2016/01/28 (新用語・難解用語)金融EDI

 企業が銀行に対し、送金と同時に「請求書情報」などを相手先に送るよう指示できるサービスのこと。EDIとは「Electronic Data Exchange(電子データ交換)」の略である。送金を受ける企業にとっては、送金額とその原因となった商取引のヒモ付けが容易になるため、売掛金の消込み作業などの経理事務の効率化につながる。金融庁の金融審議会は昨年(2015年)12月に「決済業務等の高度化に関するワーキンググループ 報告書 ~決済高度化に向けた戦略的取組み~」 を公表、ここで、銀行界が金融EDIのための新システムを構築するという方向性が決まった。

 産業・商業界には、従来から「送金指図に付記できる情報を増やして欲しい」という要望があったが、銀行界では「システム投資に見合うほどのニーズは見込めない」というのが通説だった。このような銀行界のスタンスに対しては、「供給側のサービス開発が十分でないために潜在的な需要が喚起されていないだけ」という声も聞かれたところだ。

 ただ、銀行がこれに対応するためには、・・・

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2016/01/28 (新用語・難解用語)金融EDI(会員限定)

 企業が銀行に対し、送金と同時に「請求書情報」などを相手先に送るよう指示できるサービスのこと。EDIとは「Electronic Data Exchange(電子データ交換)」の略である。送金を受ける企業にとっては、送金額とその原因となった商取引のヒモ付けが容易になるため、売掛金の消込み作業などの経理事務の効率化につながる。金融庁の金融審議会は昨年(2015年)12月に「決済業務等の高度化に関するワーキンググループ 報告書 ~決済高度化に向けた戦略的取組み~」 を公表、ここで、銀行界が金融EDIのための新システムを構築するという方向性が決まった。

 産業・商業界には、従来から「送金指図に付記できる情報を増やして欲しい」という要望があったが、銀行界では「システム投資に見合うほどのニーズは見込めない」というのが通説だった。このような銀行界のスタンスに対しては、「供給側のサービス開発が十分でないために潜在的な需要が喚起されていないだけ」という声も聞かれたところだ。

 ただ、銀行がこれに対応するためには、全銀システムで送金指図に付記できる文字の数が20ケタしかないことがネックになっていた。一方、国際的には、送金指図のための電文はXML(eXtensible Markup Language=拡張可能なマーク付け言語)方式で記述することになっている(ISO20022)。XML方式なら140文字を繰り返し記載することが可能であり、事実上無制限に送金指図に情報を付記できる。全銀システムも2011年にXML方式を選択することが可能となったが、銀行側の利用は進んでいないのが現状だった。

全銀システム : 全国の銀行や信用金庫、信用組合などをネットワークでつなぐ全国銀行データ通信システム。企業間、企業と個人、企業と行政機関・政府等との間の振込みなどの国内資金決済を担う。一般社団法人全国銀行資金決済ネットワークが運営。
ISO20022 : 金融サービス全般で利用される通信メッセージに関する国際標準規格。世界中の多くの金融機関で使用されている。

 こうした中、政府は2014年6月に打ち出した「日本再興戦略」改訂2014で銀行界に対し、24時間365日の即時振込とあわせて「商流情報の添付拡張」を求めた。これを受け銀行界は、2014年12月に現行の全銀システムの稼働時間外に稼働する新システムを構築し、2018年中にサービスを開始することを決めたものの、商流情報の添付拡張については「検討継続」を表明するにとどめていた。

 しかし今回、金融庁の強い要請を受けて、銀行界は2018年頃をメドに新システム「金融・ITネットワークシステム(仮称)」を構築し、サービスを開始するとともに、2020年までに企業間の国内送金指図に限ってXML電文を全面的に採用することを決めた。この新システムでは、人工知能(AI)を活用したビッグデータ分析・活用機能の追加も検討するという。

 銀行界あげて新たなインフラが構築されることにより、個別行間ではサービス競争も始まるだろう。企業としては、サービスの内容によって銀行を選別する場面が出て来るかもしれない。また、冒頭で述べたとおり、売掛金の消込み作業などの経理事務が効率化されることに伴い、経理部門のスリム化も経営課題となる可能性もありそうだ。

2016/01/27 中国進出企業にリスク BEPS行動計画と違う独自路線志向する中国

 昨年(2015年)10月5日に公表されたBEPS行動計画()の最終報告書を踏まえ、平成28年度税制改正により、日本企業に新たに「国別報告書」「マスターファイル」という文書の作成が義務付けられることになる。

