2016/01/22 日本市場に適応する外国人投資家

 日本株の約3分の1を保有する外国人投資家の行動は日本企業にとって気になるところだろう。特にスチュワードシップ・コードが導入されて以降(2014年2月~)、外国人投資家がどう動くのかは日本企業の関心事となってきた。

 外国人投資家というと、「アクティビスト」 「物言う株主」といった言葉に象徴されるように、経営陣と対立したり、場合によっては委任状争奪戦 や法廷闘争も辞さないという過激な行動に走りがちなイメージがあるが、日本市場における最近の外国人投資家の動きを見ると、・・・

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2016/01/22 日本市場に適応する外国人投資家(会員限定)

 日本株の約3分の1を保有する外国人投資家の行動は日本企業にとって気になるところだろう。特にスチュワードシップ・コードが導入されて以降(2014年2月~)、外国人投資家がどう動くのかは日本企業の関心事となってきた。

 外国人投資家というと、「アクティビスト」 「物言う株主」といった言葉に象徴されるように、経営陣と対立したり、場合によっては委任状争奪戦や法廷闘争も辞さないという過激な行動に走りがちなイメージがあるが、日本市場における最近の外国人投資家の動きを見ると、むしろ「大人しくなっている」と指摘する市場関係者は少なくない。これを裏付けるデータもある。昨年(2015年)における日本企業の取締役選任議案に反対した外国人投資家の割合は、一昨年の17.8%から15.8%へと下落している(逆に、日本の投資家の反対割合は増加)。

委任状争奪戦 : 株主総会において、会社提案の議案を否決したり、株主提案の議案を可決させたりするために、株主が会社の経営陣と委任状(議決権)を奪い合うこと。ファンド等の株主が、会社提案の否決または株主提案への賛成を求める委任状を他の株主に送付する形で行われる。別名「プロキシー(=委任状)ファイト」。

 その背景には、昨年(2015年)8月に発生した黒田電気の一件でも改めて確認されたように(詳細な経緯は「役員と会社の失敗学第19回「黒田電気の事例」参照)、日本では、取締役の選解任などを通じて株主の意思を実現しようとする強引な手法への拒否反応が強く、それを押し通すことによるデメリットも大きいとの判断があるものとみられる。近年の外国人投資家は、経営陣との良好な関係をベースに、対話(エンゲージメント)を通じて企業価値を向上させるという日本に適したスタイルを志向しつつあると言えるだろう。

 こうしたスタイルは、英国をはじめとする欧州のそれに近い。欧州では、企業との対話を通じ、企業価値の向上に向けて意思統一を図っていく手法が一般的となっており、経営陣と正面から対峙することを厭わない米国型のアクティビズムとは一線を画している。

 企業と機関投資家の付き合い方は、その国の気質や資本市場の風土によって多様化していく時代に入ったと言えそうだ。

2016/01/22 【WEBセミナー】CG報告書12月提出企業のコーポレートガバナンス・コード対応

概略

【セミナー開催日】2016年1月14日(木)

2015年6月1日から実施されているコーポレートガバナンス・コードに対応したコーポレートガバナンス報告書(CG報告書)が、半年間の提出猶予措置を経て、12月(3月決算法人の場合)に提出期限を迎えます。多くの企業がこの猶予措置を活用しているため、12月にはCG報告書の提出が集中することになります。言い換えれば、コーポレートガバナンス・コード導入1年目のプラクティスが、この12月に出揃うことになるわけです。今回出て来るCG報告書は、コーポレートガバナンス・コード導入初年度ということで、各社の“試行錯誤”の結果でもあります。コード対応に頭を悩ませた企業としては、他社がどのようなことを書いているのか、特に自社が記述に悩んだコードについては大いに気になるところでしょう。同時に、そこには導入2年目以降のコード対応をブラッシュアップする上で役に立つヒントがたくさん隠されているはずです。本セミナーでは、コーポレートガバナンス・コード対応コンサルティングを多数手掛けて来た三菱UFJ信託銀行様に、各コードへの対応状況のデータを集計・分析していただくとともに、特徴的な記載、今後のプラクティスの参考になる記載などについて整理・解説していただきます。

【講師】三菱UFJ信託銀行㈱ 法人コンサルティング部 会社法務コンサルティング室室長 中川 雅博 様

セミナー資料 CG報告書提出企業のコーポレートガバナンス・コード対応.pdf(853KB)

