2015/03/06 ガバナンスコード、中期経営計画の策定は必須?

 金融庁と東京証券取引所は3月5日に開催した有識者会議で、コーポレートガバナンス・コード原案を正式決定した。昨年12月17日からパブリックコメントに付されていた原案(以下、パブコメ案)に対しては121もの個人及び団体から意見が提出されており、同コードに対する関心の高さを示した格好。もっとも、そのうち約3分の2はコードに対する肯定的な意見で占められた。結果としてパブコメ案からの内容変更はなく、一部の語句修正のみにとどまっている。

 平成27年6月1日からの実施に向け、今後は実務上の取扱いに注目が集まるが、コーポレートガバナンス・コード原案へのコメントに対する金融庁の回答には実務の参考になるものがいくつかあるので紹介しておこう。

 まず、・・・

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2015/03/06 ガバナンスコード、中期経営計画の策定は必須?(会員限定)

 金融庁と東京証券取引所は3月5日に開催した有識者会議で、コーポレートガバナンス・コード原案を正式決定した。昨年12月17日からパブリックコメントに付されていた原案(以下、パブコメ案)に対しては121もの個人及び団体から意見が提出されており、同コードに対する関心の高さを示した格好。もっとも、そのうち約3分の2はコードに対する肯定的な意見で占められた。結果としてパブコメ案からの内容変更はなく、一部の語句修正のみにとどまっている。

 平成27年6月1日からの実施に向け、今後は実務上の取扱いに注目が集まるが、コーポレートガバナンス・コード原案へのコメントに対する金融庁の回答には実務の参考になるものがいくつかあるので紹介しておこう。

 まず、例えば取締役・監査役に対するトレーニングの方針(補充原則4-12②)の開示など、「コードを実施するために行う開示」の記載場所が挙げられる。基本的にはコーポレート・ガバナンスに関する報告書に記載することになるが、有価証券報告書や事業報告書等ですでに開示している場合には、重複記載を避けるため、その記載場所を明示することで代替可能となっている。ここで言う「記載場所」とは、自社のサイトのURLでもよいこととされている。

 また、上場会社にとって大きな関心事となっていた政策保有株式(原則1-4)については、「政策保有することのリターンとリスクを踏まえた中長期的な経済合理性や将来の見通しを“検証”し、これを反映した保有のねらい・合理性について具体的な説明を行うべき」とされているが、検証の内容そのものまでを開示する必要はない旨が明らかにされている。株式の保有先との契約や同意などには、企業秘密に関するものも含まれるため、これに配慮した形となっている。

 このほか、補充原則4-1②では、「中期経営計画が目標未達に終わった場合には、その原因を分析し、株主に説明する」こととされているが、上場会社がエクスプレイン(Explain)したくないために、中期経営計画の策定をやめたり、別の名称にしたりするのではないかとの懸念が指摘されている。ただ、金融庁は中期経営計画を策定しないという経営判断を否定すべきではないという立場をとっている。このため、中期経営計画を策定しない上場会社には補充原則4-1②は適用されないとしている。逆に、実質的に中期経営計画と言える内容のものであれば、名称に関係なく同原則が適用されることになるので留意したい。

2015/03/05 (新用語・難解用語)リキャップCB

 リキャップCBにおける「リキャップ」とは、recapitalization(資本の再構成)の略で、自己資本と負債のバランスを再構成することを表す。一方、「CB」とは転換社債(正式には転換社債型新株予約権付社債)のことである。つまり、リキャップCBとは、資本の再構成のために発行される転換社債のことをいう。

転換社債 : 株式に転換する権利が付いた社債。CB(Convertible Bond=コンバーティブルボンド)と言われることが多い。株価が上がった場合には株式に転換することができ、逆に値上がりしなければ社債として保有し、利子を受取ることができる。社債の確実性と、株式の収益性を兼ね備えているのが転換社債の特徴である。

 企業が事業活動を通じて得た利益のうち配当として株主に還元されなかったものは内部留保に回り、事業に再投資される。利益が株主に還元されなければ、結果として自己資本が膨らみ、ROE(自己資本利益率=純利益 ÷ 自己資本)を引き下げることになる。これを避けるためには、・・・

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2015/03/05 (新用語・難解用語)リキャップCB(会員限定)

