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株主代表訴訟を巡る誤解

 企業のガバナンス、コンプライアンス体制のあり方を考えるうえで、今年最大級の“教訓的事案”となってしまった東芝の不適切会計事件。11月7日には、東芝が自ら設置した「役員責任調査委員会」の報告書 (以下「調査報告書」という)を受け、会社として、元社長3名を含む5名の元役員に対し、3億円の損害賠償請求を求め責任追及の訴えを提起するに至った。この訴訟は、既に株主から受けていた現旧役員に対する提訴請求(一定期間内に会社が応じない場合は、株主が「代表訴訟」を提起することができるようになる)への応答という側面が強いとはいえ、日本有数の大企業で、「会社対元役員」という構図の訴訟が提起されること自体が極めて異例であり、本件がそれだけ深刻な問題だったということを改めて感じさせられる。

 ただ、今回の会社の訴訟提起に対しては、対象が5名の「元役員」に限られることや、請求額が3億円にとどまっていることから、「責任追及の程度が甘いのではないか」という批判が少なくない。特に株価の下落で損害を被った個人投資家にあっては、「これだけの規模の不適切会計をしておきながら、『3億円』の損害賠償請求では甘すぎる」という思いが強いようであり、SNS上では、「株主代表訴訟によって、より踏み込んだ責任追及を行うべき」という書き込みをよく見かける。しかし、このような意見には、「株主代表訴訟」の本質に対するいくつかの誤解があるように思われる。

 まず、・・・

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