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セミナー動画

動画(1)1.コード対応のCG報告書の提出について 2.コード対応のCG報告書の提出状況、3.コーポレートガバナンス・ガイドライン等について


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動画(2)4.これまでの開示状況に対する評価、反応等 5.コードの各原則に基づく開示内容


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動画(3)5.コードの各原則に基づく開示内容(続き)(4)補充原則4-1①取締役会の役割・責務(1)(経営陣に対する責任の範囲)~


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動画(4)6.コードの各原則を実施しない理由(1)各社の「エクスプレイン」の特徴~


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動画(5)6.コードの各原則を実施しない理由(続き)原則3-1(Ⅴ)取締役等の個々の選任・指名についての説明(463社)


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本Webセミナーを閲覧して感じたことや気付いた点(学んだ点、疑問点、自社の課題など)を下の右側の「感想の登録」ボタンを押してください。マイ研修レポートの所感等記入欄の書き直しもこちらからどうぞ。

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2016/01/22 【WEBセミナー】CG報告書12月提出企業のコーポレートガバナンス・コード対応(会員限定)

概略

【セミナー開催日】2016年1月14日(木)

2015年6月1日から実施されているコーポレートガバナンス・コードに対応したコーポレートガバナンス報告書(CG報告書)が、半年間の提出猶予措置を経て、12月(3月決算法人の場合)に提出期限を迎えます。多くの企業がこの猶予措置を活用しているため、12月にはCG報告書の提出が集中することになります。言い換えれば、コーポレートガバナンス・コード導入1年目のプラクティスが、この12月に出揃うことになるわけです。今回出て来るCG報告書は、コーポレートガバナンス・コード導入初年度ということで、各社の“試行錯誤”の結果でもあります。コード対応に頭を悩ませた企業としては、他社がどのようなことを書いているのか、特に自社が記述に悩んだコードについては大いに気になるところでしょう。同時に、そこには導入2年目以降のコード対応をブラッシュアップする上で役に立つヒントがたくさん隠されているはずです。本セミナーでは、コーポレートガバナンス・コード対応コンサルティングを多数手掛けて来た三菱UFJ信託銀行様に、各コードへの対応状況のデータを集計・分析していただくとともに、特徴的な記載、今後のプラクティスの参考になる記載などについて整理・解説していただきます。

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動画(3)5.コードの各原則に基づく開示内容(続き)(4)補充原則4-1①取締役会の役割・責務(1)(経営陣に対する責任の範囲)~

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動画(5)6.コードの各原則を実施しない理由(続き)原則3-1(Ⅴ)取締役等の個々の選任・指名についての説明(463社)

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2016/01/21 (新用語・難解用語)シェアリング・エコノミー

 個人の遊休資産などの交換・共有により成り立つ経済のこと。近年、欧米を中心に急速に発展しており、新経済連盟(新経連)によると、その国内市場規模は2025年に10兆円以上になる可能性があるという。

 昨年(2015年)6月30日に閣議決定された日本再興戦略においても、次期通常国会(2016年1月~)でシェアリングエコノミーについて「必要な法的措置を講ずる」とされたところだ。

 シェアリングエコノミーの分かりやすい例としては、自家用自動車の空き座席に人を乗せて有料で運送するライドシェアや、空き部屋を有効活用したい人が、空き部屋に泊まりたい人に対して空き部屋を提供するホームシェア(いわゆる“民泊”)がある。また、荷物の梱包・配送を個人が請け負うサービスや個人がスーパーでの買い物を代行するサービスは「空き時間・人手のシェア」という点で、クラウドファンディングは「お金のシェア」という点でシェアリングエコノミーの1つとされている。

クラウドファンディング : 事業資金の出し手と受け手をインターネットサイト上でマッチングする仕組み。米国ではKickstarterなど著名なサイトがいくつも誕生している。

 新興ビジネスを営む企業が多く加盟する新経連などは、シェアリングエコノミーを新たなビジネスと位置付け、政府に規制緩和を認めさせようとしており、それが上述した日本再興戦略における「必要な法的措置を講ずる」という記述へとつながっている。

 ただ、事業者側のこのような働きかけは今のところ必ずしも効を奏しているとは言えない。・・・

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2016/01/21 (新用語・難解用語)シェアリング・エコノミー(会員限定)

