不正解です。
問題文のとおり、米国において確定拠出年⾦にESG要素を考慮する運⽤会社を採⽤したことにつき従業員退職所得保障法(エリサ法)に違反するとした判決が出ました。日本で事業を展開する米系運用会社の行動に変容をもたらす可能性が指摘されています。
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2025年2月5日 確定拠出年⾦にESG要素を考慮する運⽤会社を採⽤したことが違法に(会員限定)
不正解です。
問題文のとおり、米国において確定拠出年⾦にESG要素を考慮する運⽤会社を採⽤したことにつき従業員退職所得保障法(エリサ法)に違反するとした判決が出ました。日本で事業を展開する米系運用会社の行動に変容をもたらす可能性が指摘されています。
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2025年2月5日 確定拠出年⾦にESG要素を考慮する運⽤会社を採⽤したことが違法に(会員限定)
正解です。
問題文のとおり、米国において確定拠出年⾦にESG要素を考慮する運⽤会社を採⽤したことにつき従業員退職所得保障法(エリサ法)に違反するとした判決が出ました。日本で事業を展開する米系運用会社の行動に変容をもたらす可能性が指摘されています。
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2025年2月5日 確定拠出年⾦にESG要素を考慮する運⽤会社を採⽤したことが違法に(会員限定)
不正解です。
経済産業省が2023年8月に公表した「企業買収における行動指針」(M&A指針)では、「望ましい買収か否かは、企業価値ひいては株主共同の利益を確保し、又は向上させるかを基準に判断されるべきである」としています。一方で、M&A指針には、「取締役会は、買収者との交渉を行う際に、取引条件の改善により、株主にとってできる限り有利な取引条件で買収が行われることを目指して、真摯に交渉すべきである」「買収者との間で企業価値に見合った買収価格に引き上げるための交渉を尽くす、競合提案があることを利用して競合提案に匹敵する程度に価格引き上げを求める」としており(3.2.3)、欧米と同様に「買収価格基準」が採用されているとも読めます。いずれにしろ買収提案を受けた上場会社の取締役にとって「買収価格」しか判断基準がないわけではないので、問題文は誤りです。
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2025年2月4日 買収提案の競合と取締役の義務(会員限定)
正解です。
経済産業省が2023年8月に公表した「企業買収における行動指針」(M&A指針)では、「望ましい買収か否かは、企業価値ひいては株主共同の利益を確保し、又は向上させるかを基準に判断されるべきである」としています。一方で、M&A指針には、「取締役会は、買収者との交渉を行う際に、取引条件の改善により、株主にとってできる限り有利な取引条件で買収が行われることを目指して、真摯に交渉すべきである」「買収者との間で企業価値に見合った買収価格に引き上げるための交渉を尽くす、競合提案があることを利用して競合提案に匹敵する程度に価格引き上げを求める」としており(3.2.3)、欧米と同様に「買収価格基準」が採用されているとも読めます。いずれにしろ買収提案を受けた上場会社の取締役にとって「買収価格」しか判断基準がないわけではないので、問題文は誤りです。
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2025年2月4日 買収提案の競合と取締役の義務(会員限定)
上場会社P社は、100%子会社S社を通じて取引先である上場企業X社の株式を政策保有株式として保有していました。しかし、機関投資家から「株式の持合いはガバナンスの低下につながる」との批判を受け、3年前にX社株式の保有目的を純投資に変更しました。
こうした中、P社の取締役会において社外取締役がX社株式の売却予定について質問したところ、次の3人が下記の発言を行いました。誰の発言がGood発言でしょうか?
