対助言しない
業績連動型であれば、付与対象者に社外取締役、監査役が含まれる場合は反対助言する 業績連動型であれば、付与対象者に社外取締役、監査等委員、監査役が含まれる場合は反対助言する
行使待機期間 - 2年未満の場合は反対助言する

「業務執行者による兼務は2社まで」という基準を換言すると、例えば現役の上場会社CEOについては、他社の役員(取締役または監査役)の兼任は1社しか認められないということになる。上場会社としては、自社の業務執行者が「業務執行者による兼務は2社まで」という基準に抵触していないことを改めて確認しておく必要がある。ただし、グラスルイスは「業務執行者が連結グループ内の他の会社の業務執行者を兼任している場合は、たとえ3社以上の兼任であっても、過剰な役員兼務を理由としての反対助言は控える」としているため、注意しなければならないのは「連結グループ外の会社の役員(取締役または監査役)を兼任している場合の社数」である。

この基準が適用されるか否かを検討する際のポイントとなるのが、「業務執行者」の解釈だ。グラスルイスは、会社法上の「業務執行者」に限らず、広く業務執行を担当する役員(業務執行取締役、執行役員)と捉えるようである。では「会長」はどうか。グラスルイスは「平取締役の会長で、執行関与がないことが開示で明らかな場合、該当しない」と説明している模様。逆に言えば、代表権のない取締役会長だから安心とは言い切れず、非業務執行者であることを開示で強調するといった工夫が必要だろう。

2017/02/09 金融庁有識者会議で「議決権行使結果の個別開示は“時期尚早”」との意見

野村総合研究所
上級研究員  三井千絵

スチュワードシップ・コードの改訂に向け、先月1月31日には「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」が金融庁で開催されたが、改訂の内容について投資家等から懸念の声が挙がっている。

3年に一度の見直しの初回となる今回の改訂では、金融庁は「議決権行使結果の個別開示」に力点を置いているように見える。しかも、開催から2か月半で報告書案を公表したフェア・ディスクロージャー・ルール・タスクフォース同様、わずか2か月程度で結論を出すというスピード決定となるため、「話し合う前から結論ありきなのではないか」との疑念を抱く関係者は少なくない。

こうした中、有識者会議のメンバーの一人である・・・

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2017/02/09 金融庁有識者会議で「議決権行使結果の個別開示は“時期尚早”」との意見(会員限定)

野村総合研究所
上級研究員  三井千絵

スチュワードシップ・コードの改訂に向け、先月1月31日には「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」が金融庁で開催されたが、改訂の内容について投資家等から懸念の声が挙がっている。

3年に一度の見直しの初回となる今回の改訂では、金融庁は「議決権行使結果の個別開示」に力点を置いているように見える。しかも、開催から2か月半で報告書案を公表したフェア・ディスクロージャー・ルール・タスクフォース同様、わずか2か月程度で結論を出すというスピード決定となるため、「話し合う前から結論ありきなのではないか」との疑念を抱く関係者は少なくない。

こうした中、有識者会議のメンバーの一人である企業年金連合会の濱口大輔・運用執行理事は第一回目の会合で、あくまでも「個人の意見」としながらも、注目すべき“提言”を行っている。

企業年金基金とスチュワードシップ・コードは、2つの異なる意味で関連がある。一つは投資家、正確には「アセットオーナー」としての関わり、そしてもう一つは「基金の母体企業」との関わりだ。その運用責任者の立場からの上記提言には、企業、投資家問わず耳を傾けるべき指摘が含まれている。この提言からいくつか重要な点を紹介したい。

提言は、コード改訂に際し議論すべき点として4つの論点をあげている。①共同エンゲージメント(コレクティブ・エンゲージメント)、②議決権行使結果の個別開示、③企業年金のコード受入れ、④政策保有株の削減、である。