 Base Erosion and Profit Shiftingの略で、「税源侵食と利益移転」と訳される。欧米の多国籍企業のアグレッシブな租税回避行動(国際的な税制の隙間を利用した二重”非”課税や、税率の低い国に利益を移転させること等により納税額を最小化する行動)を指す。これに対処するため、OECD加盟国+OECD非加盟のG20メンバー8か国によりBEPSプロジェクトが立ち上げられ、その成果物がBEPS行動計画である。

 「国別報告書」とは、会社や支社が存在する国ごとに収入額、税引前利益額、発生税額、納税額、有形資産、人員等の数値データを記載する文書を指す。一方、マスターファイルとは、多国籍企業グループの組織、財務、事業の概要、移転価格ポリシーなど、企業グループの基本情報を記載する文書である(このため、マスターファイルの作成に当たっては、税務対応している経理部門だけでなく、価格決定に関する意思決定機能を有する関連事業部門の参画が必須となる)。

移転価格 : 企業グループ内の取引価格のこと。例えば、日本企業が税率の低い国にある海外の販売子会社に、通常よりも低い金額で商品を卸すことにより、日本企業に生じるはずの利益を海外関連企業に移転させ、日本企業およびグループ全体の税負担を軽減することが可能になる。このため、移転価格には各国の税務当局が関心を持っている。

 国別報告書とマスターファイルは自国の税務当局に提出することが求められ、提出後は「会社の意思とは無関係に」BEPS行動計画に参画している国家間で自動的に情報が相互に伝達され、各国の税務当局が保有することになる。これまで未開示であった国別の納税額の多寡が一覧で把握できるため、「自国の利益と税額が少ない」と感じた国が移転価格に関する税務調査を行い、追徴課税をしてくるリスクは高まる。上述のとおり、BEPSプロジェクトは「過度の租税回避行動」に対処するために立ちあがったものであり、真面目に納税してきた多くの日本企業からは「文書作成作業という事務負担が増えるうえに、移転価格に関する税務調査が多発し、日本企業にとっては良いことは何もない」という不満の声が上がっている。

 もっとも、国別報告書、マスターファイルの作成が義務付けられるのは、「連結グループ収入1,000億円以上の多国籍企業グループ」に限られる。ところが、中国においては、連結グループ収入金額が1,000億円未満であっても、両文書の作成が求められるケースが出て来る可能性がある。・・・

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2016/01/27 中国進出企業にリスク BEPS行動計画と違う独自路線志向する中国(会員限定)

 昨年(2015年)10月5日に公表されたBEPS行動計画()の最終報告書を踏まえ、平成28年度税制改正により、日本企業に新たに「国別報告書」「マスターファイル」という文書の作成が義務付けられることになる。

 Base Erosion and Profit Shiftingの略で、「税源侵食と利益移転」と訳される。欧米の多国籍企業のアグレッシブな租税回避行動(国際的な税制の隙間を利用した二重”非”課税や、税率の低い国に利益を移転させること等により納税額を最小化する行動)を指す。これに対処するため、OECD加盟国+OECD非加盟のG20メンバー8か国によりBEPSプロジェクトが立ち上げられ、その成果物がBEPS行動計画である。

 「国別報告書」とは、会社や支社が存在する国ごとに収入額、税引前利益額、発生税額、納税額、有形資産、人員等の数値データを記載する文書を指す。一方、マスターファイルとは、多国籍企業グループの組織、財務、事業の概要、移転価格ポリシーなど、企業グループの基本情報を記載する文書である(このため、マスターファイルの作成に当たっては、税務対応している経理部門だけでなく、価格決定に関する意思決定機能を有する関連事業部門の参画が必須となる)。

移転価格 : 企業グループ内の取引価格のこと。例えば、日本企業が税率の低い国にある海外の販売子会社に、通常よりも低い金額で商品を卸すことにより、日本企業に生じるはずの利益を海外関連企業に移転させ、日本企業およびグループ全体の税負担を軽減することが可能になる。このため、移転価格には各国の税務当局が関心を持っている。

