正解です。
加速型自社株買いは確実に執行されるがゆえに柔軟性はありません。逆に言えば、「柔軟性がない=確実な執行」を意味するため、上述のとおり、投資家に対しては強いアナウンスメント効果を持つことになります。株価が低迷している企業は、資金にゆとりがあるのであれば、通常の自社株買いに加えて加速型自社株買いについても比較検討すべきと言えます(問題文は正しいです)。
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2024年11月5日 「加速型」自社株買いのリスク(会員限定)
正解です。
加速型自社株買いは確実に執行されるがゆえに柔軟性はありません。逆に言えば、「柔軟性がない=確実な執行」を意味するため、上述のとおり、投資家に対しては強いアナウンスメント効果を持つことになります。株価が低迷している企業は、資金にゆとりがあるのであれば、通常の自社株買いに加えて加速型自社株買いについても比較検討すべきと言えます(問題文は正しいです)。
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2024年11月5日 「加速型」自社株買いのリスク(会員限定)
不正解です。
加速型自社株買いは確実に執行されるがゆえに柔軟性はありません。逆に言えば、「柔軟性がない=確実な執行」を意味するため、上述のとおり、投資家に対しては強いアナウンスメント効果を持つことになります。株価が低迷している企業は、資金にゆとりがあるのであれば、通常の自社株買いに加えて加速型自社株買いについても比較検討すべきと言えます(問題文は正しいです)。
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2024年11月5日 「加速型」自社株買いのリスク(会員限定)
上場会社A社の取締役会において、社外取締役より「公益通報者の探索禁止について当社のルールを教えて欲しい」との発言があり、これに対して次の3人が下記の発言を行いました。誰の発言がGood発言でしょうか?
取締役A:「公益通報者保護法そのものには公益通報者の探索の禁止は明記されていませんが、当社の内部通報制度では通報者を探索してはならない旨しっかりと定めていますので、ご安心ください。」
取締役B:「公益通報者保護法には「公益通報者を探索してはならない」と明記されていますよ。なぜなら、公益通報者の探索を自由に行っていいのであれば、探索されることをおそれて通報を躊躇する者も出てくることが考えられるからです。」
取締役C:「そうですね。しかも公益通報者を探索した者には刑事罰が科されます。それくらい公益通報者の探索はやってはいけない行為であると考えられているわけです。」
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パワハラ等の疑惑で失職したものの再当選を果たすなどすっかり話題の人物となった兵庫県の齋藤知事ですが、同知事の疑惑についての匿名の告発文書が報道機関へ送付された際に、齋藤知事は文書作成者を探索させており、これが「公益通報者の探索」(公益通報者を特定しようとする行為)にあたるのではないかとの問題が指摘されています(齋藤知事は「当該告発文書は告発というより誹謗中傷性の高い文書」「具体的な供述や証拠がなく、真実相当性はない」ことを理由に、文書の送付がそもそも公益通報に該当しないとの考えを主張)。今回の【役員会 Good&Bad発言集】では「公益通報者の探索」にフォーカスしてみることにします。
「公益通報者の探索」を自由に行っていいのであれば、探索されることをおそれて通報を躊躇する者も出てくることが考えられます。そこで公益通報制度の指針(「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」(令和3年8月20日の内閣府告示第118号。以下、「法定指針」)において、「事業者がとるべき措置」として「事業者の労働者及び役員等が、公益通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査が実施できないなどのやむを得ない場合を除いて、通報者の探索を行うことを防ぐための措置をとる。」「範囲外共有や通報者の探索が行われた場合に、当該行為を行った労働者及び役員等に対して、行為態様、被害の程度、その他情状等の諸般の事情を考慮して、懲戒処分その他適切な措置をとる。」ことが明記されています。誤解の多いところですが、公益通報者保護法そのものに「公益通報者の探索の禁止」が明記されているわけではなく、あくまで同法の法定指針に「事業者がとるべき措置」として「探索を防ぐための措置をとること」「探索があった時に探索者を処分等の適切な措置をとること」が記載されているだけです。そして、公益通報者保護法そのものに「公益通報者の探索の禁止」が明記されていない以上、当然ながら公益通報者の探索という行為に対して刑事罰が用意されているわけではありません。もっとも、現行法上、事業者が指定した従事者には、公益通報者を特定させる情報の守秘義務が規定されており、当該情報を故意に漏らした場合には、罰則対象となっています(公益通報者保護法12条、21条)。
