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“世耕プラン”に基づく中小企業と大企業の取引慣行の改善が進まない理由

2016年9月、中小企業と大企業の間で中小企業にとって不利な取引が行われるケースが後を絶たないことを背景に、経済産業省は「価格決定方法の適正化」「コスト負担の適正化」「支払い条件の改善」を重点課題とする「未来志向型の取引慣行に向けて」(いわゆる「世耕プラン」※経済産大臣・世耕弘成の名前から命名)を公表(2016年10月12日のニュース「一部新聞で誤報も・・・手形割引料を下請事業者に負担させることの是非」を参照)、同年12月にはこの世耕プランに基づき下請中小企業振興法に基づく振興基準が改正され、「親事業者による経済合理性や十分な協議を欠いた原価低減要請の禁止」「取引対価への労務費上昇分の影響の考慮」「型の保管・管理の適正化」などが新たに振興基準に追加される(改正後の振興基準はこちら)とともに、「下請代金の支払いを可能な限り現金」とし「手形やファクタリングなどによる割引料を下請事業者に負担させることがないようにする」「手形サイトは120日(繊維業においては90日)を超えてはならないことは当然として、将来的に60日以内とするよう努める」といった内容の通達(「下請代金の支払手段について」(平成28年12月14日 20161207中第1号 公取企第140号 中小企業庁長官 公正取引委員会事務総長))も発出された(見直しの全容はこちらを参照)。通達等の見直しから1年が経ち、中小企業と大企業の「取引慣行の改善」はどこまで進んだのであろうか。・・・

下請中小企業振興法 : 下請中小企業を支援し、企業体質の改善、強化を図ることを目的とした法律。振興基準(後述)、下請企業振興協会、下請事業者が金融上の優遇措置を受けるための諸制度を定めている。名称が類似した法律として下請法があるが、下請法が指導・規制法規であるのに対し、下請中小企業振興法は下請中小企業の支援法としての性格を有するといった違いがある。
振興基準 : 下請中小企業振興法に基づき定められる経済産業省告示。下請事業者および親事業者がよるべき一般的な基準が記載されている。
サイト : 手形の振出日から現金化されるまでの期間のこと。

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