資金繰り改善のため、在庫圧縮に取り組む会社は少なくない。在庫の状況を確認するためのデータの1つが、「発注残(発注したものの、いまだ入荷・検収されていない物品等の残高。「注残」と短縮して言われることも多い)」だが、役員としては、この発注残に隠れたリスクを疑う目を持っておきたい。それは、「下請法」への抵触だ。
下請法とは、発注者である事業者(親事業者)が立場の弱い下請事業者に不利益な取引をしないよう、親事業者の禁止行為などを定め、下請事業者の利益保護を図ろうというもの。禁止行為としては、受領拒否、下請代金の支払遅延や減額、返品、買いたたき、不当な給付内容の変更(費用を負担せずに注文内容を変更すること)などがある。資本金が3億1円以上の事業者が「資本金3億円以下」の事業者に対し物品の製造・修理やプログラムの作成、運送や物品の保管などの役務提供を委託する場合、下請法の適用対象となる。ほとんどの上場会社が下請法の適用を受けると考えていいだろう。
多くの会社では、発注データを入力し、入荷データを消し込むことで、(発注と入荷の差額である)発注残をシステム上把握できるようにしている。発注残は将来の「使用可能在庫」の予測や追加発注の要否の判断など、生産管理や購買管理上の数字として重要だが、そこには・・・
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