2024/11/22 社外役員の在任期間を独自に設定する企業が増加も

議決権行使助言会社最大手のISS(Institutional Shareholder Services)は2024年11月19日、2025年版の議決権行使助言方針(ポリシー)の改訂案についてオープンコメントの募集を開始した。コメント募集期間は「12月2日まで」とされており、ISSは寄せられたコメントを踏まえて、年内には2025年版ポリシーを確定させる見込み。

今回の日本向けポリシーの改訂では、・・・

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2024/11/22 社外役員の在任期間を独自に設定する企業が増加も(会員限定)

議決権行使助言会社最大手のISS(Institutional Shareholder Services)は2024年11月19日、2025年版の議決権行使助言方針(ポリシー)の改訂案についてオープンコメントの募集を開始した。コメント募集期間は「12月2日まで」とされており、ISSは寄せられたコメントを踏まえて、年内には2025年版ポリシーを確定させる見込み。

今回の日本向けポリシーの改訂では、社外役員の独立性基準に「在任期間」を新たに導入することが提案されている(下記の赤字部分 ※それ以外は現行ポリシーである)。

ISS の独立性の基本的な考え方は「会社と社外取締役や社外監査役の間に、社外取締役や社外監査役として選任される以外に関係がないこと」である。日本企業においては、たとえば、下記のケースでは多くの場合、独立していないと判断される。
• 会社の大株主である組織において、勤務経験がある
• 会社の主要な借入先において、勤務経験がある
• 会社の主幹事証券において、勤務経験がある
• 会社の主要取引先である組織において、勤務経験がある
• 会社の監査法人において、勤務経験がある
• コンサルティングや顧問契約などの重要な取引関係が現在ある、もしくは過去にあった
• 親戚が会社に勤務している
• 会社に勤務経験がある
• 会社が政策保有目的で保有すると判断する投資先組織において、勤務経験がある
在任期間が12年以上である

また、今回の改訂部分には、在任期間の計算方法と猶予期間の設定に関する2つの注記が付されている。
・取締役に選任される直前まで監査役として在籍していた場合、監査役としての在任期間を合算して在任期間を計算する。
・一年間の猶予期間を経て、この基準は2026年2月1日から運用される。

もっとも、今回の改訂内容については、既に多くの機関投資家が議決権行使基準に織り込み済みであり、「12年以上」という閾値、1年の猶予期間も含めて、インパクトは限定的と考えられる。英国のコーポレートガバナンス・コードでは「9年以上」で独立性を損なう可能性が高いとされており(9ページの上から4つ目の「・」参照)、国内機関投資家においては下表のとおり、その多くが「12年以上」を反対行使の基準としている。

日興アセットマネジメント 在任期間12年超
ブラックロック・ジャパン 在任期間が著しく長期(12年以上)の候補者
野村アセットマネジメント 当該株主総会終了時における在任期間が12年未満であること
三井住友トラスト・アセットマネジメント 在任期間が長期(12年以上在任)
ニッセイアセットマネジメント 選任時点で、在任期間が10年超の候補者
東京海上アセットマネジメント 社外役員としての在任期間が10年以上である者

むしろ今後は、上場企業においても、自社の独立性基準に在任期間の定めを設ける事例が増えることが予想される。選任議案に反対票が集まることが目に見えており、機関投資家の株式保有割合によっては否決リスクも小さくない以上、明確に基準化しておくことがリスク対応として望ましいだろう。当フォーラムがTOPIX100採用企業のコーポレートガバナンス報告書(コーポレートガバナンス・コード原則4-9についての記載)を調査したところ、以下の事例をはじめ、10社の在任期間基準が確認された。上場企業各社は、これらを参考に今後の対応を検討されたい。

ユニ・チャーム 独立取締役として再任されるためには、通算の在任期間が 10年間を超えないことを要する
塩野義製薬 当社グループの社外取締役の在任期間が10年を超えていないこと
りそなホールディングス 社外取締役としての在任期間が通算で8年を経過している者
ソニーグループ 社外取締役の再選回数は原則として5回(通算6年)を上限

2024/11/21 SSBJとGSSBが「より良い企業報告」に向け協働

周知のとおり、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は現在、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)により開発されたIFRS S1号「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」及びIFRS S2号「気候関連開示」をベースとした我が国初のサステナビリティ報告基準(以下、SSBJ基準)を開発中だが、そのSSBJは2024年11月14日、GRI グローバル・サステナビリティ基準審議会(GSSB)との間でより良い企業報告に向けた取組みに関する基本合意書を締結した。