取締役A:「当社グループとX社間で株式の持ち合いを解消する場合には、P社とX社の承認が必要という合意を交わしています。現在の株価下落の状況を考えると、X社が売却に合意するとは思えません。また、仮に合意できたとしてもX社も当社株式を売却することが条件になるでしょうし、それば当社の株価の下落圧力になるでしょう。」
取締役B:「私の就任前のことなので詳細は不明ですが、X社との間で『売却には同意が必要』といった合意があるにもかかわらず、3年前にX社株式を純投資に振り替えたということでしょうか? それって「持合い株」を純投資目的であるかのように偽ったいわゆる『保有株ウォッシュ』に該当するのではないでしょうか?」
取締役C:「B取締役は大事なことを見落としています。X社株式を保有しているのは当社ではなく子会社のS社です。一方、X社が保有している株は当社株であり、S社株ではありません。つまり相互保有の関係ではないのです。よって、「実態は持合い株であるところ保有目的を『純投資』と偽り保有株ウォッシュをした」と言われるのは見当違いと言わざるを得ません。」
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最近「●●ウォッシュ」といった言い回しを目にする機会が増えました。たとえば「グリーンウォッシュ」は、企業が実際には環境に配慮した取り組みを十分に行っていないにもかかわらず、あたかも環境に優しい企業であるかのように見せかけることを指します。またエンタメの世界において、原作では有色人種であった役を白人が演じることを「ホワイトウォッシュ」と言います。日清食品がCM中のアニメーションで女子テニスの大阪なおみ選手の肌の色を白く表現したこともホワイトウォッシュではないかと批判されました。歴史を改ざんすることをホワイトウォッシュという表現をするときもあります。
ガバナンスやディスクロージャーの現場で注目を集めている「●●ウォッシュ」は「保有株ウォッシュ」です。これは開示制度の不備を突いて株式の保有目的を「政策保有目的」から「純投資目的」に変更するというものです。これを理解するためには、まずは現行(2025年3月31日まで)の開示ルールを理解する必要があります。
現行の開示ルールでは、有価証券報告書の提出会社が上場会社の場合、【株式の保有状況】欄において、政策保有目的のような「純投資目的以外の目的」で保有している上場会社株式に関して「保有方針及び保有の合理性を検証する方法」「個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容」「最近事業年度及びその前事業年度のそれぞれについて、銘柄別による貸借対照表計上額が提出会社の資本金額の100分の1を超えるもの(当該株式の銘柄数の合計が60に満たない場合には、当該貸借対照表計上額の大きい順の60銘柄)について、銘柄ごとに「株式数」「貸借対照表計上額」「保有目的」「保有目的が提出会社と当該株式の発行者との間の営業上の取引、業務上の提携その他これらに類する事項を目的とするものである場合には、当該事項の概要」「(株式数が増加した場合は)増加した理由」「当該株式の発行者による提出会社の株式の保有の有無」等を記載しなければなりません。
一方、保有目的が純投資目的であれば、「提出会社の最近事業年度及びその前事業年度における銘柄数及び貸借対照表計上額の合計額」「提出会社の最近事業年度における受取配当金、売却損益及び評価損益のそれぞれの合計額」を記載すれば足ります。
このように現行の開示ルールでは「純投資目的」で保有している株式よりも「政策保有目的」などの「純投資目的以外の目的」で保有している株式の方が開示すべき内容が多いと言えます。その分だけ投資家にさらされる情報量も増えることになります。
そこで、「政策保有株式」を多く保有している金融機関や事業会社の一部に「政策保有目的」から「純投資目的」に変更する動きが見られました。もちろん実態としても純投資目的として保有する株式と同様であれば問題はありません。しかし、実態は変わっていないのにみせかけのだけの保有目的変更であれば、それは投資家の目をあざむくための不正行為と言わざるをえません。
もちろん現行開示ルールでも、最近事業年度中に投資株式の保有目的を純投資目的から純投資目的以外の目的に変更したもの又は純投資目的以外の目的から純投資目的に変更したものがある場合には、それぞれ区分して、銘柄ごとに、銘柄、株式数及び貸借対照表計上額を記載する必要があるのですが、当該記載はあくまで目的を変更した年度だけに限られます。つまり、現在の開示制度では、株式の保有目的が純投資に変更されると投資家から見ればその後の削減状況を確認できないという問題があります。
そこで金融庁は開示府令を改正し、2025年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書から、当期を含む最近5事業年度以内に保有目的を政策保有目的から純投資目的に変更した株式(当事業年度末において保有しているものに限る)について、新たに下記の開示を求めることになりました。
