“横浜マンション傾斜事件”では、当事者である旭化成建材のみならず、親会社の旭化成も矢面に立たされたように、子会社が不祥事を起こした場合には親会社も責任を問われかねない。それを未然に防ぐ役割を期待されるのが子会社の監査役だが、この役割を果たせていないことが多いのが現状だ。
会社法上、非公開会社(株式の譲渡制限を設けている会社)には、監査役や監査役会を設置しないという選択肢や、監査役を1人だけ置くという選択肢も認められている。また、監査役会を設置していない会社の監査役は、「社外性」も問われず、常勤である必要もない。このため、子会社が非公開会社の場合、親会社の経理部長や法務部長などの社員が「非常勤監査役」に就任していることが多い。常に子会社にいるわけではないうえ、親会社の社員としての業務も忙しいとなれば、必然的に子会社の監査役としての仕事は疎かになりがちだ。監査役による監査には、「取締役の業務遂行の適法性」を監査する業務監査と、会社法上の財務諸表である計算書類を監査する「会計監査」があるが、このうち会計監査の内容がずさんでミスが多いという例がしばしば見受けられる。
監査役監査の成果物としては、監査後の計算書類と監査結果(業務監査を含む)を記した監査報告書しかない。逆に言うと、第三者が監査役による監査結果を確かめるにはこれらの書類を見るしかないということだ。上述のとおり、このうち「監査後の計算書類」の記載内容に間違いがあるとなると、「一体何を監査したのか?」ということにもなりかねない。
よく見かける間違いとしては以下のようなものがある。・・・
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