消費者庁では、2020年の改正公益通報者保護法の施行から一定期間が経過したことから、近年の公益通報者保護制度を巡る国内外の環境の変化や改正後の公益通報者保護法の施行状況を踏まえた課題について検討を行うため、有識者により構成する「公益通報者保護制度検討会」(以下、「検討会」)を開催しています。検討会は2024年9月2日に「中間論点整理」を公表したばかりです。中間論点整理では「公益通報を阻害する要因への対処」の一つに「公益通報者を探索する行為の禁止」の項が設けられており、そこでは次のように整理されています(中間論点整理の10ページ目を参照)。
| 2 公益通報を阻害する要因への対処 (1)公益通報者を探索する行為の禁止 通報者探索の防止については、体制整備義務の一部として、法定指針に規定されているが、公益通報がなされた後、事業者内で公益通報者を特定することを目的とした調査などが行われることは、公益通報者自身が脅威に感じることはもちろん、公益通報を検討している他の労働者を萎縮させるなどの悪影響があり、法律上、通報者探索を禁止する明文規定を設けるべきとの意見があった。 また、法律上明記するだけではなく、通報者を探索する行為に対し、行政措置又は刑事罰を規定すべきとの意見もあった。 |
中間論点整理公表後の2024年11月6日に開催された第6回の検討会では、事務局が資料「公益通報者の探索禁止について」(以下、「資料」)を提出しています。当該資料には「通報者探索の禁止について、明文規定を設けることが求める意見が多数あったが、慎重な意見もあった。」「違反時の罰則については、導入を求める意見もあったが、慎重な意見もあった。」とあり、同検討会のメンバーも決して一枚岩ではないことが分かります。この書きぶりからすると、最終報告で、仮に公益通報者保護法に公益通報者の探索禁止の明文規定を新設することを求めるよう記載されたとしても、違反時の罰則の導入は見送りになる可能性もあると言えるでしょう。
資料には「公益通報者の探索禁止」規定を導入する場合の規定例として、下記が示されています(資料の2ページ目を参照)。
| 第●条 第二条第一項各号に定める事業者は、正当な理由がなく、公益通報者である旨を明らかにすることを要求することその他の公益通報者を特定することを目的とする行為をしてはならない。 |
そして、資料では「公益通報者を特定することを目的とする行為」とは、「公益通報者である旨を明らかにすることを要求すること」のほかに、「例えば、公益通報者が誰かを知っていそうな者に、心当たりがあるか質問する行為や、メールの履歴やその他の資料を収集・閲覧する行為などが考えられる」としています。また、資料では「正当な理由」の例として、「通報者を特定した上でなければ必要性の高い調査が実施できないなどのやむを得ない場合(例えば、通報窓口において調査の実効性確保等のために所属部署や違反に関する具体的な状況を説明するよう促す場合)や匿名による通報者を不利益な取扱いや探索行為から保護するために必要と考えられる場合に顕名を名乗るよう促すこと」などが考えられるとし、「通報された違法行為を調査するために、社内外の関係者にヒアリングやアンケートを実施したり、関係資料を収集・閲覧したりすること自体は、そもそも「公益通報者を特定することを目的とする行為」に該当しない」としています。
さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。
取締役A:「公益通報者保護法そのものには公益通報者の探索の禁止は明記されていませんが、当社の内部通報制度では通報者を探索してはならない旨しっかりと定めていますので、ご安心ください。」
(コメント:「公益通報者の探索の禁止」は公益通報者保護法に明記されているわけではありません。あくまで同法の法定指針に「事業者がとるべき措置」として「探索を防ぐための措置をとること」「探索があった時に探索者を処分等の適切な措置をとること」が記載されているだけです。取締役Aは公益通報者保護法の正しい理解に基づき発言できている点がGOODです。)
取締役B:「公益通報者保護法には「公益通報者を探索してはならない」と明記されていますよ。なぜなら、公益通報者の探索を自由に行っていいのであれば、探索されることをおそれて通報を躊躇する者も出てくることが考えられるからです。」
(コメント:取締役Bは現行の公益通報者保護法の規定内容やその改正に向けた動きを正しく理解せずに発言しており、本発言はBAD発言と言わざるを得ません。)