①については、「機関投資家が別々に企業と対話するのは、企業側においても効率が悪い」「特に投資先が多いパッシブ運用においては、機関投資家共通のマクロな問題や特に重要な事案への対応が問題になるので、機関投資家が共同で対話に取り組むのが合理的」「日本では政策保有株主の比率が大きいので、機関投資家の影響力を確保するためにも共同対話の体制を作ることが特に必要」などと指摘したほか、共同エンゲージメントは英国版コードやICGN(国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク)スチュワードシップ原則、 国連責任投資原則などでも重要な行動原則となっていることから、日本版コードにもこれを取り組むべきだと述べている。

国連責任投資原則 : 機関投資家に対し、投資判断プロセスにESGを反映することや、投資対象企業にESGに関する情報開示を求めることなどを提唱するもの。これに署名した機関投資家は、国連に投資の状況を報告する義務が生じるため、ESGを重視した投資を実践せざるを得ない。英語では「UN PRI(United Nations Principles for for Responsible Investment)」と呼ばれる。

また、②については「時期尚早」とし、現時点での実施に反対している。具体的な理由として、日本では議決権行使までの期間が他国に比べ異常に短いため、「議決権行使業務はその精度をある程度犠牲にしてでも機械的に実施せざるを得ない」という現状を指摘したうえで、「投資家にとって議決権による影響力行使は最終的な手段であって、それ以前に企業との建設的な対話によって問題を解決していくのが本来とるべき行動」であり、議決権行使結果の開示のみに執着することは「形式主義を助長し、却って活動の質を劣化させる懸念」があるとしている。

③については、多くの企業年金の運用担当者が一人しかいないといった現実から、ただコードの受入れだけを求めれば、「形式的だけの受入れ表明」になってしまうとし、規模に応じた柔軟な対応が必要であるとし、④については、日本の株式市場ではいまだに政策保有株主の比率が大きくいため機関投資家の影響力は限定されており、スチュワードシップ活動が有効に機能する環境になっていないことを指摘したうえで、「スチュワードシップ・コードが実効性を発揮するためには政策保有株式の大規模な削減が必要」と結んでいる。

企業年金連合会の濱口理事が指摘するとおり、スチュワードシップ・コードが有効に機能するためには、まず環境を整えることが必要であり、特に政策保有株の削減とコレクティブ・エンゲージメントを実施するための環境整備、そして期末から株主総会までの十分な期間の確保は急務なはずだ。これらの議論より先に議決権行使結果の個別開示に踏み切れば、濱口理事が懸念するように、“形式的なことを求める風潮”に逆戻りしてしまうかもしれない。そもそも、この短い期間で本当にこれら重要な事項についての議論が深まるのだろうか。スチュワードシップ・コードの改訂は、機関投資家の対話の相手となる企業にとっても極めて重要な問題であり、企業を含むより多くの関係者がこの期間に意見を発することが必要であると言える。

2017/02/08 究極の長期投資

スチュワードシップ・コードの導入(2014年2月~)以降、日本企業と投資家の間で、徐々にではあるが対話が進んできている。この場合の投資家とは「長期投資家」を指す。長期投資家は企業に対してまさに長期的な視点から提案を行い、企業もその投資家との長期的な関係を前提とするからこそ、その提案に耳を傾けるのである。ところが、現実には「長期投資」に至らずに株式が売却されるケースもある。

何年をもって「長期」というかは、投資家によって様々だ。「3年」を長期という投資家もいれば「5年」という者もいるが、いずれにせよ、いくら「長期投資家」といっても、その企業の株価があまりに上昇すれば株式を売却するであろう。企業としては、せっかく投資家と対話し、そのアドバイスを受け入れても、株式を売却されてしまっては意味がない。最悪なのは「自社株買い」に呼応した売却である。すなわち、投資家が企業に自社株買いを勧め、企業がそれを実行し、自社株買いのニュースが出て株価が上昇したところで投資家が売るということである。これは、まさに短期投資に他ならない。

では、本当の長期投資とはどういうものであろうか。それは、・・・

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2017/02/08 究極の長期投資(会員限定)

