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「裁量労働制」を巡る誤解

周知のとおり、厚生労働省が不適切な調査データを用いていたことをきっかけに、現在国会に提出されている「働き方改革関連法案」から「企画業務型裁量労働制の適用拡大」に関する条文が削除されることとなった。

厚生労働省が不適切な調査データを用いていたこと : 実質的な「残業代のカット」ではないかとの批判もある裁量労働制の適用拡大を実現するためには、裁量労働制による労働者の労働時間の方が一般労働者よりも短いことが実証された方が好都合と言える。厚生労働省のデータでは裁量労働制による労働者の方が20分程度短い労働時間となっていたが、裁量労働制による労働者には「通常の一日の労働時間」を聞いていたのに対し、一般労働者には「最も残業時間の多い日の労働時間」を聞いたり、一般労働者の一日の労働時間が45時間となっているデータが含まれるなど、不自然なデータが含まれていた。

現行の労働基準法では、事業運営に関する事項の企画・立案等の業務(例えば「経営企画」や「広報」等)に従事する労働者について、労使委員会の決議と労働者本人の同意を前提に、労使で取り決めた時間数を労働したものとみなす「企画業務型裁量労働制」が認められている。政府は、裁量労働制の適用対象職種を、①課題解決型提案営業(例えば「顧客ニーズに応じた新商品の開発・販売」等)、②事業運営に関する事項の実施管理とその実施状況の検証結果に基づく企画立案等を一体的に行う業務(例えば「全社レベルの品質管理計画の立案」等)にも拡大しようとしている。

労使委員会 : 使用者及びその事業場 の労働者を代表する者が構成員となっている委員会で、企画業務型裁量労働制を実施するために労働基準法に設けられた。

「実質的な残業代のカットではないか」との批判もある裁量労働制だが、この点ばかりに焦点が当たり、そもそも「裁量労働制」とはどういうものなのかが企業において理解されていないケースが多い。このままでは、将来的に企画業務型裁量労働制の適用拡大が実現したとしても、企業がそれを上手く使いこなせるのか、一抹の不安が残る。例えば下記の3つの問いに即答できるだろうか。

① ミーティングに出席させることはできるか
② 休日出勤を命じることができるか
③ みなし労働時間(労働したものとみなされる時間数)は誰が決めるのか

裁量労働制とは、文字通り、業務の遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる制度であり、逆に言えば、同制度の対象となる労働者は業務遂行の手段や時間配分を自らの裁量で決められることになっている。したがって、会社(上司)は、業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、具体的な指示をしてはならない。この点を踏まえると、上記問いへの解答はそれぞれ下記のとおりとなる。・・・

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