取締役C:「そうですね。しかも公益通報者を探索した者には刑事罰が科されます。それくらい公益通報者の探索はやってはいけない行為であると考えられているわけです。」
(コメント:現行の公益通報者保護法では公益通報者の探索の禁止は明記されていません。禁止規定がない以上、通報者を探索する行為に対し、当然ながら行政措置または刑事罰は設けられてはいません。取締役Cも、取締役Bと同様、現行の公益通報者保護法の規定内容やその改正に向けた動きを正しく理解せずに発言しており、本発言はBAD発言と言わざるを得ません。)
今年(2024年)6月にランサムウェアによるサイバー攻撃の被害を受け、個人情報の流出騒動を起こしたばかりのKADOKAWAだが(KADOKAWAのランサムウェア被害については2024年8月9日「非IT企業の方が高リスク ランサムウェア感染企業が受けた被害の内容と被害前後の有報の変化から学ぶ教訓」参照)、今度は・・・
ランサムウェア : システムへのアクセス等を制限する不正プログラムで、システムの利用者に制限解除のための身代金を要求することを目的とする。感染ルートとしては、メールの添付ファイルを不用意にクリックしてしまったケースや、改ざんされたサイトに誤ってアクセスし、意図せずしてプログラムをダウンロードしてしまったケースなどがある。
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今年(2024年)6月にランサムウェアによるサイバー攻撃の被害を受け、個人情報の流出騒動を起こしたばかりのKADOKAWAだが(KADOKAWAのランサムウェア被害については2024年8月9日「非IT企業の方が高リスク ランサムウェア感染企業が受けた被害の内容と被害前後の有報の変化から学ぶ教訓」参照)、今度は下請法違反が発覚した。違反の内容は、KADOKAWAおよびその100%子会社のKADOKAWA LifeDesignの2社が、雑誌「レタスクラブ」の記事作成および写真撮影業務に関して下請代金支払遅延等防止法(以下、下請法)4条1項5号(下記参照)に規定されている「買いたたきの禁止」に違反する行為をしていたというもので、公正取引委員会による調査で明らかになった。
ランサムウェア : システムへのアクセス等を制限する不正プログラムで、システムの利用者に制限解除のための身代金を要求することを目的とする。感染ルートとしては、メールの添付ファイルを不用意にクリックしてしまったケースや、改ざんされたサイトに誤ってアクセスし、意図せずしてプログラムをダウンロードしてしまったケースなどがある。
| 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあっては、第一号及び第四号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。 (中略) 五 下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること。 (後略) |
公正取引委員会が2024年11月12日に公表したリリースによると、KADOKAWAは、雑誌「レタスクラブ」の販売収入や広告収入が減少傾向にある一方で、資材費や輸送費等のコストが上昇していることから、収益改善を図るため、2023年1月に記事作成および写真撮影業務を下請事業者に委託する際の発注単価を約6.3%~約39.4%引き下げた。発注単価の引下げは下請事業者との話し合いを経たものではなく、単に下請事業者に「原稿料改定のお知らせ」と題する文書を通知するだけの一方的なものであった。雑誌「レタスクラブ」の発行事業は2024年4月1日、吸収分割によりKADOKAWAからKADOKAWA LifeDesignに承継されたが、KADOKAWA LifeDesignも下請事業者と十分な協議をすることなく、KADOKAWAが当該承継前に一方的に決定した単価をそのまま使用していた。公正取引委員会は、こうした一方的な単価引下げは下請法4条1項5号(上記参照)に定める「買いたたきの禁止」に該当すると判断し、下請法7条2項(下記参照)の規定に基づき2社に対して勧告を行った。
| 公正取引委員会は、親事業者が第四条第一項第三号から第六号までに掲げる行為をしたと認めるときは、その親事業者に対し、速やかにその減じた額を支払い、その下請事業者の給付に係る物を再び引き取り、その下請代金の額を引き上げ、又はその購入させた物を引き取るべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告するものとする。 |
両社が公正取引委員会から受けた勧告の内容は以下のとおり。
