2015/02/23 ホワイトカラーエグゼンプションより影響が大きい労基法の改正項目(会員限定)

 ホワイトカラーエグゼンプションが大きな話題となっている。これは、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会がこのほど(2015年2月13日)、「今後の労働時間法制等の在り方について」と題する報告書をまとめ、「高度専門労働者」について労働基準法第4章に定める「労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定」の適用を除外する「高度プロフェッショナル制度」の創設を厚労大臣に建議したからだ。

 ただ、実際にこの制度の適用対象となるホワイトカラーは極めて限られることが予想される。報告書では、ホワイトカラーエグゼンプションを適用する条件として、(1)高度の専門的知識等を要する、(2)“業務に従事した時間”と“業務の成果”との関連性が強くない、(3)平均給与額の3倍を相当程度上回る報酬を支払う―――ことなどを挙げており、その対象者としてディーラー、アナリスト、コンサルタント、商品開発、研究開発職などを例示している。しかし、そもそもこれらの職種が存在しない企業も多く、いたとしても人数は少ないため、ホワイトカラーエグゼンプションを導入したとしても、経営への影響はほとんどないとの見方が強い。

 むしろ影響が大きいと思われるのは、企画業務型裁量労働制の範囲拡大だ。

 企画業務型裁量労働制とは、事業運営に関する事項の企画・立案等の業務(例えば「経営企画」や「広報」等)に従事する労働者について、労使委員会の決議と労働者本人の同意を前提に、労使で取り決めた時間数を労働したものとみなす制度であり、同制度の対象となる労働者は業務遂行の手段や時間配分を自らの裁量で決めることができる。

労使委員会 : 使用者及びその事業場 の労働者を代表する者が構成員となっている委員会で、企画業務型裁量労働制を実施するために労働基準法に設けられた。

 今回の建議では同制度の対象業務を拡大し、(1)課題解決型提案営業(例えば「顧客ニーズに応じた新商品の開発・販売」等)、(2)事業運営に関する事項の実施管理とその実施状況の検証結果に基づく企画立案等を一体的に行う業務(例えば「全社レベルの品質管理計画の立案」等)も「企画業務」に加えることを提言している。また、労使委員会決議を本社一括(現行は事業場単位)で管轄の労働基準監督署に届け出ることを認めるほか、現在は6か月ごとに義務付けられている定期報告を「最初の6か月」だけとするなど、手続きの簡素化も提言されている。

 「企画業務型裁量労働制」は、その対象業務にさえ該当すれば、能力や報酬額の条件なしで導入できるため、企業にとってはホワイトカラーエグゼンプションよりも圧倒的に使いやすい。この点からすると、今回の労基法改正の目玉は、世間で騒がれているホワイトカラーエグゼンプションではなく、企画業務型裁量労働制の見直しの方だと考えられる。

 ホワイトカラーエグゼンプションにせよ企画業務型裁量労働制にせよ、報告書の提言はすべて「労働時間の短縮」を目指したものというのが表面的な理由だが、現実には「残業代のカット」ではないかとの声もある。制度導入にあたっては、労働者側の納得感を得ることが経営陣には求められることになりそうだ。

建議の主な内容
「働き過ぎ防止」に関する内容
・中小企業には適用が猶予されていた労働基準法第37条第1項ただし書きの規定(月60時間を超える時間外労働の割増賃金率を5割以上とする)を全面適用する。
・年次有給休暇を年間5日以上取らせることを事業主に義務付ける。
・年次有給休暇の取得については、本人の希望を尊重したうえで、計画的付与(労働基準法第39条第6項)を活用すべき。
「高度プロフェッショナル制度」に関する内容
・(1)高度の専門的知識等を要する、(2)“業務に従事した時間”と“業務の成果”との関連性が強くない、(3)平均給与額の3倍を相当程度上回る報酬を支払う、といった性質を持つ業務に限り、労働基準法第4章に定める「労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定」を適用除外とする。
・ただし、この制度を導入する前提として、(1)健康・福祉確保措置を講じること、(2)対象労働者の同意を得ること、(3)労使委員会を設置し、対象業務の範囲や対象労働者の範囲等を5分の4以上の多数により決議すること、が求める。
その他
・現行は「1か月以内」とされているフレックスタイム制の清算期間を「3か月以内」となる。
・企画業務型裁量労働制の範囲を拡大し、また、導入手続きを簡素化する。

