2017/02/17 職務発明規程の改訂が進まない理由

昨年(2016年)4月、発明について特許を受ける権利が「従業員のもの(従業者帰属)」から「会社のもの(法人帰属)」へと変更されるなど約90年ぶりの抜本的見直しとなった改正特許法が成立してから半年以上が経過した(『改正特許法の内容は「発明は「従業員」から「会社」のものへ、残されたリスク要因は?』『合理的な「発明の対価」決定のためのガイドライン策定が本格化』『特許法改正から3か月、いまだに企業からよく受ける2つの質問とは?』参照)。先月には、特許法の改正に伴い問題となっていた・・・

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2017/02/17 職務発明規程の改訂が進まない理由(会員限定)

昨年(2016年)4月、発明について特許を受ける権利が「従業員のもの(従業者帰属)」から「会社のもの(法人帰属)」へと変更されるなど約90年ぶりの抜本的見直しとなった改正特許法が成立してから半年以上が経過した(『改正特許法の内容は「発明は「従業員」から「会社」のものへ、残されたリスク要因は?』『合理的な「発明の対価」決定のためのガイドライン策定が本格化』『特許法改正から3か月、いまだに企業からよく受ける2つの質問とは?』参照)。先月には、特許法の改正に伴い問題となっていた従業者等が受けた経済上の利益に対する所得税の課税について、今後はすべて「雑所得」と取り扱うことが国税庁から正式な見解として明らかにされている(2016年3月18日のニュース「職務発明の対価の所得区分が変更へ」参照)。このように、「従業者帰属」の運用に向けた環境整備が進む一方で、特許法改正を踏まえて各企業が取り組むべき「職務発明規程」の改訂が進んでいない。

雑所得 : 副業等で稼いだ所得を指し、20万円を超えると確定申告をする必要がある。例えば、印税、講演料、アフィリエイト収入、公的年金などが雑所得に該当する。公的年金等以外の雑所得額は、「総収入金額-必要経費」によって計算される(公的年金等の雑所得は、収入金額に応じた公的年金等控除額を差し引くことができる)。
職務発明規程 : 発明の権利関係や、従業員(発明者)に与えるインセンティブの内容など、職務発明を社内でどのように取り扱うかを定めたもの。

改正特許法では、あらかじめ契約や勤務規則(以下、「職務発明規程」)で定めれば、会社(法人)は「従業者から権利の譲渡を受けることなく」特許を受ける権利を保有することができるとされている。ところが、現状、多くの企業の職務発明規程には下記のような規定が盛り込まれており、これらの規定が存在する限り、職務発明は「法人帰属」とはならない可能性が高い()。

・発明者は、職務発明を行なったときは、会社に速やかに届け出るものとする。
・会社が前項の職務発明に係る権利を取得する旨を発明者に通知したときに、会社は当該職務発明に係る権利を承継する。
 職務発明規程には「法人に特許を受ける権利を承継させる」旨の規定も同時に置かれていることが多いが(このような規定を「予約承継規定」という)、予約承継規定があっても、上記のような規定があれば、職務発明を「従業者帰属」とする意思表示とみなされる可能性が高い。

そこで企業は職務発明規程を改訂し、下記のような規定を盛り込む必要がある。

職務発明については、その発明が完成したときに、会社が発明者から特許を受ける権利を取得する。

ところが、冒頭で述べたとおり、今のところ職務発明規程の改訂に踏み切った企業は少ない。このような状況に対し、「産業界たっての要望であったにもかかわらず、改正の趣旨を取り込んだ職務発明規程の改訂を行なった企業がほとんどないのはどういうことか」といった批判も聞かれるが、実際に職務発明規程を改訂するのは容易ではないというのが企業側の本音。手元に入る金銭が関係する規程の変更は従業者にとって重要な問題であるため、各社ともできるだけ丁寧な対応を心掛けているようだ。企業からは「人事制度の改訂よりも丁寧な対応をせざるを得ない」という声も聞こえてくる。実際、全国の数十箇所の事業所すべてに足を運び、説明に回った知財担当者もいる。こうした事情から、各社の対応を見極めるまで改訂を先送りすることを決めた企業もある。

