2015/03/01 【2015年2月の課題】年功型賃金制度の見直し:解答(会員限定)

日本企業における賃金制度の現状

 自社の賃金制度の見直しを考えるにあたって、まずは日本企業における賃金制度の現状を確認しておきましょう。

 それを理解するキーワードは「多様化」です。日本企業では、労使で絶えず自社の経営状況等に適した賃金制度を追求してきた結果、全社員に対して同じ賃金体系を適用する「単一型」ではなく、例えば職掌(管理職、非管理職など)や職種(営業職、事務職など)ごとに異なる賃金体系を適用する「複線型」の賃金制度を採用するところが多くなっています。その割合は、経団連の調査(2014年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果)では82.3%と、実に8割を超えています。

 また、所定内賃金の中心となる基本給を構成する「賃金項目」も単一ではなく、例えば、職能給をベースとしながら、年齢・勤続給や職務給、役割給などの複数の賃金項目を組み合わせている企業が80.0%(経団連調査)を占めるなど、多様化しています(図表1)。

図表1 賃金体系と主な賃金項目

出典:経団連「2014年版経営労働政策委員会報告」

出典:経団連「2014年版経営労働政策委員会報告」

 さらに、基本給全体に各賃金項目が占めるウエイトも一定ではなく、多くの日本企業が年齢・勤続給の割合を縮小あるいは廃止する一方、職務遂行能力(職能)に基づく職能給や、担っている仕事の価値・役割などによって賃金額を設定する職務給・役割給を増大させています。この傾向は、職位が上がるにつれてより顕著になっています(図表2)。

図表2 職位別にみた月例賃金の構成ウエイト(%)

注:網掛けは当該職掌・職位において構成ウエイトの最も高い賃金項目(当フォーラムが加工)   四捨五入の関係で合計が100.0%にならない場合がある 出典:JILPT「ビジネス・レーバー・モニター調査」(2014年11月)

注:網掛けは当該職掌・職位において構成ウエイトの最も高い賃金項目(当フォーラムが加工)
  四捨五入の関係で合計が100.0%にならない場合がある
出典:JILPT「ビジネス・レーバー・モニター調査」(2014年11月)

 その意図は、年功的な要素を薄め、仕事・役割・貢献度を基軸とした賃金制度に移行することによって、「従業員が担っている仕事・役割」等と、それに対する「賃金水準」との整合性を可能な限り図ることにあります。この流れが現在の賃金制度の主流であり、今後の方向性であると言えるでしょう。

自社の賃金制度の把握

 賃金は、基本的には「労働の対償」(労働基準法11条)とされていますが、実際には各企業は、生計費や物価の動向、世間相場といった「外部要因」と、自社の支払能力や付加価値の伸び、労務構成、労使関係などの「内部要因」を総合的に勘案して決めています。このようにして長い年月と労使の話し合いを経て作り上げられてきた各社の賃金制度には、自社の従業員(人材)に対する考え方や処遇のあり方が表われています。

付加価値 : 「売上高-前給付原価」により算出される。「前給付原価」とは、原材料費、外注加工費、商品仕入高、水道光熱費など、「外部から購入した価値」のこと。自社が売上を上げる前の段階で支払う原価であることからこう呼ばれる。

労務構成 : 従業員の年齢や勤続年数別の構成、性別の構成、職種別の構成など。

 そこで、賃金制度の見直しを検討する前に、経営陣はそもそも自社の賃金制度がどのようなものなのかを正確に把握しておく必要があります。例えば、「単一型」なのか「複線型」なのか、基本給を構成している賃金項目とそのウエイトはどうなっているのか、自社の標準労働者(学校を卒業して直ちに入社した後、標準的に昇格・昇進した者)の賃金カーブはどのような形状(ピークとなる年齢・勤続年数、そのときの賃金水準など)になっているかなどといった点です。そのうえで、①自社の賃金制度のどこに年功的な部分があるのか、②それが自社の経営にどのような影響を与えているのか――を見極めることが不可欠となります。以下でそれぞれについて説明しましょう。

