2015/02/26 (新用語・難解用語)株式報酬型ストックオプション(会員限定)

 「功績」「貢献」など主観的な要素にも左右される役員退職慰労金は、株主から見ると算定基準が不明確であり、どうしてもガバナンス上の問題を抱えやすい。こうした中、上場企業の間では2000年初頭からリーマンショックがあった2008年にかけて役員退職慰労金を廃止する動きが相次いだ。この動きはその後一旦落ち着いたものの、(1)2010年3月からスタートした新たな開示ルールにより、1億円以上の報酬を受け取る役員については、報酬金額の内訳(基本報酬、賞与、退職慰労金)を、氏名とともに開示しなければならなくなったことや、(2)臨時報告書に株主総会議案の賛成票率を開示しなければならなくなったこと、さらに、(3)平成24年度税制改正により平成25年1月1日以降支給分から役員退職所得の優遇税制が縮減されたことにより(従来は「退職慰労金額-退職所得控除額)×1/2×税率」により税金を計算することになっていたところ、「勤続年数5年以下の役員」への退職慰労金については算式中「×1/2」を廃止)、再び退職慰労金の廃止が上場企業の選択肢としてクローズアップされている。

 役員退職慰労金を廃止する場合、これを基本報酬に振り替えることが考えられるが、この方法は、要するに退職慰労金相当部分を役員報酬として先取りしているに過ぎない(しかも、退職慰労金と違って、株主総会での否決リスクもない)。役員にとっては都合が良いが、中長期的に株主への説明には耐えられないだろう。

 そこで多くの企業が採用しているのが、株式報酬型ストックオプションへの振替えだ。株式報酬型ストックオプションとは、権利行使価格を「1円」に設定したストックオプションであり、 “1円ストックオプション”とも呼ばれる。権利行使価格を1円とすることで、実質的に株式そのものを付与対象者に保有させるのと同じ効果がある。株価が上がらなければただの紙切れになってしまう通常のストックオプションと比べると、会社が倒産しない限り何らかの価値が残る株式報酬型ストックオプションの方が、退職慰労金の振替先として役員の納得感が高いと言える。

 具体的には、退職慰労金を廃止した後、毎年積み上げられる予定だった退職慰労金の原資と同等の経済的価値を、株式報酬型ストックオプションとして「毎期」付与していくことになる。ただし、権利行使ができる時期は、退職慰労金をもらうのと同様に、役員の退任時以降に設定するのが通常。退任前に権利行使ができるようでは、長期インセンティブとしての役割を果たさないからだ。

 株式報酬型ストックオプションは、「株価上昇」という方向で役員と株主のベクトルが一致することから、株主の理解も得られやすい。したがって、この株式報酬型ストックオプションを純粋な「報酬」の1つとして導入する企業も増えており、この傾向は今後も続くことになろう。

2015/02/25 ガバナンスコード対応は12月まで猶予あり!?

 2015年6月から施行予定のコーポレートガバナンス・コード(原案はこちら)では、“Comply or Explain”(上場会社が、「コードに定める規範に従う」か、「従わずにその理由を説明する」かを選択する)の原則が適用される。この“Explain”の時期について、東京証券取引所が2月24日に公表した上場規則の改正案「コーポレートガバナンス・コードの策定に伴う上場制度の整備について」(3月26日までパブコメを募集)では、「定時株主総会後遅くとも6か月後まで」猶予が設けられていることが判明した。3月決算の上場会社であれば6月後半に株主総会を開くのが通常であることから、その場合の期限は12月後半となる。

 コーポレートガバナンス・コードに示されている規範は、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2015/02/25 ガバナンスコード対応は12月まで猶予あり!?(会員限定)

 2015年6月から施行予定のコーポレートガバナンス・コード(原案はこちら)では、“Comply or Explain”(上場会社が、「コードに定める規範に従う」か、「従わずにその理由を説明する」かを選択する)の原則が適用される。この“Explain”の時期について、東京証券取引所が2月24日に公表した上場規則の改正案「コーポレートガバナンス・コードの策定に伴う上場制度の整備について」(3月26日までパブコメを募集)では、「定時株主総会後遅くとも6か月後まで」猶予が設けられていることが判明した。3月決算の上場会社であれば6月後半に株主総会を開くのが通常であることから、その場合の期限は12月後半となる。

