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職務発明の対価の所得区分が変更へ

 来月(平成28年4月1日)から施行される改正特許法により、発明について特許を受ける権利が「従業員のもの」から「会社のもの」へと変更されるが(2015年4月10日のニュース「発明は「従業員」から「会社」のものへ、残されたリスク要因は? 」参照)、これに伴い、知的財産を扱う法律事務所等に企業からの質問が相次いでいるのが、従業員に対する所得税の取扱いだ。

 従来の特許法では、特許を受ける権利については例外なく「従業者(発明者)」に帰属し、従業者はこれを会社に譲り渡す見返りとして「対価」を受け取る権利を有するものとされていた。この点を踏まえ国税庁は、「これらの権利の承継に際し一時に支払を受けるものは譲渡所得、これらの権利を承継させた後において支払を受けるものは雑所得」と取り扱ってきた(所得税基本通達 23~35共-1(1)参照)。つまり、特許を受ける権利を会社に譲渡した際に受ける対価は「譲渡所得」、その後に支払いを受けるもの、例えば出願・登録時の報奨や、製品の販売実績等に伴って会社から受け取る報奨は「雑所得」とされてきたわけだ。

 ただ、今回の特許法の改正により、特許を受ける権利を「法人帰属」とした会社()は、もはや従業者から当該権利の譲渡を受けることはなくなるため、上述した国税庁の取扱いのうち、「権利の承継(従業者から見れば譲渡)に際し一時に支払を受けるもの」は存在しなくなる。

 改正特許法では、従来どおり「従業者帰属」を維持するか新たに「法人帰属」とするかは選択できることとされている。この点は会社の経営方針等によって決定すればよい。

 この点については、特許法改正を踏まえて特許庁が取りまとめた「特許法第35条第6項の指針(ガイドライン)(案)」でも、「従業者等が受けた経済上の利益に対して課せられる所得税の取り扱いについても明確にすることが望ましい」と指摘されている(25頁(六))。

 国税庁の方針は現時点では公表されていないが、・・・

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