さらに、上場企業となれば、マスコミの目も気になるところだろう。発明について特許を受ける権利を「従業員のもの」から「会社のもの」へと変更する今回の特許法改正に対しては、「発明者不遇策」「労働者の権利切下げ」といった批判がマスコミにより展開され、それを鵜呑みにしている人も少なくない。実際には、特許を受ける権利それ自体を労働者個人が有していることに意味はなく、利益をもたらすこともないが、「会社のものにする=発明者の権利が奪われる」という思い込み・先入観が世間に蔓延しているのが現状だ。

本来、会社と従業員のWin-Winの関係構築を目指した特許法改正の趣旨が浸透していないのは不幸としか言いようがないが、そのような中で、今年4月に向け、今回の改正のメリットを最大限に活かす形で職務規程の改訂に踏み切る企業も出てきそうだ。例えば金銭以外のユニークな発明報奨、具体的には海外留学の機会、ストックオプション、所定の日数を超える有給休暇の付与などを規程に盛り込む企業が出てくることが考えられる。

ユニークな発明報奨は企業イメージの向上にもつながる。上場企業はどうしてもコンサバティブにならざるを得ないかもしれないが、今後出てくるであろう他社事例を参考にしながら、経営陣がリーダーシップをとり、斬新なアイデアを打ち出して行きたいところだ。斬新な規程を設けた暁には、積極的に世にアピールすべきだろう。

2017/02/16 米国でも「2つのコード」

これまでスチュワードシップ・コードもコーポレートガバナンス・コードも存在しなかった米国で今年(2017)年1月31日、・・・

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2017/02/16 米国でも「2つのコード」(会員限定)

これまでスチュワードシップ・コードもコーポレートガバナンス・コードも存在しなかった米国で今年(2017)年1月31日、米国のインベスター・スチュワードシップ・グループ(ISG)がコーポレートガバナンス原則とスチュワードシップ原則を公表した。ISGは米国を中心とする16の機関投資家を創立メンバーとして設立された民間団体であり、創立メンバーの運用資産は総額で17兆米ドルにも達する。ISGには、既に20の機関投資家が署名又は承認(Endorse)しており、これにはブラックロックなどの大手運用機関やカリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS(カルパース))などの年金基金、さらにはシンガポール政府投資公社のようなソブリン・ウェルス・ファンドSovereign Wealth Fund)が含まれる。発効は2018年1月1日を予定している。

ソブリン・ウェルス・ファンドSovereign Wealth Fund : 国家の金融資産を運用する政府系のファンド。「Sovereign」とは、主権者、元首、君主、国王といった意味である。

上記2つの原則は日本のコーポレートガバナンス・コードおよびスチュワードシップ・コードという「2つのコード」の米国版と言えるが、法律でもなければ、日本版のように公的な機関が主導して作られたものでもない。しかし、上記のとおり大手の運用機関や年金基金が賛同している以上、影響は大きく、既に大手運用機関や年金基金ではスチュワードシップに関する体制を増強する動きが見られる。例えば、ブラックロックは過去3年間で11名のアナリストを新たに採用し、合計で31名に増員している。また、CalPERSも29名という大規模な体制を構築している。

米国版の「2つのコード」は米国企業を対象にしたものであり、日本企業は直接の対象ではない。しかし、米国における今回の動きをきっかけにして、上場企業と機関投資家の対話を促す流れが世界的に加速することの意義は大きい。日本では既にスチュワードシップ・コードの見直し作業が進んでおり、来年にはコーポレートガバナンス・コードの見直しも予定されているが、米国におけるこのような動き受け、より企業と機関投資家の対話を促す内容になる可能性もある。日本企業の経営陣は、これまで以上に機関投資家との対話、さらには機関投資家から評価される経営を意識する必要があろう。