 国別報告書とマスターファイルは自国の税務当局に提出することが求められ、提出後は「会社の意思とは無関係に」BEPS行動計画に参画している国家間で自動的に情報が相互に伝達され、各国の税務当局が保有することになる。これまで未開示であった国別の納税額の多寡が一覧で把握できるため、「自国の利益と税額が少ない」と感じた国が移転価格に関する税務調査を行い、追徴課税をしてくるリスクは高まる。上述のとおり、BEPSプロジェクトは「過度の租税回避行動」に対処するために立ちあがったものであり、真面目に納税してきた多くの日本企業からは「文書作成作業という事務負担が増えるうえに、移転価格に関する税務調査が多発し、日本企業にとっては良いことは何もない」という不満の声が上がっている。

 もっとも、国別報告書、マスターファイルの作成が義務付けられるのは、「連結グループ収入1,000億円以上の多国籍企業グループ」に限られる。ところが、中国においては、連結グループ収入金額が1,000億円未満であっても、両文書の作成が求められるケースが出て来る可能性がある。

 BEPS行動計画は中国を含む参加国による国際的な合意であるにもかかわらず、中国はこれとは異なる中国独自のルールを実施するため、先般「特別納税調整実施弁法」(国税発[2009]2号)の改正版のパブリックコメント募集案を公布している。同案を見ると、中国では、マスターファイルとローカルファイルについては、グループ内の販売・仕入取引の合計額が2億元(36億円)を超えるか、それ以外の取引(役務取引等)が4千万元(7億2千万円)を超える場合に作成が求められ、国別報告書については 連結総収入50億元(約900億円)を超える場合に作成が求められることになっている。

 したがって、中国に子会社がありグループ内取引金額が36億円を超える場合にはマスターファイルを、また、日本では国別報告書の作成が不要となる「連結グループ収入900億円超1,000億円未満」の企業グループであっても、中国企業と取引している場合には国別報告書を、“中国の税務当局のためだけ”に作成する必要が出てくる。このほか、グループ内の役務取引やコストシェアリング契約過少資本について記載する「特殊事項ファイル」の作成も中国案では必須となっている。

コストシェアリング契約 : 複数の企業が共同で無形資産を開発する場合において、当該無形資産から生じる権利や利得を見返りとして、その研究コストを分担して負担する取決めのこと。費用分担契約とも言われる。例えば、税率の低い国にある開発には何ら携わっていない子会社に開発コストを分担させるだけで、開発した無形資産から得られる利得を当該子会社に配分させることができてしまうため、コストシェアリング契約には各国の税務当局が関心を持っている。
過少資本 : 資本金に比べ借入金の割合が大きい状態のこと。特に外資系企業では、親会社からの借入金大きくすることで親会社への支払利子を増やし、課税所得の圧縮を図る例が多い。

 また、BEPS行動計画の最終報告書では、マスターファイルに「無形資産」の情報を書くことになっているが、BEPS行動計画では無形資産の範囲外とされる「ロケーション・セービング」と「マーケット・プレミアム」が中国案では無形資産に含めることになっている。ロケーション・セービングとは、中国の安価な人件費等を利用することによりコストが抑えられることで創出された利益のことであり、マーケット・プレミアムとは、中国の活況なマーケットによる販売量の増加によりもたらされた利益を指す。これらの利益がどのような形で課税につながるのか、日本企業としては戦々恐々だろう。

 2015年内に確定するものと思われていた上記パブリックコメント募集案はいまだ「案」のままとなっているが、そう遠くない時期に確定する見込み。中国に進出する日本企業は要注意だ。

2016/01/26 英国コーポレートガバナンス・コードにおける4つの必須条件

 金融庁が昨年(2015年)9月に設置した「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」は現在、中間報告のとりまとめに向け議論を重ねているが、その中で強調されているのが「形式」から「実質」への脱皮だ。世間を騒がせた東芝事件も、まさに形式だけのコーポレートガバナンスが招いた事態と言える。同会議の委員からも、「東芝の問題というのは、実は実質論として日本企業のガバナンスが抱えていた、ある意味、非常に根深い病巣みたいなものが顕在化した事案」との発言が出ている。

 東芝は法令(当時の商法特例法)の改正により委員会設置会社(現「指名委員会等設置会社」)という機関設計が認められた2003年4月にこれに移行したが、委員会設置会社の形式的な要件は満たしていても、実質的にはガバナンスが機能していなかったと指摘する専門家は少なくない。日本のコーポレートガバナンス・コードが参考にした英国のコーポレートガバナンス・コードにおいて“必須4条件”と言われる条件に当てはめて考えてみよう。