2015/02/20 女性の登用、日本の現在地

 安倍政権は、2020年までに「指導的地位(課長級以上)」に占める女性の割合30%程度にすることを目標に掲げているのは周知のとおり。「女性の割合30%」というと、一見先進的な取組みに見えるかもしれないが、そうではない。例えば英国では現在でも管理職の35%以上を女性が占めており、日本政府が掲げる目標はとうにクリアしている。女性の管理職比率が40%を超える米国はもちろん、フランスやドイツ、北欧諸国も軒並み30%を超えている。

 こうした国々の関心事は既に「取締役」の女性比率に移っている。女性のキャリア支援などを行う米国の非営利団体カタリストのレポートによると、株価インデックス構成企業の取締役会に占める女性比率がもっとも高いのはノルウェー35.5%で、以下フィンランド29.9%、フランス29.7%、スウェーデン28.8%、ベルギー23.4%、英国22.8%、デンマーク21.9%、オランダ21.0%、ドイツ18.5%、スペイン18.2%、スイス17.0%、オーストリア13.0%、アイルランド10.3%、ポルトガル7.9%、カナダ20.8%、米国19.2%、オーストラリア19.2%、香港10.2%、インド9.5%と続き、日本はインドを大きく下回る3.1%と、ダントツに低いのが現実だ。

 女性取締役比率の上位には欧州諸国が並んでいるが、これらの国々はそれでも十分だとは思っていない。例えば英国ではFTSE100構成企業の取締役会における同比率を今年中に25%に引き上げるという目標が掲げられている。そして、この目標を達成するために、これまで尊重されてきた「規制で縛ることなく自主的な取組みとして進めるべき」とのこだわりを捨て、女性取締役比率トップのノルウェーで採用されているクオータ制の導入議論も浮上している。さらにEUでは・・・

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2015/02/20 女性の登用、日本の現在地(会員限定)

 安倍政権は、2020年までに「指導的地位(課長級以上)」に占める女性の割合30%程度にすることを目標に掲げているのは周知のとおり。「女性の割合30%」というと、一見先進的な取組みに見えるかもしれないが、そうではない。例えば英国では現在でも管理職の35%以上を女性が占めており、日本政府が掲げる目標はとうにクリアしている。女性の管理職比率が40%を超える米国はもちろん、フランスやドイツ、北欧諸国も軒並み30%を超えている。

 こうした国々の関心事は既に「取締役」の女性比率に移っている。女性のキャリア支援などを行う米国の非営利団体カタリストのレポートによると、株価インデックス構成企業の取締役会に占める女性比率がもっとも高いのはノルウェー35.5%で、以下フィンランド29.9%、フランス29.7%、スウェーデン28.8%、ベルギー23.4%、英国22.8%、デンマーク21.9%、オランダ21.0%、ドイツ18.5%、スペイン18.2%、スイス17.0%、オーストリア13.0%、アイルランド10.3%、ポルトガル7.9%、カナダ20.8%、米国19.2%、オーストラリア19.2%、香港10.2%、インド9.5%と続き、日本はインドを大きく下回る3.1%と、ダントツに低いのが現実だ。

 女性取締役比率の上位には欧州諸国が並んでいるが、これらの国々はそれでも十分だとは思っていない。例えば英国ではFTSE100構成企業の取締役会における同比率を今年中に25%に引き上げるという目標が掲げられている。そして、この目標を達成するために、これまで尊重されてきた「規制で縛ることなく自主的な取組みとして進めるべき」とのこだわりを捨て、女性取締役比率トップのノルウェーで採用されているクオータ制の導入議論も浮上している。さらにEUでは現在、「社外取締役」の女性比率を40%以上にすることを求める指令案が審議されている。

FTSE100 : ロンドン証券取引所に上場する銘柄のうち時価総額上位100銘柄による時価総額加重平均型の株価指数

クオータ制 : 一定の比率を強制すること。クオータ(Quota)とは、「割り当て」などを意味し、「4分の1」を意味するクォーター(quarter)とは異なる。

 日本では、今年の3月31日以後に終了する事業年度より有価証券報告書の【役員の状況】に「役員の男女別の数」と「役員のうち女性の比率」の記載が求められることになったが(ここでいう「役員」とは、取締役だけでなく、会計参与、監査役、執行役なども含む)、女性取締役比率の目標化の波は、早晩日本にもやってくる可能性は十分にある。