・銘柄
・株式数
・貸借対照表計上額
・保有目的の変更年度
・保有目的の変更の理由及び変更後の保有又は売却に関する方針
ポイントは目的を変更した時点が「当期」に限定されておらず、「当期を含む最近5事業年度以内に」と過去5年間までさかのぼるという点です。これにより、たとえば3年前に政策保有目的から純投資目的に保有目的を変更した株式があれば、その株式数を開示しなければならなくなりました。これにより、過去の開示と比較することで、株式数の増減が白日の下にさらされることになりました。
もっとも、「当事業年度末において保有しているものに限る。」としているので、投資家から保有株ウォッシュだと騒がれるくらいなら、事業年度末(3月決算会社であれば2025年3月末)までに売却するということを選択する上場会社もありそうです。
今回の開示府令の改正に合わせて、開示ガイドラインには「純投資目的」の定義が明文化されました。こちらは開示府令と異なり、すでに2025年1月31日から適用されています。
| 5-19-3-2 開示府令第二号様式記載上の注意(58)a、e及びfに規定する「純投資目的」とは、専ら株式の価値の変動又は株式に係る配当によって利益を受けることを目的とすることをいう。例えば、当該株式の発行者等が提出会社の株式を保有する関係にあること、当該株式の売却に関して発行者の応諾を要すること等により、発行者との関係において提出会社による売却を妨げる事情が存在する株式は、純投資目的で保有しているものとはいえないことに留意する。 |
確定版では公開草案にはなかった「等」(上枠内の赤字部分)が加えられました。これは公開草案に対して「保有相手方がいわゆるホールディング会社で提出会社の株式が子会社に保有されている場合など「当該株式の発行者の子会社が提出会社の株式を保有する関係にある」場合に純投資と言えるとの誤解を招く可能性が考えられる。そのため、「当該株式の発行者」とは株式の発行者のみを指すものではなくその子会社も含める事を開示ガイドラインで明記する若しくはパブリックコメントへの回答で言明する事が重要だと考える。」との指摘が寄せられたことから、金融庁が子会社を通じた保有の場合も「当該株式の発行者」に含まれうるとの趣旨で、開示ガイドラインの文言を修正したものです。「子会社が有しているから相互保有ではない(よって純投資であることと矛盾しない)」や「株式の売却に関して発行者の応諾を要するとされているのは子会社であって親会社はそのような義務を負わない(よって純投資であることと矛盾しない)」といった強弁はもはや通じないことになります。今回の金融庁の開示ルール改正により、上場会社の「保有株ウォッシュ」が明らかになることが期待されます。
さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。
取締役B:「私の就任前のことなので詳細は不明ですが、X社との間で『売却には同意が必要』といった合意があるにもかかわらず、3年前にX社株式を純投資に振り替えたということでしょうか? それって「持合い株」を純投資目的であるかのように偽ったいわゆる『保有株ウォッシュ』に該当するのではないでしょうか?」
(コメント:取締役Bの発言は、X社株式の保有目的変更が『保有株ウォッシュ』にあたるのではないかとの問題意識を表明するもので、上場会社のガバナンスと透明性の観点から重要な指摘であり、GOOD発言と言えます。)
取締役A:「当社グループとX社間で株式の持ち合いを解消する場合には、P社とX社の承認が必要という合意を交わしています。現在の株価下落の状況を考えると、X社が売却に合意するとは思えません。『純投資』として保有している株式であっても売れないものは売れないですよね。」
(コメント:取締役Aの発言は、X社株式の売却は事実上困難であることを認める発言ですが、取締役Aはそのような制限の付された株式を『純投資』として扱っていることの妥当性について疑問を呈することはしていません。そもそも「当該株式の売却に関して発行者の応諾を要する」株式の保有を純投資ということはできません。取締役Aは上場会社の投資判断の説明責任を軽視しており、金融庁の開示強化の趣旨も理解できていないBAD発言です。)
取締役C:「B取締役は大事なことを見落としています。X社株式を保有しているのは当社ではなく子会社のS社です。一方、X社が保有している株は当社株であり、S社株ではありません。つまり相互保有の関係にはないのです。よって、「持合い株を保有株ウォッシュした」と言われるのは検討違いと言わざるを得ません。」
