株主との建設的な対話等を充実させるための方策の1つとしての「株主総会の後ろ倒し(3月決算会社であれば「7月」開催)を実現するための法整備が、金融庁や経済産業省を中心に進められている。
3月決算会社を例にとると、現状、多くの3月決算会社は、定時株主総会の「基準日」を毎年3月31日とし、毎年6月に招集する旨を定款で規定しているのが一般的だ。もっとも、会社法上、定時株主総会は「事業年度の終了後の一定の時期」に開催すればよいとされているため(会社法296条1項)、仮に定款で基準日をもっと遅い日に定め、7月以降に定時株主総会を開催したとしても法令違反になるわけではない。
基準日 : その日において株主名簿に名前が載っていれば、株主総会での議決権行使や配当を受ける権利を享受できる日のこと。基準日における株主(基準日株主)による権利行使は「基準日から三箇月以内」に限定されている(会社法124条2項)。毎事業年度末から3か月以内に株主総会を開催しているのはこのためである。
このように、会社法上は株主総会を後ろ倒しすることが可能とはいえ、実際にこれを実施するには様々な問題をクリアする必要がある。まず、有価証券報告書と事業報告の「大株主の状況」等の記載時点だ。両者とも決算日(事業年度末=基準日)の状況を記載することになっているが、仮に株主総会を後ろ倒しした場合には、基準日も後ろ倒しせざるを得ない。つまり、企業は「大株主の状況」等を記載するためと、後ろ倒しされた株主総会で議決権を行使できる株主を特定するために、株主の確定を2回行う必要が生じる。そこで金融庁の金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」は、明日(2016年4月13日)にも取りまとめる報告書で、「大株主の状況」等の記載時点を従来の「決算日」から「議決権行使基準日」へと見直すことにより、株主確定の事務負担を増加させないようにする旨が盛り込まれる。有価証券報告書については開示府令の様式、事業報告については会社法施行規則122条の改正も視野に入ってくることになる。
もう1つの問題が・・・
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