多くの3月決算会社は、株主総会(定時株主総会を前提とする。以下、同様)での議決権を付与する「基準日」を3月31日としたうえで、株主総会を毎年6月に招集する旨を定款で定めているが、この常識が変わるかもしれない。
基準日 : その日において株主名簿に名前が載っていれば、株主総会での議決権行使や配当を受ける権利を享受できる日のこと。基準日における株主(基準日株主)による権利行使は「基準日から三箇月以内」に限定されている(会社法124条2項)。毎事業年度末から3か月以内に株主総会を開催しているのはこのためである。
経済産業省の「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」は、株主との対話を促進させるとの観点から、株主総会の開催時期を後倒しできないか検討してきたが、先週木曜日(2015年4月23日)に、伊藤レポートの第二弾と言える報告書を取りまとめている。
具体的には、議決権付与の基準日を現行の「決算日」(3月決算会社の場合、3月31日。下図の上側)から「決算日以降の日」(たとえば4月末や5月末など。下図の下側)とし、その日から3か月以内に株主総会を開催するとの考えを示している。報告書では、基準日が株主総会の開催日の約2か月前に設定されている米国の例を参考に、「7月」に株主総会を開催する案を紹介。この場合、7月下旬に株主総会の2か月前の「5月末」に議決権付与の基準日を設定すればよいとしている。
もっとも、7月に株主総会を実施することは現行会社法上も不可能ではない。会社法は、定時株主総会を「事業年度の終了後一定の時期」に開催すればよいとしている(会社法296条1項)。つまり、たとえ6月末までに定時株主総会を開催しなくても会社法違反にはならないということだ。
「7月開催」を実現するうえで最大の障壁とみられていたのが法人税の申告である。法人税の申告は「事業年度終了の日の翌日から2か月以内」が原則だが、監査を受ける上場会社等の場合は申告期限を延長することで「3か月以内」とされている。このため、3月決算会社が7月以降に株主総会を開催すれば、株主に計算書類の報告をする前に確定申告を行うことになってしまうという問題が生じる。
法人税法では、3か月以内に定時株主総会が開催されないなど“特別の事情”がある場合には、「税務署長が指定する月数の期間」申告期限を延長できることになっているが、この点について報告書では、「上場会社等が、株主との対話促進のために基準日を決算日以降の日に設定し、株主総会時期の見直しを行った場合には、法人税法上の申告期限を延長できる“特別の事情”に該当する」旨が明記された。当フォーラムの取材では、これは、・・・
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