 リキャップCBにおける「リキャップ」とは、recapitalization(資本の再構成)の略で、自己資本と負債のバランスを再構成することを表す。一方、「CB」とは転換社債(正式には転換社債型新株予約権付社債)のことである。つまり、リキャップCBとは、資本の再構成のために発行される転換社債のことをいう。

転換社債 : 株式に転換する権利が付いた社債。CB(Convertible Bond=コンバーティブルボンド)と言われることが多い。株価が上がった場合には株式に転換することができ、逆に値上がりしなければ社債として保有し、利子を受取ることができる。社債の確実性と、株式の収益性を兼ね備えているのが転換社債の特徴である。

 企業が事業活動を通じて得た利益のうち配当として株主に還元されなかったものは内部留保に回り、事業に再投資される。利益が株主に還元されなければ、結果として自己資本が膨らみ、ROE(自己資本利益率=純利益 ÷ 自己資本)を引き下げることになる。これを避けるためには、増配により時間をかけて自己資本を減らすのも選択肢の1つだが、それ以外にも、社債や借入金といった負債により資金を調達し、これを使って自己株式取得(株主還元)を実施することで、短期間で自己資本を圧縮することもできる。後者は、自己資本を負債に置き換えること(自己資本と負債のバランスの再構成)であり、この財務行動が「リキャップ」に当たる。

自己株式取得(株主還元) : 自己株式の取得では、株主は株式を会社に渡し、その反対に会社は株主に現金を渡すことになるため、これも株主に対する利益還元策の1つと言える。

 リキャップは、SB(Straight Bond=普通社債)や借入金を用いて行われてもよいが、実際にはCBが選ばれることが多い。これは、あらかじめ定められた価格で株式に転換できる条項が付いているCBには、(1)同条項のメリットがある分、低いコスト(金利)で発行できる、(2)株価が上がれば株式への転換が進むため、償還資金が不要になる、といったメリットがあるからだ。例えば、ゼロ金利でリキャップCBを発行し、その後、株価が上昇して全てが株式に転換されてしまえば、資金負担は一切生じないことになる。

 日本企業に対しては、自己資本が厚い割に利益水準が低く、ROEも低いとの批判が以前から聞かれる。近年は業績回復により更に自己資本が膨らみROEの低下圧力となっていることに加え、安倍政権が打ち出した成長戦略にも「ROE向上」が盛り込まれるなど、ROEに対する意識が高まっている。こうした中でリキャップCBを発行する企業には「ROE重視の経営」を投資家にアピールする狙いもあるのだろう。

 ただし、CBから株式への転換が進めば再び自己資本は膨らみ、ROEは低下に向かう。結局のところ、ROEを高めるためには、分子である「利益」の中長期的な成長が企業にとっての最重要課題になるという点は変わらないということである。

2015/03/04 英国で発達する取締役会の外部評価、日本では?

 コーポレートガバナンス・コードには、経営陣との連絡・調整や監査役または監査役会との連携を担う「筆頭独立社外取締役」の選任が盛り込まれたが(補充原則4-8②)、コーポレートガバナンス・コードの本家英国では、筆頭独立社外取締役(SID=シニア・インディペンデント・ディレクター)が、取締役会議長(イギリスでは社外取締役が就任する)の評価のほか、取締役会を自己評価する役目も負う(2015年1月26日のニュース「“日本版SID”にふさわしい人材像は」参照)。さらに、FTSE350の企業は、コーポレートガバナンス・コードにより「3年に1回」外部の評価を入れることが求められるというように、取締役会の評価が徹底している(英国のコーポレートガバナンス・コードの翻訳 15ページ下部~参照)。外部の評価会社には5~6社著名なところがあるが、評価の内容は辛辣だ。

FTSE350 : ロンドン証券取引所に上場する企業のうち、時価総額上位350位の企業の銘柄で構成されるロンドン証券取引所の株式指標。英国の新聞フィナンシャルタイムズとロンドン証券取引所の合弁会社が共同出資する企業「FTSEインターナショナル」により公表される。FTSE100、FTSE250もある。

 評価会社は各取締役にインタビューしたり、取締役会の議事録を見たりするなどして、例えば・・・

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2015/03/04 英国で発達する取締役会の外部評価、日本では?(会員限定)