 個人の遊休資産などの交換・共有により成り立つ経済のこと。近年、欧米を中心に急速に発展しており、新経済連盟(新経連)によると、その国内市場規模は2025年に10兆円以上になる可能性があるという。

 昨年(2015年)6月30日に閣議決定された日本再興戦略においても、次期通常国会(2016年1月~)でシェアリングエコノミーについて「必要な法的措置を講ずる」とされたところだ。

 シェアリングエコノミーの分かりやすい例としては、自家用自動車の空き座席に人を乗せて有料で運送するライドシェアや、空き部屋を有効活用したい人が、空き部屋に泊まりたい人に対して空き部屋を提供するホームシェア(いわゆる“民泊”)がある。また、荷物の梱包・配送を個人が請け負うサービスや個人がスーパーでの買い物を代行するサービスは「空き時間・人手のシェア」という点で、クラウドファンディングは「お金のシェア」という点でシェアリングエコノミーの1つとされている。

クラウドファンディング : 事業資金の出し手と受け手をインターネットサイト上でマッチングする仕組み。米国ではKickstarterなど著名なサイトがいくつも誕生している。

 新興ビジネスを営む企業が多く加盟する新経連などは、シェアリングエコノミーを新たなビジネスと位置付け、政府に規制緩和を認めさせようとしており、それが上述した日本再興戦略における「必要な法的措置を講ずる」という記述へとつながっている。

 ただ、事業者側のこのような働きかけは今のところ必ずしも効を奏しているとは言えない。“民泊”を例に現状を見てみよう。

 日本では元々、借地借家法等、貸手側に厳しい不動産賃貸借法制が採用されていることもあって、十分に活用されていない遊休不動産が多いことが指摘されてきた。こうした中、「自宅の一部やマンションの一室等を一時的に貸したい」という不動産所有者と、「一時的な滞在場所を借りたい」という旅行者等をインターネットのサイトを通じて仲介する海外発のサービスが日本国内にも徐々に浸透してきたことに加え、昨年来のインバウンド需要で大都市圏を中心に外国人旅行者が急増し、にわかに「ホテル不足」が問題視されるようになってきたことから、それを解決する“特効薬”として、「民泊」が注目されるようになった。ただ、現在の日本の法制度上、反復継続して有償で他人に宿泊施設を提供する者には「旅館業法」が適用されるため、個人がインターネットのサービスを通じて気軽に空室を提供する場合であっても、それが継続的に行われていれば、同法が規定する厳格な要件を満たさない限り、違法となる恐れがある。また、民泊について検討してる国土交通省・厚生労働省の「民泊サービスのあり方に関する検討会」における議論の過程では、民泊を行うマンション等における近隣住民とのトラブルの問題が取り上げられたほか、伝染病の予防やテロ対策といった観点からの消極的な意見や、旅館協会やホテル協会など業界団体からの強い懸念の声が示されている。

インバウンド : 外から入ってくること。ここでは、外国人の訪日旅行を指す。

 これは、内閣官房IT総合戦略室が昨年12月11日に公表し、1月12日までパブリック・コメントにかけらていた「情報通信技術(IT)の利活用に関する制度整備検討会中間整理」においても同様。この中では、規制緩和によって新産業の創出を促進するという前向きな側面よりも、むしろ、「インターネット仲介機能の特性に伴う諸課題」の方に焦点が当てられており(14ページ~参照)、これまで直接的な規制の対象となっていなかった仲介事業者に対して「規制」を強化するという方向の議論になってしまっているのが実態だ。

 「規制緩和」を目指して政策課題を論議のテーブルに載せたところ、現在行われているビジネスについてリスクや問題点ばかりが指摘され、かえって新たな規制の呼び水になってしまったという例は過去にも数多くある(例えば、ビッグデータの利用促進に伴う個人情報保護法改正)。

 民泊の問題は、政府が打ち出す新ビジネスを促進するための規制緩和が本当に進むかどうかの試金石となるだけに、企業の経営陣は注目しておきたい。

2016/01/20 国内機関投資家によるサステナブル投資の実態が判明

これまでベールに包まれていた国内機関投資家によるサステナブル投資 の実態の一部が明らかになった。サステナブル投資とは、経済、環境、社会の持続性に配慮した投資手法であり(sustainableとは「持続可能」を意味する)、具体的には、投資において、経済的なパフォーマンスに加え、ESGに配慮して投資先を選定することがサステナブル投資と言えるだろう。