(コメント:取締役Cの発言は、形式的な保有関係の整理に焦点を当てたものですが、投資家の視点では「形式」よりも「実質的な関係」が重要です。また、取締役Cのような強弁を封じるために開示ガイドラインが改正され、有価証券報告書の提出会社ではなく、子会社が保有している株式であっても「発行者との関係において提出会社による売却を妨げる事情が存在する株式は、純投資目的で保有しているものとはいえない」こととされました(改正後の開示ガイドラインは2025年1月31日から適用されています)。取締役Aの発言にあるとおり、「当社グループとX社間で株式の持ち合いを解消する場合には、P社とX社の承認が必要という合意を交わしている」以上、純投資目的への目的変更が適切であったのか疑問視される可能性は「大」でしょう。それにもかかわらずB取締役の発言を見当違いと評価している点で取締役Cの発言はBAD発言です。)
ISSとグラスルイスの議決権行使助言基準(以下、ポリシー)は、クライアントである機関投資家から広く支持を得られるよう、資本市場の期待や要望の“最大公約数”に近いものとなっています。こうした中でも、ISSは日本企業の特徴や特殊性を少なからず勘案する傾向がある一方、グラスルイスはグローバルなガバナンス議論を積極的に取り込む姿勢が目立つなど、それぞれのポリシーにはスタンスの違いが見られます。
以下、近年、コーポレート・ガバナンス分野のホットトピックとなっている5つのテーマに対する両社のポリシーを比較しながら、企業が将来的に想定すべき改訂の方向性および企業に求められる対応について検討します。
| ISS |
● 原則として賛成 ● 配当性向が15%から100%の範囲にない場合は個別判断 |
| グラスルイス |
● 原則的に企業の方針を支持 ● 株主の代表である取締役会に一任することが適切 |
配当性向 : 当期純利益に占める「配当金」の割合
ともに原則賛成としつつ、ISSは配当性向が15~100%を外れた場合は反対助言する可能性を示唆しています。これは、日本の会社法が剰余金処分を株主総会の決議事項としており、単独の議案として適否を判断するには「閾値」が必要なためです。
一方、グローバルでは株主総会の決議事項は取締役選任議案くらいであり、グラスルイスが示しているとおり、剰余金処分は全般的な経営責任の一環として取締役会に一任するのが通常です。日本企業でも、定款変更または委員会型ガバナンスへの移行により、剰余金処分を取締役会に授権することが可能であり、剰余金処分案を株主総会議案として上程する企業は減少トレンドにあります。長期的には、ISSも閾値に関係なく賛成する代わりに、取締役選任議案への賛否の判断要素として配当性向を位置付けるようになることが予想されます。企業としても、配当政策は取締役が信認を得るために必要な判断要素との意識をこれまで以上に持つべきでしょう。
| ISS |
● 過去5期平均または直近期のROEが5%を下回る場合、経営トップである取締役の選任議案に反対 ● ROE5%は最低水準であり、日本企業が目指すべきゴールとの位置付けではない |
ROE : ROE(Return On Equity = 株主資本利益率)とは株主資本に対する当期純利益の割合であり、「当期純利益 ÷ 株主資本」により算出される。
ISSは経営トップの選任議案に反対するROEの閾値を5%としており、その理由を「日本の株式市場のリスクプレミアム等を考慮」したためと説明しています。しかし、経済産業省がとりまとめた伊藤レポートは、「日本株に対して、国内外の機関投資家が求める株主資本コスト」は海外機関投資家が7.2%、国内機関投資家が6.3%としており(伊藤レポート43ページ下から2行目~参照)、「5%」はいずれの数値も下回っています。また、日本企業のROE水準が向上していることもあり(2025年1月27日のニュース「3期連続ROEが8%未満のプライム市場上場会社は少数派に」参照)、今後は閾値が8%等に引き上げられることが予想されます。さらに、日本企業のROEは以前よりは向上したとはいえグローバル比較では未だ低水準にあるため、ISSがクライアントである機関投資家から厳格化を迫られることも考えられます。企業は中期経営計画などで、目指すべきROEを8%等機関投資家が想定する株主資本コストを踏まえた水準に設定し、その達成に向けて邁進することが求められます。
リスクプレミアム : 市場全体の株式に満遍なく投資した場合に、リスクなしでも達成できる投資リターンである「リスクフリー・レート(一般的には長期国債の利回りを用いる)」よりもどれくらい余分に収益を上げられるかを表す。
| ISS |
● 指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社においては、社外取締役(独立性は問わない)の割合が3分の1未満の場合、経営トップである取締役の選任議案に反対 ● 監査役設置会社においては、社外取締役(独立性は問わない)の割合が3分の1未満の場合、または社外取締役(同)が2名未満の場合、経営トップである取締役の選任議案に反対 |
| グラスルイス |