 このように女性の取締役比率を強制することで、逆に女性の真の実力が評価されにくくなるのではないかとの指摘もあるが、いずれにせよ、日本企業における女性取締役比率はグローバルスタンダードから大きく乖離しているのは間違いない。特に女性を顧客とする企業で女性取締役がいない、もしくは少ない理由は、投資家にも説明しにくい。「社内に適当な候補者がいない」という声も聞かれるが、その場合、まず社外取締役から女性の登用を検討すべきだろう。

2015/02/19 【総務等】印章管理を適正に行いたい

 

印章管理が必要とされる理由

会社で使用する印章には、従業員個人の単なる認(みとめ)印から会社住所の入ったゴム印、角印(社判と呼ばれることもあり、見積書や請求書、領収書などに押印される)、銀行印(金融機関への届出印)、社長印(代表者印。丸印とも呼ばれる)といった重要な印章まで様々なものがあります。また各部署で所属長印や管理職印などを使用する場合もあることから、会社全体では相当数の印章を使用していることになります。

社長印の管理がずさんであったため、未承認の契約書に勝手に押印が行われたとします。そういった事情を知らない相手方に対しては、会社は契約の無効を主張できない場合があります。

また、銀行印の管理がルーズな場合、従業員が勝手に銀行印を持ち出して、小切手や支払手形に押印のうえ振り出してしまうといったトラブルが発生しかねません。

そのようなトラブルを回避するために、総務担当取締役は、印章管理の必要性を十分認識し、対外的文書で用いられる社長印、銀行印および角印(以下、「社印」)の管理ルールを構築することで、権限のない従業員が社印を勝手に使用できないような対策を講じておく必要があります。

代表印の印鑑届はなぜ必要か?

会社設立時の登記申請の際に、会社の代表印()を届け出します(上述したように社長印を用いるのが一般的です。銀行届出印を代表印として届け出ることは、リスクが集中してしまうため、すべきではありません)。これが、いわゆる会社の“実印”になります。変更登記の申請時には登録した代表印が必要になります。

 印鑑の大きさは、一辺の長さが1cm以上3cmの正方形に収まるようなものである必要があります。形(丸型か角型か等)については特に制限はありません。印影は鮮明で照合しやすいものでなければなりません。

このような代表印の届出は、・・・

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印章にアクセスできる担当者を限定

会社で使用する各種印章のうち、社印は対外的な書類に押印するものであることから厳重に管理されるべきです。これらの印鑑の管理方法について説明します。

(1)管理場所
社印はいずれも会社にとって重要な印章であるため、・・・

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社長印を紛失した場合の対処法

社長印の管理をどれほど厳重にしたところで、紛失・盗難のリスクをゼロにはできません。万が一、社長印を紛失したり盗難されたりした場合、総務担当取締役としては、管理担当者へ何を指示すべきでしょうか?

社長印を代表印として登録している場合、・・・

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銀行届出印を紛失した場合の対処法

会社が発行する支払手形や小切手、銀行関連の各種書類に押印する印鑑(銀行届出印)に紛失や盗難があった場合、総務担当取締役としては、管理担当者へ何を指示すべきでしょうか?・・・

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角印を紛失した場合の対処法

法務局や銀行に届出をしていない角印を紛失(盗難)した場合には、総務担当取締役としては、管理担当者へまず何を指示すべきでしょうか?・・・

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2015/02/19 チェックリスト:印章管理を適正に行いたい(会員限定)

