今年(2015年)7月に成立した営業秘密の保護強化を図る改正不正競争防止法は来年1月から施行される見込みだが、早くもその趣旨を汲み取るかのような裁判所の動きが出ている。
今月4日、東芝の研究データを転職先の韓国企業SKハイニックスに渡したとして不正競争防止法違反(営業秘密開示)の罪に問われた元技術者の控訴審判決において、東京高裁は、元技術者に対し懲役5年・罰金300万円を科すとした東京地裁判決を支持し、弁護側の控訴を棄却した。2015年3月27日のニュース「技術情報流出防止のカギとなる『抑止力』」でもお伝えしたとおり、地裁判決は決して厳しすぎるものではないが、これまで実刑判決が出ることすら稀だった従前の判例と比べれば、異例の判決であったことは間違いない。弁護側は情報の流出自体は認めつつも、「情報の有用性はそれほど高くない。地裁判決は重すぎる」などと主張したとされる。今回の東京高裁判決は改めて地裁判決を支持することで、海外競合企業に技術情報を不正に流出させることを重大視する姿勢を示したと言える。
一方、東芝と韓国企業SKハイニックスの間では、損害賠償訴訟提起から約9か月後の昨年末に和解が成立している。和解金額は、東芝からの請求額約1100億円に対し約330億円と、単純比較すれば3割程度に目減りしているものの、これまで日本企業が受け取った和解金の中では非常に高い額と言える。刑事訴訟が先行し、多くの証拠が出揃った状態で始まった民事訴訟において、SKハイニックスが早い段階から和解を模索していたとしても不思議でない。和解金の高額化にはこのような事情も影響しているものとみられる。
対照的に、民事訴訟で“全面戦争”を展開していたのが、・・・
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