● 指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社の独立性基準は「3分の1以上」とし、これを満たさない場合、指名委員会の委員長または取締役会議長の選任議案に反対 ● プライム市場に上場している監査役会設置会社には「3分の1以上」、プライム市場以外に上場している監査役会設置会社には3分の1の独立役員かつ2名の独立社外取締役を求める |
独立性に対する厳格さなど若干の差はありますが、ISSとグラスルイスはともに「3分の1」を独立性基準の中核としています。これは、2021年に改訂されたコーポレートガバナンス・コード原則4-8が、プライム市場上場会社に「独立社外取締役を少なくとも3分の1」以上選任すべきとしたことによります。同原則の影響もあり、2022年7月14日までに提出されたCG報告書を対象とした調査では、既にプライム市場上場会社の92%が「3分の1」を達成しています(東証上場会社コーポレート・ガバナンス白書2023(以下、東証ガバナンス白書) 図表29「独立社外取締役の取締役会に占める比率(市場区分別)」参照)。ただし、グローバル資本市場のスタンダードは「過半数」であり、機関投資家が現状を物足りないと感じていることは間違いありません(2025年1月16日付ニュース「「社外取締役過半数」かつ「女性取締役30%」がミニマム・リクワイヤメントへ」参照)。東証ガバナンス白書によると「過半数」を達成しているプライム市場上場会社は12%に過ぎないため、市場への影響力の強いISSが過半数を基準とするのは時期尚早と考えられますが、グラスルイスが先行して過半数を基準とすることはあり得ます。中期的には過半数が資本市場のコンセンサスとなることを前提に、企業はボード・サクセッションを進めていくべきでしょう。
| ISS | ● 女性取締役が一人もいない場合、経営トップの選任議案に原則として反対 |
| グラスルイス |
● プライム市場上場企業の取締役会には、10%以上の多様な性別の取締役の選任を求める(2026年以降は20%) ● プライム市場以外の上場企業には、少なくとも1名の多様な性別の役員を選任することを求める(2026年以降は取締役) |
ISSは全上場会社に「女性取締役1人」を求めていますが、グラスルイスはプライム市場上場会社に「多様な性別」(実質的には女性)の取締役を10%以上選任することを求めており、さらに、2026年以降はこの閾値を20%に引き上げることを予告しています。グラスルイスのポリシー厳格化の背景には、東証が政府の「女性版骨太の方針2023」を踏まえて「2030年までに女性役員の比率を30%以上とすることを目指す」旨、有価証券上場規程を改正したことがあります。グラスルイスとしては、2030年に30%以上であるならば、そのマイルストーンとして20%を早急に達成するべきと考えたということです。
一方、上記東証ガバナンス白書によると、上場会社全体の女性役員比率は1割に達しておらず(図表88「上場会社の女性役員数の推移」参照)、ISSとしては閾値を10%とすることにも未だ抵抗感を持っているものと推測されます。しかし、東証が「30%以上」を目標に掲げていることから、今後上場会社各社における取り組みは進展することが予想され、自社がこの流れに立ち遅れないようにする必要があります。
| ISS | ● 「保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式」の貸借対照表計上額及び「みなし保有株式」の合計額が純資産の20%以上の場合、経営トップの選任議案に反対 |
| グラスルイス | ● 「保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式」の「貸借対照表計上額の合計額」が、連結純資産と比較して10%以上の場合、取締役会議長の選任議案に反対(例外措置あり) |
みなし保有株式 : 企業が所有権を持たないものの、議決権行使権限やその指図権限を留保している上場株式のこと。具体的には、信託契約やその他の契約、法律上の規定に基づいて、株主として議決権を行使する権限を持つ株式であり、例えば、企業が信託契約を通じて株式を保有している場合、その株式の議決権を行使する権限が企業にあれば、その株式はみなし保有株式とされる。
反対推奨の閾値をISSは20%、グラスルイスは10%としています。ISSがグラスルイスより緩い基準を設定しているのは、ISSが市場に対する自らの影響力を考慮しているためでしょう。上場会社における持ち合い解消、政策保有株式の縮減は急ピッチで進展していますが、未だ銀行や保険会社などを中心に対純資産で20%を超える高水準の保有を続けている上場会社も少なくない中、ISSが閾値を厳格化すれば、経営トップの否決リスクは高まります。