| (1) ア KADOKAWAは、下請事業者に委託する本件業務の下請代金の額について、当該下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い額ではない額まで、レタスクラブの令和5年4月発売号に係る当該下請代金の支払分にまで遡って引き上げること。 イ KADOKAWA LifeDesignは、下請事業者に委託する本件業務の下請代金の額について、当該下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い額ではない額まで、令和6年4月1日以降の当該下請代金の支払分にまで遡って引き上げること。 ⑵ ア KADOKAWAは、次の事項を取締役会の決議により確認すること。 (ア) 前記2⑵の行為が下請法第4条第1項第5号に掲げる行為に該当し、同項の規定に違反するものであること (イ) 今後、下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めないこと イ KADOKAWA LifeDesignは、次の事項を取締役会の決議により確認すること。 (ア) 前記2⑶の行為が下請法第4条第1項第5号に掲げる行為に該当し、同項の規定に違反するものであること (イ) 今後、下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めないこと ⑶ 2社は、それぞれ下請法第4条第1項第5号の規定に掲げる行為を行うことがないよう、自社の発注担当者等に対する下請法の研修を行うなど社内体制の整備のために必要な措置を講ずること。 ⑷ア KADOKAWAは、前記⑴ア、⑵ア及び⑶に基づいて採った措置を自社の役員及び従業員に周知徹底すること。 イ KADOKAWA LifeDesignは、前記⑴イ、⑵イ及び⑶に基づいて採った措置を自社の役員及び従業員に周知徹底すること。 ⑸ア KADOKAWAは、前記⑴ア、⑵ア、⑶及び⑷アに基づいて採った措置を取引先下請事業者に通知すること。 イ KADOKAWA LifeDesignは、前記⑴イ、⑵イ、⑶及び⑷イに基づいて採った措置を取引先下請事業者に通知すること。 ⑹ア KADOKAWAは、前記⑴から⑸までに基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告すること。 イ KADOKAWA LifeDesignは、前記⑴から⑸までに基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告すること。 |
この勧告に対しKADOKAWAは、2024年11月12日のリリースで「KADOKAWAおよびLifeDesignは、新たな本発注単価が確定次第速やかに、2023年4月発売号分まで遡って、当該本発注単価と支払済下請代金との差額に相当する金額を、本下請事業者に対してお支払いいたします。」との対応方針を示している。
取締役会で不採算事業の改善案が話題になることは少なくないが、改善案の中に下請先に対する発注価格の切下げが含まれている場合、役員としては当該案について下請先と十分な協議をしているのかを必ず確認したい。また、「買いたたきの禁止」は今月(2024年11月)から施行されたフリーランス新法でも禁止行為の一つになっているため、下請法の適用がない子会社などで禁止行為が起きないよう、親会社は目を光らせる必要がある(フリーランス新法については2024年10月28日のニュース「自社だけでは完結せず フリーランス新法への抵触リスクを下げるためにやるべきこととは?」参照)。
株式会社レクタスパートナーズ 代表取締役 藤澤正路
周知のとおり、(2024年)11月5日に行われた米国大統領選挙ではドナルド・トランプ氏が現職副大統領のカマラ・ハリス氏を破り、第47代大統領に返り咲いた。この選挙結果は国内外に大きな影響を及ぼすことが確実視されており、ESG(環境・社会・ガバナンス)を巡る政策についても大きな影響を及ぼすとの見方が強い。トランプ氏の再選は、バイデン政権が進めてきた環境政策や再生可能エネルギーへの投資支援策に対して大幅な見直しが行われることを意味する。特に今回の選挙は、共和党がホワイトハウスだけでなく上・下両院ともに制するという“トリプルレッド”(レッドは共和党のシンボルカラー)という結果となり、政策転換のスピードが速まることが予想される。言い換えれば、トランプ氏が掲げる「米国第一」の政策を具体化する実行力が伴ったということだ。本稿では、反ESGという文脈の中で第二次トランプ政権がどのような影響を及ぼしうるのか、整理してみたい。
トランプ氏は・・・
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株式会社レクタスパートナーズ 代表取締役 藤澤正路