スチュワードシップ・コードの導入(2014年2月~)以降、日本企業と投資家の間で、徐々にではあるが対話が進んできている。この場合の投資家とは「長期投資家」を指す。長期投資家は企業に対してまさに長期的な視点から提案を行い、企業もその投資家との長期的な関係を前提とするからこそ、その提案に耳を傾けるのである。ところが、現実には「長期投資」に至らずに株式が売却されるケースもある。

何年をもって「長期」というかは、投資家によって様々だ。「3年」を長期という投資家もいれば「5年」という者もいるが、いずれにせよ、いくら「長期投資家」といっても、その企業の株価があまりに上昇すれば株式を売却するであろう。企業としては、せっかく投資家と対話し、そのアドバイスを受け入れても、株式を売却されてしまっては意味がない。最悪なのは「自社株買い」に呼応した売却である。すなわち、投資家が企業に自社株買いを勧め、企業がそれを実行し、自社株買いのニュースが出て株価が上昇したところで投資家が売るということである。これは、まさに短期投資に他ならない。

では、本当の長期投資とはどういうものであろうか。それは、株価がいくら上昇しても売却しない、すなわち「株価をまったく気にしない投資」であろう。この“究極の長期投資”では、株価を気にするのは購入のときだけである。その後は、倒産のリスク等がない限り売却はしない。その結果、投資家への収入は配当収入だけとなる。10年、20年と入ってくる配当の合計が総収入であり、売却によるキャピタルゲインは期待しない。

企業からすれば、「キャピタルゲインを期待しない分、増配を要求してくるのでは?」との懸念を抱くかもしれない。しかし、このような長期投資家が単純に増配を求めることはないだろう。彼らにとって重要なのは「長期の配当」であって、短期の配当ではないからだ。長期の配当を得るためには、企業が成長して配当の原資である利益が伸びる必要がある。そのためには、企業に対し、短期の投資家還元ではなく設備投資等を勧めることも十分に考えられる。この場合、彼らの目線は企業と一致している。それが実現するのも、彼らがその企業の株を持ち続けるからこそである。

現在のところこのような“究極の長期投資”を実践する投資家はほとんどいないように思われるが、企業との建設的な対話はこうした投資家によって行われるのが理想であり、今後出現することが期待されるところだ。

2017/02/07 指名・報酬委員会の実務指針、両委員会の連携を提案

コーポレートガバナンス・コード補充原則4-10①が、役員の指名・報酬について「任意の諮問委員会」の設置を勧めていることから、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社で任意の指名・報酬委員会を設置するケースが急増しているということは、2016年11月29日のニュース「代表取締役の指名アセスメントの手法」でお伝えしたとおり。ただ、任意の指名・報酬委員会(以下、両委員会)には、指名委員会等設置会社のようにメンバー構成や運営方法を定めた明文上のルールがない。このため、「両委員会の委員長を誰にするのか」「両委員会における委員の社内・社外比率をどうするのか」といった両委員会の構成員の問題、「社長・CEOの指名・報酬を諮問対象にするか否か」「社長・CEOの指名・報酬を諮問対象にするとして、実効性ある委員会にするためにはどうすればいいか」など両委員会の運営方法に悩む上場企業は少なくない。

こうした中、経済産業省が設置している「CGS研究会」(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)が「指名・報酬委員会の実務指針」(以下、実務指針)を来月(2017年3月)中に公表することが当フォーラムの取材で判明した。・・・

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2017/02/07 指名・報酬委員会の実務指針、両委員会の連携を提案(会員限定)

コーポレートガバナンス・コード補充原則4-10①が、役員の指名・報酬について「任意の諮問委員会」の設置を勧めていることから、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社で任意の指名・報酬委員会を設置するケースが急増しているということは、2016年11月29日のニュース「代表取締役の指名アセスメントの手法」でお伝えしたとおり。ただ、任意の指名・報酬委員会(以下、両委員会)には、指名委員会等設置会社のようにメンバー構成や運営方法を定めた明文上のルールがない。このため、「両委員会の委員長を誰にするのか」「両委員会における委員の社内・社外比率をどうするのか」といった両委員会の構成員の問題、「社長・CEOの指名・報酬を諮問対象にするか否か」「社長・CEOの指名・報酬を諮問対象にするとして、実効性ある委員会にするためにはどうすればいいか」など両委員会の運営方法に悩む上場企業は少なくない。