とはいえ、政策保有株式に対する機関投資家の批判は相変わらず強く(2025年2月6日付ニュース「政策保有株式の更なる縮減へ国内機関投資家がプレッシャー」参照)、中期的にはポリシーの厳格化は避けられないでしょう。具体的には、ISSは「10%」を閾値にすることが予想され、グラスルイスは例外措置(明確な目標値と期日を含む縮減計画の開示、5期平均または直近のROEが8%以上など)を撤廃することが考えられます。上場会社は、10%以上の保有について資本市場の理解を得ることは困難であると認識すべきです。
日本コーポレートガバナンス研究所(JCGR)様が実施する2025年度の研究会・セミナーが4月より順次開講します。
https://jcgr.org/
上場会社ガバナンスフォーラムの会員は、JCGR様のご厚意により、月例研究会の参加費が1万円割引となります。
月例研究会 <コーポレートガバナンス研究会・ファイナンス研究会>
◆ 2025年度のコーポレートガバナンスおよびファイナンスの月例研究会は2025年4月より開講されます。
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◆ なお、オンデマンド方式ですので、4月以降もいつからでも参加ができます。
短期セミナー <データサイエンス研究会>
◆ これからのビジネスパーソンにとってデータサイエンスの素養が不可欠です。自らデータを処理し情報を創ることはできなくても、創られた情報を読んで理解することが要求されます。
◆ 計量経済学の専門家であるJCGR大林守理事が、対面によるハンズオン(体験型)の研究会を単発で実施します。2時間の講義・実習と30分の質疑応答です。
1.ビジネスパーソンのためのAIリテラシー
2.ビジネスパーソンのためのデータサイエンスリテラシー
3.経営者が知っておくべきデータサイエンス
※ セミナーについては参加者個人または派遣元企業のご要望に応じることができます。お問い合わせください。
semi@jcgr.org セミナー担当 宛
周知のとおり、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は昨年(2024年)3月29日にサステナビリティ開示基準(「サステナビリティ開示基準の適用」「一般開示基準」「気候関連開示基準」の3つ。以下、SSBJ基準)の公開草案を公表したが、2025年2月19日、SSBJ基準を全会一致で可決した。SSBJ基準は3月上旬にも公表される予定。
SSBJ : 日本における非財務開示の基準を作成する団体。IFRS(国際財務報告基準)の母体であるIFRS財団が「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB=International Sustainability Standards Board)」を設立し、非財務開示の国際的な基準「サステナビリティ報告基準」を策定することを受け、日本では財務会計基準機構(FASF)が母体となり、IFRS財団におけるISSBに相当するSSBJ(Sustainability Standards Board of Japan)が2022年7月1日に設立された。
公開草案からの主な変更点としてまず挙げられるのが、・・・
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周知のとおり、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は昨年(2024年)3月29日にサステナビリティ開示基準(「サステナビリティ開示基準の適用」「一般開示基準」「気候関連開示基準」の3つ。以下、SSBJ基準)の公開草案を公表したが、2025年2月19日、SSBJ基準を全会一致で可決した。SSBJ基準は3月上旬にも公表される予定。
SSBJ : 日本における非財務開示の基準を作成する団体。IFRS(国際財務報告基準)の母体であるIFRS財団が「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB=International Sustainability Standards Board)」を設立し、非財務開示の国際的な基準「サステナビリティ報告基準」を策定することを受け、日本では財務会計基準機構(FASF)が母体となり、IFRS財団におけるISSBに相当するSSBJ(Sustainability Standards Board of Japan)が2022年7月1日に設立された。
公開草案からの主な変更点としてまず挙げられるのが、温室効果ガス排出量のデータの算定期間に関する規定が削除されたことだ。公開草案では、企業の負担を減らすため、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(温対法)に基づき既に当局に提出した温室効果ガス排出量のデータのうち直近のデータを用いることを提案したうえで、データの算定期間と報告期間の差異が1年を超える場合には追加の開示を求めることとしていた。しかし、この案に対しては、温室効果ガス排出量の算定期間と報告期間に差異が生じることにより情報の有用性が低下することへの強い懸念が寄せられていたことを踏まえ、規定を削除し、算定期間を報告期間に合わせることとした。