周知のとおり、(2024年)11月5日に行われた米国大統領選挙ではドナルド・トランプ氏が現職副大統領のカマラ・ハリス氏を破り、第47代大統領に返り咲いた。この選挙結果は国内外に大きな影響を及ぼすことが確実視されており、ESG(環境・社会・ガバナンス)を巡る政策についても大きな影響を及ぼすとの見方が強い。トランプ氏の再選は、バイデン政権が進めてきた環境政策や再生可能エネルギーへの投資支援策に対して大幅な見直しが行われることを意味する。特に今回の選挙は、共和党がホワイトハウスだけでなく上・下両院ともに制するという“トリプルレッド”(レッドは共和党のシンボルカラー)という結果となり、政策転換のスピードが速まることが予想される。言い換えれば、トランプ氏が掲げる「米国第一」の政策を具体化する実行力が伴ったということだ。本稿では、反ESGという文脈の中で第二次トランプ政権がどのような影響を及ぼしうるのか、整理してみたい。
トランプ氏は2024年の選挙戦で、バイデン政権のESG政策を「不必要な負担」と批判し、見直しを約束した。具体的には、環境規制の緩和、ESG投資に関する企業年金制度上の制限、さらには、バイデン政権が推進してきた企業の気候関連情報の開示規制も緩和される可能性がある。
トランプ政権下で緩和されることが予想される環境規制の例としては、自動車関連の温室効果ガスや燃費の規制、火力発電所の温室効果ガス排出規制、石炭や天然ガスの採掘・開発制限などがある。これらの緩和により、短期的には米国内の経済が上向く一方で、温室効果ガス排出量が増加する恐れがある。また、気候変動に対峙しようという米国の姿勢の大幅な後退の結果、気候変動関連の国際的コミットメントが“骨抜き”になる可能性がある。特に注目されるのが、トランプ氏はパリ協定からの再脱退を宣言しているということだ。仮に再脱退が現実のものとなれば、ESGやサステナビリティの枠組みにおける米国の存在感は大幅に弱まることになろう。
パリ協定 : 2015年末にパリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で採択された2020年以降の温暖化対策の国際的枠組み。パリ協定では、18世紀後半に起きた産業革命前と比較し、気温の上昇を「2℃以内」にとどめることを目標としており(さらに、1.5℃未満に抑えるよう努力)、各国に対し、温室効果ガスの排出削減目標を設定のうえ、5年ごとに進捗報告およびより厳しい目標への更新を行うことを義務付けている。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
ESG投資については、第一次トランプ政権が年金運用において「財務的な利益を生むことが証明できないものは考慮しない」よう規制を改訂しており、この流れがさらに強まることが予想される。ESG投資は財務的パフォーマンスとの因果関係の証明が難しく、実際にここ数年のパフォーマンスが芳しくないケースも散見される。今後は、米国系のアセットオーナー(年金等)およびアセットマネジャー(運用会社等)がESG投資からの撤退を進めるかもしれない。
また、米国証券取引委員会(SEC)が推進する気候関連情報開示規則も見直されることも予想される。少なくとも、企業への負担が大きいScope3の開示義務化、サステナビリティ情報開示の第三者保証の義務化がSECで再び議論される可能性はかなり低くなったと言えよう。開示義務化の時期変更なども選択肢としてはあり得るが、現時点ではその行方は不透明な状況となっている。
Scope3 : Scope1:報告企業が所有又は支配する排出源から発 生する直接的な温室効果ガス排出 Scope2:報告企業が消費する、購入又は取得した電 気、蒸気、温熱又は冷熱(以下あわせて「電気等」という。)の生成から発生する間接 的な温室効果ガス排出をいう。 Scope3 :Scope1、Scope2 以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
こうしたトランプ政権下での政策の変化により、日本企業は今後どの程度ESGに踏み込むのかという点を議論する必要があろう。足下のESG投資残高は、米国、アジアでは減少している一方、欧州では堅調となっている。また、米国SECの気候関連情報開示規制が後退したとしても、カリフォルニアなど一部の州や欧州、日本ではさらに開示規制が進むことが予想され、自社がどこで事業を営んでいるかによって開示への対応も変わってくる。米国の政策の変化により様々なステークホルダー間での期待値の分断が拡大することで、企業にとってはマルチステークホルダー・マネジメントの難易度がさらに増すことになろう。
マルチステークホルダー : 複数の利害関係者、具体的には、投資家、消費者、従業員、取引先、行政、地域社会など企業をとりまく幅広いステークホルダのこと。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