商法特例法 : 会社の規模に応じた規制や手続、制度を定めた法律。その内容が2006年5月1日に施行された会社法に盛り込まれたことに伴い、廃止された。

 第一は「チェアマン(取締役会議長)とCEOの分離」だ(英国コーポレートガバナンス・コード9ページ A.2.1)。東芝の取締役会議長は現在(2016年1月)は社外取締役(資生堂の前田新造相談役)が務めているが、以前は定款で「取締役会議長は会長が務める」こととされており、「チェアマン=CEO」となっていた。

 第二の要件が・・・

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2016/01/26 英国コーポレートガバナンス・コードにおける4つの必須条件(会員限定)

 金融庁が昨年(2015年)9月に設置した「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」は現在、中間報告のとりまとめに向け議論を重ねているが、その中で強調されているのが「形式」から「実質」への脱皮だ。世間を騒がせた東芝事件も、まさに形式だけのコーポレートガバナンスが招いた事態と言える。同会議の委員からも、「東芝の問題というのは、実は実質論として日本企業のガバナンスが抱えていた、ある意味、非常に根深い病巣みたいなものが顕在化した事案」との発言が出ている。

 東芝は法令(当時の商法特例法)の改正により委員会設置会社(現「指名委員会等設置会社」)という機関設計が認められた2003年4月にこれに移行したが、委員会設置会社の形式的な要件は満たしていても、実質的にはガバナンスが機能していなかったと指摘する専門は少なくない。日本のコーポレートガバナンス・コードが参考にした英国のコーポレートガバナンス・コードにおいて“必須4条件”と言われる条件に当てはめて考えてみよう。

商法特例法 : 会社の規模に応じた規制や手続、制度を定めた法律。その内容が2006年5月1日に施行された会社法に盛り込まれたことに伴い、廃止された。

 第一は「チェアマン(取締役会議長)とCEOの分離」だ(英国コーポレートガバナンス・コード9ページ A.2.1)。東芝の取締役会議長は現在(2016年1月)は社外取締役(資生堂の前田新造相談役)が務めているが、以前は定款で「取締役会議長は会長が務める」こととされており、「チェアマン=CEO」となっていた。

 第二の要件が「強い監査委員会」である(11ページB.1及び補助原則参照)。東芝の監査委員長は元財務担当の副社長(CFO)という“内部”の人物だった(2011年6月~2014年6月までCFOを務め、2014年6月に監査委員長に就任)。これは「会社からの独立性」を求める英国のコーポレートガバナンス・コード上は論外と言える。

監査委員会 : 監査役会設置会社における監査役会に相当し、業務を監督・監査する役割を担う。3人以上の委員で構成され、その過半数は社外取締役でなければならない。監査委員は監査役設置会社における監査役に相当するが、監査委員は「取締役」が担うことになっている。ただし、業務執行とその監督の分離の実現という指名委員会等会社の趣旨から、監査委員になれるのは「業務執行を行わない取締役」であり、業務執行取締役等は監査委員になることはできない。

 第三が、社内・社外取締役のバランスだ。東芝には社外取締役が4人いたが、取締役は全部で16人おり(そのうち8人が執行役を兼務しない取締役(ここに社外取締役も含まれる))、社外・社内の比率は「1対3」だった。取締役の半数が執行役を兼務しているようでは、業務執行とその監督の分離を趣旨とする指名委員会等設置会社である意味がない。英国コーポレートガバナンス・コードでは、東芝のような大規模な会社であれば「少なくとも半数」の取締役会メンバーは独立取締役であることが求められ(12ページB.1.2)、さらに、有識者の間では、社外・社内取締役の“黄金比”は「7対3」とされている。これを踏まえれば、東芝の社内・社外取締役のバランスは悪いと言わざるを得ない(ちなみに、現在は「7対4」に改善されている)。

 4つ目は、取締役会を自己評価する機能だ(15ページB.6)。もしこの機能があれば、そもそも東芝事件は起きていなかっただろう。

 このように、英国のコーポレートガバナンス・コードの4つの大原則を東芝に当てはめると、そのすべてを満たしていなかったことが分かる。フォローアップ会議の第1回目から東芝事件が話題に上ったことからも推察されるように、会議では東芝事件のような事件の再発を防ぐためにはどうすればよいかという観点から、コーポレートガバナンス・コードの見直しが検討される可能性は高い。

 昨年(2015年)6月に導入されて以来、まだ8か月しか経っていないコーポレートガバナンス・コードだが、早晩大幅な見直しが実施される可能性もありそうだ。

2016/01/25 「消費者保護強化」の流れは一段落?