 コーポレートガバナンス・コードに示されている規範は、基本原則、原則、補充原則の3つに分類されるが、改正案によると、東証市場第一部・市場第二部に上場している会社はそのすべてに対して“Comply or Explain”が適用される。一方、マザーズ・JASDAQに上場している会社には、根本理念的な位置付けの基本原則部分についてのみ、“Comply or Explain”が適用される。言い換えれば、マザーズ・JASDAQの上場会社は、原則や補充原則部分についての説明は不要とされたということだ。なお、コーポレートガバナンス・コードの遵守は、企業行動規範の「遵守すべき事項」として規定されることから、非遵守(“Comply”も“Explain”もしないこと)の場合は上場廃止もあり得ることになる。

 上場会社がコーポレートガバナンス・コードを“Comply”できない場合、“Explain”が必要となるが、“Explain”の媒体は“コーポレート・ガバナンスに関する報告書”(以下、CG報告書)が担うことになる。もっとも、改正案によると、CG報告書のみが“Explain”の媒体ではなく、他の開示・公表書類で開示している場合、CG報告書において他の開示・公表書類の記載場所を明示するという参照方式をとることで、記載に代えることができるとしている。これによりCG報告書に「●●は事業報告に記載されている。」や「▲▲は有価証券報告書に記載されている。」と記載すればよいことから、重複した記載が不要となり、開示実務が簡素化されることになる。

 ここでいう“Explain”は、改正会社法で社外取締役非選任の上場会社に説明を求められる「相当でない理由」と異なり、ストレートでプレーンな説明で十分。なぜコードを“Comply”していないか、代わりにどういう体制を採用しているかを淡々と説明すればよい。コードを“Comply”することが「相当でない理由」の記載は求められていない。誤解が多い点だけに注意したいところだ。

 本来CG報告書は、上場会社が定時株主総会後に遅滞なく提出する必要がある文書であり、CG報告書のコーポレートガバナンス・コードへの対応部分の提出が遅れれば遅れるほど、投資家は不信感を持つことが予想される。遅れて提出されたCG報告書にて“Explain”項目が多数あり、それらがひな型的な説明に終始していれば、投資家の不信は強まるであろう。イギリスの場合、コードを遵守していなくとも、その理由を具体的かつ明確に説明できる企業の方がパフォーマンスは良いという実証分析の結果もある。また、現時点では“Comply”できていなくても、“Comply”に向けての今後の見通し(今後の取組み予定や実施時期の目途)を“Explain”するという方法もある。たとえ“Explain”項目が多数あったとしても、株主との対話姿勢を打ち出すためには、CG報告書を早目に提出することが望まれる。

 もっとも、2015年6月後半(3月決算の場合)の株主総会で新たに選任された社外取締役が、取締役会の議論に実質的に参加できるのは7月以降である。12月までの猶予は“Explain”の作文に費やすのではなく、新任の社外取締役等を含めたボードメンバーで真剣に議論を深めるために費やすべき時間と言える。

2015/02/25 セミナー「各コードの策定関与者が語る スチュワードシップ・コード × コーポレートガバナンス・コード 」を2015年2月25日(水)に開催しました。

本セミナーはすでに開催済みですが、会員の方向けにWEBセミナーを配信中です。
WEBセミナー:スチュワードシップ・コードは日本企業と機関投資家の関係をどう変えるか
WEBセミナー:コーポレートガバナンス・コードの適用開始に向けて企業がやらなければならないこと

────────────────────────────────────────

上場会社役員ガバナンスフォーラムでは、2015年2月25日(水)の14時30分~17時40分に下記のセミナーを開催いたします。

時 間 テーマ 講 師
第一部
14:30

16:00
~英国で起きたことは?
英国版との相違点が日本での展開に及ぼす影響は? …etc.~
スチュワードシップ・コードは日本企業と機関投資家の関係を
どう変えるか
江口 高顯 様
(えぐち たかあき)
(金融庁「日本版スチュワードシップ
・コードに関する有識者検討会」元メンバー)
第二部
16:10


17:40
~複数名の独立取締役選任、
指名委員会・報酬委員会は設置しなければならないのか?
政策保有株式に関する開示強化…etc.~
コーポレートガバナンス・コードの適用開始に向けて
企業がやらなければならないこと
日本経済団体連合会
経済基盤本部上席主幹
和田 照子 様
(わだ てるこ)