 コーポレートガバナンス・コードには、経営陣との連絡・調整や監査役または監査役会との連携を担う「筆頭独立社外取締役」の選任が盛り込まれたが(補充原則4-8②)、コーポレートガバナンス・コードの本家英国では、筆頭独立社外取締役(SID=シニア・インディペンデント・ディレクター)が、取締役会議長(イギリスでは社外取締役が就任する)の評価のほか、取締役会を自己評価する役目も負う(2015年1月26日のニュース「“日本版SID”にふさわしい人材像は」参照)。さらに、FTSE350の企業は、コーポレートガバナンス・コードにより「3年に1回」外部の評価を入れることが求められるというように、取締役会の評価が徹底している(英国のコーポレートガバナンス・コードの翻訳 15ページ下部~参照)。外部の評価会社には5~6社著名なところがあるが、評価の内容は辛辣だ。

FTSE350 : ロンドン証券取引所に上場する企業のうち、時価総額上位350位の企業の銘柄で構成されるロンドン証券取引所の株式指標。英国の新聞フィナンシャルタイムズとロンドン証券取引所の合弁会社が共同出資する企業「FTSEインターナショナル」により公表される。FTSE100、FTSE250もある。

 評価会社は各取締役にインタビューしたり、取締役会の議事録を見たりするなどして、例えば「アジア地域の重要性に鑑みると、アジア地域でのストラテジーに関する議題がないのはおかしい」「この議題に対し、取締役の中で質問が出ないのはおかしい」「社外取締役の中にメイン事業に関連するサイエンスの分かる人がいない」といった評価結果とそれに対するアクションプランを提示する。これはアニュアルレポートに掲載されるため、会社の今後の対応は投資家にも検証されることになる。

 英国では、このような厳しい外部評価の結果、取締役会が単なる牽制機関ではなく「ストラテジーを議論する場」となっていく効果が期待されている。また、こうした評価会社からは、他社の評価を通じて得た様々な知見を踏まえたサジェスチョンを受けることができるという点も、企業にとってはプラスになると考えられている。

 日本のコーポレートガバナンス・コードには、英国のコーポレートガバナンス・コードにおける取締役会評価に相当するコードは入っているものの(下記の原則4-3「取締役会の役割・責務(3)」参照)、取締役会の外部評価にまでは言及していない。

原則4-3「取締役会の役割・責務(3)」
 取締役会は、独立した客観的な立場から、経営陣・取締役に対する実効性の高い監督を行うことを主要な役割・責務の一つと捉え、適切に会社の業績等の評価を行い、その評価を経営陣幹部の人事に適切に反映すべきである。

 とはいえ、日本のコーポレートガバナンス・コードの序文では、コードは定期的に見直しが検討される旨が明記されており、今後、取締役会の外部評価が求められることはあり得る。

 英国では、取締役会の外部評価会社の権威が重要視されており、同時に外部評価が1つの“ビジネス”として確立している。いずれ日本でも同様の評価会社が出現する可能性もありそうだ。

2015/03/03 “空気”を読めない社外取締役の必要性

 社外取締役候補として、多くの企業が「元経営者」を挙げているが、日本では供給面に課題がある(すなわち、数が限られている)ことは2015年2月16日のニュース「経営者出身の社外取締役が少ない理由とその解決策」でお伝えしたとおりだ。

 元経営者とはタイプが違うが、社外取締役の候補としてリストアップしたいのが「アナリスト」である。経験の長いアナリストであれば、産業分析、企業分析に長けているうえ、資本市場についても十分理解しており、企業経営に貢献できる部分は大きい。また、他の企業の分析も行ってきたただけに、自社が今後直面する可能性がある様々な局面においても、事例を踏まえた適切なアドバイスもできる。

 もう1つ、アナリストを社外取締役候補に推す大きな理由は、・・・

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2015/03/03 “空気”を読めない社外取締役の必要性(会員限定)

 社外取締役候補として、多くの企業が「元経営者」を挙げているが、日本では供給面に課題がある(すなわち、数が限られている)ことは2015年2月16日のニュース「経営者出身の社外取締役が少ない理由とその解決策」でお伝えしたとおりだ。

 元経営者とはタイプが違うが、社外取締役の候補としてリストアップしたいのが「アナリスト」である。経験の長いアナリストであれば、産業分析、企業分析に長けているうえ、資本市場についても十分理解しており、企業経営に貢献できる部分は大きい。また、他の企業の分析も行ってきたただけに、自社が今後直面する可能性がある様々な局面においても、事例を踏まえた適切なアドバイスもできる。