①自社の賃金制度のどこに年功的な部分があるのか
 これは、賃金項目に「年齢給」や「勤続給」があれば一目瞭然ですが、「職能給」が事実上の年功給(査定が最低であっても必ず昇給するなど)となっていないかも重要なチェックポイントです。

 また、就業規則や賃金規程等に「年齢(歳)」や「学歴(大学卒、高校卒など)」「(勤続・滞留)年数」「男性・女性」などのキーワードが含まれているかどうかで、自社の賃金制度がどれくらい年功的であるかをある程度把握することができます。

②年功型の賃金制度が自社の経営にどのような影響を与えているか

 この点について考える際には、その象徴ともいえる「定期昇給」の検討が避けられません。多くの日本企業において何らかの定期昇給が長年にわたり実施されていますが、世界的にこのような例はなく、評価されてしかるべきことだと思います(図表3)。

図表3 定期昇給制度の有無と実施状況(全産業・係員)

注:(1)常時勤務する従業員のうち期間を定めずに雇用されている者(課長級以上の者を除く)    (2)定期昇給には、毎年自動的に昇給する自動昇給のほか、定期の時期に一斉に行なう査定昇給及び昇格昇給を含む。 出典:人事院「職種別民間給与実態調査」

注:(1)常時勤務する従業員のうち期間を定めずに雇用されている者(課長級以上の者を除く)
  (2)定期昇給には、毎年自動的に昇給する自動昇給のほか、定期の時期に一斉に行なう査定昇給及び昇格昇給を含む。
出典:人事院「職種別民間給与実態調査」

 しかし、定期昇給が定着したとされる高度経済成長期と現在では、企業を取り巻く経営環境が大きく異なっているうえ、グローバル化の進展や従業員の高齢化に伴う労務構成の変化などによって、定期昇給を制度化した当時に想定していた前提がかなり変わってしまっている企業がほとんどだと思います。定期昇給制度を維持することの意義や必要性、持続可能性などについて、経営陣や人事部門で話し合うことはもちろん、労働組合や従業員代表も交えて、改めて確認しておく必要があります。

目指すべき賃金制度・賃金カーブの決定

 自社の賃金制度を把握したら、次に、将来的にどのような賃金制度・賃金カーブを目指すのかを決めます。目指すべき賃金制度を決定することは経営陣にとって重大な決断であり、また、従業員にとっても実生活やその後の人生設計に直接関わることですので、労働組合や従業員代表等と時間をかけて協議していくことが求められます。

 経団連の調査によると、「今後目指したい賃金カーブの形状」としては、一定の年齢や賃金水準に達するまでは安定的に昇給させ、その後は査定による定期賃金改定(査定結果によっては降給もあり得ます)を行なうとする企業割合が6割超(62.9%)で最も多くなっています(図表4)。

図表4 今後目指したい賃金カーブの形状

 具体的には、年齢・勤続年数の上昇とともに賃金額も上がる「年齢・勤続給」や、勤続年数に伴って習熟度が高まることを理由に賃金額がアップする「職能給」などによって一定水準まで賃金を引き上げ、その後は基本給の構成を「職務給」「役割・職責給」をメインに据え、そのウエイトを高めていくということです。これは、年功的な昇給を一定程度は維持していくということでもあります。

 ともすれば「年功型賃金=時代遅れの悪い制度」という単純な見方がされることが少なくありませんが、自社の方向性や社風等に適っている、あるいは経営・人事戦略上必要であると判断することに合理的な理由があるのならば、年功型賃金の廃止や見直しを無理に行なう必要はありません。「年功型賃金制度を見直す」こと自体が目的となってしまっているケースも散見されますが、制度の見直しはあくまで目指すべき賃金制度を実現するために実施しなくてはなりません。