 昨年(2015年)夏に消費者庁(消費者委員会・消費者契約法専門調査会)から公表された消費者契約法改正に関する「中間取りまとめ」は、企業にとって規制強化につながるのではないかとの懸念を呼んだところだ(2015年9月16日のニュース「消費者契約法改正で広告への規制強化の恐れ」参照)。その後、消費者庁は改正に向けた審議を終え、昨年12月末に最終的な報告書を取りまとめたうえで、去る1月7日に安倍首相に提出したが、その内容を見ると、企業側の懸念は杞憂に終わったと言えるだろう。

消費者契約法 : 情報力や交渉力といった点で企業より弱い立場にある消費者を保護するための法律。事業者が消費者に対し契約の締結を勧誘する際に、例えば嘘を言ったり(不実告知)、都合の悪いことを知っていながら隠したり(不利益事実の不告知)といった行為があった場合、消費者は消費者契約法に基づき、事業者との契約を取り消すことができる。

 「中間取りまとめ」の段階では、消費者契約法の対象となる「勧誘」の要件を見直し、「不特定の者に向けた広告等」までその範囲を広げることや、「不当条項」(消費者の利益を害することから無効とされる条項)の類型の追加(例えば「消費者の解除権・解約権をあらかじめ放棄させ又は制限する条項」などが追加の対象となっていた)まで、かなり広範な改正の方向性が示され、企業側からは、「消費者にとって不利益な事実を、広告に余すところなく書かないといけなくなるのではないか?」「これまで消費者との契約に用いていた約款の条項をことごとく見直さないといけなくなるのではないか?」といった不安の声が上がっていた。

 しかし、12月末に取りまとめられた報告書を読むと、「速やかに法改正を行うべき内容」として挙げられた論点(報告書の4ページ~)の多くは、産業界も含めて大きな異論がなかった論点であり、意見が対立していた論点については、全て改正対象から外すか、あるいは、明らかに消費者の利益を害すると思われるような“極端な事例”に絞り込んで対象とする形で整理がなされている。例えば、企業側の批判が最も強かった「勧誘」要件の見直しは「現時点ではコンセンサスを得ることは困難」として改正の対象から外され(11ページの1(1))、また、契約取消しを認める場合として追加された行為類型(5ぺージの2)や、「不当条項」として追加された類型(8ページの6)も、明らかに不当性が高いと思われるごく少数の類型に限られている。

 このように最終的な報告書がいわば“腰砕け”とも言えるような結論となった背景には、消費者契約法専門調査会に参加していた産業界代表の委員や同調査会のヒアリングに出席した各業界団体が、終始一貫して「中間取りまとめ」の内容の多くに反対していたことや、「中間取りまとめ」に対して提出された約2,500通の意見の中に、広範な規制が行われることに対する懸念を示す意見が多かったことがある。

 元々産業界には、「私人間の契約の内容は、当事者の合意によって自由に決めることができるというのが我が国の契約ルールの大原則であり、たとえ事業者・消費者間の契約であっても、法による干渉は最小限のものにとどめられるべき」という考え方が根強い。こうした中で、消費者契約法の改正を巡る議論の過程では、消費者団体や弁護士会から「立法事実」として主張された事例の中に、一部の悪質業者の事例に過ぎないものや、実務上何ら問題が生じていないと思われるものが多かったことも、産業界の反発に火をつける格好となった。

 報告書を受け、今後は消費者契約法改正の手続きが進められるが、改正が小幅なものにとどまるのが確実となったことで、企業の懸念は大方解消されたものと考えてよいだろう。契約の基本ルールを定めた民法「債権法」改正の議論(例えば2014年3月14日のニュース「民法改正で企業の契約実務は変わるか」参照)の頃からずっと続いていた「消費者保護強化」に向けた民事法のルール整備の議論についてはこれでひと段落したと言えそうだ。

 ただし、報告書をよく読むと、・・・

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2016/01/25 「消費者保護強化」の流れは一段落?(会員限定)