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■チェックリスト:印章管理を適正に行いたい

チェック事項 備考 対応未了 対応済
印章管理規程が作成されており、各部署に周知徹底が図られているか。
社長印、銀行印および角印は、鍵のかかる金庫の中に常時保管することとし、その金庫の鍵も総務部長等担当の管理職が責任を持って管理しているか。
各部署が勝手に印鑑を作らないように社印登録制度(社印登録簿)を作り、総務部等の担当部署が一元的に社印管理を行う体制・ルールを構築しているか。 印章管理規程を定め、運用する。
各部署に印鑑の保管部署・保管責任者・保管場所等を定めておき、常に印鑑の所在を明確にできるようにしているか。 対外的な書類に押印する社印については、使用する都度、使用承認者・押印者・使用目的・使用日時等を記入する管理台帳を各部署に作成しているか。
社印の紛失・盗難等があった場合の処理方法等についてマニュアルを整備しているか。 事業内容や企業文化にマッチしないシステムや仕事の進め方、報酬制度などが導入されることで、現場が混乱し、かえって効率が悪化したり、従業員のモチベーションが低下したりするケースを回避しなければならない。 登記所や警察、銀行等への届け出が必要になる。
社長印(実印)を契約書等に押印する場合、厳格な手続きが必要なルールを構築しているか。 例えば各部署から社長印使用申請書を提出させ、社長自身や担当役員の承認を経たものについて、総務部長が押印するといった手続きが考えられる。
印鑑登録をしていない社長印(認印)や会社の代表権を有する役員(会社内部における役職名の如何にかかわらず、会社法上の「代表取締役」に該当する者)の印章も、社長印(実印)と同様に契約書などに押印されることで会社としての対外的な責任が発生するため、社長印と同様、厳重な管理下に置かれているか。
印鑑登録カードは実印登録した社長印とは別の場所で管理しているか。
印鑑証明書は、必要な都度必要な枚数だけ取得するようにしているか。 成功報酬も検討に値するが、成果の測定方法を慎重に確認しておく必要がある。
銀行印も、社長印と同様、厳重な管理下に置かれているか。
銀行印は、不正使用のリスクを減らすために、請求書や領収書への押印に用いる印鑑とは別の印鑑を用いているか。 ジュエリーの製造・販売を営む光・彩(JASDAQ上場)の事件では、会社が発行する領収証、請求書その他の証明書に用いるための印鑑を銀行印としても用いていたため、不正な資金引き出しが容易になっていたということが背景にあった。
銀行印は、手形帳・小切手帳や通帳とは別の金庫で管理しているか。
社長印(実印)の紛失・盗難があった場合、登記所や警察等に対して、必要な届出や報告を完了しているか。
銀行届出印の紛失・盗難があった場合、取引銀行や警察署・裁判所等に対して必要な届け出や報告が完了しているか。
角印の紛失・盗難があった場合、警察署等に対して必要な届け出や報告が完了しているか。

ケーススタディ役員実務「印章管理を適正に行いたい(会員限定)」はこちら

2015/02/19 【総務等】印章管理を適正に行いたい(会員限定)

印章管理が必要とされる理由

会社で使用する印章には、従業員個人の単なる認(みとめ)印から会社住所の入ったゴム印、角印(社判と呼ばれることもあり、見積書や請求書、領収書などに押印される)、銀行印(金融機関への届出印)、社長印(代表者印。丸印とも呼ばれる)といった重要な印章まで様々なものがあります。また各部署で所属長印や管理職印などを使用する場合もあることから、会社全体では相当数の印章を使用していることになります。

社長印の管理がずさんであったため、未承認の契約書に勝手に押印が行われたとします。そういった事情を知らない相手方に対しては、会社は契約の無効を主張できない場合があります。

また、銀行印の管理がルーズな場合、従業員が勝手に銀行印を持ち出して、小切手や支払手形に押印のうえ振り出してしまうといったトラブルが発生しかねません。

そのようなトラブルを回避するために、総務担当取締役は、印章管理の必要性を十分認識し、対外的文書で用いられる社長印、銀行印および角印(以下、「社印」)の管理ルールを構築することで、権限のない従業員が社印を勝手に使用できないような対策を講じておく必要があります。

代表印の印鑑届はなぜ必要か?

会社設立時の登記申請の際に、会社の代表印()を届け出します(上述したように社長印を用いるのが一般的です。銀行届出印を代表印として届け出ることは、リスクが集中してしまうため、すべきではありません)。これが、いわゆる会社の“実印”になります。変更登記の申請時には登録した代表印が必要になります。

 印鑑の大きさは、一辺の長さが1cm以上3cmの正方形に収まるようなものである必要があります。形(丸型か角型か等)については特に制限はありません。印影は鮮明で照合しやすいものでなければなりません。

このような代表印の届出は、第一義的には第三者からの虚偽の登記申請を防止するための手段の1つとなります。すなわち、代表印届出時に「代表取締役の個人の実印」および「市区町村の発行する印鑑証明書」が必要になるため、登記申請者が代表取締役と同一であることを確認できます。

また、代表印の届出をしておくと、法務局より印鑑証明書の交付を受けられるので、契約書等に使用されている印鑑に信用力を与えることができ、会社が取引を円滑に実行できるという効果があります。