 企業の労使にとって、より良い賃金制度の追求に終わりはなく、経営環境の変化に対応しながら、労使で議論を深めていく必要があります。「仕事・役割等と賃金の整合性」と「従業員のライフステージに合わせた賃金設定」という観点を、どのような賃金制度によってバランスさせていくか、経営陣のリーダーシップの下で、人事部門や労働組合、従業員代表らと時間をかけて検討していくことが望まれます。

2015/03/01 【2015年3月の課題】社外取締役ゼロの状況の解消

2015年3月の課題

 今年(2015年)の5月1日から改正会社法が施行されます。施行後は、「有価証券報告書提出義務がある公開かつ大会社の監査役会設置会社」(多くの上場会社が該当します)のうち社外取締役を置いていない会社は、株主総会で「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明するとともに、株主総会参考書類・事業報告にも「社外取締役を置くことが相当でない理由」を記載しなければなりません。それだけでなく、今年の6月1日からはコーポレートガバナンス・コードも施行され、東京証券取引所市場第1部・第2部に上場する会社は「社外取締役2名の選任」を求めるコードを「コンプライ」(コードに従う)しない場合には「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」でその理由を「エクスプレイン」(説明)する必要が生じます。
 改正会社法とコーポレートガバナンス・コードの施行を前に、社外取締役が1人もおらず、一方で社外監査役も含めて5名の監査役で構成される監査役会を設置している貴社の経営陣は、社外取締役ゼロの状況の解消を迫る投資家からのプレッシャーが日ごとに強まっていると感じています。ただ、来期は赤字への転落が見込まれる中、社外取締役2名の選任により役員報酬支払額が増え、赤字が膨らむことも避けたいと考えております。何か良い打開策はないでしょうか。

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2015/02/28 2015年2月度チェックテスト第10問解答画面(正解)

正解です。
 東京証券取引所が2月24日に公表した上場規則の改正案「コーポレートガバナンス・コードの策定に伴う上場制度の整備について」によると、上場会社がコーポレートガバナンス・コードを“Comply”(遵守)せずに“Explain”(遵守せずに説明)する場合の媒体は「コーポレート・ガバナンス報告書」であることが明らかになりました。この“Explain”ですが、なぜコードを“Comply”していないか、かわりにどういう体制を採用しているかを淡々と説明すれば十分です。改正会社法で社外取締役非選任の上場会社が説明しなければならない「相当でない理由」ではないことに注意しましょう。以上より、本問は間違いです。

こちらの記事で再確認!
2015/02/25 ガバナンスコード対応は12月まで猶予あり!?(会員限定)

2015/02/28 2015年2月度チェックテスト第10問解答画面(不正解)

不正解です。
 東京証券取引所が2月24日に公表した上場規則の改正案「コーポレートガバナンス・コードの策定に伴う上場制度の整備について」によると、上場会社がコーポレートガバナンス・コードを“Comply”(遵守)せずに“Explain”(遵守せずに説明)する場合の媒体は「コーポレート・ガバナンス報告書」であることが明らかになりました。この“Explain”ですが、なぜコードを“Comply”していないか、かわりにどういう体制を採用しているかを淡々と説明すれば十分です。改正会社法で社外取締役非選任の上場会社が説明しなければならない「相当でない理由」ではないことに注意しましょう。以上より、本問は間違いです。

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2015/02/25 ガバナンスコード対応は12月まで猶予あり!?(会員限定)

2015/02/28 2015年2月度チェックテスト第9問解答画面(不正解)

不正解です。
 いまだに「スチュワードシップ・コードはあくまで外国人投資家の多いグローバル企業の話であって、ウチには関係ない」といった認識を持つ中堅企業が少なくありません。これは大きな間違いであり、むしろ中堅企業こそが投資家、特にアクティビストのターゲットであることに気付く必要があります。実際に、多くのアクティビストが中堅企業にアプローチを試みています。以上より、本問は間違いです。