 昨年(2015年)夏に消費者庁(消費者委員会・消費者契約法専門調査会)から公表された消費者契約法改正に関する「中間取りまとめ」は、企業にとって規制強化につながるのではないかとの懸念を呼んだところだ(2015年9月16日のニュース「消費者契約法改正で広告への規制強化の恐れ」参照)。その後、消費者庁は改正に向けた審議を終え、昨年12月末に最終的な報告書を取りまとめたうえで、去る1月7日に安倍首相に提出したが、その内容を見ると、企業側の懸念は杞憂に終わったと言えるだろう。

消費者契約法 : 情報力や交渉力といった点で企業より弱い立場にある消費者を保護するための法律。事業者が消費者に対し契約の締結を勧誘する際に、例えば嘘を言ったり(不実告知)、都合の悪いことを知っていながら隠したり(不利益事実の不告知)といった行為があった場合、消費者は消費者契約法に基づき、事業者との契約を取り消すことができる。

 「中間取りまとめ」の段階では、消費者契約法の対象となる「勧誘」の要件を見直し、「不特定の者に向けた広告等」までその範囲を広げることや、「不当条項」(消費者の利益を害することから無効とされる条項)の類型の追加(例えば「消費者の解除権・解約権をあらかじめ放棄させ又は制限する条項」などが追加の対象となっていた)まで、かなり広範な改正の方向性が示され、企業側からは、「消費者にとって不利益な事実を、広告に余すところなく書かないといけなくなるのではないか?」「これまで消費者との契約に用いていた約款の条項をことごとく見直さないといけなくなるのではないか?」といった不安の声が上がっていた。

 しかし、12月末に取りまとめられた報告書を読むと、「速やかに法改正を行うべき内容」として挙げられた論点(報告書の4ページ~)の多くは、産業界も含めて大きな異論がなかった論点であり、意見が対立していた論点については、全て改正対象から外すか、あるいは、明らかに消費者の利益を害すると思われるような“極端な事例”に絞り込んで対象とする形で整理がなされている。例えば、企業側の批判が最も強かった「勧誘」要件の見直しは「現時点ではコンセンサスを得ることは困難」として改正の対象から外され(11ページの1(1))、また、契約取消しを認める場合として追加された行為類型(5ぺージの2)や、「不当条項」として追加された類型(8ページの6)も、明らかに不当性が高いと思われるごく少数の類型に限られている。

 このように最終的な報告書がいわば“腰砕け”とも言えるような結論となった背景には、消費者契約法専門調査会に参加していた産業界代表の委員や同調査会のヒアリングに出席した各業界団体が、終始一貫して「中間取りまとめ」の内容の多くに反対していたことや、「中間取りまとめ」に対して提出された約2,500通の意見の中に、広範な規制が行われることに対する懸念を示す意見が多かったことがある。

 元々産業界には、「私人間の契約の内容は、当事者の合意によって自由に決めることができるというのが我が国の契約ルールの大原則であり、たとえ事業者・消費者間の契約であっても、法による干渉は最小限のものにとどめられるべき」という考え方が根強い。こうした中で、消費者契約法の改正を巡る議論の過程では、消費者団体や弁護士会から「立法事実」として主張された事例の中に、一部の悪質業者の事例に過ぎないものや、実務上何ら問題が生じていないと思われるものが多かったことも、産業界の反発に火をつける格好となった。

 報告書を受け、今後は消費者契約法改正の手続きが進められるが、改正が小幅なものにとどまるのが確実となったことで、企業の懸念は大方解消されたものと考えてよいだろう。契約の基本ルールを定めた民法「債権法」改正の議論(例えば2014年3月14日のニュース「民法改正で企業の契約実務は変わるか」参照)の頃からずっと続いていた「消費者保護強化」に向けた民事法のルール整備の議論についてはこれで一段落したと言えそうだ。

 ただし、報告書をよく読むと、「速やかに法改正を行うべき」とされなかった論点の多くは「引き続き検討すべき」ものとして整理されている(例えば12ページの(3)、13ページの6など)。また、法改正こそ行わないものの、消費者庁が公表している消費者契約法の逐条解説において消費者に有利と思われる解釈に基づく解説を追加するという対応が明言されている論点(例えば14ページの(2)、15ページの8、9など)もいくつか存在している。したがって、今回、法改正の対象にならなかったからといって、企業がこの先もずっと現在のままのルールでやっていけるとは限らない。

 また、今年10月には、消費者裁判手続特例法(適格消費者団体による集団的な消費者救済のための損害賠償請求訴訟等の提起を新たに認める法律)が施行され、消費者・事業者間の大規模な紛争が裁判所に持ち込まれる機会が増えてくると予想される中で、法改正に先行して事業者と消費者の間の契約ルールが形成されていく可能性があり、逆にこうした企業の対応が今後の法令改正に影響を与えることも考えられる。