印章にアクセスできる担当者を限定

会社で使用する各種印章のうち、社印は対外的な書類に押印するものであることから厳重に管理されるべきです。これらの印鑑の管理方法について説明します。

(1)管理場所
社印はいずれも会社にとって重要な印章であるため、だれでもアクセスできるという状況は絶対に避けなければなりません。鍵のかかる金庫の中に常時保管することとし、その金庫の鍵も総務部長等担当の管理職が責任を持って管理するといった物理的なアクセス・ルールを構築する必要があります。

(2)社印の全般的な管理方法
社印を管理するには、印章管理規程を整備・運用し、次の点を各部署に徹底する必要があります。

・各部署が勝手に印鑑を作らないように社印登録制度(社印登録簿)を作り、総務部等の担当部署が一元的に社印管理を行う体制・ルールを構築する。

・各部署で印鑑の保管部署・保管責任者・保管場所等を定めておき、常に印鑑の所在を明確にできるようにする。

・対外的な書類に押印する社印については、使用する都度、使用承認者・押印者・使用目的・使用日時等を記入する管理台帳を各部署で作成する。

上記の他、社印の紛失・盗難等があった場合の処理方法等についてもマニュアルを整備し、万が一の事態に備えるべきです。

(3)社長印と銀行印の特殊性
社長印は上述したように印鑑登録をして、会社の実印として用いるのが一般的です(印鑑登録をしない社長印は、単なる認印です)。そこで、社長印を使用する場合のルールは角印よりも厳格に定めておく必要があります。例えば、契約書等に押印する場合に、各部署から社長印使用申請書を提出させ、社長自身や担当役員の承認を経たものについて、総務部長が押印するといった運用が必須となります。また、印鑑登録カードは実印登録した社長印とは別の場所で管理すべきです。印鑑証明書も余分に取得するのではなく、その都度必要な枚数だけ取得するようにしましょう。

なお、印鑑登録をしていない社長印(認印)や会社の代表権を有する役員(会社内部における役職名の如何にかかわらず、会社法上の「代表取締役」に該当する者)の印章も、社長印と同様に契約書などに押印されることで会社としての対外的な責任が発生するため、社長印と同様の厳重な管理が必要です。

一方、銀行印は金融機関への預金払い出しの申請や支払手形・小切手の振り出しに用いられます。銀行印も社長印と同様、厳重な管理が必要です。銀行印は、不正使用のリスクを減らすために、請求書や領収書への押印に用いる印鑑とは別の印鑑を用いるべきです(ジュエリーの製造・販売を営む光・彩(JASDAQ上場)の事件では、会社が発行する領収証、請求書その他の証明書に用いるための印鑑(丸印)を銀行印としても用いていたため、不正な資金引き出しが容易になっていたということが背景にありました)。

銀行印の保管にあたっては、万が一のリスクを減らすために、手形帳・小切手帳や通帳とは別の金庫で管理すべきです(手形帳と銀行印の管理については「手形・小切手の管理を適正に行いたい」の「手形帳に関する内部統制の12のポイント」を参照してください)。

社長印を紛失した場合の対処法

社長印の管理をどれほど厳重にしたところで、紛失・盗難のリスクをゼロにはできません。万が一、社長印を紛失したり盗難されたりした場合、総務担当取締役としては、管理担当者へ何を指示すべきでしょうか?

社長印を代表印として登録している場合、社長印は実印として印鑑証明を受けることができるため、紛失・盗難により悪用された場合、会社は不本意な義務を負わされ、多額の損失が発生してしまう危険があります。したがって、まずは第三者が印鑑証明書を取ることができないような措置を迅速に講じる必要があります。具体的には、法務局に「改印届」を提出する方法もしくは「印鑑登録廃止届」を提出する方法のいずれかを行います。

その上で、所轄の警察署に被害届を提出した上で、盗難届出証明書や紛失証明書の交付を受けます。これは、紛失・盗難にあった印鑑が不正に使用された場合に、会社が被った損害額を裁判等で算定するために、当該印鑑が紛失・盗難にあった時点を明確にしておく必要があるからです。

銀行届出印を紛失した場合の対処法

会社が発行する支払手形や小切手、銀行関連の各種書類に押印する印鑑(銀行届出印)に紛失や盗難があった場合、総務担当取締役としては、管理担当者へ何を指示すべきでしょうか?