■第一部の詳細

セミナー
の内容
 昨年2月、機関投資家に企業との「建設的な対話」を求める日本版スチュワードシップ・コードが導入されています。これにより、企業と機関投資家の関係は今後どのように変わっていくのか、企業はこの新しい関係をどのように受け止めればよいのかについて、長年英米系の運用会社で議決権行使業務に従事し、金融庁の「日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」のメンバーとして同コード策定に携わった江口高顯様に御講演いただきます。御講演の中では、スチュワードシップ・コードの由来と意義を、日本版スチュワードシップ・コードがモデルにした英国版制定の経緯を振り返ることにより明らかにしたうえで、日本版と英国版はどこが異なり、その違いが日本でのスチュワードシップの展開をどのように左右するのかを解説します。さらに、スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナス・コードの関係、またスチュワードシップ活動を推進するためのプラットフォームであり、作業部会の一員として江口様自身も立ち上げ準備に関与する経済産業省企業報告ラボのプロジェクトの1つ「投資家フォーラム」の動向についてもお話しいただきます。
講師の
ご紹介
江口 高顯(えぐち たかあき)様
 1976年東京大学理学部物理学科卒業。同理学系研究科修士(科学史)。米ペンシルバニア大学大学院修士(経済学)。2003年から英系および米系の運用会社にて議決権行使業務に従事。金融庁「日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」元メンバー。経済産業省・企業報告ラボ「投資家フォーラム作業部会」メンバー。現在は、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士後期課程(経営法務)に在籍する傍ら、コーポレート・ガバナンスに関連する活動に従事している。

■第二部の詳細

セミナー
の内容
 政府が進めるコーポレート・ガバナンス強化の目玉策としていよいよ今年6月の株主総会から適用開始となるコーポレートガバナンス・コードですが、上場企業としてはまず「何をしなければならないのか?」「どのような義務が生じるのか?」といったところが気になるのではないでしょうか。本セミナーでは、コーポレートガバナンス・コードの策定において、企業側の意見を反映させる過程に関与した経団連の和田照子様をお招きし、「複数名の独立取締役選任」「指名委員会・報酬委員会は設置しなければならないのか?」「政策保有株式に関する開示強化」等々、コードのポイントについて解説していただきながら、コードの趣旨を踏まえ、企業に求められる対応を明らかにしていきます。今後、コーポレートガバナンス・コードへの対応を図ろうと考えている上場企業幹部の皆様にとっては必見のセミナーになるはずです。
講師の
ご紹介
和田 照子(わだ てるこ)様
 日本経済団体連合会 経済基盤本部上席主幹。早稲田大学法学部卒業。東京大学大学院法学政治学研究科修了後、1995年に経団連事務局に入局。経済本部、産業本部、環境技術本部、経済政策本部などを経て現職。現在は、会社法、金融商品取引法、独占禁止法、消費者法、民法、司法制度改革などを担当。経団連在職中の2002年~2004年、フルブライト奨学金を得て、米国ジョージタウン大学ローセンターへ留学、ニューヨーク州弁護士資格取得。

詳細はこちらもご覧ください。
なお、セミナー参加費につきましては、上場会社役員ガバナンスフォーラムの会員のみ無料、それ以外の方は2万円(税込 ※)となっております。
※セミナーお申込み前に会員登録いただくと、セミナー参加費は無料となります。

会員登録はこちらから

会員でない方のお振込方法等の詳細はお申込みの受付けメール(下記の「お申込みはこちらから」のボタンをクリック後、お名前等をご入力いただいた後自動送信されるメール)にてご連絡いたします。
ご不明な点等がございましたら、ご遠慮なく jimukyoku@govforum.jp までお問い合わせください。

<セミナー概要>

  • 第一部 スチュワードシップ・コードは日本企業と機関投資家の関係をどう変えるか
  • 第二部 コーポレートガバナンス・コードの適用開始に向けて企業がやらなければならないこと
  • 【日時】2015年2月25日(水)14時30分~17時40分
  • 【場所】六本木ヒルズ森タワー23階 TMI総合法律事務所セミナールーム
  • 【受付】六本木ヒルズ森タワー1階ロビー 14時より
  • 【講師】第一部 金融庁「日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」元メンバー
             江口 高顯 様
        第二部 日本経済団体連合会 経済基盤本部上席主幹 和田 照子 様
  • 【セミナー参加費】当フォーラム会員は無料、それ以外の方は2万円(税込)