SSBJ : 日本における非財務開示の基準を作成する団体。IFRS(国際財務報告基準)の母体であるIFRS財団が「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB=International Sustainability Standards Board)」を設立し、非財務開示の国際的な基準「サステナビリティ報告基準」を策定することを受け、日本では財務会計基準機構(FASF)が母体となり、IFRS財団におけるISSBに相当するSSBJ(Sustainability Standards Board of Japan)が2022年7月1日に設立された。
ISSB : 「International Sustainability Standards Board(国際サステナビリティ基準審議会)」の略称。資本市場向けのサステナビリティ開示の包括的なグローバル・ベースラインを開発するため、IFRS財団が2021年11月に設立した団体。
IFRS S1号 : 「全般的な」サステナビリティ関連開示の要求事項を定めたもの。企業が短期のみならず、中長期にわたって直面するサステナビリティ関連のリスクおよび機会を企業が投資家に伝えるための開示基準である。
IFRS S2号 : 気候関連開示の要求事項を定めたものであるが、気候関連開示を求めつつ、S1号とセットで利用されるように設計されている。現状では、「個別テーマ」についての基準はS2号の気候変動しかないため、他のテーマ(例えば人的資本、人権、生物多様性)について開示する場合はS1号に基づくことになる。
GSSB : GSSB(Global Sustainability Standards Board)は、GRI(Global Reporting Initiative)の一部であり、持続可能性報告のための基準を策定する独立した機関。GSSBは、企業や組織が環境、社会、ガバナンス(ESG)に関する情報を透明かつ一貫して報告できるようにするための基準を提供している。

GSSBは企業が経済、環境、社会に与える重要なインパクトを報告することを目的とするGRIスタンダードの設定主体であり、GRIスタンダードは世界で最も普及が進んでいるサステナビリティ報告基準と言える。GSSBによると、世界の大規模250社のうちGRIを用いてサステナビリティ報告を行っている企業の割合は78%、日本の時価総額上位100社では87%となっている。また、2023年度で見ると、売上高250百万ドルを超える上場企業がGRIを利用している割合は、グローバルでは36%、日本では28%となっている。このように大きな影響力を持つGRIスタンダードだが、GRIスタンダードは企業が経済、環境、社会に与える重要なインパクトに関する情報を「マルチステークホルダー」に対して報告することを目的としているのに対し、SSBJ基準は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連の財務上のリスク及び機会に関する情報を「投資家」向けに報告することを目的としており、両者の目的、哲学は大きく異なっている。こうした中、SSBJとGSSBによる「より良い企業報告」に向けた上記基本合意はどのよう意味を持つのだろうか。・・・


GRIスタンダード : GRI(Global Reporting Initiative) が提供するサステナビリティ報告の基準である「GRIスタンダード」は、企業が経済、環境、社会(人権を含む)に与えるインパクト、すなわち持続可能な発展という目標へのプラス、マイナス両方の面について情報を提供することを目的とする。ESG課題等が企業に与える影響だけでなく、企業が社会や環境等に与える影響についての報告も重視しており、サステナビリティ報告の基準として世界で最も普及している。
マルチステークホルダー : 複数の利害関係者、具体的には、投資家、消費者、従業員、取引先、行政、地域社会など企業をとりまく幅広いステークホルダのこと。

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2024/11/21 SSBJとGSSBが「より良い企業報告」に向け協働(会員限定)

周知のとおり、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は現在、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)により開発されたIFRS S1号「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」及びIFRS S2号「気候関連開示」をベースとした我が国初のサステナビリティ報告基準(以下、SSBJ基準)を開発中だが、そのSSBJは2024年11月14日、GRI グローバル・サステナビリティ基準審議会(GSSB)との間でより良い企業報告に向けた取組みに関する基本合意書を締結した。


