貸金業法の規制緩和により、グループ企業間での貸付けがやり易くなりそうだ。これは、今年1月27日からパブリックコメントに付されていた(~2月26日まで)貸金業法施行令の一部を改正する政令が来週3月18日(火)に閣議決定され、4月1日から施行されることが確実となったため。
貸金業法上、企業への貸付けであっても、反復継続して行われる場合には「業」としての貸付けに該当し、貸付けを行う者は貸金業法上の「貸金業者」としての登録が必要になる。過剰融資、過酷な取立て等の問題が生じる可能性があるからだ。
もっとも、親子会社間の貸付けではそのようなことは考えにくく、むしろ同一法人内の資金移動とも同視できる。そこで金融庁も、「総議決権の過半数」を有する会社に貸付けを行う場合には貸金業者の登録が不要であることを、ノーアクションレター(法令適用事前確認手続)で明らかにしている。
これに対し、「実質子会社」(議決権の40%以上を保有するとともに、財務及び事業の方針を決定していることが推測される事実が存在するなど、実質的に支配している会社)への貸付けでは貸金業者の登録が必要というのが、金融庁のこれまでのスタンスだった。
ただ、以前から、実質親子会社間の経済的一体性や、上述した不当貸付の防止という貸金業法の趣旨を踏まえると、「実質子会社への貸付けでも登録は不要とすべき」との意見があり、昨年12月13日にとりまとめられた財務省・金融庁共催の「金融・資本市場活性化有識者会合」の報告書にも、企業グループ全体の最適な資金管理システム構築のため、「貸金業の登録を不要とする範囲を実質子会社まで広げるよう現在の規制を改めるべき」との意見が盛り込まれた。また、好転し始めた景気を金融面から後押ししたい政府もこの規制緩和を推進する意向であったことが、今回の貸金業法施行令の改正につながった。
現在、多くの上場企業がグループ企業間の低コスト・安定的な資金調達を図るためにCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を構築しているが、貸金業の登録が必要な実質子会社はCMSの対象外としてきた。しかし、貸金業法の改正により実質子会社への貸付が可能となれば、例えば自社が役員の過半数を送り込み実質的に支配していると言えるような50:50の合弁会社も「実質子会社」としてCMSに取り込み、貸付対象となり得る。役員としては、改正を見据え、実質子会社のCMSへの取込みの準備をしておきたい。
また、資金融通を通じたグループ各社の情報収集、課題把握の機能も有しているCMS構築のそもそもの目的は、グループ内の経営資源の効率的な配分を通じて、グループ全体の経営力を底上げすることにある。今回の貸金業法の改正は、単なるCMSの変更にとどまらない、グループ全体の経営を議論するよい機会ととらえるべきだろう。