(1)取引銀行での手続き
取引銀行に対して事故届を提出し、支払手形などの支払いを全面的に停止してもらう手続きをとります。その際、改印届を同時に提出できるのであれば提出します。

なお、一度振り出された支払手形・小切手については、その流通を円滑化するという目的から手形・小切手法等により特別の法的効力(例えば善意取得制度など)が自動的に与えられますので、まずは顧問弁護士に相談し、どのような対策を講じる必要があるのかを確認しておく必要があります。

(2)警察での手続き
所轄警察署に被害届・紛失届を提出し、盗難届出証明書や紛失届出証明書の交付を受けます。

(3)裁判所での手続き
銀行届出印とともに手形・小切手も紛失・盗難となった場合には、最終的には裁判所に公示催告の申立を行い、除権判決を出してもらう必要があります。

角印を紛失した場合の対処法

法務局や銀行に届出をしていない角印を紛失(盗難)した場合には、総務担当取締役としては、管理担当者へまず何を指示すべきでしょうか?

角印は、法務局に印鑑届出を行なっている社長印や銀行に届け出ている銀行印のように外部に届け出が必要な印鑑ではないことから、それらの印鑑に比べると悪用されるリスクは相対的には低いです。しかし、角印も対外的に使用される印鑑である以上悪用されるリスクはゼロではありません。実印と同様、速やかに警察に届け出る必要があります。

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2015/02/19 (新用語・難解用語)暴利行為

 「暴利行為」と言うと、従来は例えば貸金業における過大な利息の請求のような、文字通り“暴利を貪る”行為が念頭に置かれてきた。しかし、取引形態の多様化に伴い、単に暴利を貪る以外の行為も、「暴利行為」と考えられるようになりつつある。例えば霊感商法など、相手方の弱みに付け込んで過大な利益を得る行為である。つまり、「結果が暴利であること」のみならず、相手方が合理的な判断が出来ないことを不当に利用するような「契約の締結過程」も暴利行為の一類型として問題視されるようになってきたということだ。

 暴利行為に該当するかどうかは、これまで公序良俗違反(民法第90条)の枠組みの中で判断がされてきたが、上述のような暴利行為の範囲の拡大を踏まえ、取引の相手方保護をより図りやすくすべきとの声がある。こうした中、今通常国会での法案提出を目指し、要綱案の最終的な取りまとめに向けた検討が進められている民法(債権法)の見直しでは、「暴利行為」の明文化が焦点の1つとなってきた。具体的には、・・・

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2015/02/19 (新用語・難解用語)暴利行為(会員限定)

 「暴利行為」と言うと、従来は例えば貸金業における過大な利息の請求のような、文字通り“暴利を貪る”行為が念頭に置かれてきた。しかし、取引形態の多様化に伴い、単に暴利を貪る以外の行為も、「暴利行為」と考えられるようになりつつある。例えば霊感商法など、相手方の弱みに付け込んで過大な利益を得る行為である。つまり、「結果が暴利であること」のみならず、相手方が合理的な判断が出来ないことを不当に利用するような「契約の締結過程」も暴利行為の一類型として問題視されるようになってきたということだ。

 暴利行為に該当するかどうかは、これまで公序良俗違反(民法第90条)の枠組みの中で判断がされてきたが、上述のような暴利行為の範囲の拡大を踏まえ、取引の相手方保護をより図りやすくすべきとの声がある。こうした中、今通常国会での法案提出を目指し、要綱案の最終的な取りまとめに向けた検討が進められている民法(債権法)の見直しでは、「暴利行為」の明文化が焦点の1つとなってきた。具体的には、実際に暴利行為として無効と判断された判例における「当事者の一方に著しく過大な利益を得させ、又は相手方に著しく過大な不利益を与える法律行為は、相手方の窮迫、経験の不足、知識の不足その他の相手方が法律行為をするかどうかを合理的に判断することが出来ない事情があることを不当に利用した(ことになる)」との記述を明文化することが検討されていた。

 しかし、当フォーラムの取材によると、暴利行為の明文化は、経済界の反対により要綱案には盛り込まれないことが確定的となった。仮に暴利行為が民法で明文化されれば、実際に司法の手により暴利行為と判断されるかは別として、「暴利行為である」と主張することにより事後的に契約を覆そうという動きが取引の相手方から出る可能性が高まることは間違いない。取引とはそもそも相手方から何らかの利益を得るものである以上、そのリスクは常につきまとう。経済界が「明文化」に反対するのもうなずけるところだ。