SSBJ : 日本における非財務開示の基準を作成する団体。IFRS(国際財務報告基準)の母体であるIFRS財団が「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB=International Sustainability Standards Board)」を設立し、非財務開示の国際的な基準「サステナビリティ報告基準」を策定することを受け、日本では財務会計基準機構(FASF)が母体となり、IFRS財団におけるISSBに相当するSSBJ(Sustainability Standards Board of Japan)が2022年7月1日に設立された。
ISSB : 「International Sustainability Standards Board(国際サステナビリティ基準審議会)」の略称。資本市場向けのサステナビリティ開示の包括的なグローバル・ベースラインを開発するため、IFRS財団が2021年11月に設立した団体。
IFRS S1号 : 「全般的な」サステナビリティ関連開示の要求事項を定めたもの。企業が短期のみならず、中長期にわたって直面するサステナビリティ関連のリスクおよび機会を企業が投資家に伝えるための開示基準である。
IFRS S2号 : 気候関連開示の要求事項を定めたものであるが、気候関連開示を求めつつ、S1号とセットで利用されるように設計されている。現状では、「個別テーマ」についての基準はS2号の気候変動しかないため、他のテーマ(例えば人的資本、人権、生物多様性)について開示する場合はS1号に基づくことになる。
GSSB : GSSB(Global Sustainability Standards Board)は、GRI(Global Reporting Initiative)の一部であり、持続可能性報告のための基準を策定する独立した機関。GSSBは、企業や組織が環境、社会、ガバナンス(ESG)に関する情報を透明かつ一貫して報告できるようにするための基準を提供している。

GSSBは企業が経済、環境、社会に与える重要なインパクトを報告することを目的とするGRIスタンダードの設定主体であり、GRIスタンダードは世界で最も普及が進んでいるサステナビリティ報告基準と言える。GSSBによると、世界の大規模250社のうちGRIを用いてサステナビリティ報告を行っている企業の割合は78%、日本の時価総額上位100社では87%となっている。また、2023年度で見ると、売上高250百万ドルを超える上場企業がGRIを利用している割合は、グローバルでは36%、日本では28%となっている。このように大きな影響力を持つGRIスタンダードだが、GRIスタンダードは企業が経済、環境、社会に与える重要なインパクトに関する情報を「マルチステークホルダー」に対して報告することを目的としているのに対し、SSBJ基準は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連の財務上のリスク及び機会に関する情報を「投資家」向けに報告することを目的としており、両者の目的、哲学は大きく異なっている。こうした中、SSBJとGSSBによる「より良い企業報告」に向けた上記基本合意はどのよう意味を持つのだろうか。


GRIスタンダード : GRI(Global Reporting Initiative) が提供するサステナビリティ報告の基準である「GRIスタンダード」は、企業が経済、環境、社会(人権を含む)に与えるインパクト、すなわち持続可能な発展という目標へのプラス、マイナス両方の面について情報を提供することを目的とする。ESG課題等が企業に与える影響だけでなく、企業が社会や環境等に与える影響についての報告も重視しており、サステナビリティ報告の基準として世界で最も普及している。
マルチステークホルダー : 複数の利害関係者、具体的には、投資家、消費者、従業員、取引先、行政、地域社会など企業をとりまく幅広いステークホルダのこと。

この合意の意味を理解するためには、「企業が経済、環境、社会に与える重要なインパクトに関する情報」(GRIスタンダード)と「サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報」(SSBJ基準)の関連性を考える必要がある。企業の活動や取引関係が経済、環境、社会に与えるインパクトは、結局は企業自身にもリスクと機会という形でプラス又はマイナスの財務的影響を与えることになる。例えば、企業が何ら対策をとらずに大量のCO2を排出し続ければ、気候変動に拍車をかけるというインパクトを環境に対して与える同時に、結果として、再生可能エネルギーへの移行を目指す法令等により企業の対応コストが増加し、企業は財務的な影響を受ける可能性がある。仮に報告の時点では財務的に重要でなくても、いずれリスクと機会という形を通じて財務的に重要な影響を及ぼすようになることも多い。したがって、企業等が自らが与えているインパクトを理解することは、企業等にとって財務的な影響(リスク及び機会)を特定する上で欠かせない第一歩になるというわけだ。この点は今年3月に公表されたSSBJ基準の公開草案でも、「サステナビリティ関連のリスク及び機会は、企業と、当該企業のバリュー・チェーンを通じての企業の利害関係者、社会、経済及び自然環境との間の相互作用から生じると考えられる」(サステナビリティ開示ユニバーサル基準公開草案BC.61)と表現されている。

SSBJとGSSBは今後、企業の活動や取引関係が経済、環境、社会に与えるインパクトに関する情報が、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連の財務上のリスク及び機会に関する情報の特定に役立つよう“ガイダンス”を提供する予定。GRIスタンダードの存在感がこれまでにも増して大きくなりそうだ。

2024/11/20 外部委託先の従業員の生活を保障?