サステナブル投資 : 環境、社会、ガバナンスの持続性に配慮した投資手法。英語ではSustainable Investment、またはSustainable & Responsible Investmentと言われる。Sustainableとは「持続可能」を意味する。

2014年2月から導入されたスチュワードシップ・コードの受入れを表明した企業は2015年11月末現在で201に達し、受入れを表明した機関投資家の中には、スチュワードシップ責任を果たすための投資方針(原則1)において「ESGの各要素について投資先企業と対話を行う」ことや、投資先企業の状況の的確な把握(原則3)において「独自のESG評価を運用プロセスに組み込むこと」などを表明するところが相次いでいる。もっとも、アセットマネージャー(「〇〇アセットマネジメント」「××投信」など)がESG投資を企業に求めるかどうかは、アセットマネージャーにとっての顧客であるアセットオーナー(年金基金など資産(アセット)を保有する者)がESG投資を志向するかどうかによる。こうした中、昨年(2015年)9月16日には、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資を提唱した国連のPRI(Principles for Responsible Investment=責任投資原則)に署名したことで、GPIFの資産を運用するアセットマネージャーは、ESG投資に目を向けざるを得なくなっている(GPIFは、運用の委託先に対し、ESGを考慮することや、PRIに署名していない場合にはその理由の説明などを求めている)。

GPIF : 厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行う厚生労働省所管の独立行政法人。運用資産の規模が100兆円を優に超える世界最大の機関投資家である。
PRI : 機関投資家に対し、投資判断プロセスにESGを反映することや、投資対象企業にESGに関する情報開示を求めることなどを提唱するもの。これに署名した機関投資家は、国連に投資の状況を報告する義務が生じるため、ESGを重視した投資を実践せざるを得ない。

このような状況を受け、国内機関投資家によるサステナブル投資額も急速に拡大していると言われているが、その実態は明確ではなかった。しかし、このほど・・・

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2016/01/20 国内機関投資家によるサステナブル投資の実態が判明(会員限定)

これまでベールに包まれていた国内機関投資家によるサステナブル投資 の実態の一部が明らかになった。サステナブル投資とは、経済、環境、社会の持続性に配慮した投資手法であり(sustainableとは「持続可能」を意味する)、具体的には、投資において、経済的なパフォーマンスに加え、ESGに配慮して投資先を選定することがサステナブル投資と言えるだろう。

サステナブル投資 : 環境、社会、ガバナンスの持続性に配慮した投資手法。英語ではSustainable Investment、 またはSustainable & Responsible Investmentと言われる。Sustainableとは「持続可能」を意味する。

2014年2月から導入されたスチュワードシップ・コードの受入れを表明した企業は2015年11月末現在で201に達し、受入れを表明した機関投資家の中には、スチュワードシップ責任を果たすための投資方針(原則1)において「ESGの各要素について投資先企業と対話を行う」ことや、投資先企業の状況の的確な把握(原則3)において「独自のESG評価を運用プロセスに組み込むこと」などを表明するところが相次いでいる。もっとも、アセットマネージャー(「〇〇アセットマネジメント」「××投信」など)がESG投資を企業に求めるかどうかは、アセットマネージャーにとっての顧客であるアセットオーナー(年金基金など資産(アセット)を保有する者)がESG投資を志向するかどうかによる。こうした中、2015年9月16日には、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資を提唱した国連のPRI(Principles for Responsible Investment=責任投資原則)に署名したことで、GPIFの資産を運用するアセットマネージャーは、ESG投資に目を向けざるを得なくなっている(GPIFは、運用の委託先に対し、ESGを考慮することや、PRIに署名していない場合にはその理由の説明などを求めている)。

GPIF : 厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行う厚生労働省所管の独立行政法人。運用資産の規模が100兆円を優に超える世界最大の機関投資家である。
PRI : 機関投資家に対し、投資判断プロセスにESGを反映することや、投資対象企業にESGに関する情報開示を求めることなどを提唱するもの。これに署名した機関投資家は、国連に投資の状況を報告する義務が生じるため、ESGを重視した投資を実践せざるを得ない。

