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“有事”の株主総会におけるお土産

 今年1月からNISA(少額投資非課税制度)がスタートしたことを受け、個人株主の動向に注目する会社が増えている。なかには、個人株主の投資獲得を目的として、最低投資金額を引き下げるための株式分割を行った会社もあるようだ。

 3月決算の会社では6月の株主総会開催に向けた準備が始まっているが、個人株主の増加によって改めて注目されそうなのが、“株主総会のお土産”である。

 株主からの期待もあり、株主総会に出席した株主にお土産を渡すのは半ば当然のことになっている会社も少なくないが、過去には、株主総会のお土産が問題になった著名な裁判がある。この裁判では、有効な議決権の行使を条件として株主1名につきQUOカード1枚(500円分)を交付したことが、「株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与をしてはならない」とする会社法の規定(同法120条1項)に反し、違法とする判決が下されている(平成19年12月6日・東京地裁判決)。

 もっとも、この判決をもって「お土産を渡すこと」が一般的に禁止されているわけではない。本事案は「会社提案に賛成する議決権行使の獲得を目的として」お土産が渡された点が違法とされたものであり、QUOカードという金券を渡したことや金額の多寡は問題とされていない。あくまで「どのような目的でお土産を渡すか」が、合法か違法かを分けるポイントとなっている(詳細については「株主優待制度を導入したい」を参照)。

 株主の意向が大きく対立しない“平時”の株主総会であれば、お土産を渡すことの違法性が問われるような事態になることはないだろう。一方、例えば増配をめぐって会社側提案と株主提案が真っ向から対立するような“有事”の株主総会では、株主に喜んでもらうためと思って渡したお土産が思わぬ紛争を招きかねない。したがって、有事の株主総会では、「どのような目的でお土産を渡すのか」を改めて確認しておく必要がある。

 会社をアピールするためのツールとして、株主総会のお土産に自社製品を配布するケースは少なくないが、有事の時こそ、こうした株主の権利の行使に影響を及ぼすおそれのない正当な目的に基づくお土産の方が無難と言えそうだ。