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行政庁が作る「ガイドライン」の法的根拠

 企業活動においては様々な法令の遵守が求められるが、法令同様、企業の行動に大きな影響を与えるのが、各行政庁から出されている「ガイドライン」や「指針」だ(以下、まとめて「ガイドライン」という)。

 行政庁が策定するガイドラインは、行政庁の“判断基準”を示したものであり、企業実務はもちろん、裁判所や、場合によっては警察当局の動きにも一定程度の影響を与える。例えば、企業の「ノウハウ」が営業秘密として法的に保護されるかどうかを判定するうえでは、経済産業省が策定したガイドラインである「営業秘密管理指針」が大きな役割を果たす(【役員会 Good&Bad発言集】リストラに伴う技術流出リスクへの対応参照)。

 営業秘密管理指針は、企業の中で営業秘密をどのように管理すべきかを示したものであり、企業が「営業秘密の侵害があった」として警察に訴えた場合、警察からは必ず「営業秘密管理指針に沿って管理をしていましたか?」と聞かれることになる。仮に同指針に従っていなかった場合、「貴社の管理がずさんだった」とされ、実際に営業秘密を不正に盗まれて勝手に使われているにもかかわらず、警察が動いてすらくれないということもある。また、裁判においても、同指針に沿って営業秘密を管理していなければ、侵害があったことや損害賠償が認められないという結論になりがちである(このような実態を踏まえ、今年1月には同指針が全面改訂され、これまで曖昧だったり厳しすぎたりした箇所が見直され、より企業の実務に即したものとなった。2014年10月3日のニュース「“金庫に隠された営業秘密”のみを保護する規制に改正の動き」参照)。

 もっとも、ガイドラインはあくまで行政庁だけで策定されるものであり、行政庁の運用基準・行動指針に過ぎない。国会で決められるわけではない以上、「法令上の根拠」はない。このため、裁判所の判断を拘束(=裁判規範性)することもなく、裁判ではあくまで「参考」にされるに過ぎない。したがって、実際の裁判でガイドラインに従っていることを主張し、それが認められたとしても、裁判に負けることはあり得る。

 ただし、なかには「法令上の根拠」があるガイドラインも存在する。例えば、・・・

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