こうした中、経済産業省が設置している「CGS研究会」(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)が「指名委員会・報酬委員会の実務指針」(以下、実務指針)を来月(2017年3月)中に公表することが当フォーラムの取材で判明した。

公表に先立ち、一足早くその内容を紹介しよう。

実務指針では、「社長(以下、CEOを含む)の選解任及び後継者計画について、指名委員会への諮問対象に含めること」「社長の報酬について、報酬委員会への諮問対象に含めること」が必要であるとしたうえで、指名に関しては「あるべきCEO像」を策定した後に「指名方針」「解職基準」を策定すること、報酬に関しては「報酬方針」を事前に策定すべきとしている。

両委員会の諮問対象に「社長」を含めることは、「経営陣幹部・取締役の指名・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化」(コーポレートガバナンス・コード補充原則4-10①)という任意の委員会の設立目的を踏まえれば必然であろう。仮に両委員会を設置しているものの諮問対象に「社長」を含めていない上場企業があれば、早々に「社長」を諮問対象に含めておくべきだ。

一方、「社長」を両委員会の諮問対象に含めている上場企業であっても、単に投資家へのポーズのために任意の委員会を立ち上げただけにすぎず、実際、両委員会でも形式的な議論しかできていない企業も少なくない。それにもかかわらず、いかにも実効性のある議論を経て指名や報酬が確定されたかのような外観だけを整えるのは、投資家を欺くに等しいと言っても過言ではない。任意の両委員会を立ち上げた以上、そこでは実質的な議論が交わされるべきである。

そのために重要となるのが、委員の構成だ。社長の選解任や報酬を諮問対象とするはずの委員会の委員長に社長が就任し、かつ、委員も社内人材で固められているとなれば、社長を両委員会の諮問対象とするのは事実上不可能となるからだ。そのような上場企業に対して、投資家は「社長は実質的に諮問対象とされておらず、ガバナンスが十分でない」と否定的な判断をする可能性がある。実務指針は、「現社長・CEOは委員にしない(オブザーバに留める、必要に応じて呼ぶなど)」「委員とするが、自身の評価に関連する審議の場を別に設定する、あるいは退席させるようにする」といった工夫で、社長のいない場で議論できる環境を整えるべきと提案している。

逆に言うと、上場企業としては、社長の選解任および後継者計画、報酬を実効性ある議論をするためにどのような工夫をしているのか、投資家との対話で積極的にアピールすべきであろう。投資家にアピールするのにもっとも手っ取り早いのは、委員長や委員を社外人材のみとすることである。ただ、社外人材には社内事情に疎く社内との連携も取りにくいというデメリットがあるのも事実。そこで実務指針では、様々な委員構成を示している。具体的には、①指名プロセスや報酬決定プロセスに対する社外者の関与を強め、②メンバーを絞って効率的な議論をするという任意の委員会の設置目的に照らして、「社外者のみ」「社外者が過半数」「社外・社内が半数ずつで、委員長は社外」というパターンが望ましいとしている。既に「社内者が過半数」あるいは「社内者のみ」という両委員会を運営している会社では、社外人材の増員が喫緊の課題と言える。もっとも、この課題を認識はしていても、実際のところ適任者が見つからないという上場企業は少なくない。そこで実務指針では「社外監査役」を活用する案を示している。社外人材の不足に悩む上場企業にとっては一考に値しよう。

