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執行役員にも善管注意義務等負わせる案が浮上

取締役の一つ下の階層に「執行役員」を置き、業務執行に責任を持たせている上場企業は多い。執行役員制度が広く普及した理由の一つとして、取締役会のスリム化を図りたい企業が、取締役の員数を減らす分、「役員」を名乗ることができるポストを“水増し”する必要があったとの指摘もある。しかし、執行役員制度には、監査役(会)設置会社や監査等委員会設置会社において業務の執行と監督の分離を実現し、取締役会の監督機能を強化する、あるいは、特定の業務に責任を持たせたうえで、その仕事振りから将来の取締役候補を選別する「人材プール」として活用できるなどポジティブな効果もある。

このように執行役員制度は日本企業において重要な役割を果たしているものの、あくまで法的な根拠のない”任意“の制度に過ぎない(あえて法的根拠を求めるとすれば、執行役員は会社法上の「使用人」(会社法第3章第1節)ということになる)。この点、会社法で定義され(同法418条)、取締役と同様に会社法上の責任(善管注意義務・忠実義務)を負う指名委員会等設置会社の「執行役」とは異なる。すなわち、執行役員は執行役と同様、経営陣の一角として会社の業務執行を担っているにもかかわらず、執行役のような会社法上の責任は何ら負っていないというわけだ。また、取締役の報酬には報酬規制(全取締役の報酬の総額は株主総会で承認を受けた報酬枠の範囲内に収まる必要があるとする規制)が適用されるが、取締役ではない執行役員への給与はこの規制に服さず、さらに情報開示(全取締役の報酬総額は事業報告や有価証券報告書で開示され、また年間の報酬額が1億円を超える役員(取締役・監査役・執行役)は個人名とともに報酬額を開示しなければならない)の対象にもならない。

執行役 : 取締会決議により選任・解任され(登記も必要)、取締役会決議によって委任された事項について会社業務を実行する役職。執行役が2人以上いる場合は会社を代表する代表執行役を選ぶ。取締役と同様、会社に対して善管注意義務および忠実義務を負い、株主代表訴訟の対象にもなる。「執行役員」も会社業務の実行に対して権限と責任を持つが、会社法上に定義はなく、あくまで重要な使用人に過ぎない点、執行役とは異なる。

執行役員制度を採用する企業が少なかったうちはこうした問題がクローズアップされることはほとんどなかったが、執行役員制度の普及とともに、重要な職責を担う執行役員の法的責任が使用人と同等で、報酬規制や情報開示の対象にもならないままでよいのか、問題視する声が高まりつつある。こうした中、・・・

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