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政府の労働時間短縮方針が企業に迫るもの

 日本人の“働き過ぎ”解消に向け、政府は労働時間を短縮していく方針を打ち出している。今年(2015年)2月13日に厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会がまとめた「今後の労働時間法制等の在り方について」と題する報告書では、「時間外労働に対する監督指導の強化」や「所定外労働の削減に向けた労使の自主的取組の促進」「年次有給休暇の取得促進」などが提案されたところだ。

 労働時間の短縮は社員にとっては喜ばしいことだが、実態として、日々の業務運営や好調な業績が社員の長時間労働に支えられているという企業は少なくないだろう。労働時間を短縮しつつ、業務運営に支障を来さず、また業績を維持していくためには、「労働生産性」を高めるしかない。しかし、元々日本の労働生産性は他の先進国と比べて低く、2013年における就業1時間当たりの日本の労働生産性は41.3ドルと、OECD加盟34カ国中20位となっている(日本生産性本部の調査)。

 就業1時間当たりの労働生産性が日本と同水準にあるイギリス(46.6ドル)では現在、同国の労働生産性の低さが社会問題化している。イギリスの2014年のGDP成長率は前年比+2.6%と、2007年以来の高い水準を記録したが、実は「総労働時間の増加」がGDPの伸びに大きく貢献している。

 イギリスの労働生産性が低い理由の1つとして指摘されているのが、「高スキル職種」と「低スキル職種」の二極化だ。同国では、従来“中間層”が担ってきた仕事が人件費の安い国外の労働力や産業ロボットに取って代わられたことで、このような現象が生じている。同様の傾向はヨーロッパ全体にあるが、中間層の雇用の減少を10とすると、イギリスでは高スキル職の雇用創出が4.5、低スキル職の雇用創出が5.5であるのに対し、ドイツやフランスではそれぞれ7、3と、中間層の雇用の減少を「高スキル職」の雇用の創出で補完している図式が見てとれる。

 もちろん、イギリスにおいても高スキル職の雇用ニーズは高い。それにもかかわらず高スキル職の雇用が進まないのは、・・・

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