2015/02/24 当フォーラム会員は参加費無料のセミナー「長期志向の投資家を引きつけるIRコミュニケーションとは?」が開催されました。

下記のセミナーは終了しました。

────────────────────────────────────────

2015年2月24日(火)、セミナー「長期志向の投資家を引きつけるIRコミュニケーションとは?」が開催されます(主催:株式会社エッジ・インターナショナル、後援:日本IR協議会)。上場会社役員ガバナンスフォーラム会員は参加費(通常5千円)が無料となります(先着順。定員になり次第締切り)。

詳細はこちら

テーマ  長期志向の投資家を引きつけるIRコミュニケーションとは?

~資本市場との対話の重要性を知り、効果的に実践するために~
日時 2015年2月24日(火)13:35 ~17:30(受付開始13:00)
場所 ベルサール九段(4階) Room4 東京都千代田区九段北1-8-10 住友不動産九段ビル
内容 グローバルに投資を行う国内・海外機関投資家等から、今後の日本市場の先行きや投資家と企業との関係のあり方に多大な関心と期待が寄せられる中、投資家との対話(エンゲージメント)やコーポレートガバナンス・コードに焦点を当て、企業の中長期的な価値創造を伝えるために何が求められるのか、国内の専門家が多様な角度から語ります。セミナー後半には、資本市場と建設的で効果的な対話を実践するための実務上の課題について、投資家・専門家が、来場者の皆様からのご質問に、ライブで回答します。
講師 ・堀江 貞之氏 野村総合研究所 上席研究員 金融ITイノベーション研究部
・松原 稔氏 りそな銀行 信託財産運用部企画・モニタリング グループリーダー
・渋澤 健氏 コモンズ投信 取締役会長、シブサワカンパニー 代表取締役
・辻本 臣哉氏 ニッポンライフ・グローバル・インベスターズ・シンガポール CEO
・小澤 ひろこ氏 国際統合報告評議会(IIRC)リージョン・リード 日本
対象 上場企業のIR、広報、経営企画、経理・財務部門の担当役員及び担当者の方
定員 100名(定員になり次第締切り)
参加費 5千円(上場会社役員ガバナンスフォーラム会員は無料)
お申込み先 参加ご希望の方は、氏名、会社名、所属部署、役職、Eメールアドレス、電話番号を明記の上、
seminar@edge-intl.co.jpまでお申し込みください。
上場会社役員ガバナンスフォーラム会員の方は参加費が無料になりますので、会員である旨を明記してください。
お問い合わせ先 03-3403-7750 株式会社エッジ・インターナショナル セミナー事務局

詳細はこちら

会員登録はこちらから

2015/02/24 中堅企業に向かうアクティビスト

 スチュワードシップ・コードの導入により、投資家が企業に対話(エンゲージメント)を求める動きが活発化している。ある日突然、投資家から「対話をしたいのでCEOに会わせて欲しい」との連絡が入るということは現実に起こっている。それがアクティビストだった場合、社長が会いたがらず、担当部長が板挟みになって頭を抱えているという話も聞こえてくる。

 こうした状況の中、中堅企業には、「スチュワードシップ・コードはあくまで外国人投資家の多いグローバル企業の話であって、ウチには関係ない」といった認識のところがいまだに少なくない。しかしこれは大きな間違いであり、むしろ中堅企業こそが投資家、特にアクティビストのターゲットであることに気付く必要がある。実際、多くのアクティビストが中堅企業にアプローチを試みている。

 中堅企業がアクティビストに狙われやすい最大の理由は、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2015/02/24 中堅企業に向かうアクティビスト(会員限定)

 スチュワードシップ・コードの導入により、投資家が企業に対話(エンゲージメント)を求める動きが活発化している。ある日突然、投資家から「対話をしたいのでCEOに会わせて欲しい」との連絡が入るということは現実に起こっている。それがアクティビストだった場合、社長が会いたがらず、担当部長が板挟みになって頭を抱えているという話も聞こえてくる。

 こうした状況の中、中堅企業には、「スチュワードシップ・コードはあくまで外国人投資家の多いグローバル企業の話であって、ウチには関係ない」といった認識のところがいまだに少なくない。しかしこれは大きな間違いであり、むしろ中堅企業こそが投資家、特にアクティビストのターゲットであることに気付く必要がある。実際、多くのアクティビストが中堅企業にアプローチを試みている。