米国版コーポレートガバナンス原則(仮訳)
原則1:取締役会は株主に対して説明責任を負う(Boards are accountable to shareholders.)
原則2:株主は経済的持ち分に比例した議決権を与えられるべき(Shareholders should be entitled to voting rights in proportion to their economic interest.)
原則3: 取締役会は株主に対して敏感であり、株主の見解を理解するために能動的であるべき(Boards should be responsive to shareholders and be proactive in order to understand their perspectives. )
原則4:取締役会は強力で独立したリーダーシップ構造を持つべき(Principle 4: Boards should have a strong, independent leadership structure. )
原則5:取締役会は自らの実効性を高めるような構成と慣行を採用するべき(Boards should adopt structures and practices that enhance their effectiveness.)
原則6: 取締役会は経営者のインセンティブ構造を企業の長期的な戦略と関連付けるべき(Boards should develop management incentive structures that are aligned with the long-term strategy of the company.)
米国版スチュワードシップ原則(仮訳)
原則A:機関投資家は投資資金の出し手に対して説明責任を負う(Institutional investors are accountable to those whose money they invest. )
原則B: 機関投資家は投資先企業についてコーポレートガバナンスに関する要素をどのように評価するのか示すべき(Institutional investors should demonstrate how they evaluate corporate governance factors with respect to the companies in which they invest.)
原則C: 一般的に、機関投資家は議決権行使及びエンゲージメント活動において生じる利益相反をどのように管理するか、開示するべき(Institutional investors should disclose, in general terms, how they manage potential conflicts of interest that may arise in their proxy voting and engagement activities.)
原則D:機関投資家は議決権行使の意思決定に責任を負い、その決定に助言を与える第三者の活動やポリシーを監視するべき(Institutional investors are responsible for proxy voting decisions and should monitor the relevant activities and policies of third parties that advise them on those decisions. )
原則E: 機関投資家は企業との相違に対して建設的かつ実務的な方法で取り組み、解決を試みるべき(Institutional investors should address and attempt to resolve differences with companies in a constructive and pragmatic manner.)

2017/02/15 相談役・顧問の人数、役割、処遇に開示圧力

文部科学省の人事課OBが同省出身者の再就職をあっせんしていた問題で、このOBが明治安田生命の顧問に就任し破格の待遇を受けていたことが分かり話題となっている。月2回程度の出社で年間1,000万円の報酬を受け取っている官僚OBがいるという事実は、同社が非上場企業であることを割り引いて考えても、企業における「顧問」に関する情報開示の不十分さを改めて浮き彫りにしたと言えよう。

経営危機に陥っている東芝でも、相談役や顧問に就任したOBの存在や影響力により、不採算事業からの撤退についてCEOの判断が鈍り経営危機を招いたと言われている。東芝は、2016年6月の定時株主総会でようやく定款を変更し、相談役制度を廃止したものの、それまでの相談役や顧問の処遇についての情報開示が十分であったとは言い難い。

相談役・顧問制度への社会的な風当たりが強まる中、ここにきて上場企業に対する相談役・顧問の実態開示への圧力が強まる動きが出てきた。・・・

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2017/02/15 相談役・顧問の人数、役割、処遇に開示圧力(会員限定)

文部科学省の人事課OBが同省出身者の再就職をあっせんしていた問題で、このOBが明治安田生命の顧問に就任し破格の待遇を受けていたことが分かり話題となっている。月2回程度の出社で年間1,000万円の報酬を受け取っている官僚OBがいるという事実は、同社が非上場企業であることを割り引いて考えても、企業における「顧問」に関する情報開示の不十分さを改めて浮き彫りにしたと言えよう。