社長・CEOの選解任については、「社長・CEOの評価をする上で、社長・CEOに問題があると認められる場合においても、指名委員会でいきなり解任する(あるいは再任しない)という厳格な選択を行う前に、報酬委員会における評価を通じて、経営の改善に取り組むようシグナルを発することが実際上は有効である」としている。また、「社長・CEOの選解任に際して、その前提として社長・CEOの評価が行われることになるが、評価は、指名の局面に限られず、役員報酬を適正に決定する局面でも必要なものであり、両者は共通する部分も多い。CEOの評価は、CEOの解任といった極端な事例としてではなく、むしろ毎期の報酬に反映されていくことが通常」であり、「そのため、委員会は、指名委員会だけではなく、報酬委員会も併せて設置することが有効である」とし、指名委員会・報酬委員会の併設と連携を提案している点、注目される。両委員会を既に立ち上げている上場企業の中には、両委員会をまったく連携させずに別々に運営しているケースも見受けられる。両委員会の連携は、各委員会の機能向上のために、是非とも取り組みたい課題と言えよう。もし、両委員会のメンバーが重なる場合は、両委員会の一体化も視野に入れてもよいだろう。

本実務指針は、投資家にとっては任意の両委員会について上場企業と議論する際によりどころになる一方で、上場企業にとっては任意の両委員会のあり方に関するデファクト・スタンダードとして機能するだろう。それだけに、両委員会を設置する上場企業としては、実務指針が提案する内容と自社における両委員会の運営にかい離があれば、それをどのようにして埋めるのか議論することが不可欠となってくるのは間違いない。

2017/02/06 トランプ大統領の円安批判への対応は?

米国トランプ大統領から日本の為替政策が批判されている。直接的な為替介入だけでなく、量的緩和など日銀の金融政策まで含めて為替レートを円安に誘導している、との趣旨だ。これに対し、菅義偉官房長官をはじめ日本政府は、躍起になって意図的な円安を否定している。政治的な動きはともかく、経営陣としては為替水準を再考する良い機会だろう。今日の為替水準は長期的には歴史的な円安局面にあるが、その事実が見逃されがちなためだ。

為替水準というと対米ドル・レートに目が行きがちだが、長期的な為替水準を把握するうえで注目するべき指標としては、米ドル以外の通貨や物価変動を考慮した「実質実効為替レート」の方が適切である。日本の貿易相手は米国に限定されないうえ、物価変動は国際的なコスト競争力に直接的な影響を与えるためだ。実質実効為替レートに注目すると、2016年12月末は76.3(2000年=100、通常の為替レートと異なり、数値の大きい方が円高である点に注意)とプラザ合意があった1985年9月時点の85.0を約1割下回る(円安の)水準になっている。ちなみに、85年9月の対米ドル・レートは236.91円だから、今日の水準がいかに歴史的な円安であるか分かるだろう。振り返ると、2008年9月のリーマン・ショック直後に急激な円高が進んだ時期もあったが、この時の実質実効為替レートによる円高のピークは2009年1月の106.8であり、これは05年1月の水準に戻ったに過ぎない。05年1月以前の5年間の平均は110.7だから、リーマン・ショック直後の為替変動は円高ではなく、05年以降に進みすぎた円安を修正する動きと理解する方が自然なのである。

実質実効為替レート : 例えば対米ドルで円高になっていたとしても、対ユーロに対しては円安ということが起こり得る。この場合、対米ドルでの円高をもって「円高」とは言えない。そこで、通貨の相対的な実力を測るため、他の国々の通貨に対する価値の上昇・下落を反映した指標が名目実効為替レートである。この名目実効為替レートの変化率から、相手国における物価上昇による通貨価値の下落分を考慮して算出されるのが実質実効為替レートである。

実は、05年以降および今日の円安に際しては、その前後に政策的な動きが見られる。「05年以降」の方では、量的緩和と大規模な為替介入が行われている。量的緩和は01年3月に始まり、その規模は04年1月にかけて拡大されている。また、為替介入は03年1月から04年3月にかけて行われ、累計で35兆円に達している。一方、今日の円安は12年12月の安倍政権誕生とほぼ時を同じくして進行し、翌13年4月の異次元の金融緩和を受けて加速している。これらの政策と為替変動の因果関係を特定するのは容易ではないが、結果だけ見れば、トランプ大統領が批判するように、政策的な円安誘導に見えてしまうのも事実だ。

では、このような現状を経営者はどのようにとらえるべきだろうか。

まず、・・・

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2017/02/06 トランプ大統領の円安批判への対応は?(会員限定)