地球温暖化対策の推進に関する法律 : 国、地方公共団体、事業者、国民が一体となって地球温暖化対策に取り組むための枠組みを定めた法律。京都議定書が採択された1997年の翌年、1998年に制定された。その後、2005年の改正で、温室効果ガスを多量に排出する事業者(特定排出者)に温室効果ガスの排出量を算定し、国に報告することを義務付ける「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」が制定された。
また、スコープ1、スコープ2、スコープ3の温室効果ガス排出の総量の「合計値」の開示を求める規定も削除された。SSBJは、3つのスコープの温室効果ガス排出の総量の合計値を把握することで、企業が晒されている気候変動リスクの全体像を理解したうえで、具体的にどのスコープの温室効果ガス排出が多いかの分析が可能になるなど、合計値の有用性から開示を求めることとしていた。しかし、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が定めた基準(以下、ISSB基準)のうち気候関連開示の要求事項で構成されるIFRS S2号では合計値の開示は求められておらず、ISSB基準と異なるSSBJ基準独自の規定を追加すると、開示される情報の比較可能性が低下する恐れがあるなどの指摘を受け、削除されることとなった。
スコープ1、スコープ2、スコープ3 : スコープ1 : 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出のこと。 スコープ2 : 他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う温室効果ガスの間接排出のこと。 スコープ3 : 事業者自ら排出している温室効果ガス(二酸化炭素等)であるScope1、Scope2以外の間接排出、具体的には「事業者の活動に関連する他社」による温室効果ガスの排出のこと。
ISSB : 「International Sustainability Standards Board(国際サステナビリティ基準審議会)」の略称。資本市場向けのサステナビリティ開示の包括的なグローバル・ベースラインを開発するため、IFRS財団が2021年11月に設立した団体。
IFRS S2号 : IFRS S1号が「全般的な」サステナビリティ関連開示の要求事項を定めたものであり、企業が短期のみならず、中長期にわたって直面するサステナビリティ関連のリスクおよび機会を企業が投資家に伝えるための開示基準であるのに対し、IFRS S2号とは、気候関連開示の要求事項を定めたものである。気候関連開示を求めつつ、S1号とセットで利用されるように設計されている。現状では、「個別テーマ」についての基準はS2号の気候変動しかないため、他のテーマ(例えば人的資本、人権、生物多様性)について開示する場合はS1号に基づくことになる。
このほか、SSBJ基準の適用を容易にするため積極的にガイダンスを策定すべきとのパブリックコメントを受け、SSBJは基準を適用するうえで有用と考えられる情報について強制力のないガイダンスを「SSBJハンドブック」として公表するとの方針を示しているが、公開草案では、投資家やステークホルダーが企業のサステナビリティに関する取り組みを理解しやすいよう、企業が参照したガイダンスを特定し、参照した理由を明確にすることなどを求めていたところ、この規定は削除された。さらに、レジリエンスの評価を原則として報告期間ごとに実施しなければならない旨の規定も削除された。これらはいずれもSSBJ独自の規定だが、SSBJ基準の内容を可能な限りISSB基準に合わせる観点から削除されることとなった。ただし、これらの規定はSSBJ基準を適用する上で有用であるため、今後、SSBJハンドブックに盛り込まれる予定。
レジリエンス : サステナビリティ関連のリスクから生じる不確実性に対応する企業の能力
気になる適用開始時期だが、強制適用の時期は定められておらず、「サステナビリティ開示基準の適用」「一般開示基準」「気候関連開示基準」の3つを同時に適用することを条件に、公表日以後終了する年次報告期間に係るサステナビリティ関連財務開示から適用できることとされた。サステナビリティ開示基準の適用時期や適用対象企業は最終的には金融審議会の「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」で決定されるが、まずは2027年3月期から時価総額3兆円以上のプライム市場上場企業から強制適用され、2028年3月期には1兆円以上の企業へと段階的に対象が拡大される方向だ。