経営危機に陥っている東芝でも、相談役や顧問に就任したOBの存在や影響力により、不採算事業からの撤退についてCEOの判断が鈍り経営危機を招いたと言われている。東芝は、2016年6月の定時株主総会でようやく定款を変更し、相談役制度を廃止したものの、それまでの相談役や顧問の処遇についての情報開示が十分であったとは言い難い。

相談役・顧問制度への社会的な風当たりが強まる中、ここにきて上場企業に対する相談役・顧問の実態開示への圧力が強まる動きが出てきた。経済産業省が今月(2017年2月)中に公表を予定しているCGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)の報告書「CGS レポート-実効的なCGS 構築・運用の手引-」では、相談役・顧問制度の在り方について、上場企業としては、次のような事項を検討すべきとする提案が行われる見通しだ。

・社内において、退任した経営陣幹部を自社の相談役・顧問とするかどうかを検討する際に、具体的にどういった役割を期待しているかを明確にする。
・その上で、当該役割に見合った処遇(報酬等)を設定する。
・社内で相談役・顧問を置く場合には、自主的に、相談役・顧問の人数、役割、処遇等について、外部に情報発信する。

このような提案が行われる背景には、相談役や顧問の役割・処遇は「各社によって一様でないがゆえに、外部から認識できない点で不透明さ」(報告書案より抜粋)があることに加え、東芝におけるような相談役や顧問によるCEOへの不当な影響力の行使が経営を歪めかねないということが念頭にあるのは間違いない。

CGS研究会の報告書を受けて自社の相談役・顧問の「役割」と「処遇」を比べたところ、「我が社の相談役・顧問の処遇は手厚すぎて、とても外部に情報発信できない」という上場企業もあろう。仮にそうであるなら、「情報発信をしない」という選択ではなく、「外部に説明責任を果たせるよう相談役・顧問に退任してもらう」という選択をすることが、CGS研究会の報告書が求める方向性と言えよう。

2017/02/14 ISSとグラスルイス、厳しいのはどっち?

議決権行使助言会社大手2社、ISSとグラスルイスの2017年度版日本向け助言基準が出揃ったが(ISS版はこちら、グラスルイス版はこちら)、ISSが「相談役・顧問制度を規定する定款変更への対応」に関する軽微な変更にとどまった一方(2016年11月8日のニュース「相談役・顧問制度に関するISSの新ポリシーの意図は?」、2016年11月11日のニュース『ISSが「監査等委員会設置会社向けポリシーの厳格化」を見送った理由』参照)、グラスルイスは「取締役・監査役の兼職数」といった賛成率に大きく影響するものを含む、比較的大がかりな変更を実施している(2017年2月10日のニュース『「会長」の社外役員兼職は何社までOK?』参照)。今回の変更点を踏まえ、議決権行使における主要論点に関するISSとグラスルイスの助言スタンスの違いを確認しておこう。

まず社外役員(社外取締役、社外監査役)については・・・

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2017/02/14 ISSとグラスルイス、厳しいのはどっち?(会員限定)

議決権行使助言会社大手2社、ISSとグラスルイスの2017年度版日本向け助言基準が出揃ったが(ISS版はこちら、グラスルイス版はこちら)、ISSが「相談役・顧問制度を規定する定款変更への対応」に関する軽微な変更にとどまった一方(2016年11月8日のニュース「相談役・顧問制度に関するISSの新ポリシーの意図は?」、2016年11月11日のニュース『ISSが「監査等委員会設置会社向けポリシーの厳格化」を見送った理由』参照)、グラスルイスは「取締役・監査役の兼職数」といった賛成率に大きく影響するものを含む、比較的大がかりな変更を実施している(2017年2月10日のニュース『「会長」の社外役員兼職は何社までOK?』参照)。今回の変更点を踏まえ、議決権行使における主要論点に関するISSとグラスルイスの助言スタンスの違いを確認しておこう。