米国トランプ大統領から日本の為替政策が批判されている。直接的な為替介入だけでなく、量的緩和など日銀の金融政策まで含めて為替レートを円安に誘導している、との趣旨だ。これに対し、菅義偉官房長官をはじめ日本政府は、躍起になって意図的な円安を否定している。政治的な動きはともかく、経営陣としては為替水準を再考する良い機会だろう。今日の為替水準は長期的には歴史的な円安局面にあるが、その事実が見逃されがちなためだ。

為替水準というと対米ドル・レートに目が行きがちだが、長期的な為替水準を把握するうえで注目するべき指標としては、米ドル以外の通貨や物価変動を考慮した「実質実効為替レート」の方が適切である。日本の貿易相手は米国に限定されないうえ、物価変動は国際的なコスト競争力に直接的な影響を与えるためだ。実質実効為替レートに注目すると、2016年12月末は76.3(2000年=100、通常の為替レートと異なり、数値の大きい方が円高である点に注意)とプラザ合意があった1985年9月時点の85.0を約1割下回る(円安の)水準になっている。ちなみに、85年9月の対米ドル・レートは236.91円だから、今日の水準がいかに歴史的な円安であるか分かるだろう。振り返ると、2008年9月のリーマン・ショック直後に急激な円高が進んだ時期もあったが、この時の実質実効為替レートによる円高のピークは2009年1月の106.8であり、これは05年1月の水準に戻ったに過ぎない。05年1月以前の5年間の平均は110.7だから、リーマン・ショック直後の為替変動は円高ではなく、05年以降に進みすぎた円安を修正する動きと理解する方が自然なのである。

実質実効為替レート : 例えば対米ドルで円高になっていたとしても、対ユーロに対しては円安ということが起こり得る。この場合、対米ドルでの円高をもって「円高」とは言えない。そこで、通貨の相対的な実力を測るため、他の国々の通貨に対する価値の上昇・下落を反映した指標が名目実効為替レートである。この名目実効為替レートの変化率から、相手国における物価上昇による通貨価値の下落分を考慮して算出されるのが実質実効為替レートである。

実は、05年以降および今日の円安に際しては、その前後に政策的な動きが見られる。「05年以降」の方では、量的緩和と大規模な為替介入が行われている。量的緩和は01年3月に始まり、その規模は04年1月にかけて拡大されている。また、為替介入は03年1月から04年3月にかけて行われ、累計で35兆円に達している。一方、今日の円安は12年12月の安倍政権誕生とほぼ時を同じくして進行し、翌13年4月の異次元の金融緩和を受けて加速している。これらの政策と為替変動の因果関係を特定するのは容易ではないが、結果だけ見れば、トランプ大統領が批判するように、政策的な円安誘導に見えてしまうのも事実だ。

では、このような現状を経営者はどのようにとらえるべきだろうか。

まず、現状が歴史的な円安である事実を受け止め、今後相当程度の「円高」が進行する可能性があることをリスクシナリオとして想定しておくべきだろう。ここでいう「相当程度」とは、例えば実質実効為替レートが05年1月の水準に戻るとすると、対米ドルでは86円程度ということになる。極端な円高に見えるかもしれないが、長期的なトレンドとしてはこちらの方が自然な水準なのである。逆に現状以上の円安が進行する場合には原燃料の輸入コストの上昇などのデメリットを懸念する必要がある。

また、トランプ大統領の発言が日本銀行の金融政策に与える影響も考慮するべきだろう。従前のように緩和一辺倒というわけにはいかなる可能性もある。金融緩和によって資金調達が容易になるだけでなく、不動産を含む資産価格が押し上げられてきたが、このような状況に変化が生じる可能性も視野に入れておくべきだろう。

リスクをゼロにするのは不可能だが、経営陣が様々なリスクシナリオを頭に入れておくだけで、リスクが顕在化した場合の対応も変わってこよう。環境変化が激しい今日、平時からのリスク管理において、経営陣の手腕が問われていると言える。