【2017年7月の課題】「役員報酬のトレンド」でもお伝えしたとおり、ウイリス・タワーズワトソンと三菱UFJ信託銀行の共同調査によると、2017年6月総会で株式報酬を導入した企業83社のうち67社が業績に連動しないリストリクテッド・ストック(譲渡制限付株式)を選択している。これに対しパフォーマンス・シェアは21社、パフォーマンス・シェア・ユニットは14社と、業績に連動する株式報酬を採用する企業は少数派にとどまっている。まずは(業績と連動しないという点で)無難で、かつ損金算入のハードル(※)が低いストリクテッド・ストックが選ばれた格好となっている。
リストリクテッド・ストック(譲渡制限付株式) : 一定期間の譲渡制限が付された株式報酬。
パフォーマンス・シェア : 中長期的な“業績目標の達成度合い”に応じて交付される株式報酬。ここでは、業績評価期間(待期期間)の当初株式が付与されるタイプのパフォーマンス・シェアを想定している。
パフォーマンス・シェア・ユニット : 当初から現物株式を付与するのではなく、まずは役位等に応じて一定数のユニット(単位)を付与し、一定の業績評価期間(待機期間)を経た後に、目標業績や株価等の達成度に応じてユニット数を上下させ、そのユニット数に応じた株式を付与するタイプの株式報酬。パフォーマンス・シェアは当初から株式が付与されるのに対し、パフォーマンス・シェア・ユニットで業績評価期間(待機期間)を経てから株式が付与されるという点で両者は異なる。
・パフォーマンス・シェアは損金算入が認められない。
・パフォーマンス・シェア・ユニットは「業績連動給与」として損金算入することが可能であるが、損金算入のためには、その具体的な算定方法(例:株式報酬のトータルの上限額、役位毎の株式数または額、具体的な評価指標、株式交付数の算定式等)を有価証券報告書で詳細に開示する必要があり、企業にとってハードルが高い。
事前確定届出給与 : いつ、どれくらい(確定額、確定した株式数・新株予約権など)支給するかを“事前に”確定した上で原則として税務署に届け出をし、それに基づいて支給するもの。
業績連動給与 : その事業年度の利益や株価、売上等に関する指標に基づく「あらかじめ定められた方法」により決定されるもの。複数年度にわたる指標(例えば3年間の平均利益)を採用することも認められる。
2017年6月総会での株式報酬の導入を見送った企業も少なくない中、今後株式報酬の導入を検討する企業にとって、当面はリストリクテッド・ストックがファーストチョイスとなることも予想される。
ただし、リストリクテッド・ストックを導入する際にもいくつか留意点がある。まず、・・・
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