政府の強い要請や物価上昇を受け、従業員の賃金アップに踏み切る企業が相次いでいるものの、物価上昇のスピードに追い付かず、実質賃金の低下が懸念されている。物価高は世界的な現象となっているが、こうした中、欧州を中心に、大手機関投資家が・・・

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2024/11/20 外部委託先の従業員の生活を保障?(会員限定)

政府の強い要請や物価上昇を受け、従業員の賃金アップに踏み切る企業が相次いでいるものの、物価上昇のスピードに追い付かず、実質賃金の低下が懸念されている。物価高は世界的な現象となっているが、こうした中、欧州を中心に、大手機関投資家が投資先企業とのエンゲージメントの際に「生活賃金」の支払いを求めたり、生活賃金の支払いを求める株主提案に賛成()するなど、生活賃金を支払わない企業の社会的責任を問う流れが生れている。

* 英大手保険会社Legal and General(L&G)傘下の運用会社LGIMは、英国の大手スーパーマーケットSainsburysの2022年株主総会で、サプライヤー(外部委託先等)の従業員にも生活賃金の支払いを求める株主提案に賛成票を投じたほか、米国の大手スーパーマーケットであるウォルマートとターゲットの2024年株主総会では、生活賃金の支払いを求めるNGOによる株主提案に賛成票を投じた。また、2023年には、日本のイオン、ローソン、セブン&アイを含む世界の15の大手食品小売りチェーンに対して、その従業員およびサプライヤーの従業員への生活賃金の支払いを求めるキャンペーンを展開した。

生活賃金(Living Wage)とは、世界人権宣言の第25条にあるとおり、食料、住宅、医療など生活必需品等にかかるコストに鑑みて、人々が十分な生活水準を享受できる所得水準を指す。欧米では、「生活賃金=基本的人権」との考えに基づき、人権保護や所得格差是正の観点から、企業の「社会」面でのサステナビリティへの取り組みの一つと位置付けられている。類似する概念として国が定める最低賃金があるが、生活賃金はよりリアルな生活に必要な賃金として、物価高に伴う生活コストの上昇とともに、その重要性が注目されている。

例えば英国では、Living Wage Foundationという財団が労働者に生活賃金を支払う取り組みを2001年から主導、現在はFTSE100を構成する企業の約半数を含む1万5千社もの企業が同財団から「Living Wage Employer」として認定を受けている。同財団は、従業員とその家族の生活コストに基づき算出した生活賃金水準を毎年公表しており、「Living Wage Employer」の認定を受けた企業はその賃金水準を上回る額を支払うことを約束している。生活賃金の支払対象は自社の従業員にとどまらず、外部委託先の従業員なども含むという点に特徴がある。


FTSE100 : ロンドン証券取引所に上場する時価総額上位100銘柄で構成される株価指数。

一方、多くの日本企業にとっては、「自社の従業員ならともかく、なぜ外部委託先の従業員にまで生活賃金を支払わなければならないのか?」というのが正直な感想ではないだろうか。実際、欧米と異なり、現時点では日本国内で機関投資家が生活賃金をエンゲージメント等のテーマとする動きは認知されていない。そもそも、生活賃金という言葉や、それをどうやって算定するのかについての共通理解さえ形成されていないのが実情と言える。この点、上記のとおり日本企業に対しても生活賃金の支払いを求めるキャンペーンを展開したLGIMが出したレポートでも、アジアでは生活賃金という概念はまだ新しいとし、欧州とアジアにおける本テーマに対する温度差を指摘しているが、その一方で同レポートは、LGIMがコンタクトを取ったアジア企業の関心は高かったとも報告している(62ページ中段の「We began…」で始まる段落参照)。生活賃金に関連する「所得格差」や家計の安定がもたらす従業員の「ウェルビーイング」といったテーマは既に日本でも注目されているだけに、近い将来、生活賃金に取り組む日本企業が出現する可能性は十分にありそうだ。


ウェルビーイング : 個人やコミュニティの健康や幸福の状態を指す概念。単に病気がない状態だけでなく、身体的、精神的、社会的に良好な状態を意味する。

2024/11/19 相次ぐ上場企業の下請法違反、「下請」という呼称は消滅へ

公正取引委員会は毎年11月を「下請取引適正化推進月間」とし、この期間に下請代金支払遅延等防止法(以下、下請法)の普及・啓発活動を集中的に実施している。下請取引適正化推進月間に先立ち、10月には下請法の基礎講習等の新作動画3本がYouTubeで公開されたところだ。

【受注側企業のみなさまへ☆取引改善のススメ!】
【下請法の基礎講習10】~手形等のサイト60日ルールの解説~
【下請法の基礎講習11】~令和6年5月 買いたたきの考え方を明確化しました(下請法の運用基準改正)~