こちらの記事で再確認!
2015/02/24 中堅企業に向かうアクティビスト(会員限定)

2015/02/28 2015年2月度チェックテスト第9問解答画面(正解)

正解です。
 いまだに「スチュワードシップ・コードはあくまで外国人投資家の多いグローバル企業の話であって、ウチには関係ない」といった認識を持つ中堅企業が少なくありません。これは大きな間違いであり、むしろ中堅企業こそが投資家、特にアクティビストのターゲットであることに気付く必要があります。実際に、多くのアクティビストが中堅企業にアプローチを試みています。以上より、本問は間違いです。

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2015/02/24 中堅企業に向かうアクティビスト(会員限定)

2015/02/28 2015年2月度チェックテスト第8問解答画面(正解)

正解です。
 厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会が2015年2月13日に公表した報告書「今後の労働時間法制等の在り方について」によると、ホワイトカラーエグゼンプションの制度の対象者は (1)高度の専門的知識等を要する、(2)“業務に従事した時間”と“業務の成果”との関連性が強くない、(3)平均給与額の3倍を相当程度上回る報酬を支払う―――ことなどが挙げられています。具体的には、ディーラー、アナリスト、コンサルタント、商品開発、研究開発職などが例示されています。そもそもこれらの職種が存在しない企業も多く、いたとしても人数は少ないことから、ホワイトカラーエグゼンプションを導入したとしても、経営への影響はほとんどないのではないかとの見方が濃厚です。本問は「本社スタッフの大半が制度の対象者に該当する会社が大半である」としている点で間違いです。

こちらの記事で再確認!
2015/02/23 ホワイトカラーエグゼンプションより影響が大きい労基法の改正項目(会員限定)(会員限定)

2015/02/28 2015年2月度チェックテスト第8問解答画面(不正解)

不正解です。
 厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会が2015年2月13日に公表した報告書「今後の労働時間法制等の在り方について」によると、ホワイトカラーエグゼンプションの制度の対象者は (1)高度の専門的知識等を要する、(2)“業務に従事した時間”と“業務の成果”との関連性が強くない、(3)平均給与額の3倍を相当程度上回る報酬を支払う―――ことなどが挙げられています。具体的には、ディーラー、アナリスト、コンサルタント、商品開発、研究開発職などが例示されています。そもそもこれらの職種が存在しない企業も多く、いたとしても人数は少ないことから、ホワイトカラーエグゼンプションを導入したとしても、経営への影響はほとんどないのではないかとの見方が濃厚です。本問は「本社スタッフの大半が制度の対象者に該当する会社が大半である」としている点で間違いです。

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2015/02/23 ホワイトカラーエグゼンプションより影響が大きい労基法の改正項目(会員限定)(会員限定)

2015/02/28 2015年2月度チェックテスト第7問解答画面(正解)

正解です。
 各国の株価インデックス構成企業における『取締役会の女性比率』を比較すると、北欧を中心とするヨーロッパが高くノルウェー35.5%、フィンランド29.9%、フランス29.7%、スウェーデン28.8%となっています。アジアは遅れており、香港10.2%、インド9.5%となっています。日本はインドを大きく下回る3.1%に過ぎません。「日本における比率は香港やインドと概ね同じ比率」としている点で、本問は間違いです。

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2015/02/20 女性の登用、日本の現在地(会員限定)

2015/02/28 2015年2月度チェックテスト第7問解答画面(不正解)

不正解です。
 各国の株価インデックス構成企業における『取締役会の女性比率』を比較すると、北欧を中心とするヨーロッパが高くノルウェー35.5%、フィンランド29.9%、フランス29.7%、スウェーデン28.8%となっています。アジアは遅れており、香港10.2%、インド9.5%となっています。日本はインドを大きく下回る3.1%に過ぎません。「日本における比率は香港やインドと概ね同じ比率」としている点で、本問は間違いです。

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2015/02/20 女性の登用、日本の現在地(会員限定)