まず社外役員(社外取締役、社外監査役)については(ここでは、監査役会設置会社を前提とする)、ISSは、社外取締役が2名いない場合には、経営トップである取締役の選任議案に原則として反対推奨するとしているが、社外取締役の独立性は問わない(ただし、上場子会社(親会社や支配株主を持つ会社)である場合には独立性基準を適用する。また、すべての社外監査役に独立性を求める)。一方、グラスルイスは、取締役と監査役の合計数に対して、独立性の伴った社外役員が3分の1に達していない場合、会長(会長職が存在しない場合、社長またはそれに準ずる役職の者)の選任に反対推奨するとともに、「非独立」と判断した社外役員の就任議案に対しても反対推奨する。このように、社外役員については、グラスルイスの方が人数・独立性ともに厳格なスタンスをとっている(2016年12月27日のニュース『海外有力機関投資家、2017年度に「独立社外取締役比率3分の1」を要求も』参照)。

役員報酬関連議案における社外役員または社内監査役の取扱いでも、グラスルイスの方が厳しい。ISSは、社外役員がストックオプションなど業績連動型の役員報酬の付与対象者となることに基本的に寛容だが、退職慰労金の支給議案については社外役員を対象とすることに否定的である(社外取締役や社外監査役の支給額が個別開示され、それが過大でない場合は、例外的に賛成の推奨を検討することとしている)。これに対し、グラスルイスは「監督責任の立場」を重視しており、社外役員および社内監査役を対象とする賞与や業績連動型の株式報酬には基本的に反対である。また、退職慰労金に関しては社内取締役も含めてすべて反対する。

このように、ISSよりもグラスルイスの方が厳しい助言スタンスをとっている項目が少なくないが、一方でISSは、「資本生産性基準」として、過去5期平均と直近期のROE(自己資本利益率)がともに5%未満の場合、経営トップの選任議案に反対推奨するとしている。このような“パフォーマンス基準”はISS独自のもので、グラスルイスにはない。 

ROE(自己資本利益率): 自己資本利益率=当期純利益÷自己資本

買収防衛策の導入議案については、両社とも原則反対のスタンスをとっている。ISSは「独立社外取締役が3分の1かつ2名以上」など形式審査の項目を掲げているが、すべてクリアしても次の個別審査(具体的な株主価値向上施策など)には厳しいスタンスで臨むことになる。グラスルイスも一部の「例外的事案」を除き、基本的に反対である。いずれにおいても賛成推奨を得ることは極めて難しいと言わざるを得ないだろう。

2017/02/13 社外取締役をフル活用するためのPDCAサイクル

上場企業における社外取締役の数は年々増加()している。その要因としては、 会社法改正コーポレートガバナンス・コードの導入、投資家の要望などが挙げられるが、上場企業からしてみれば、これらはいわば“外圧”であり、社外取締役に対して“押し付けられた感”を抱く(社内)経営陣も一部には存在するのが現実だ。

会社法改正 : 2014年の会社法改正で、社外取締役を置いていない上場企業は、定時株主総会において「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明しなければならなくなった。

 東京証券取引所の調査(2016年7月27日公表の「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況<確報>」)によると、一部上場企業のうち社外取締役を選任している企業数の比率は98.8%であり、ほとんどの一部上場企業が選任済みという状況である。東京証券取引所の別の調査(2017年1月16日公表の「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2016年12月末時点)」)では、2016年12月末現在、独立社外取締役2名以上の選任を求めるコーポレートガバナンス・コード4-8をコンプライする企業は2,000社を超えている。

しかし、上場企業の経営陣がいつまでもそのような感覚を持ち続けるのは健全ではない。せっかく社外取締役を選任した以上、どのようにしたら有効に活用できるのかを考えるべきであろう。

こうした中、社外取締役の活用を推進するべく、・・・

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2017/02/13 社外取締役をフル活用するためのPDCAサイクル(会員限定)

上場企業における社外取締役の数は年々増加()している。その要因としては、 会社法改正コーポレートガバナンス・コードの導入、投資家の要望などが挙げられるが、上場企業からしてみれば、これらはいわば“外圧”であり、社外取締役に対して“押し付けられた感”を抱く(社内)経営陣も一部には存在するのが現実だ。

