不祥事を起こした会社では、不祥事の原因を調査するための第三者委員会を設置するケースが少なくないが、第三者委員会から必ずと言っていいほど指摘されるのが「内部通報制度の機能不全」だ。裏を返せば、そこには「内部通報制度が正しく機能していれば不祥事を未然に防げた(あるいは早期に発見できた)はず」という問題意識がある。
コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)原則2-5は上場会社に対し「内部通報に係る適切な体制整備を行うべき」としており、さらに補充原則2-5①はより具体的に「経営陣から独立した窓口の設置」「情報提供者の秘匿と不利益取扱の禁止に関する規律の整備」を求めている。
【原則2-5.内部通報】 上場会社は、その従業員等が、不利益を被る危険を懸念することなく、違法または不適切な行為・情報開示に関する情報や真摯な疑念を伝えることができるよう、また、伝えられた情報や疑念が客観的に検証され適切に活用されるよう、内部通報に係る適切な体制整備を行うべきである。取締役会は、こうした体制整備を実現する責務を負うとともに、その運用状況を監督すべきである。 補充原則2-5① |
原則2-5のコンプライ率は99%、補充原則2-5①のコンプライ率は97%といずれも高率となっているが(東京証券取引所がまとめた「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況の集計結果」(2017年7月14日時点)の3ページを参照)、この数字は単なる「内部通報制度を整備済みの上場会社」の割合に過ぎない。仮に上述のとおり第三者委員会が指摘するような「内部通報制度が機能不全を起こしていない上場会社」の割合を調査したとすれば、大幅にダウンするのは間違いない。ほとんどの上場会社でひとまず内部通報制度の導入が済んだ今、次の課題はいかにして「内部通報制度を機能させるか」ということになる。
不祥事を起こした各社の第三者委員会の調査報告書の多くで「内部通報制度が機能不全を起こした理由」として指摘されているのが、・・・
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