このような状況を受け、国内機関投資家によるサステナブル投資額も急速に拡大していると言われているが、その実態は明確ではなかった。しかし、このほどNPO法人社会的責任投資フォーラムが国内のサステナブル投資の最新動向を調査したところ、情報開示に応じた24の機関投資家(すべてスチュワードシップ・コードを受入れ)だけでも、サステナブル投資の合計額は26兆6,872億5,600万円におよぶことが分かった(2016年1月15日公表データ)。ちなみに、同フォーラムによる2015年9月末現在の調査結果では、サステナブル投資額は8,094億円となっていたが、これは調査対象が金額の把握が可能な個人向けの金融商品(公募投資信託、社会貢献型債券)に限られていたことによるもの。したがって、今回の「26兆6,872億5,600万円」と同列で比較することはできないが、26兆円を超える規模から想像すると、GPIFの取組みが運用委託機関に浸透し、サステナブル投資が大きく伸長していることは間違いないだろう。

海外に目を向けると、2014年の段階でサステナブル投資額は21.4兆ドルの規模になっている。これまでは欧州で活発だったサステナブル投資だが、最近は米国でも「ESGを考慮することは受託者責任に反しない」との見解が示され、今後はサステナブル投資が急速にメインストリーム化していくとみる運用関係者は多い。

今回の調査結果によると、運用手法別の残高は、投資プロセスにESG要因を組み入れるESGインテグレーション、ESGをテーマに企業と対話などを行うエンゲージメントの順に大きかったという。今後は中長期的な非財務情報開示ツールである統合報告を題材としつつ、企業と投資家との建設的な対話が活発化することになりそうだ。

エンゲージメント : ESG問題の改善を促すために、企業に直接働きかける手法。

2016/01/19 ROEの計算、間違っていませんか?

 従来から投資家が企業を分析する際に重要な指標だったROEだが、伊藤レポートが企業が目標とすべきROEを8%とし、ISSが過去5年の平均ROEが5%を下回る企業の経営トップ(社長、会長)である取締役の選任議案に反対する方針を打ち出したことで、その重要性は格段に高まっている。しかしながら、ROEの計算方法自体を誤解しているケースが散見されるので要注意だ。・・・

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2016/01/19 ROEの計算、間違っていませんか?(会員限定)

 従来から投資家が企業を分析する際に重要な指標だったROEだが、伊藤レポートが企業が目標とすべきROEを8%とし、ISSが過去5年の平均ROEが5%を下回る企業の経営トップ(社長、会長)である取締役の選任議案に反対する方針を打ち出したことで、その重要性は格段に高まっている。しかしながら、ROEの計算方法自体を誤解しているケースが散見されるので要注意だ。

 まずROEの定義を確認しておこう。ROEとは要するに「株主の投資額に比して1年間でどれだけ利益を獲得したか」という指標であり、下記のような定義式で説明されていることが多い。

<例1>
自己資本利益率(ROE) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
<例2>
自己資本利益率(ROE) = 1株当たり当期純利益(EPS) ÷ 1株当たり純資産額(BPS) × 100
<例3>
株主資本利益率(ROE)=当期純利益 ÷ 株主資本 × 100

EPS : Earnings Per Shareの略称で、「当期利益÷期末の発行済み株式数」により算出される。
BPS : Book-value Per Shareの略称で「自己資本 ÷ 発行済み株式数」により算出され、会社が解散した場合の1株当たりの価値を示す。「1株当たり純資産」という日本語訳からは、分子は「純資産」と思われがちだが、「自己資本」なので要注意。BPSが高いほど、その企業の安全性が安定性は高いことになる。

 これらの算式を見みると、自己資本、純資産、株主資本など様々な表現があることに気付く。どれも「ROE」を求める算式になっているが、果たして自社のROEを算出する際にはどれを使うのが一般的なのだろうか。

 かつて「自己資本」「純資産」「株主資本」は同義語だった。しかし、会計基準の変更や会社法の改正に伴い、「自己資本」「純資産」「株主資本」はそれぞれ違うものとして定義された。具体的には、まず資産と負債の差額が「純資産」とされた。そして「純資産」は、資本金や資本剰余金および利益剰余金といった株主の“持ち物”である「株主資本」と株主の“持ち物”でない「株主資本以外」とに区分された。「株主資本以外」の項目には、「評価・換算差額等」(連結貸借対照表では「その他の包括利益累計額」。*1)「新株予約権」(*2)「非支配株主持分」(*3)があり、これらの項目がある会社では、「純資産」の金額と「株主資本」の金額は不一致となる。一方、「自己資本」は、親会社単体では「純資産額」から「新株予約権」を控除した額(逆に言えば、「株主資本」に「評価・換算差額等」を加えた額)であり、連結では「純資産額」から「新株予約権」と「非支配株主持分」を控除した額(逆に言えば、「株主資本」に「その他の包括利益累計額」と「非支配株主持分」を加えた額)として位置付けられることになった。