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自動車向け冶金部品メーカーのファインシンター(東証スタンダード市場に上場)のインドネシア子会社において、子会社社長(現地駐在員)の指示のもと棚卸資産の架空計上(2024年3月期時点において約3億円の過大計上)により利益が過大計上されていた。また、ファインシンターの国内工場において、複数の取締役による承認・黙認のもと棚卸資産の廃却先延ばしにより原価が過少計上されていた。
ファインシンターが2024年9月30日に公表した「特別調査委員会の調査報告書」等によると、一連の経緯は次のとおり。
2012年
9月:ファインシンターがインドネシア共和国に連結子会社 PT.Fine Sinter Indonesia(以下、インドネシア子会社)を設立。
2020年
1月:インドネシア子会社では月1回行われる棚卸の際に外部の甲(調査報告書に詳細は記載されていないが、社外の会計事務所と思われる)が立会を行っていたが、コロナ禍により2020年1月以降は甲による棚卸への立会がなくなった。
2月:インドネシア子会社の社長の指示により、インドネシア子会社の生産管理部において、製品および仕掛品の数量を実数よりも大きい数量に修正したエクセルファイルを作成するようになった。インドネシア子会社はエクセルファイルを甲に提出し、当該在庫数量に基づいて甲がFSIの製品および仕掛品の評価額を算出していた。
2023年
12月:インドネシア子会社の社長は、健康上の問題により、日本に帰国。
2024年
1月1日:インドネシア子会社の社長は同社の代表取締役社長を辞任するも、在庫の過大計上は、2024年3月末まで継続されていた。
3月:期末棚卸の際、インドネシア子会社の監査人がこれまで行っていなかった抜取りによる実数確認を一部品番について実施した。そのため抜取り確認の対象となった品番については本件在庫過大計上を行うことができなくなり、それによって評価金額が急激に減少した。
4月:インドネシア子会社の後任社長が在庫金額の急激な減少の理由の調査を開始する。
5月上旬:インドネシア子会社の後任社長が過去の在庫不正を認識し、親会社に報告を行う。
5月23日:ファインシンターは公認会計士の資格を有する独立社外監査役および社外取締役並びに外部専門家から構成される特別調査委員会を設置した。
9月28日:ファインシンターは特別調査委員会より調査報告書を受領した。
9月30日:ファインシンターは「特別調査委員会の調査報告書」を公表した。また、ファインシンターは財務局に過年度有価証券報告書等の訂正報告書を提出するとともに、過年度決算短信訂正についてのリリースも行った。
11月21日:東京証券取引所は過年度決算短信訂正を行ったファインシンターに対して「開示された情報の内容に虚偽があり、上場規則に違反し、改善の必要性が高いと認められる」として、改善報告書の徴求を行うとともに公表措置を実施した。
ファインシンターが2024年9月30日に公表した「特別調査委員会の調査報告書」および東証の公表措置によると、本件不正の内容、原因および再発防止策は次のとおりとされている(ファインシンターでは、インドネシア子会社における在庫の過大計上に加えて、ファインシンターの国内工場において、複数の取締役による承認・黙認のもと棚卸資産の廃却先延ばしの不正も発覚している)。
| 内容 | ファインシンターのインドネシア子会社において子会社社長(日本人出向者)の指示のもと棚卸資産の架空計上により原価を過少計上していた。 |
| 原因 | ・インドネシア子会社の社長はインドネシアに赴任して以降、経費の削減等、黒字化のためにあらゆる方策をとったものの、すぐには黒字化を達成することはできない状況が続いていた。その中で、親会社の役員や経理部などから黒字化や業績目標達成へのプレッシャーを掛けられ、財務諸表上で在庫金額を増やせば利益が増え、見かけ上は業績が改善したように見せることができると考え、在庫の過大計上に及んだ。 ・インドネシア子会社は事業計画が未達になると固定資産を減損することを迫られていたため、親会社から減損回避のために業績目標を必ず達成するようプレッシャーを掛けられていた。 ・インドネシア子会社ではコロナ禍により2020年1月以降、外部の甲による棚卸への立会がなくなり、棚卸時に外部の目が入らなくなった。これにより棚卸数量の水増し不正を実行しやすくなった。 ・原価計算の際、固定費は月末在庫と月中に払い出された在庫(売上原価)に配賦されるため、月末在庫を積み増せば、結果的に売上原価に配賦される固定費を一定程度減少させ、一時的に利益が増える効果がある(在庫に配賦された固定費は当該在庫の払出時に売上原価を構成し、その際に利益を減らすため、長期のスパンで見れば利益は増えていない。