 中堅企業がアクティビストに狙われやすい最大の理由は、投資資金が小さく済むことだ。例えば時価総額が300~400億円の中堅企業の株式を10%取得しようと思えば、30~40億円の資金で済む。それでも、10%の株式を保有すれば企業にとって一大勢力となるのは間違いない。これに対し、時価総額が1兆円以上ある企業の“意味のある議決権”を持とうとすれば、かなりの資金を要することになる。中堅、中小のアクティビストには、これは難しい。

 また、大手は既にスチュワードシップ・コードへの対応を進めるとともに、投資家も選別しており、中小のアクティビストは入りにくい。一方、中堅企業の中には、余剰資金を抱えていたり、損益計算書上は黒字となっているもののROEが低いなど、アクティビストが入り込む“隙”のあるところが少なくない。

 今年6月1日から適用が開始されるコーポレートガバナンス・コードに対応できなければ、アクティビストから追及を受ける余地は広がることになりかねない。同コードが全面的に適用されることが見込まれる一部・二部上場企業で時価総額が数百億円のところは、同コードへの対応を急ぐべきだろう。

2015/02/23 ホワイトカラーエグゼンプションより影響が大きい労基法の改正項目

 ホワイトカラーエグゼンプションが大きな話題となっている。これは、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会がこのほど(2015年2月13日)、「今後の労働時間法制等の在り方について」と題する報告書をまとめ、「高度専門労働者」について労働基準法第4章に定める「労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定」の適用を除外する「高度プロフェッショナル制度」の創設を厚労大臣に建議したからだ。

 ただ、実際にこの制度の適用対象となるホワイトカラーは極めて限られることが予想される。報告書では、ホワイトカラーエグゼンプションを適用する条件として、(1)高度の専門的知識等を要する、(2)“業務に従事した時間”と“業務の成果”との関連性が強くない、(3)平均給与額の3倍を相当程度上回る報酬を支払う―――ことなどを挙げており、その対象者としてディーラー、アナリスト、コンサルタント、商品開発、研究開発職などを例示している。しかし、そもそもこれらの職種が存在しない企業も多く、いたとしても人数は少ないため、ホワイトカラーエグゼンプションを導入したとしても、経営への影響はほとんどないとの見方が強い。

 むしろ影響が大きいと思われるのは、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2015/02/23 ホワイトカラーエグゼンプションより影響が大きい労基法の改正項目(会員限定)

 ホワイトカラーエグゼンプションが大きな話題となっている。これは、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会がこのほど(2015年2月13日)、「今後の労働時間法制等の在り方について」と題する報告書をまとめ、「高度専門労働者」について労働基準法第4章に定める「労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定」の適用を除外する「高度プロフェッショナル制度」の創設を厚労大臣に建議したからだ。

 ただ、実際にこの制度の適用対象となるホワイトカラーは極めて限られることが予想される。報告書では、ホワイトカラーエグゼンプションを適用する条件として、(1)高度の専門的知識等を要する、(2)“業務に従事した時間”と“業務の成果”との関連性が強くない、(3)平均給与額の3倍を相当程度上回る報酬を支払う―――ことなどを挙げており、その対象者としてディーラー、アナリスト、コンサルタント、商品開発、研究開発職などを例示している。しかし、そもそもこれらの職種が存在しない企業も多く、いたとしても人数は少ないため、ホワイトカラーエグゼンプションを導入したとしても、経営への影響はほとんどないとの見方が強い。

 むしろ影響が大きいと思われるのは、企画業務型裁量労働制の範囲拡大だ。

 企画業務型裁量労働制とは、事業運営に関する事項の企画・立案等の業務(例えば「経営企画」や「広報」等)に従事する労働者について、労使委員会の決議と労働者本人の同意を前提に、労使で取り決めた時間数を労働したものとみなす制度であり、同制度の対象となる労働者は業務遂行の手段や時間配分を自らの裁量で決めることができる。