 もっとも、民法には盛り込まれなかったとはいえ、「契約の締結過程」も暴利行為の一類型とされるようになってきていること自体は変わらないという点には留意したい。取引の相手から暴利行為を主張されないためには、「結果」だけではなく、契約の「締結過程」に配慮する必要がある。具体的には、契約の締結において十分な情報提供を心掛け、相手方の納得を得ることが一層重要になるだろう。

2015/02/18 6社が監査等委員会設置への移行を表明

 5月に施行される改正会社法により、株式会社における機関設計の新たな選択肢として「監査等委員会設置会社」が加わったのは周知のとおり。監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行すると、社外取締役2名の常置が義務付けられる一方、監査役(会)制度は廃止されることになる。このため、社外取締役候補が不足している会社では、社外監査役(2名以上)を社外取締役に“横滑り”させることで、「社外取締役2名」というコーポレートガバナンス・コードが求める要件に対応することが可能となる。

 2月13日現在、監査等委員会設置会社に移行することを表明した企業は、・・・

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2015/02/18 6社が監査等委員会設置への移行を表明(会員限定)

 5月に施行される改正会社法により、株式会社における機関設計の新たな選択肢として「監査等委員会設置会社」が加わったのは周知のとおり。監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行すると、社外取締役2名の常置が義務付けられる一方、監査役(会)制度は廃止されることになる。このため、社外取締役候補が不足している会社では、社外監査役(2名以上)を社外取締役に“横滑り”させることで、「社外取締役2名」というコーポレートガバナンス・コードが求める要件に対応することが可能となる。

 2月13日現在、監査等委員会設置会社に移行することを表明した企業は、東証の適時開示ベースで6社(発表順:バイテック、アンリツ、岩塚製菓、コスモ石油、ジャフコ、サントリー食品インターナショナル)となった模様。これらは全て監査役会設置会社であるが、現時点における社外取締役の選任状況は各社でバラツキがある。以下、具体的にチェックしてみよう。

(1)社外取締役「0名」・・・岩塚製菓、ジャフコ
 改正会社法では、社外取締役を設置していない会社に対して、「社外取締役を選任することが相当でない理由」を株主総会、株主総会参考書類および事業報告において説明するように求めている。この説明は「社外取締役がいない理由」ではなく、「社外取締役の存在がマイナスである理由」でなければならないとされ、株主を納得させる説明は極めて難しいと考えられている。この説明義務を回避するために監査等委員会設置会社に移行する事例が今後も出て来る可能性は十分にある。

(2)社外取締役「1名」・・・バイテック、サントリー食品インターナショナル
 議決権行使助言機関の最大手ISSは2016年から、複数の社外取締役を選任していない上場会社の経営トップの選任議案には反対を推奨する旨の改訂ポリシーを発表した。ISSはグローバルな機関投資家に対する影響力が強く、ISSが反対を推奨すれば、日本株に投資している外資系ファンドを中心に反対行使が続出すると予想される。そのため、外国人株主比率が一定以上に達する企業を中心に、監査等委員会設置会社への移行を検討する動きが出てくることも考えられる。

(3)独立社外取締役がいないケース・・・コスモ石油
 現在金融庁と東証が策定中のコーポレートガバナンス・コードでは、上場会社は独立社外取締役を最低2名、必要であれば3分の1以上を選任すべきとしている。コスモ石油には社外取締役が2名いるものの、いずれも独立社外取締役に該当しない。両名とも筆頭株主から派遣されている社外取締役だからだ。親会社からの派遣ではではないため改正会社法上の社外要件には抵触していないが、グローバル企業としてコーポレートガバナンス・コードを意識したものと見られる。同様の理由から、大株主から社外取締役を受け入れている上場会社のいくつかは、監査等委員会設置会社への移行に踏み切るかもしれない。

 これら5社と様相が異なるのがアンリツである。同社は既に社外取締役を3名選任しており、そのいずれもが独立社外取締役に該当する。したがって、同社が監査等委員会設置会社に移行する目的は、独立社外取締役の不足の解消とは考えにくい。監査等委員会設置会社のもう1つのメリットである業務執行取締役に対する権限委譲(取締役会で決定すべき業務執行を個々の取締役に委任可能とする )を狙ったものと言えそうだ。同社は任意で指名委員会 および報酬委員会 も設置しており、今回の移行で極めて指名委員会等設置会社(旧委員会設置会社)に近い形態となる。これまで我が国では普及しなかった指名委員会等設置会社型の機関設計に向かうアンリツのガバナンス改革が注目される。