 もう1つ、アナリストを社外取締役候補に推す大きな理由は、アナリストは「空気を読まない」ということだ。多くの上場企業の取締役会は、“空気”が支配しているといってよい。取締役のほとんどは終身雇用の下、同一企業で長い年月働いている。その結果、多くの取締役は「同じ価値観」が身に付いている。このような価値観の共有にはもちろんプラスの面もあるが、一方で、新しい価値観や変化を受け入れない土壌を作りかねない。昨今の急激な経営環境の変化に鑑みれば、マイナス面が大きいだろう。

 取締役会では「共有された価値観」が“空気”となり、取締役会を支配している。この空気には、社長自身も逆らえないことも多い。日本企業の取締役会にいま求められているのは、そのような空気の支配の打破といっても過言ではない。その最も効果的な方法は、「空気を読まない」社外取締役を入れることである。

 多くのアナリストは、1つの企業に留まることなく、様々な企業を渡り歩いてきている。どの企業に行っても仕事内容は変わらず、ほとんど“一匹狼”のような状態にある。このため、組織の価値観に染まることなく、自然と「空気とは無縁な存在」になっている。実際、アナリストは、例えば企業の説明会でもまったく空気を読まない質問や発言を繰り返す。こうした特性は、取締役会を支配する「同じ価値感」を打破するという観点から、実は社外取締役に最も必要なものと言えよう。

2015/03/02 「団体交渉拒否」とみなされるケースとその防止策

 主な自動車メーカーの労働組合が一斉に会社への要求書を提出し、労使交渉が本格的に始まった。

 労働組合から団体交渉を求められた場合に会社として最もやってはいけない対応が、・・・

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2015/03/02 「団体交渉拒否」とみなされるケースとその防止策(会員限定)

 主な自動車メーカーの労働組合が一斉に会社への要求書を提出し、労使交渉が本格的に始まった。

 労働組合から団体交渉を求められた場合に会社として最もやってはいけない対応が、その団体交渉を拒否することだ。団体交渉の申入れ自体を無視するのは論外だが、会社にそのつもりはなくても「拒否」とみなされることがあるので注意したい。例えば、団体交渉の開催場所を労働者の勤務地とは離れた本社所在地に指定する、開催時間を「昼休みの1時間」に限定する、といった会社側の都合を押し付ける行為は、「団体交渉拒否」とみなされる可能性が高い。一般的に団体交渉は、労働者側に過度の負担を強いないよう、労働者の勤務地の近くで開催し、費用(例えば社外開催に伴う会場費)が発生する場合には会社が負担すべきであろう。これは法律上の義務ではないが、組合から「団体交渉拒否」とのそしりを受けないための“防衛策”と考えておきたい。

 また、形式的には交渉に応じていたとしても、何ら裁量権を与えられていない人事部長等が経営者側の回答を伝えるだけに終始するというパターンも見られる。この場合、不誠実団交(誠実交渉義務違反)として労働組合法第7条に掲げる不当労働行為に該当する恐れがある。

 「団体交渉拒否」(「不誠実団交」を含む)といった不当労働行為について労働委員会に提訴されれば、その事実だけで“ブラック企業”といったレッテルを貼られかねない。そうならないためには、団体交渉の申し入れがあったら、きちんと交渉の場を用意して、まずは労働者側の言い分に耳を傾けるべきだろう。その後で、具体的な資料と根拠を明示して会社側の言い分を堂々と主張すればよい。役員は、「団体交渉に誠実に応じること」と「労働組合の要求を受け容れること」とはまったく別物であることを認識しておきたい。

 なお、近年は、企業内での労働組合組織率が低下している一方で、「合同労組」が労使紛争に関与するケースが増えている。そのため、企業規模の大小、企業内組合の有無を問わず、すべての企業は、合同労組から団体交渉を申し入れられる可能性があることは念頭に置いておく必要がある。

合同労組 : 企業の枠を超えて、地域単位で労働者を組織する労働組合のこと。具体的には「合同労組」「一般労組」「地域ユニオン」等と呼ばれ、主に中小企業の労働者が個人加盟しているのが特徴。