公正取引委員会の取り組みは“普及・啓発”活動に留まらない。先月(2024年10月)には上場企業に対して立て続けに勧告を行っている。まず・・・

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2024/11/19 相次ぐ上場企業の下請法違反、「下請」という呼称は消滅へ(会員限定)

公正取引委員会は毎年11月を「下請取引適正化推進月間」とし、この期間に下請代金支払遅延等防止法(以下、下請法)の普及・啓発活動を集中的に実施している。下請取引適正化推進月間に先立ち、10月には下請法の基礎講習等の新作動画3本がYouTubeで公開されたところだ。

【受注側企業のみなさまへ☆取引改善のススメ!】
【下請法の基礎講習10】~手形等のサイト60日ルールの解説~
【下請法の基礎講習11】~令和6年5月 買いたたきの考え方を明確化しました(下請法の運用基準改正)~

公正取引委員会の取り組みは“普及・啓発”活動に留まらない。先月(2024年10月)には上場企業に対して立て続けに勧告を行っている。まず10月23日に勧告を受けたのがナイス(東証スタンダード市場上場)だ(勧告の詳細については公正取引委員会のWEBサイトを参照)。ナイスは、2022年11月から2024年5月までの間、「仕入割引」または「リベート」により、下請事業者(34名)の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず、下請代金の額を減じていた(総額2320万1649円)として、下請法第4条第1項第3号(下請代金の減額の禁止)の規定に違反する行為があったと認定された。

ナイスは、2024年10月9日に下請事業者に対し減額した金額を支払うとともに、勧告を受けた10月23日に出したリリースで、「本勧告を受けるに至った事態を大変重く受け止め、「仕入割引」及び「リベート」による下請代金の減額を行った事業者様に対し、下請代金の減額に該当すると判断された金額の全額のお支払いを既に完了するとともに、支払いに関する約定について適正な内容へと変更しております。」とし、全面的に自社の非を認めている。

ナイスが勧告を受けた2日後の10月25日には、VTuberプロダクションの運営等を事業とするカバー(東証グロース市場上場)が勧告を受けている(勧告の詳細については公正取引委員会のWEBサイトを参照)。カバーはインターネットを通じて配信する「VTuber動画」等に用いるイラスト、動画用の2Dや3Dのモデル作成を下請事業者に委託している。同社は2022年4月から2023年12月までの間、下請事業者(23名)に対し、下請事業者から成果物を受領した後に、発注書等で示された仕様等からは作業が必要であることが分からない“やり直し”を無償でさせていた(下請事業者23名に対し、合計243回)。カバーは勧告を受けた10月25日にリリースを出し、「Live2D モデルや 3D モデル等のクリエイティブをご依頼するにあたり、仕様書や指示書等で正しい言語化による発注が行われなかった結果、修正をご依頼する回数が多くなってしまった」ことを認めた。その上で、下請法違反の原因を「当社の事業が急拡大し取引件数が増大したのに対し、お取引先様の方々とのやり取りに抜け漏れや遅延が生じてしまっていたこと、及び社内体制の構築や社内研修が不十分であったこと」(カバーのリリース文より引用)と分析。再発防止に向け、「2024 年 11 月には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(通称、フリーランス新法)」が新たに施行を控えており、当社としてはクリエイターの皆様や各お取引先様との取引を円滑かつ安心して進められるよう体制を整えていく必要があると考えております。今後も、役員及び従業員に対する社内研修を実施するなど、各法令の遵守とともに社内体制の強化とモニタリング等の未然の対策を整備し、引き続きコンプライアンスの強化と再発防止に向け、改善を図る方針でございます。」としている。

カバーの場合、ナイスと異なり、成果物を受領しているにもかかわらず、あらかじめ定められた支払期日までに下請代金を支払っていなかった事例もあったため、勧告だけでなく、改善措置を講ずるよう「指導」も受けている(当該支払遅延による遅延利息の額は、下請事業者29名に対し、総額115万2642円)。なお、カバーは、2024年9月17日までに、下請事業者に対し当該支払遅延による遅延利息についても支払いを済ませている。