その他の包括利益累計額 : 包括利益(純資産の変動額のうち株主との取引によらないで変動した分)のうち当期純利益に含まれない(すなわち損益計算書を通さない)部分を「その他の包括利益」と言う。各年度の包括利益計算書で求められた「その他の包括利益」を蓄積したものが、連結貸借対照表の「その他の包括利益累計額」となる。

*1 「評価・換算差額等」(連結貸借対照表では「その他の包括利益累計額」)とは、「その他有価証券評価差額金」(その他有価証券の時価評価に伴う値上がり益や値下がり損を損益計算書に反映させずに貸借対照表にのみ反映させるための勘定科目)「為替換算調整勘定」(海外にある連結子会社の財務諸表を換算した結果の貸借差額)など評価のために用いる勘定科目を指す。「評価・換算差額等」の金額は未実現の損益や単なる評価替えに伴う差額に過ぎず配当することはできない(すなわち株主が自由に扱えるものではない)ので、「株主資本」には含めない。もっとも株主が拠出した資本が経営活動を通じて資産の増加をもたらしている以上、「自己資本」には含める。
*2 「新株予約権」はストック・オプションなどの新株予約権の行使または非行使が確定するまでの保留扱いの勘定科目に過ぎず、株主が自由に扱えるものではないので、*1と同様、「株主資本」には含めない。
*3 非支配株主持分は、そもそも連結子会社の資本のうち非支配株主(親会社以外の株主)に帰属する持分である以上、親会社(支配株主)や親会社の株主から見て株主資本とは言えない。

その他有価証券 : 売買目的有価証券(時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券)、満期保有目的債券(満期まで所有する意図を持って保有する社債など)、子会社株式および関連会社株式以外の有価証券のこと。
非支配株主持分 : 「100%子会社以外の連結子会社」の株式を保有している「親会社以外」の株主が当該「100%子会社以外の連結子会社」に対して有している持分。100%子会社でない会社を連結子会社とする場合、連結貸借対照表の純資産の部に計上される。非支配株主持分は、かつては「少数株主持分」と呼ばれていた。

 「自己資本」「純資産」「株主資本」の関係を示すと下図のとおりとなる(左側が個別貸借対照表、右側が連結貸借対照表)。ここでは、「純資産>自己資本>株主資本」という関係にあることを理解しておきたい。

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 結論から言うと、上記<例1>で示した「自己資本利益率(ROE) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100」が一般的に用いられている計算方法だ。

 特に多く見られる誤解が、ROE計算上の分母を「純資産」としているものだ(上記の<例2>のケース)。このような誤解があるのは、BPSについて「1株当たり純資産」という日本語訳があてられていることに大きな原因があるものと思われる。BPS計算上の分子は純資産ではなく、「自己資本」なので要注意だ。

 ROE計算上の分母を「純資産」とするのが論理的におかしいことは、ROEとはあくまで「自社の株主に帰属する資本」から「自社の株主に帰属する利益」をどの程度生み出したかを表わす指標であることからも分かる。ここに親会社(ひいては親会社の株主)に帰属しない分である連結子会社の非支配株主持分まで含めてしまうと、分子と分母が対応せず、理屈が通らないのは明らかであろう。

 <例3>の「株主資本利益率(ROE)=当期純利益 ÷ 株主資本 × 100」は分子と分母がapple to appleという意味では整合的な計算方法であるものの、実務的に定着していない。これは、会社法導入に伴い有価証券報告書に記載する自己資本利益率を<例1>の計算方法で算定するよう企業内容等の開示に関する内閣府令が改正され、これに伴い決算短信に記載されるROEの名称が株主資本当期純利益率から自己資本当期純利益率に変更され、その結果として投資家やアナリストが用いるROEも<例1>の自己資本利益率の方が先に定着したことが理由である。

apple to apple : 同じ性質を持っているものを比べること。その他有価証券差額金の変動額は当期純利益に含まれていないので、株主資本利益率は分子と分母がapple to appleと言える。