企業が作成・受領する「見積書」「契約書」「注文書」「請求書」「領収書」「棚卸表」などの文書は膨大な量になるだけに、それらを紙のまま保管している限り、保管コストが高くついたり社内の回付に手間がかかったりするといった問題がついて回る。日本経団連の試算によると、紙による文書保存コストは経済界全体で年間約3,000 億円に上る。そこで、これらの文書を、電子帳簿保存法に基づき「電子データ」として保存することを検討している企業も少なくないだろう。
電子帳簿保存法 : 国税に関する帳簿や書類を電子保存するときの方法や税務署への申請等を規定した法律で、正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」。
電子帳簿保存法は、領収書等の書類の保存コストを軽減するため平成17年に導入されたもので、領収書のほか、請求書、契約書など本来は税法により“紙ベース”での保存が求められる書類をスキャンし、電子データとして保存することを認めるもの。制度の大元は「電子帳簿保存法(4条3項)」に定められており、対象となる書類やスキャナ保存を認める詳細な要件などは税法に定められている。2015年度税制改正(2015年9月30日より施行)により、従来は認められていなかった「3万円以上」の領収書や契約書がスキャナ保存の対象に加えられ、さらに2016年度税制改正(2016年9月30日より施行 *)により、来年(2017年)1月1日以降はスキャナ機によるスキャニングに限らず、スマートフォンやデジタルカメラによる撮影も可能とするようスキャナ保存の要件が緩和されている(法改正の経緯については、2015年11月18日のニュース「領収書の“スマホ撮影”容認へ、問われる不正防止のための管理体制」を参照)。これらの改正により、企業にとって、「紙による保管」から「電子データ保存」への切り替えは現実的な選択肢になってきた。
電子データ保存への切り替えは、文書の保存コストの低減にとどまらず、社内業務の流れをも変える可能性を秘めている。出張旅費精算を例にとると、従来は出張者が出張から戻った後で精算書の裏にホテル代や新幹線代の領収書を糊で貼付けて上長の承認をもらうというアナログな精算手続きを行っていた会社が、電子データ保存への切り替えとともに「電子承認制度」を導入すれば、出張者はスマートフォンで撮影した領収書(のデータ)を帰路の新幹線の中から電子承認のシステムにアップロードするだけで、出張旅費の精算を終わらせることも可能になる。
電子データ保存の仕組みを導入する際には、税務上の保存要件をクリアすることばかりに注意が向かいがちだが、忘れてはならないのが・・・
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