会社法改正 : 2014年の会社法改正で、社外取締役を置いていない上場企業は、定時株主総会において「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明しなければならなくなった。

 東京証券取引所の調査(2016年7月27日公表の「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況<確報>」)によると、一部上場企業のうち社外取締役を選任している企業数の比率は98.8%であり、ほとんどの一部上場企業が選任済みという状況である。東京証券取引所の別の調査(2017年1月16日公表の「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2016年12月末時点)」)では、2016年12月末現在、独立社外取締役2名以上の選任を求めるコーポレートガバナンス・コード4-8をコンプライする企業は2,000社を超えている。

しかし、上場企業の経営陣がいつまでもそのような感覚を持ち続けるのは健全ではない。せっかく社外取締役を選任した以上、どのようにしたら有効に活用できるのかを考えるべきであろう。

こうした中、社外取締役の活用を推進するべく、経済産業省に設置されている「CGS研究会」(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)は来月(2017年3月)中にも「社外取締役活用の実務指針」(以下、本実務指針)を公表する予定だ。同研究会は現在、本実務指針の取りまとめ作業中だが、当フォーラムの取材によると、本実務指針は「上場企業が社外取締役について検討する場面」をいくつか想定したうえで、それぞれの場面における検討事項を整理するものとなる方向。「上場企業が社外取締役について検討する場面」を具体的に想定することで検討事項の絞り込みが容易になり、また、社外取締役をあまり活用できていない上場企業は、どこに問題があったかを検証しやすくなるだろう。具体的には下表のとおりである。

場面 各場面における検討事項
社外取締役の要否や
求める社外取締役像を
検討する場面
自社の取締役会の在り方
社外取締役に期待する役割・機能
上記役割・機能に合致する資質・背景
社外取締役候補を探し、
就任を依頼する場面
求める資質・背景を有する社外取締役候補者(の探索)
社外取締役候補者の適格性
社外取締役の就任条件(報酬等)
社外取締役が就任し、
自社で活躍してもらう場面
就任した社外取締役の活動が実効的なものとなるために必要なサポート
社外取締役を評価し、
選解任を検討する場面
社外取締役が期待された役割を果たしているか否かの評価
評価結果を踏まえた社外取締役の再任・解任等

検討事項の中でも特に重要となるのが「社外取締役に期待する役割・機能の明確化」(表中の赤字部分)だ。

社内取締役から「社外取締役を選任したにもかかわらず、当社の業績は一向に上がらない」といった批判を耳にすることがあるが、社外取締役の役割は「社内取締役だけでは適正に判断したり評価したりすることが難しい事項について独立した立場から関与し経営を適正ならしめる」というものであり、決して「経営の受託」「業務の執行」などではない。社外取締役を選任する前に、社外取締役に「期待する役割」と「期待しない役割」を明確にしておくことで、こうした的外れの社外取締役批判が起こることも防止できる。また、自社が必要とする社外取締役像が明確になれば候補者の探索を効率よく行うことができるほか、「社外取締役を評価し、選解任を検討する場面」でも、社外取締役が期待された役割を果たしているか否かを判断しやすくなる。

社外取締役は決して“押し戴く”存在ではない。上述したような「役割の明確化」(Plan)→「任務の遂行」(Do)→「役割を果たしているかどうかのチェック」(Check)→「社外取締役の再任・解任」(Action)のサイクル( PDCAサイクル)を回すという管理手法を社外取締役に適用することができれば、冒頭で述べたような“押し付けられた感”は消失するはずだ。

PDCAサイクル : Plan→Do→Check→Actionのサイクルを繰り返しながら、目標を実現する手法。サイクル内に、軌道を修正したり、場合によっては目標を変更したりする仕組みを内包しており、状況変化に応じて迅速に対応することが可能となる。