下請け業者は、ナイスにとっては同社が販売または製造を請け負う建築資材の製造を委託する先であり、カバーにとってはVTuberの見栄えを整える大事なクリエイターと、いずれもビジネスを進めていく上での大事なパートナーであったことは疑いようがない。それにもかかわらず、ナイスは下請事業者への下請代金を勝手に減額し、下請事業者の犠牲の下、利益を捻出していた。また、カバーは仕様書や指示書等で「正しい言語化による発注」(カバーのリリース文より引用)を行わず、発注内容が曖昧であったことをいいことに、下請事業者に何度も“やり直し”を命じていた。これらの行為の背後では「当社の繁栄のために下請には泣いてもらおう」という意識が見え隠れしており、下請事業者に対するリスペクトや、「当社だけでなく下請事業者も含め共に繁栄を目指そう」というパートナーシップの意識が欠如していたと言われてもやむを得ない。

2024年10月4日のニュース「手形サイトを60日以内とする下請法運用上の規制の限界」でお伝えしたとおり、公正取引委員会と中小企業庁が設置した「企業取引研究会」では、下請法の「下請」という呼称の変更も議題に加えられている。そして、2024年10月24日に開催された同研究会の第4回の会合では「下請」という呼称には差別的なイメージがあるとして、呼称を変更することの是非が検討された。変更案としては「パートナー」が挙がっている(【資料1】事務局資料の7ページの岸田総理(当時)の発言を参照)。パートナーという表現は「パートナーシップ構築宣言」()を通じて既に相当程度普及している上、呼称が「下請」から「パートナー」に変われば発注元の意識も変わり、それにより発注元が下請事業者に対して「勝手に代金を減額する」「あいまいな指示で何度も作り直しさせる」といった“下請けいじめ”が減ることが期待される。いまだに社内で「下請」という呼称を利用している企業は、従業員が「下請事業者=重要なビジネスパートナー」という意識を持てるよう、下請法改正を待たずに社内での呼称変更に向けた取り組みを進めたいといころだ。

* 事業者が、サプライチェーン全体の付加価値向上、大企業と中小企業の共存共栄を目指し、「発注者」側の立場から、「代表権のある者の名前」で宣言するもの。「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトでは、2024年11月1日現在、56,000社を超える事業者の宣言を閲覧することができる。なお、同ポータルサイトは2024年10月28日にカバーの下請法違反を受け、同社の宣言の掲載を中止している。

2024/11/18 【特集】MBOディスクロージャーの現状と方向性(会員限定・7)

おわりに

MBOを検討する取締役にとっては、現行のディスクロージャー規制は緩い。しかし、実際にディスクローズされている内容は、肝心の計算過程が開示されていないという意味で、投資家の役に立っているとは考えにくいのが現状であるため、金融商品取引法においても、上場企業にバリュエーション・レポートのディスクロージャーを要求し、算定に用いた数字の内容をディスクローズさせるべきだ。それが困難である場合には、事後的に裁判が起こされた際、裁判所がディスクローズされていないバリュエーション・レポートについては、その信用性を大幅に割り引いで評価することによって事実上ディスクロージャーを促すという方向性が考えられるとの指摘がある。

また、東京証券取引所も2024年3月22日よりMBOディスクロージャーの見直しを検討している。市場関係者からは「残念ながら、MBO・支配株主による完全子会社化の場合には、確信犯的に少数株主の利益を棄損しているケースが多い」との声が上がっているため、同年10月31日には、「事業計画の前提となる考え⽅やフリーキャッシュフローの計算過程等における具体的な数値等の開示等も含め、開示の充実を求めるべき」との方向性で見直しを検討することを明らかにしている。

MBOを視野に入れている取締役は、MBOの性質やディスクロージャー規制の趣旨を十分理解した上で検討を進める必要がある。

<参考文献>
・鈴木一功=吉村一男「MBOとディスクロージャー」旬刊商事法務2365号(2024年)4頁

2024/11/18 【特集】MBOディスクロージャーの現状と方向性

フィデューシャリーアドバイザーズ代表
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター招聘研究員 吉村一男

はじめに

セブン&アイ・ホールディングスが、カナダのコンビニエンスストア大手のアリマンタシォン・クシュタールから同意なき買収提案を受け、MBOを検討しているのは周知のとおり(2024年9月6日のニュース『「企業買収における行動指針」が影響力を持つようになった背景』参照 引用:上場会社役員ガバナンスフォーラム)。MBOとは取締役が上場企業である自社の株式を買収し、株式を非公開化する取引であるが、同意なき買収への対抗措置の“王道”であり、これ自体は珍しいことではない。しかし、MBOには取引の構造上、様々な懸念があるため、実施に当たっては注意が必要である。

MBOの動向(会員限定)

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