 当フォーラムでは、立法政策のみならず、現実に起きている事象にも着目し、引き続きこの問題をフォローしていきたい。

2016/01/22 【WEBセミナー】コーポレートガバナンス・コードに対応した取締役会評価

概略

【セミナー開催日】2016年1月14日(木)

 73個あるコーポレートガバナンス・コードの中で、企業がもっとも対応に苦慮しているのが補充原則4-11③「取締役会全体の実効性評価」です。実際、金融庁・東証が公表した2015年8月末時点の調査結果によると、同コードはエクスプレインの比率が一番高いコードとなっています。企業からは「そもそも取締役会評価とはどのようにやればよいのか」という声も聞かれるように、取締役会評価はコーポレートガバナンス・コードの本場である英国や、ニューヨーク証券取引所の上場規則によりルール化されている米国では一般的なプラクティスとなっているものの、日本では馴染みがありません。本セミナーでは、英国、米国をはじめとする世界の金融市場、機関投資家にネットワークを持ち、海外のIRやコーポレートガバナンスはもちろん、取締役会評価のプラクティスにも精通するジェイ・ユーラス・アイアール(株)で代表取締役を務める岩田宜子様をお招きし、海外の取締役会評価のプラクティスをご紹介いただきつつ、同社がこれまで多数手掛けてきた日本企業への取締役会評価事例を踏まえ、日本企業にフィットし、かつ投資家にアピールする取締役会評価の進め方について解説していただきます。

【講師】ジェイ・ユーラス・アイアール(株) 代表取締役 岩田 宜子 様

セミナー資料 コーポレートガバナンス・コードに対応した取締役会評価.pdf(853KB)

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セミナー動画

動画(1)Ⅰはじめに~ガバナンスロードショーから帰国して、その他の所感、心配な記載例、その他


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動画(2)Ⅱ株主との対話~ガバナンスとIRコンパージェンス


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動画(3)Ⅲ取締役会の評価 ガバナンス・コードにおける取締役会評価


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動画(4)Ⅲ取締役会の評価(続き) 評価手法とプロセス~


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動画(5)Ⅲ取締役会の評価(続き) 開示における留意点~


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2016/01/22 【WEBセミナー】コーポレートガバナンス・コードに対応した取締役会評価(会員限定)

概略

【セミナー開催日】2016年1月14日(木)

 73個あるコーポレートガバナンス・コードの中で、企業がもっとも対応に苦慮しているのが補充原則4-11③「取締役会全体の実効性評価」です。実際、金融庁・東証が公表した2015年8月末時点の調査結果によると、同コードはエクスプレインの比率が一番高いコードとなっています。企業からは「そもそも取締役会評価とはどのようにやればよいのか」という声も聞かれるように、取締役会評価はコーポレートガバナンス・コードの本場である英国や、ニューヨーク証券取引所の上場規則によりルール化されている米国では一般的なプラクティスとなっているものの、日本では馴染みがありません。本セミナーでは、英国、米国をはじめとする世界の金融市場、機関投資家にネットワークを持ち、海外のIRやコーポレートガバナンスはもちろん、取締役会評価のプラクティスにも精通するジェイ・ユーラス・アイアール(株)で代表取締役を務める岩田宜子様をお招きし、海外の取締役会評価のプラクティスをご紹介いただきつつ、同社がこれまで多数手掛けてきた日本企業への取締役会評価事例を踏まえ、日本企業にフィットし、かつ投資家にアピールする取締役会評価の進め方について解説していただきます。

【講師】ジェイ・ユーラス・アイアール(株) 代表取締役 岩田 宜子 様

セミナー資料 コーポレートガバナンス・コードに対応した取締役会評価.pdf(1.11MB)
セミナー動画

動画(1)Ⅰはじめに~ガバナンスロードショーから帰国して、その他の所感、心配な記載例、その他

動画(2)Ⅱ株主との対話~ガバナンスとIRコンパージェンス

動画(3)Ⅲ取締役会の評価 ガバナンス・コードにおける取締役会評価

動画(4)Ⅲ取締役会の評価(続き) 評価手法とプロセス~

動画(5)Ⅲ取締役会の評価(続き) 開示における留意点~

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