上場企業で重大な不祥事が起こった場合、「第三者委員会」に独立した立場から調査してもらうのがお決まりのパターンだが、各社の調査報告書を読むと、「内部通報制度を設けていたが、活用されなかった」と記載されていることが実に多い。組織ぐるみの不祥事に対する調査報告書となると、「内部通報制度が活用されていれば、ここまで被害が広がったりコンプライアンス違反が長期化したりすることはなかっただろう」といったコメントをしばしば見かける。
周知のとおり、内部通報制度は、組織にとって不利益な情報等を早期に共有し、事態の改善を図る組織内の仕組みであるが、それを円滑に機能させるための法律上の仕組みとして、公益通報者保護制度がある。同制度は、「公益」のために通報を行った労働者に対する解雇等の不利益な取扱いを禁止する制度である。食品偽装やリコール隠し等の企業不祥事の多くが通報をきっかけに発覚したことを受け、2006年に「公益通報者保護法」が施行され、大企業を中心に社内規程への導入が進んだ。ところが、制度導入から10年が過ぎ、多くの企業で内部通報制度が形骸化してしまっているのが現実だ(2015年10月21日のニュース「形骸化する内部通報制度」参照)。
しかし、内部通報制度は、適切に整備・運用されれば、不祥事の芽を早めに摘むことができるだけでなく、組織内にいい意味での“緊張感”をもたらし、コンプライアンス経営の実現に役立つ。これを形骸化させておくのは、結局は企業にとっても損失と言える。こうした中、・・・
このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。