2015年5月に施行された改正会社法で導入された「監査等委員会設置会社」に移行した上場会社はおよそ800社に到達している。監査等委員会設置会社に移行するメリットとしては、社外監査役を社外取締役に横滑りさせられるということが強調されがちだが、この他にも見逃せないメリットとして、一部の重要な業務執行(*)の決定を取締役に委任できる(=取締役会を通さなくてもよい)というものがある。
* 重要な財産の処分および譲受け、多額の借財、支配人その他の重要な使用人の選任および解任などが該当する(会社法362条4項)。
「取締役会の過半数が社外取締役で占められていること」との条件は付くものの、監査等委員会設置会社では社外取締役を3人以上選任している上場企業が6割を超えており(*)、取締役の人数次第ではこの条件を満たすことはそれほど難しくない。ガバナンスの強化が叫ばれる中ただでさえ取締役会での決議事項は増える傾向にあるだけに、重要な業務執行の決定を取締役へ委任することができれば、取締役会における意思決定の迅速化にもつながる。
* 東京証券取引所の「コーポレート・ガバナンス白書 2017」76ページの図表68を参照。このように監査等委員会設置会社で社外取締役の選任比率が高い理由は、会社法上、監査等委員会は3名以上の監査等委員である取締役で構成され、その過半数は社外取締役でなければならない(331条6項)とされているため、社外取締役の複数選任が監査等委員会設置会社への移行の前提となっていたということに加え、昨今のガバナンス強化の流れを受け、法定の最低数を上回る人数の社外取締役を置く上場会社が相次いだということにある。
一方、いまだに上場会社の大部分を占める監査役会設置会社では、重要な業務執行を取締役へ委任することは禁止されているが(会社法362条4項)、これを見直そうという動きが政府内にある。・・・
このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。