昨年(2019年)12月、セブンイレブンの本部が給与計算プログラムのミス(*)により店舗従業員の残業手当のうち一部を支払っていなかったとして不足分を過去に遡り支払う旨を公表し、話題を呼んだ。未払額は2001年以降だけで4億9千万円にのぼるが、セブンイレブンは2001年より前の未払額もすべて支払いに応じる姿勢を見せている。
* 「精勤手当」「職責手当」に対する残業手当の計算にあたっては、本来であれば「精勤手当」「職責手当」を月所定労働時間で除してこれに残業時間を乗じ、さらに1.25を乗じるべきところ、0.25しか乗じていなかった。
賃金請求権の消滅時効は、労働基準法115条で「2年間(退職手当については5年間)」と定められている(*)。すなわち、法律上は2年分についてのみ支払不足額を支払えば足りるが、セブンイレブンは今回の支払不足は計算プログラムの設定ミスが原因であることから、この消滅時効は援用せず、過去の支払不足分全額の支払いに応じる方針だ。
* 民法上、一般債権の消滅時効は10年(民法167条)とされるが、「月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権」については1年の短期消滅時効(民法174条:使用人の給料等に関する短期消滅時効)が定められている。ただ、労働者にとって重要な給料の請求権の消滅時効が1年だと短すぎて労働者の保護に欠け一方、10年になると長すぎて使用者にとって酷であり、取引安全に及ぼす影響も少なくないとして、労働基準法115条では「2年間(退職手当については5年間)」と定められている。
もっとも、この賃金請求権の消滅時効期間は近いうちに改正される見込みとなっている。・・・
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