また、期末における棚卸資産(完成品及び仕掛品)の正味売却価額が取得原価(帳簿価額)よりも下落している場合には、正味売却価額または処分見込額まで帳簿価額を切り下げ、評価損を計上することになる)。そのため、ファインシンターグループ内で、「在庫を増やして利益を増す」という考えが広がっていき、会議の際に社長自ら「利益を上げるために在庫を造り込め」など発言するほどであった。 ・インドネシア子会社において、地位や権限において強い力を持つ駐在員に対し、現地従業員が意見等することが難しい状況が存在する中、担当の硬直化などにより子会社の取締役など駐在員間の相互けん制機能も弱体化していた。 ・ファインシンターの経理部に求められる役割が拡大し、業務が過多となる中で、決算期における海外子会社を含む子会社の財務分析が十分に行われなくなっていたことに加え、インドネシア子会社に対する内部監査が10年以上実施されていないなど、海外子会社の管理体制が不十分であった。 ・ファインシンターでは、棚卸資産の廃却手続きに関与する多数の者が関係規定の存在を認識せず、規定どおりの運用がなされていなかった。また、滞留棚卸資産の評価損に係る明確な規定が存在しないなど、棚卸資産の会計処理に係る仕組みが十分に整備されていなかった。 ・ファインシンターのインドネシア子会社において内部通報制度が整備されていなかったほか、同社の内部通報制度では海外子会社従業員が通報対象者となっていなかったなど、内部通報制度の整備が不十分であった。 |
再発防止策 | 1 海外子会社における牽制機能の強化 (1) 現地スタッフに対する教育及び現地スタッフの登用 (2) 日本人駐在員として赴任する者に対する教育 (3) 多言語化への対応 2 親会社における海外子会社との関係性の見直し (1) 親会社と子会社との双方向の議論を行うための制度構築 (2) 経営陣と海外子会社との対話の機会検討 (3) 経理面に限定しない子会社管理体制の検討 (4) 経理部や内部監査室による現地往査等、海外子会社と直接コミュニケーションをとる方策の検討 (5) 定期的なジョブローテーション制度の検討・見直し 3 親会社における役割と責任の明確化 (1) 短期的な黒字化要求の見直し (2) 牽制機能の明確化 (3) 責任の明確化 (4) ルールの明確化と周知徹底 4 会計ルールの意味についての周知徹底 5 ファインシンターグループにおける組織風土の見直し 6 内部監査の強化 7 内部通報制度の充実 |
ファインシンターのインドネシア子会社のように、一度でも在庫過大計上に手を染めてしまうと、翌月の洗替処理により翌月の損益が悪化するため、翌月も在庫を過大に計上せざるを得なくなります。そして利益をねん出するには、製品および仕掛品の合計評価額が前月よりも高い金額となるように行わざるを得ず、時の経過とともに正しい在庫数量に基づく評価額との乖離は徐々に大きくなることになります。
ファインシンターのインドネシア子会社では月1回行われる棚卸の際に外部の甲が立会を行っていましたが、コロナ禍により2020年1月以降は甲による棚卸への立会がなくなりました。それ以降はインドネシア子会社で棚卸資産の架空計上をけん制する役割を担う者がいなくなり、2024年3月にインドネシア子会社の会計監査人が棚卸立会を実施したのを機に、ようやく棚卸資産の架空計上が発覚しました。上場会社であってもコロナ禍で内部統制の一部を簡素化したケースは散見されます。そのような会社では、簡素化により検出できていない不正があるのではないか、再点検した方が良さそうです。
ファインシンターグループでは「在庫を増やして利益を増す」という考えにとらわれていました。確かに在庫を増やすと固定費配賦を通じて固定費の一部が在庫に回ることから一時的に利益が増えます。しかし、当該在庫が売上原価に計上されるときに在庫に配賦された固定費は利益を圧縮させることから、利益増加は一時的なものに過ぎず、物価変動がない場合、在庫が払い出されるときに「増えたように見えた利益」は取り消されることになります。「利益増加を目的に在庫を積み増す」という考えは「近視眼的な間違った考え」と言わざるを得ません。
ファインシンターのインドネシア子会社では棚卸資産の架空計上により原価を過少計上するだけでなく、固定資産の減損損失の計上も免れていました。棚卸資産の架空計上発覚により固定資産の減損損失の計上も不可避となり、これまで糊塗していた隠れ損失を一気に計上せざるを得なくなりました。つまり、「架空在庫の取り消し損失」と「減損損失」の“往復びんた”という代償を支払うことになりました。
なお、ファインシンターの事例は、親会社と海外子会社の関係、現地駐在員と現地採用の従業員の関係など、海外子会社管理の難しさが浮き彫りになった事例とも言えます。海外子会社を有する他の上場会社から見ると、本調査報告書の再発防止策は自社の要改善ポイントを探るのに最適な事例と言えそうです。