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責任限定契約を締結すればD&O保険は不要か

 「社外取締役の引き受け手がなかなか見つからない」とこぼす企業は少なくないが、候補者が就任を躊躇する理由の1つが、株主代表訴訟や第三者訴訟などのリスクの存在だ。確かに、基本的に月1回の取締役会にしか出席しない社外取締役に常勤の取締役と同様の賠償責任を背負わせるのは酷であろう(社外監査役にも同じことが言える)。

第三者訴訟 : 役員の故意や重過失によって会社または役員が第三者(取引先、従業員など)に損害を与えた場合、第三者が会社法429条(役員の任務懈怠)や民法709条((役員個人の)不法行為)を根拠に役員に対して損害賠償を請求するもの。

 そこで、社外取締役や社外監査役(以下、社外役員)は選任の際に会社との間で「責任限定契約」を締結し、賠償額に上限を設ける(=上限額を超えて責任を負わないようにする)のが通常となっている。

 もっとも、責任限定契約を締結すれば社外役員のリスクを消せるわけではない。「社外役員は責任限定契約を締結しておけば、D&O保険(会社役員賠償責任保険)に入る必要はない」という話を耳にすることがあるが、結論から言うとこれは間違いだ。責任限定契約で役員の責任が限定されるのは、「善意でかつ重大な過失がない」場合に限られる。そもそも、・・・

D&O保険(会社役員賠償責任保険) : 第三者訴訟で役員が損害賠償責任を負った場合に支払われる「普通保険約款」と、株主代表訴訟で役員が敗訴した場合に支払われる「株主代表訴訟補償特約(自動で付与される)」がある。このうち「株主代表訴訟補償特約」は、あくまで会社の損害に対して役員が負う責任への保証であるため、保険料の支払いは役員の個人負担(保険料全体の約1割が一般的)となる(1人当たりの保険料は高額ではない)。保険料は役員報酬から天引きされるのが一般的だが、会社によっては、その保険料相当分を役員報酬に上乗せしたうえで、天引きしているところもある。

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