労使委員会 : 使用者及びその事業場 の労働者を代表する者が構成員となっている委員会で、企画業務型裁量労働制を実施するために労働基準法に設けられた。

 今回の建議では同制度の対象業務を拡大し、(1)課題解決型提案営業(例えば「顧客ニーズに応じた新商品の開発・販売」等)、(2)事業運営に関する事項の実施管理とその実施状況の検証結果に基づく企画立案等を一体的に行う業務(例えば「全社レベルの品質管理計画の立案」等)も「企画業務」に加えることを提言している。また、労使委員会決議を本社一括(現行は事業場単位)で管轄の労働基準監督署に届け出ることを認めるほか、現在は6か月ごとに義務付けられている定期報告を「最初の6か月」だけとするなど、手続きの簡素化も提言されている。

 「企画業務型裁量労働制」は、その対象業務にさえ該当すれば、能力や報酬額の条件なしで導入できるため、企業にとってはホワイトカラーエグゼンプションよりも圧倒的に使いやすい。この点からすると、今回の労基法改正の目玉は、世間で騒がれているホワイトカラーエグゼンプションではなく、企画業務型裁量労働制の見直しの方だと考えられる。

 ホワイトカラーエグゼンプションにせよ企画業務型裁量労働制にせよ、報告書の提言はすべて「労働時間の短縮」を目指したものというのが表面的な理由だが、現実には「残業代のカット」ではないかとの声もある。制度導入にあたっては、労働者側の納得感を得ることが経営陣には求められることになりそうだ。

建議の主な内容
「働き過ぎ防止」に関する内容
・中小企業には適用が猶予されていた労働基準法第37条第1項ただし書きの規定(月60時間を超える時間外労働の割増賃金率を5割以上とする)を全面適用する。
・年次有給休暇を年間5日以上取らせることを事業主に義務付ける。
・年次有給休暇の取得については、本人の希望を尊重したうえで、計画的付与(労働基準法第39条第6項)を活用すべき。
「高度プロフェッショナル制度」に関する内容
・(1)高度の専門的知識等を要する、(2)“業務に従事した時間”と“業務の成果”との関連性が強くない、(3)平均給与額の3倍を相当程度上回る報酬を支払う、といった性質を持つ業務に限り、労働基準法第4章に定める「労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定」を適用除外とする。
・ただし、この制度を導入する前提として、(1)健康・福祉確保措置を講じること、(2)対象労働者の同意を得ること、(3)労使委員会を設置し、対象業務の範囲や対象労働者の範囲等を5分の4以上の多数により決議すること、が求める。
その他
・現行は「1か月以内」とされているフレックスタイム制の清算期間を「3か月以内」となる。
・企画業務型裁量労働制の範囲を拡大し、また、導入手続きを簡素化する。

2015/02/20 女性の登用、日本の現在地

 安倍政権は、2020年までに「指導的地位(課長級以上)」に占める女性の割合30%程度にすることを目標に掲げているのは周知のとおり。「女性の割合30%」というと、一見先進的な取組みに見えるかもしれないが、そうではない。例えば英国では現在でも管理職の35%以上を女性が占めており、日本政府が掲げる目標はとうにクリアしている。女性の管理職比率が40%を超える米国はもちろん、フランスやドイツ、北欧諸国も軒並み30%を超えている。

 こうした国々の関心事は既に「取締役」の女性比率に移っている。女性のキャリア支援などを行う米国の非営利団体カタリストのレポートによると、株価インデックス構成企業の取締役会に占める女性比率がもっとも高いのはノルウェー35.5%で、以下フィンランド29.9%、フランス29.7%、スウェーデン28.8%、ベルギー23.4%、英国22.8%、デンマーク21.9%、オランダ21.0%、ドイツ18.5%、スペイン18.2%、スイス17.0%、オーストリア13.0%、アイルランド10.3%、ポルトガル7.9%、カナダ20.8%、米国19.2%、オーストラリア19.2%、香港10.2%、インド9.5%と続き、日本はインドを大きく下回る3.1%と、ダントツに低いのが現実だ。

 女性取締役比率の上位には欧州諸国が並んでいるが、これらの国々はそれでも十分だとは思っていない。例えば英国ではFTSE100構成企業の取締役会における同比率を今年中に25%に引き上げるという目標が掲げられている。そして、この目標を達成するために、これまで尊重されてきた「規制で縛ることなく自主的な取組みとして進めるべき」とのこだわりを捨て、女性取締役比率トップのノルウェーで採用されているクオータ制の導入議論も浮上している。さらにEUでは・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから